虹色の物語が 僕の日常

紫陽花 小雨

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集まる皆とお店

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 …タタタタダダダダ!
 そんな音と共に一人の赤ずきんの被った人が僕達の店の方へと走ってくる。
 全く、紅茶を楽しんでいるのに、弟と交代しないといけないし、赤ずきんといえばいい事が起こらないのは確かだ。
 女は僕の店の前で急ブレーキをかけ、大きな声で「お邪魔しまーす!」と叫んで、扉を雑に開け、僕達のティータイムのしているこのベランダへと迫って来ているのは音で薄々と気付く。
 はぁ、まったく、ゆっくりティータイムくらいさせてくれ…。
 僕の部屋のドアも店のドア同様に大きな音を立て、雑に開かれ、片手に“赤ずきん”に出てきそうな火縄銃を手にしてベランダまで来てはベランダから見える森の方へとめがけて、ドンッ!!、と一発ぶちかました。

「フゥ~、当たった~!連絡連絡~♪…あっ、麻酔撃っといたからあとはよろしく~♪じゃあね。」

 と、電話をきって上機嫌な彼女の頭に僕からのチョップが落ちる。
 一応、もう一度言おう、チョップが彼女の頭に落ちた。

「っー、痛~!なんなのよ、暴力帽子ハゲウサギ!」
「誰が暴力帽子ハゲウサギだ!この不法侵入男女!」
「まあまあ、落ち着いてよ二人とも~!」
「「落ち着いてられるか!!」」
「あはは。」

 兄さんが彼女と言い合い中だから一旦交代するけれど、彼女はブーゲンビリア。
 花にもこの名前があるのだけれど、この花言葉のように情熱な女で、僕達の幼馴染みたいな感じにあたる。
 しかし、仕事になると、身の前しか見れなくなっちゃってよく家のベランダで射撃するのはたまに傷。
 しかも、兄さんはそれが兄さんの大好きなティータイム中によく起きるからよくブチ切れ小学生レベルの喧嘩を今日のようによくしている。

「ふわぁぁぁあ、また喧嘩してるんですか~?幸せになーれ!」
「「フワリ!!いつの間に!!」」
「ついさっきですよ~♪皆さん来てますよ~♪」
「わかった。フワリ、ルチャー、すまなかった。先にこのバカ男女と共に降りといてくれ。これを片付けてから行く。」
「バッ!バカj「はいはい、ブーゲンビリアさん行きますよ~。」…わかったわよ!」

 タタタタ…。
 降りていく音が聞こえる。
 まったく、許しがたい行為を毎回のほどにしてきやがって。
 僕の大切なティータイムが…、とほほ…。
 僕は片付けて、お気に入りの水色の生地に白の水玉のスカーフの巻いた白いハットを被り、降りていく。

 すると、もう揃っていた。
 まず、自己紹介の前にここの人ならざる者に事について説明しておこう。
 この世界の者は、全員本が元になって生まれている。
 ここに集まっている人はその本の監督的な存在である。
 見た目で皆わかると思うが、例えば、僕は「不思議の国のアリス」。弟は指導役をしている。
 見た目でわかるのは、もちろん本から生まれているからだ。
 本は君達にもわかるようにたくさんある。
 だからこそ、ほとんど人間の世界と変わらないのだ。
 ここからは自己紹介混ぜて、誰が何かを説明していこう。

「また、あのバカに暴力振るわれたよ~。本当短気のバカはすぐ手がでるんだから~。」

 やれやれと自慢のように話すさっきのバカ男女、ブーゲンビリアは「赤ずきん」。
 似てしまったのは狼を狩る狩人で赤ずきんのあの頭巾をしていて、かみは狼のような毛先の跳ねた銀色。

「また、喧嘩してたんだね。元気そうで何よりだよ。」

 紳士的な答えを返しているのはクルナ。
 彼女はショートで綺麗な金髪のストレート。
 着ている王子様のような白い服。
 だけれど、彼女は女である。
 彼女は「シンデレラ」。
 まるで、王子様バージョンのシンデレラを見ている気分になる。

「ダメですよ~、クルナ。喧嘩自体がダメだから~。ね、クロラ。」

 さっき、僕達の間に入ってきた妖精、フワリ。
 ふわふわとした性格だが、敬語というすごい不思議なやつだ。
 見た目は、茶色のふわふわとした髪を三つ編みをして横に流していて、いつもあくびをしていて、眠たそうだが、小さいので、いろんなとこに眠る癖は直して欲しい。
 彼は「ピーターパン」の監督をしている。
 こんな性格だが、案外適切な判断は得意で毎回驚かされる。

「そっ、そうですね。って、こんな私が口出せるわけないですよね。すいません。すいません。すいません。…」

 いきなり、顔を青くして涙目にしてブンブンと謝っているのはクロラ。
 バラのように美しいのに関わらず、性格は闇と言っていいほどのメガティブ。
 髪はそれを表すかの様に雑に切られた真っ黒のショート。
 綺麗な赤いリンゴの様な瞳は左だけ前髪が隠している。
 色もあまり外に出ないので、とても白い。
 彼女は「白雪姫」を担当している。
 たまに、泣きながら、「私がしていいのでしょうか?」と、店に来るのはやめて欲しいが、見た目と性格を裏切るくらいの負けず嫌いは認めている。

「大丈夫だよ、クロラ。もっと自信もっていいよ~。」
「フワリさん、ありがとうございます。」

 この二人はとても仲が良く、クロラの心配は僕はしていない。

「今日も、監督をしに行きますか。」
『おー!』

 仕事後に開けるこの店には“close”と書いた帽子型の看板をぶら下げ、ドキドキハラハラの仕事が始まりを告げる。
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