8 / 70
1章 異界の地
第八話 魔獣
しおりを挟むコラム鳥。結論から言うとそれ程美味しい鳥肉では無かった。
アネリアや冒険者の話から珍しい鳥だとは聞いていたが、現代日本において、食べる為に品種改良され、適切な環境で育った地鶏等に比べると肉の旨味が数段落ちる。
味の好みは人それぞれで、これが最高と一概に言える物ではないのはわかってはいるのだが。
四人の冒険者は素早く後片付けを終え準備を整え始める。
「アネリア様、我々は直ぐにサージェに戻りますが、アネリア様達は決して無理をなさらずに…」
ローブの女性ロゼの忠告にアネリアはゆっくりと頷く。
「ええ、ありがとうロゼ。あなた方もお気を付けて」
筋肉大男のゲダが俺を見てにっと笑う。
「あーなんと言ったか…ユージだっけ?まぁ良い、アネリア様を頼んだぜ。危ないと感じたら全力で逃げろ。格好つけて死ぬんじゃないぞ?お前が何者なのか良くわからんが、死んだらそれまでだからな」
命を常にかけている人間の言葉には迫力がある。
「わかった。肝に銘じるよ」
準備が整った四人の冒険者はそれぞれアネリアに挨拶をし、足早に夜の街道を歩き進んでいった。
「…アネリア」
「はい、何でしょ?」
「一つ聞きたいのだが、あの冒険者達は有名なのか?」
俺の質問にアネリアは頷く。
「はい、初心者から中堅冒険者になってまだ日が浅いのですが、実力は間違いなくC クラスだと言われています」
自分の説明にピンと来ていないようなユージを見てアネリアは付け加える。
「そうですね…冒険者のCクラスと言うのは騎士で言えば近衛師団長程の強さを持っています。在野の冒険者では、Cクラス冒険者が最高位ですね。稀にBクラス冒険者がギルドに顔を出しますが、大抵は貴族のお抱えになったりしています」
「ほー…それは多分凄いんだろうな」
そうは言ったものの、魔法が存在する世界で近衛師団長がどの程度抗えるのかかなり怪しい…ひょっとして魔法自体それ程強力な威力が無い可能性もあるわけだ。
「…まぁ何れ実感出来るだろう…さて」
俺は立ち上がりアネリアの様子を確認して声をかけた。
「アネリア。さっきの冒険者が連絡をしてくれると思うが、こちらはこちらでサージェの町に向かった方が良いと思うんだが」
アネリアが俺の顔を見ながら考え込む。
「アネリア…変な話だが、多分君を抱えて走ってもあの冒険者達が町に着くよりも間違いなく早いぞ?」
「…そうですね…本当に信じられない事ですが、ユージ様の身体能力は常人と比較するのが馬鹿らしい程ですからね…」
これは体感なのだが、アネリア嬢を抱きかかえて走った感じは間違いなく時速七十キロは超えていただろう。
これはサラブレッドが走るスピード並だが、持続力では間違いなくサラブレッドを超えていたし、俺自身全力を出してはいなかった。
「この月明かりがあれば走るのに問題はないので…そうだな、後少し休憩したら出発しよう」
「分かりました。お任せします」
そう言うとアネリアは倒木に背を預け目を閉じた。
知識不足のまま、虫だの野生動物等がいるような場所に余り長居はしたくない。まだアネリア嬢を抱えて走っていたほうが安全だと思う。
俺はポケットから携帯端末を取り出し、今迄の経緯を送信する準備をする。
送信するソース作成画面に入るとやけに見慣れた画面が現れる。
(…ああ、これはパ○ーポイントだな…)
基本的に俺はITやらグローバルなんたらには何ら興味は無い。
商社に入り営業から企画部、管理部を経て人事部に腰を落ち着かせる過程において、電子機器の取り扱いはここ数十年の間に自然に身に付いた。
今では社内の企画発表等もPCを介して行うのだ。
社内でPC導入が行われたのが約30年前。
当時俺も若く野心もあったので必死になってPC端末を弄くり倒した記憶が蘇ってくる。
今では報告書位しか書かないのだが、携帯端末のパ○ーポイントに似た画面にやけに懐かしさを感じていた。
さて、どう言った感じで"神たま"に報告したものかと思っていたら、このパ○ーポイントもどきは俺のイメージをそのまま文章と画像に置き換えてくれた。
(…いちいちこんな携帯端末使わなくてもイメージを送れるんじゃないのか?)
何か無駄な作業をしている感が激しい。
イメージ通りの報告書…を見直し投稿ボタンを押すと暫くして投稿完了のメッセージが現れたのを確認する。
(投稿してからポイントに変換されるまでの期間がわからんな…)
次にポイント利用画面に入るとお馴染みのステータスを確認画面になったのだが、自分のステータス数値を見て驚いた。
(…かなり上がってるな…)
投稿によって得られるポイントは、まだ反映されてはいないので、基本ステータスの上昇にレベル的な物が関わっていないようだ。
つまり体を鍛えればステータスの数値が上がると言う、極々真っ当な理屈だ。
今まででやったことと言えば、アネリアを抱えて走っただけだったのだが、筋力、敏捷力、精神力が大幅に上がっている。
その他のステータスも少なからず上がっていたのでステータスを上げる目処は何となく付いた。
後は自分のステータスが他人と比較してどの程度なのか知る必要が有るのだが、アネリアからの情報から推測すると、常人を凌駕している可能性が高い。
(…迂闊に本気を出すのは危険かもしれない…)
眠気は無かったが、アネリアを見習い少し目を閉じてみたが、木々や草花が風にそよぐ音、虫や小動物が動く音が気になり直ぐに目を開けてしまう。
(都会育ちの弊害ってやつかな…)
背嚢に荷物を詰め終え俺はアネリアを抱き抱える。
「ユージ様。ユージ様のスピードだと直ぐに四人パーティーに追い付いてしまいそうですが…」
「うーん…多分そうなんだが…まぁ、あのパーティーが前方に見えたら道を少し外れて走るさ」
そう言いゆっくりと走り出す。
季節的には秋頃だろうか?走り出すと夜風が肌に突き刺さる。
「アネリア、寒くないか?」
「大丈夫です…」
抱き上げた腕に力をいれ、アネリアをしっかりと抱き締め加速する。
月明かりがなだらかな街道の勾配に沿うように、自生する木々の葉に反射してまるで街灯のようだ。
四人組の冒険者が出発してから二時間程して後を追うように走り出したが、このスピードだと多分後五分位すれば追い付く事になるだろう。
微かに生臭い香りが鼻孔に届き少しスピードを落とす。
勿論アネリアの香りでは無いのは分かり切った事だが、だとすれば風上にこの臭いが発する何かがいるはずだ。
(どうする…少し外れるか?…)
俺達より先に出た四人組の冒険者の姿が脳裏に浮かぶ。
「アネリア、この辺りに出る魔物で強い奴はいるか?」
ひしっと俺の胸に顔を埋めるようにしていたアネリアが顔を上げ小首を傾げる。
「多分それ程強い魔獣は居ないと聞いてます…あの どうかしましたか?」
「うーん…今微かに獣の臭いがしたから気になっ…!」
強烈な圧迫感を感じ踏み込んだ足で思いっ切り大地を蹴る。
「きやー!!」
高さにすれば約四メートル近くを跳び上がると眼下に黒い影が街道脇の叢から飛出して来ていた。
出来る限り振動がアネリア伝わらない様に着地する。
ウー!っと唸り声を上げ、一瞬俺を見失った黒い影は俺が着地した瞬間素早く体制を立て直す。
俺は抱いていたアネリアをゆっくりと下ろし、腰に挿していた剣に手をかけた。
「アネリア、あれは何だ?まさか飼い犬…じゃないよな?」
「違います…あれはウルムと言う魔獣です…いえ、でもまさかこんな街道にいる魔獣では…」
アネリアを抱えながら、犬の様な姿形の生き物とスピード勝負する無謀を俺は避けた。
両手が塞がった状態で足に一撃くらった時を想像したら……
俺は剣をゆっくりと抜きながら辺りの気配を探るが、それらしい気配は無いようだ。もっとも、商社務めだったロートル親父の感覚がどれだけ当てになるのか甚だあやしいが。
(…やるしかないなら…殺る!)
俺は剣を構えながらゆっくりと腰を落とし、命のやり取りに備えた。
20
あなたにおすすめの小説
【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜
一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m
✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。
【あらすじ】
神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!
そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!
事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます!
カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。
【一時完結】スキル調味料は最強⁉︎ 外れスキルと笑われた少年は、スキル調味料で無双します‼︎
アノマロカリス
ファンタジー
調味料…それは、料理の味付けに使う為のスパイスである。
この世界では、10歳の子供達には神殿に行き…神託の儀を受ける義務がある。
ただし、特別な理由があれば、断る事も出来る。
少年テッドが神託の儀を受けると、神から与えられたスキルは【調味料】だった。
更にどんなに料理の練習をしても上達しないという追加の神託も授かったのだ。
そんな話を聞いた周りの子供達からは大爆笑され…一緒に付き添っていた大人達も一緒に笑っていた。
少年テッドには、両親を亡くしていて妹達の面倒を見なければならない。
どんな仕事に着きたくて、頭を下げて頼んでいるのに「調味料には必要ない!」と言って断られる始末。
少年テッドの最後に取った行動は、冒険者になる事だった。
冒険者になってから、薬草採取の仕事をこなしていってったある時、魔物に襲われて咄嗟に調味料を魔物に放った。
すると、意外な効果があり…その後テッドはスキル調味料の可能性に気付く…
果たして、その可能性とは⁉
HOTランキングは、最高は2位でした。
皆様、ありがとうございます.°(ಗдಗ。)°.
でも、欲を言えば、1位になりたかった(⌒-⌒; )
『異世界ガチャでユニークスキル全部乗せ!? ポンコツ神と俺の無自覚最強スローライフ』
チャチャ
ファンタジー
> 仕事帰りにファンタジー小説を買った帰り道、不運にも事故死した38歳の男。
気がつくと、目の前には“ポンコツ”と噂される神様がいた——。
「君、うっかり死んじゃったから、異世界に転生させてあげるよ♪」
「スキル? ステータス? もちろんガチャで決めるから!」
最初はブチギレ寸前だったが、引いたスキルはなんと全部ユニーク!
本人は気づいていないが、【超幸運】の持ち主だった!
「冒険? 魔王? いや、俺は村でのんびり暮らしたいんだけど……」
そんな願いとは裏腹に、次々とトラブルに巻き込まれ、無自覚に“最強伝説”を打ち立てていく!
神様のミスで始まった異世界生活。目指すはスローライフ、されど周囲は大騒ぎ!
◆ガチャ転生×最強×スローライフ!
無自覚チートな元おっさんが、今日も異世界でのんびり無双中!
辺境領主は大貴族に成り上がる! チート知識でのびのび領地経営します
潮ノ海月@2025/11月新刊発売予定!
ファンタジー
旧題:転生貴族の領地経営~チート知識を活用して、辺境領主は成り上がる!
トールデント帝国と国境を接していたフレンハイム子爵領の領主バルトハイドは、突如、侵攻を開始した帝国軍から領地を守るためにルッセン砦で迎撃に向かうが、守り切れず戦死してしまう。
領主バルトハイドが戦争で死亡した事で、唯一の後継者であったアクスが跡目を継ぐことになってしまう。
アクスの前世は日本人であり、争いごとが極端に苦手であったが、領民を守るために立ち上がることを決意する。
だが、兵士の証言からしてラッセル砦を陥落させた帝国軍の数は10倍以上であることが明らかになってしまう
完全に手詰まりの中で、アクスは日本人として暮らしてきた知識を活用し、さらには領都から避難してきた獣人や亜人を仲間に引き入れ秘策を練る。
果たしてアクスは帝国軍に勝利できるのか!?
これは転生貴族アクスが領地経営に奮闘し、大貴族へ成りあがる物語。
《作者からのお知らせ!》
※2025/11月中旬、 辺境領主の3巻が刊行となります。
今回は3巻はほぼ全編を書き下ろしとなっています。
【貧乏貴族の領地の話や魔導車オーディションなど、】連載にはないストーリーが盛りだくさん!
※また加筆によって新しい展開になったことに伴い、今まで投稿サイトに連載していた続話は、全て取り下げさせていただきます。何卒よろしくお願いいたします。
出来損ない貴族の三男は、謎スキル【サブスク】で世界最強へと成り上がる〜今日も僕は、無能を演じながら能力を徴収する〜
シマセイ
ファンタジー
実力至上主義の貴族家に転生したものの、何の才能も持たない三男のルキウスは、「出来損ない」として優秀な兄たちから虐げられる日々を送っていた。
起死回生を願った五歳の「スキルの儀」で彼が授かったのは、【サブスクリプション】という誰も聞いたことのない謎のスキル。
その結果、彼の立場はさらに悪化。完全な「クズ」の烙印を押され、家族から存在しない者として扱われるようになってしまう。
絶望の淵で彼に寄り添うのは、心優しき専属メイドただ一人。
役立たずと蔑まれたこの謎のスキルが、やがて少年の運命を、そして世界を静かに揺るがしていくことを、まだ誰も知らない。
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
神様、ちょっとチートがすぎませんか?
ななくさ ゆう
ファンタジー
【大きすぎるチートは呪いと紙一重だよっ!】
未熟な神さまの手違いで『常人の“200倍”』の力と魔力を持って産まれてしまった少年パド。
本当は『常人の“2倍”』くらいの力と魔力をもらって転生したはずなのにっ!!
おかげで、産まれたその日に家を壊しかけるわ、謎の『闇』が襲いかかってくるわ、教会に命を狙われるわ、王女様に勇者候補としてスカウトされるわ、もう大変!!
僕は『家族と楽しく平和に暮らせる普通の幸せ』を望んだだけなのに、どうしてこうなるの!?
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
――前世で大人になれなかった少年は、新たな世界で幸せを求める。
しかし、『幸せになりたい』という夢をかなえるの難しさを、彼はまだ知らない。
自分自身の幸せを追い求める少年は、やがて世界に幸せをもたらす『勇者』となる――
◇◆◇◆◇◆◇◆◇
本文中&表紙のイラストはへるにゃー様よりご提供戴いたものです(掲載許可済)。
へるにゃー様のHP:http://syakewokuwaeta.bake-neko.net/
---------------
※カクヨムとなろうにも投稿しています
貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。
黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。
この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる