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第一章
1.1 気の向かない旅,
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2019年、冬、遥か上空からは白い粉雪たち
がひらひらと舞い落ち都会の街並みを銀白色へと染め上げた。
煌びやかな光が点滅を繰り返し落ちゆく粉雪を色鮮やかにして照らし出すその様は何とも壮麗だった。
千差万別の人達が暮らし絶えず賑わいを魅せる大都会。
それとは真逆に狭い路地裏をビルが群となって覆い隠し重く冷たい暗闇がそこには広がっていた。
そんなひと1人として寄り付かないであろう陰気な暗闇の中を少女は1人俯き灯りもともさないまま気鬱に彷徨っていた。
楠木結衣は重苦しい表情を浮かべ「はぁ。」と深い溜息を漏らした。
その吐いた息は白く霞み忽然として雪風に攫われていく。
結衣は独り呟いた。
「どこがいいかな。」
「まぁ、どこでもいいよね。」
誰に問いかけ返事を待っている訳では無く露骨にも自分自身に問いかけ同意を求めているのであった。
暗闇の中を途方もなく歩き回り手当たり次第に廃墟となったビルを物色していた。
「ここでいっか。」
足を止めた結衣の目の前に聳え立つビルは他のビルとは違いどこか異様で禍々しい雰囲気を放っていた。
だが、結衣の直感がこの場所だと訴えかけているようにも思え不思議にも恐怖心などは無くかえって好奇心が勝っていた。
ビル裏側の白く塗られ凍てついた扉を目の前にして
「空いてるかな。」
年月が経ち赤錆色に変色したドアノブをガチャガチャと力任せに左右何度か捻った。
ガチャッ
すると、内側から施錠されていた筈の鍵は少女の力でも容易く壊れてしまい相当に劣化が進んでいたのであろうか。
鍵が空いたのを認識した結衣はドアノブを捻り錆びて重くなった扉を躊躇なく開いて見せた。
その動きに合わせ静寂な闇の中をギギギギと錆が擦れ奇妙な音を奏でた。
開かれたその先は寂然とした暗闇だった。
けれど室内の空気の流通が悪い為か湿気が高く生暖かい温度が結衣の肌へとまとわりつく。
突然、目先に何者かが居る気配を察知する。
「え。」
「だれ。」
「誰かいるの。」
その気配に少し怯えながらボトムスから焦った様子で手探りにスマートフォンを取り出し気配のする方へ灯りを照らした。
ところがその先には人影は無く光によって照らし出されたのは酷く荒れ果てたロビーを舞台にして踊る様に舞い上がる埃だけだった。
「うわ、何ここ。」
結衣は反射的に口を手で覆う。
「もう誰も使ってないんだね。そりゃそうか。」
辺りをライトで照らすと、この室内には似つかわしくない麗々しく塒を巻く赤褐色に塗られた螺旋階段を発見した。
「螺旋階段だ、初めて見た。」
「これを上がっていけば屋上に出られるかな。」
当時は様々な人達がこの階段を利用していたのか足場には砂埃がまばらに広がっていた。
纏わりつく程息苦しい想いを払うかの様に「行こう。」そう言って螺旋階段に足をかけた。
螺旋階段の手すりを持つ自らの手が上にあがるにつれて小刻みに震えているのが分かった。
一歩ずつ踏み締めながら彼女は一体何を思うのか。
静まり返った廃ビルの中を少女の足音は悲しく響き渡らせた。
がひらひらと舞い落ち都会の街並みを銀白色へと染め上げた。
煌びやかな光が点滅を繰り返し落ちゆく粉雪を色鮮やかにして照らし出すその様は何とも壮麗だった。
千差万別の人達が暮らし絶えず賑わいを魅せる大都会。
それとは真逆に狭い路地裏をビルが群となって覆い隠し重く冷たい暗闇がそこには広がっていた。
そんなひと1人として寄り付かないであろう陰気な暗闇の中を少女は1人俯き灯りもともさないまま気鬱に彷徨っていた。
楠木結衣は重苦しい表情を浮かべ「はぁ。」と深い溜息を漏らした。
その吐いた息は白く霞み忽然として雪風に攫われていく。
結衣は独り呟いた。
「どこがいいかな。」
「まぁ、どこでもいいよね。」
誰に問いかけ返事を待っている訳では無く露骨にも自分自身に問いかけ同意を求めているのであった。
暗闇の中を途方もなく歩き回り手当たり次第に廃墟となったビルを物色していた。
「ここでいっか。」
足を止めた結衣の目の前に聳え立つビルは他のビルとは違いどこか異様で禍々しい雰囲気を放っていた。
だが、結衣の直感がこの場所だと訴えかけているようにも思え不思議にも恐怖心などは無くかえって好奇心が勝っていた。
ビル裏側の白く塗られ凍てついた扉を目の前にして
「空いてるかな。」
年月が経ち赤錆色に変色したドアノブをガチャガチャと力任せに左右何度か捻った。
ガチャッ
すると、内側から施錠されていた筈の鍵は少女の力でも容易く壊れてしまい相当に劣化が進んでいたのであろうか。
鍵が空いたのを認識した結衣はドアノブを捻り錆びて重くなった扉を躊躇なく開いて見せた。
その動きに合わせ静寂な闇の中をギギギギと錆が擦れ奇妙な音を奏でた。
開かれたその先は寂然とした暗闇だった。
けれど室内の空気の流通が悪い為か湿気が高く生暖かい温度が結衣の肌へとまとわりつく。
突然、目先に何者かが居る気配を察知する。
「え。」
「だれ。」
「誰かいるの。」
その気配に少し怯えながらボトムスから焦った様子で手探りにスマートフォンを取り出し気配のする方へ灯りを照らした。
ところがその先には人影は無く光によって照らし出されたのは酷く荒れ果てたロビーを舞台にして踊る様に舞い上がる埃だけだった。
「うわ、何ここ。」
結衣は反射的に口を手で覆う。
「もう誰も使ってないんだね。そりゃそうか。」
辺りをライトで照らすと、この室内には似つかわしくない麗々しく塒を巻く赤褐色に塗られた螺旋階段を発見した。
「螺旋階段だ、初めて見た。」
「これを上がっていけば屋上に出られるかな。」
当時は様々な人達がこの階段を利用していたのか足場には砂埃がまばらに広がっていた。
纏わりつく程息苦しい想いを払うかの様に「行こう。」そう言って螺旋階段に足をかけた。
螺旋階段の手すりを持つ自らの手が上にあがるにつれて小刻みに震えているのが分かった。
一歩ずつ踏み締めながら彼女は一体何を思うのか。
静まり返った廃ビルの中を少女の足音は悲しく響き渡らせた。
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