わざわざ50男を異世界に転生?させたのは意味があるんですよね"神たま?"

左鬼気

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1章 異界の地

第五十二話 転移

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 アネリアに案内され、初めてサージュの門前に立った時のビジョンを。

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 転移した場所にたまたま何かあったら…
 今はそんな不安さえ消し去り、ひたすらに明確なビジョンを思い描く。

 《転移!》
 
 合図のキーワードを、フェニルに伝えた瞬間
 俺の身体は細かな粒子に変わる……事も無く、一瞬でイメージ通りの場所からサージュの門を見上げていた。

 「おわ!!」

 いつの間にか現れた、俺の姿を見た見張り番の騎士が、驚いた顔をして右往左往していた。
 
 「ユーリヒ様の護衛任務中の冒険者、ユウジ・高階と言います。メルカス伯爵様宛に、ユーリヒ様からの書状を預かっています。喫緊きっきんの書状の為、至急お取り次ぎお願いします」

 俺は声を張り、見張り番の騎士に伝える。
 慌てふためく若い騎士の後から、覚えのある騎士が現れる。

 「ユウジ殿!何故ここに……いや、今喫緊の書状と言われましたか?」
 「はい、余り良くない状況にモンタスの街がさらされています。急ぎユーリヒ様の書状を、メルカス伯爵にお渡ししたい」

 グレイズ騎士団の副官レスターが厳しい顔で肯いた。
 
 「了解した。急ぎとあらば面倒な手続きは不要。私と共にメルカス伯爵の元まで参りましょう」

 流石グレイズ団長の副官。起点の効く有能な副官のようだ。

 俺はレスターと共に、用意された小型の馬車に乗り込み、メルカス伯爵の屋敷へと向かった。

 連絡専用の馬車なのか、乗り心地は最悪だが、スピードだけは逸品だった。

 (長時間乗るのは…無理だ…)

 首や腰に衝撃がダイレクトに伝わる。
 馬車でのドリフトを初体験しながら、伯爵の屋敷に辿り着いた。
 
 屋敷のドアが開き、執事らしき男が現れた。直ぐにレスター副官に用向きを聞いた執事は、迷わず屋敷内へ俺達を招き入れた。

 レスターと執事の後に付いて、直接伯爵の執務室へ向かう。
 
 「メルカス様。急ぎの用事で御座います。ユーリヒ様からの書状を携えた冒険者が来られました」

 分厚いドアの向こうから"構わぬ、入れ"と言うメルカス伯爵の声が帰ってきた。
 執事がドアを開くと、執務室へレスターと共に俺は足を踏み入れたのだった。


 
 書状を読み進めるメルカスの表情が歪み、肩がわなわな震えだす様はまさにアニメそのままだった。

 (リアル人間の肩があんな動きするなんて…)
 
 伯爵がゆっくりとユーリヒからの書状を机に置く。
 
 「ユウジ殿。ユーリヒがサージュを出て、まだ余り日が経っておりませぬが…説明して貰えぬか?」

 確かにメルカス伯爵の疑問は当然だろう。
 マルガリ大坑道での経緯を簡単に説明し、大幅に日数を短縮出来た事を説明する。
 
 「……成る程…だが、その説明でもユウジ殿が儂の前に立っている説明に、ならんのでは無いか?」
 「個人が所有するユニークスキルは流石に……ですが、そのスキルを使い、今俺はこの場にいます」

 伯爵がゆっくりと頷く。

 「成る程……ユウジ殿はこの後どうするつもりかな?」
 
 メルカス伯爵の問に俺は答える。

 「モンタスへ戻り、他のメンバーと今後の事を話し合う予定です」
 
 俺の答えを聞いた伯爵は深く頷いた。

 「ユウジ殿、モンタスへ戻るならば一つユーリヒへの言付けを頼みたいのだが…」
 「構いませんが…」
 「かたじけない。書面にしたためる為、少し時間を頂けぬか?」

 俺は肯く。

 メルカスはレスターに向かい命令を発した。

 「レスター。サージュに居る全騎士団を引き連れ、マルガリへ進軍。グレイズと合流後、彼の指示に従え。合流前に敵と遭遇した場合、貴殿の裁量で部隊を動かせ」

 レスターは伯爵の勅命を復唱し執務室を後にした。

 伯爵は執務机の上に立ててあるペンで、ユーリヒへの書を認めてゆく。
 

 書き終えた羊皮紙を丸め、蝋で封をする。
 
 「この書状をユーリヒへ渡して欲しい」
 
 "分かりました"と伯爵の差し出した書状を受け取り、肩に掛けたバックに書状をおさめた。
 
 「…メルカス伯爵…失礼ですが、サージュに駐留する騎士団全軍をモンタスへ向かわせて大丈夫なんですか?」
 「サージュに住む者、シレミナ様やアネリア嬢はこの町の冒険者が守ってくれる…その様な冒険者を儂は好んで受け容れたからな…」

 成る程。確か王弟反乱が失敗した場合、王国の未来を担う者を育てる役割をメルカス伯爵は決心したそうだ。

 確かにサージュの町の住人は気持ちの良い人ばかりだ。荒くれ者と言われる冒険者でさえそうだ。

 「メルカス伯爵、モンタスへ戻ります」

 俺は館を後にしてサージュの町を出る。
 
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 俺は再び転移し、モンタスの門の前に立つ。
 遠くに何艘もの船影が見えている。間違いなくモンタスの街だ。
 
 (…さて、宿屋に向う前に、ユーリヒ様へ伯爵の書状を渡さないとな…)
 
 俺はモンタスの門を通り抜け、メーガン伯爵の舘を目指し歩き出した。



 宿屋の食堂で、ジャンとバロンドが酒を飲みながら料理をつまんでいる。
 
 「バロンド、お前どうするんだ?女房子供いるんだろ?サージュに戻るか?」
 「さて、どうするか……マーレ王国が侵攻してきたんじゃ、国が荒れるのは目に見えてるからなー」
 
 残っていた酒を飲み干しお代わりを頼むバロンド。
 
 「今回はザイルバーン王子が出てきたから本気度高いぜ?」
 「だな……前回のいざこざから四年…奴ら戦争好きなのか?」
 
 切り分けられた肉を口中に放り込み、酒で流し込みながらジャンは肩を竦める。
 
 「さあな?だが、この国の王だって似たようなもんだろ?」
 「……そりゃそうだな。マーレ王国の侵攻に備えるだけにしては、余りにも酷い税金だからな…」
 「ん!……おいおいすげーな…」

 ジャンの驚いた顔を見たバロンドは、その視線の先に顔を向ける…と、そこにはユウジの姿があった。
 ジャンとバロンドに気付いたのかユウジが声を掛けてきた。

 「ジャンさんバロンドさん、今戻りました。向こうで用事を頼まれたので先に領主館に寄ってきました」
 
 ユウジがキョロキョロと当たりを見渡す。

 「あれ?ロゼさんは?」

 ジャンは二階を指差す。

 「ロゼは二階で休んでるよ。話は後で良い、先にロゼの所へ行ってやれ」
 「…分かりました」
 
 そう言うとユウジは2階へ続く階段を登って行くのを見て、ジャンは溜息を吐いた。
 
 「なんと言うか……もう御伽話みたいな奴だなユウジは…」
 「ユウジ殿だけは敵に回したくないな…」
 
 バロンドが正直な感想を言う。

 「さて……」

 ジャンが空になっていた酒のお替りを頼む。
 マーレ王国、"血風"、ザイルバーン王子。考えなきゃならないことは色々あるが、今は酒と腹拵はらごしらえだろう。

 「バロンド、飲んで食おうぜ!」
 「当然だ!」

 ユウジとロゼが食堂へ降りてくるまで、二人は飲み食いし続けた。



 俺はそのドアをノックする。

 「……はい」
 「ロゼさん。今戻りました」

 部屋の中から"ガタン"と音がして、はやる足音が続きドアが開いた。
 大胆に俺に抱き着いて来たロゼさんの背中を優しくさする。
 
 「ジャンとバロンドが食堂にいるけど……まぁ少し待たせても良いか…」

 ロゼが何度も肯く。

 「ご苦労様でした。少し部屋で休んでユウジさん」
 
 そのままロゼの部屋に入り、俺は勧められるままベッドに横になる。

 「少し横になっていてね。今疲れがとれるお茶をいれますね」

 漢方薬的なものだろうか?

 「ああ、ありがとう。そうさせて貰うよ」

 俺は目を閉じゆったりとして待つ。
 何日も泊まってるわけでは無いがベッドからロゼさんの匂いがする。
 
 (……良いよな…女の匂いって) 

 完全にオヤジ的な思考だな……
 過去(前世?)の様々な女の記憶が蘇る。
 俺は首を回しロゼさんを見る。
 突然湧き上がる言葉にならない、強烈な感情を抑え込み目を閉じた。
 
 ーーーーーーーーーーーーーーーー

 俺とロゼさんはジャン達がいる一階の食堂へと向う。
 自分では気付かなかった疲れがあったのだろうか、ロゼさんが用意してくれたお茶を飲んだ後、気分も体調もスッキリしていた。

 階段を降りて食堂へ入ると、ジャンとバロンドが談笑しながら酒を飲んでいる。
 俺達に気付く二人。
 
 「おーい、早くこい。食いながら話そうや」

 ジャンが俺達に向かい手招きする。

 「相変わらずジャンはマイペースですね」
 「そうね。どんな状況でもジャンはジャンだから助かるわ」

 俺とロゼさんはジャンとバロンドが座るテーブルに向かい歩む。

 ああ、そうだ。何があろうと俺達は冒険者だ…飲んで食って、そして冒険をするだけだ。

 冒険者として。 
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