運命だと飾りたい 〜遠い愛と私〜

MAKKURO

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〜出会いは突然に〜

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1年前、
不思議なほど美しく見えた。
雰囲気の良い店だとは思えないバーにあの男はいたのだ。

騒がしすぎる店内に、くさい煙草の匂い、終いには故障した照明器具。
薄暗い店内のせいで、男の細部は見えない。
何の理由もなく男の隣に座る。何かを感じ取るような男の瞳が私を捉える。

同僚、後輩、彼氏、どんな人の瞳を見ても私を映してはいなかった。
鏡のように私が映るはずなのに、黒色で塗りつぶされている気がするのだ。 
分かっている。気づいている。
私が黒くしていることなんて。

男の瞳は私を捉えたまま、テキーラをねっとり味わっている。
久しぶりに感じる私の存在。
過去に引っ張られていた私の存在が久しぶりに戻ってきた、そんな感じがした。

ー ーーーーー   ーー ーー

どれぐらい経っただろうか。冷たかったビールがぬるくなっている。
男の瞳がまた私を捉えているような気がした。
何を思ったのか、私は男の顔をしっかりと見る。
髭を生やしているが、年は私より3歳ぐらいしか変わらないように思えた。
少しよれたスーツは男を際立たせ、何かを含む瞳は少々、怖い。
男だと感じさせる体格だが、やらしさは感じなかった。
哀愁を感じさせる男は、掴みどころのない、これまでにいない人物だ。

私の心の中にすっぽりとハマる男は、瞳を揺らした。
男は言った。淡々と言った。
「あなたは、俺と一緒ですね。 …すみません、急に。」
現実とは少し違う世界に行ったような、実に不思議な感覚だった。
男に対する嫌悪感はみじんも感じない。
そればかりか、心の扉を優しく叩かれた気持ちになる。

私を捉える男の瞳を見ると、自然と頬が緩みそうになるが、ぐっと堪える。
癖なのだろうか。
嬉しいのに、何かをもらえそうなのに、素直に表現できないのは。
過去に支配する私の頭に嫌悪感を抱く。
そんな思考を排除するかのように、私はまた男を見つめた。
いや、男の瞳に映った私を見ようとした。

「癖、なんですか? 鼻、膨らんでます。」男の髭が横に少し伸びて歯が覗く。
心が音を立てたような感じがしてならなかった。
この男はどこまでも私を知っているようだった。

なぜかできるだけ冷静に答えようと思った。
「そうなんですよ。昔から母に言われてました。母しか見抜けないんですよね~」
父を母に変えて言った。
他人だから嘘をついてもいいはずなのに、なんだかやましくなって、
男の顔を見れない。
どのぐらいの無音が続いたのかは検討がつかない。

ー ーーー   ーーーー ーーーー  ー  ーー ーー

少しの音で肩が上にあがる。男が私のコップを掴む音だった。
反射的に男を見ると、私のお酒は男の口に入っていった。
奇行とも言える行動だが、私は気にならなかった。
男の瞳にまた私が映る。驚きを隠しきれない私の顔がくっきりと映った。
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