許せなかった僕たちへ

古川ゆう

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一章

1.4 惨劇

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3人は未知の森の中を進んで行く。

辺りを見渡しても何も無く、ただ木々が生い茂げっているだけだった。

「もう少し上登ってみるか。」
蓮は黙々と上を歩いていく。

「早いよ~まって!」
必死に着いていく2人。

「何もないね。」と
3人、つまらなそうに歩いていた時だった。

2人の真ん中を歩いていた葵は、ふと森の右の方へと視線をずらした。

すると、木々の隙間に森の中には似つかわしくない姿をした白い建造物が視界に映ったように感じた。

「ねえ、何あれ?」
葵は再び目を凝らす。

葵の声に他の2人も足を止め
葵が見ている方向に視線を移した。

「ん?」

「あれ、何かの建物?」

木の隙間から、僕達の目視で確認できたのはその建物は木の枝でぐるぐると巻かれおり今は古く錆びれ朽ち果てていた。

昔使われていたであろう小さな病院の様にも見えた。


「何だろう。病院、かな?」
葵は2人に聞く。

「こんな森の中に病院?おかしくない?」
結人は森の中にある病院の様な建物を見て少し寒気を感じた。

興奮気味に
「ちょっと見てみようぜ。」
と蓮は言った。

3人はそこから建物の外観近くが見えるところまで歩いた。

するとその時、建物の小窓から人影が見えた様な気がしたのだ。

「え、待って。誰かいる。」
それに気付いたのは葵だった。

「本当かよ。」
蓮は葵に聞いた。

「確かじゃないけど、誰か居た気がする。」
そう言ったのだ。

結人は
「ちょっと隠れよう。」
と2人に言った。

3人は建物から15m程離れた場所の草陰に身を潜めた。

「何かしてるのかな?」
結人は首を傾げた。

すると、その刹那
ガタガタガタと建物内から激しい物音が聞こえてきた。

「ちょっと、何⁉︎」
葵はその物音に動揺した。

同時に大人の男性の声が聞こえきたのだ。
「おい、やめろ‼︎ 何するんだ‼︎」
「やめろ‼︎‼︎‼︎」

その言葉を最後に建物は急に静かになった。

その束の間
1人の大柄の男がゆっくりと建物の裏口から出てきたのだ。

草影から見ていた3人の中でその男の強烈な違和感に1番最初に気づいたのは結人だった。


「え…あれ…ね… ねえ…。」
結人は息を漏らし言った。

「ちょっと…蓮…やばいよ…。」
葵も気づいたようだ。

「あれは…。」
蓮も気づいた。

大柄な男の右手にはびっしりと血の付いた包丁が握らていた。

男が着ている紺色のポロシャツには
返り血が浴びられており
男は辺りをウロウロと見渡している。

僕達は男に見つからない様に
静かに息を殺した。

「どうしよう…。」
葵は震えた声で言う。

「蓮、やばいって…もう逃げよう…。」
結人も声が震え身体も震えている。

「蓮…」「蓮…」「蓮…」
何回も2人は蓮の名前を呼ぶ。

だが、蓮はその言葉が聞こえていないのか
瞬きもせず黙って男を見ていた。

大男は辺りを見渡し、再び建物裏へと入って行った。

「結人…蓮が聞いてくれない。」
葵は既に瞳から涙が溢れていた。

「蓮、もう帰ろうよ。」
結人も蓮に対し何度も呼びかけていた。

すると、男は先程とは違い腰を屈め後向きでずるずると重そうな何かを引き摺って建物の裏から再び出てきたのだ。

引き摺っていたのは
先程、男が持っていた刃物で刺し殺され血を流している男性の死体だった。

無惨にも男に腹部を何度も刺された痕が僕達には見えた。

男は周囲を警戒しつつ死体を引き摺り建物の裏へ消えていった。

「蓮、いなくなったよ…もう逃げよ…。」
結人は涙を流しながら言った。

再び裏から出てきた男は手ぶらで建物の中へと入った。

ガタガタと何かを探しているようだった。

男は正面入り口から出てきた。

右手には作業用に使う大きなスコップだ。

小学4年の僕達に、そのスコップを何に使うのかは検討がつき背筋が凍る思いだった。

男はスコップを持ちまた裏に戻った。

その間、ずっと男を凝視していた蓮は
やっと我に返ったのか後ろを振りかえる。

そこには泣きながら青ざめた2人の顔が
蓮の瞳に映った。

蓮はやっと気づいたのだ。

自分の後ろに2人が隠れガタガタと震えながら自分の服を引っ張り必死に立ち去ろうとしている姿を。

「ごめん、逃げよう。」

蓮はそう言った。


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