3 / 9
すなわちそれが傲慢
しおりを挟む
僕が柊燈火に渡されたのは魔女リリアの継承権と力、魔法についての知識の他にもう一つある人物の管理だった。
『かっかっか。よーきたのぅ蒼坊。んで今回の童女への貢ぎ物はなんじゃっ?』
『七都屋の羊羹と麦酒です。』
島の洞窟の奥深くに頑丈に作られた鉄柵越しに僕が会話するのは、赤いキャミソール姿の童女である。
彼女の足にはいかにもな拘束が施されており六、七歳の無垢な見た目と相極まって
なんだかとても危ない絵面になっていた。
彼女は香。
このままだと僕がアブノーマルなロリコンに思われそうなので言っておくと、彼女は人間ではない。
鬼...らしい。
実年齢も話を聞いただけじゃ30..いや40倍といった所か。
昔、この島の魔女リリアに退治されそれ以来監視対象となったらしい。
週に一回リリア本人、もしくは橋渡し役の管理者が様子を見に来なくてはならない。
『蒼坊。なぜあの女子をリリアにしなかったのじゃ?』
はぁ...
香には鬼眼という力があるらしくこの暗く深い洞窟から島全てが見えているらしい。
つまり...僕が真衣の要望に応えること無く、学校生活を半ば強制的にさせている事もお見通しってわけだ。
『そんな事をした所で...その女子を苦しめるだけなのではないのかや?』
それでも。
『それでも何も知らないで、人形の様に生きてリリアになられたくは無い。』
にぃっと香は左の口角を釣り上げて、まるで僕を試すかのように言った。
『それが傲慢じゃ。蒼坊の傲慢であの女子の妹は助からぬのじゃぞ。』
っ...
『何か...何か方法がある筈です。真衣に自分が不幸せだなんて思って欲しくない。ましてや人形だなんて。』
かっかっかと高笑いをした後に香は
『また一週間後に色々考えて来るがいい』
と一言残すのだった。
『あ、そうじゃ。蒼坊。ロリい年寄りの老婆心から一個教えてやろう。』
色々矛盾が凄いのだが。
『自分の身には気をつけろい。主に巫女にはのう。』
ある昼下がり。
『真衣。』
名前を呼んだ彼女は泣いていた。
自然と脈が早くなる。
泣き顔を見てしまったという罪悪感と、その美しさに。
『どうした。』
彼女が学校生活をし始めてからはや数週間。
最近はよく笑っていたのだが。
『やっぱりこのままじゃダメですよね。楽しいですこの生活。...でも私はリリアにならなきゃいけない。』
『...』
こいつには金がいる。
妹の為とか言っていたっけか...。
『今のままでいいじゃねーかよ。意地悪だったかもしれねえが、僕は真衣にだって楽しんでいてほしいんだ。』
別の方法を模索すれば...
『...気持ちはありがたい...です。でもそんな簡単な額じゃないんです。やっぱり私をリリアにして下さい。』
そんなの...あまりにも酷い。
スナック菓子や誰でも知っているような娯楽をこいつは知らない。
きっとリリアになれたとしても、妹の為にこいつの親はお金を使ってくれるのだろうか?
そんな気はしないんだよな。
『いくら必要なんだよ。』
『...国家予算ぐらいです。』
まじかよ。いや笑えねえって...
目が本気だし。信じたくねぇなぁ。
でもまあリリアになればそのくらい簡単に集まるっていうのもそうか。
真衣が俯いてしまう。
んん...なんでたかが高校生がこんな重荷背負ってるんだか。
そういえば燈火さんもそんな感じだったかな。
魔女に生まれてこなきゃよかったって缶ビール片手にしょっちゅう言ってたなぁ
『少年。もし魔女の運命に振り回されている奴がいたら、助けてやって欲しい。』
置き手紙にそんなふうにあった。
あの人は今頃、いったいどこで何をやってるんだか。
『真衣。』
もう1度名前を呼ぶ。
今度は俯く彼女をのぞき込むようにして声をかけた。
『この島には魔女伝説の他に、もう一つある伝説がある。』
彼女の妹について詳しくは聞くまい。そのうちに語ってくれるだろう。
『魔女の隠し遺産。通称残された魔法器』
これを、一緒に探して集めよう。
お金にするもよし。その中に妹さんを助けられるもの記憶保持の力があればそのまま使うもよし。
『信じるか信じないかは君次第だけど。』
彼女はゆっくりと顔をあげて、
『12月。12月末までに目標額、目標の物が見つからなかったら。きちんとリリアにすると約束して下さい。』
『きちんと学校生活を続けるっていう条件で約束する。』
ん。はい。わかりました。
という小さな返事には気持ちを整理したのだろう。小さながら覚悟が伺えた。
『へぇ。蒼介さん。残された魔法器を探すんですのね?』
大体の予想通りですわ。
そう呟いた人影は宙に浮いて僕らの背後であるそこに居た。
『魔法...ではない?なんでしょうこの感じ。蒼介君の知り合いですか?』
冷静に対応する真衣。
僕の知り合いで、一般常識を超えているのはあの人だけだ。
『君誰?』
申し遅れましたわ。そう言って来ていたローブを脱いだその者の姿にヒヤリとする。
『巫女...服。』
«神風よ魔女に天罰を。»
名乗ると思っていた僕らをあざ笑うかのように何かの呪文らしきものを呟いた。
『危ないっ!!!』
神社でお祓いをする時に振る白い紙のついた棒をその少女が振るった。
バチィンと甲高いなにか硬い物同士をぶつけたかのような嫌な音が響く。
『蒼介君!!!大丈夫ですかっ!?』
僕を心配する真衣の右手にはいくつか切り傷が出来ていて鈍く血が滲んでいた。
『魔法を使ったのか。』
一瞬だったけど真衣の右手周囲から透明な幾何学模様の薄い壁のような物が見えた 。
『魔法を使った戦闘なんて初めてでしたけど練習通りに出来ました。』
巫女姿の少女はいなくなっていた。
僕らの方針は決まった。
けれど代わりにとんでもない厄介事を抱えるハメになりそうだった。
~続く~
『かっかっか。よーきたのぅ蒼坊。んで今回の童女への貢ぎ物はなんじゃっ?』
『七都屋の羊羹と麦酒です。』
島の洞窟の奥深くに頑丈に作られた鉄柵越しに僕が会話するのは、赤いキャミソール姿の童女である。
彼女の足にはいかにもな拘束が施されており六、七歳の無垢な見た目と相極まって
なんだかとても危ない絵面になっていた。
彼女は香。
このままだと僕がアブノーマルなロリコンに思われそうなので言っておくと、彼女は人間ではない。
鬼...らしい。
実年齢も話を聞いただけじゃ30..いや40倍といった所か。
昔、この島の魔女リリアに退治されそれ以来監視対象となったらしい。
週に一回リリア本人、もしくは橋渡し役の管理者が様子を見に来なくてはならない。
『蒼坊。なぜあの女子をリリアにしなかったのじゃ?』
はぁ...
香には鬼眼という力があるらしくこの暗く深い洞窟から島全てが見えているらしい。
つまり...僕が真衣の要望に応えること無く、学校生活を半ば強制的にさせている事もお見通しってわけだ。
『そんな事をした所で...その女子を苦しめるだけなのではないのかや?』
それでも。
『それでも何も知らないで、人形の様に生きてリリアになられたくは無い。』
にぃっと香は左の口角を釣り上げて、まるで僕を試すかのように言った。
『それが傲慢じゃ。蒼坊の傲慢であの女子の妹は助からぬのじゃぞ。』
っ...
『何か...何か方法がある筈です。真衣に自分が不幸せだなんて思って欲しくない。ましてや人形だなんて。』
かっかっかと高笑いをした後に香は
『また一週間後に色々考えて来るがいい』
と一言残すのだった。
『あ、そうじゃ。蒼坊。ロリい年寄りの老婆心から一個教えてやろう。』
色々矛盾が凄いのだが。
『自分の身には気をつけろい。主に巫女にはのう。』
ある昼下がり。
『真衣。』
名前を呼んだ彼女は泣いていた。
自然と脈が早くなる。
泣き顔を見てしまったという罪悪感と、その美しさに。
『どうした。』
彼女が学校生活をし始めてからはや数週間。
最近はよく笑っていたのだが。
『やっぱりこのままじゃダメですよね。楽しいですこの生活。...でも私はリリアにならなきゃいけない。』
『...』
こいつには金がいる。
妹の為とか言っていたっけか...。
『今のままでいいじゃねーかよ。意地悪だったかもしれねえが、僕は真衣にだって楽しんでいてほしいんだ。』
別の方法を模索すれば...
『...気持ちはありがたい...です。でもそんな簡単な額じゃないんです。やっぱり私をリリアにして下さい。』
そんなの...あまりにも酷い。
スナック菓子や誰でも知っているような娯楽をこいつは知らない。
きっとリリアになれたとしても、妹の為にこいつの親はお金を使ってくれるのだろうか?
そんな気はしないんだよな。
『いくら必要なんだよ。』
『...国家予算ぐらいです。』
まじかよ。いや笑えねえって...
目が本気だし。信じたくねぇなぁ。
でもまあリリアになればそのくらい簡単に集まるっていうのもそうか。
真衣が俯いてしまう。
んん...なんでたかが高校生がこんな重荷背負ってるんだか。
そういえば燈火さんもそんな感じだったかな。
魔女に生まれてこなきゃよかったって缶ビール片手にしょっちゅう言ってたなぁ
『少年。もし魔女の運命に振り回されている奴がいたら、助けてやって欲しい。』
置き手紙にそんなふうにあった。
あの人は今頃、いったいどこで何をやってるんだか。
『真衣。』
もう1度名前を呼ぶ。
今度は俯く彼女をのぞき込むようにして声をかけた。
『この島には魔女伝説の他に、もう一つある伝説がある。』
彼女の妹について詳しくは聞くまい。そのうちに語ってくれるだろう。
『魔女の隠し遺産。通称残された魔法器』
これを、一緒に探して集めよう。
お金にするもよし。その中に妹さんを助けられるもの記憶保持の力があればそのまま使うもよし。
『信じるか信じないかは君次第だけど。』
彼女はゆっくりと顔をあげて、
『12月。12月末までに目標額、目標の物が見つからなかったら。きちんとリリアにすると約束して下さい。』
『きちんと学校生活を続けるっていう条件で約束する。』
ん。はい。わかりました。
という小さな返事には気持ちを整理したのだろう。小さながら覚悟が伺えた。
『へぇ。蒼介さん。残された魔法器を探すんですのね?』
大体の予想通りですわ。
そう呟いた人影は宙に浮いて僕らの背後であるそこに居た。
『魔法...ではない?なんでしょうこの感じ。蒼介君の知り合いですか?』
冷静に対応する真衣。
僕の知り合いで、一般常識を超えているのはあの人だけだ。
『君誰?』
申し遅れましたわ。そう言って来ていたローブを脱いだその者の姿にヒヤリとする。
『巫女...服。』
«神風よ魔女に天罰を。»
名乗ると思っていた僕らをあざ笑うかのように何かの呪文らしきものを呟いた。
『危ないっ!!!』
神社でお祓いをする時に振る白い紙のついた棒をその少女が振るった。
バチィンと甲高いなにか硬い物同士をぶつけたかのような嫌な音が響く。
『蒼介君!!!大丈夫ですかっ!?』
僕を心配する真衣の右手にはいくつか切り傷が出来ていて鈍く血が滲んでいた。
『魔法を使ったのか。』
一瞬だったけど真衣の右手周囲から透明な幾何学模様の薄い壁のような物が見えた 。
『魔法を使った戦闘なんて初めてでしたけど練習通りに出来ました。』
巫女姿の少女はいなくなっていた。
僕らの方針は決まった。
けれど代わりにとんでもない厄介事を抱えるハメになりそうだった。
~続く~
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
婚約者の幼馴染?それが何か?
仏白目
恋愛
タバサは学園で婚約者のリカルドと食堂で昼食をとっていた
「あ〜、リカルドここにいたの?もう、待っててっていったのにぃ〜」
目の前にいる私の事はガン無視である
「マリサ・・・これからはタバサと昼食は一緒にとるから、君は遠慮してくれないか?」
リカルドにそう言われたマリサは
「酷いわ!リカルド!私達あんなに愛し合っていたのに、私を捨てるの?」
ん?愛し合っていた?今聞き捨てならない言葉が・・・
「マリサ!誤解を招くような言い方はやめてくれ!僕たちは幼馴染ってだけだろう?」
「そんな!リカルド酷い!」
マリサはテーブルに突っ伏してワアワア泣き出した、およそ貴族令嬢とは思えない姿を晒している
この騒ぎ自体 とんだ恥晒しだわ
タバサは席を立ち 冷めた目でリカルドを見ると、「この事は父に相談します、お先に失礼しますわ」
「まってくれタバサ!誤解なんだ」
リカルドを置いて、タバサは席を立った
遡ったのは君だけじゃない。離縁状を置いて出ていった妻ーー始まりは、そこからだった。
沼野 花
恋愛
私は、夫にも子供にも選ばれなかった。
その事実だけを抱え、離縁を突きつけ、家を出た。
そこで待っていたのは、最悪の出来事――
けれど同時に、人生の扉がひらく瞬間でもあった。
夫は愛人と共に好きに生きればいい。
今さら「本当に愛していたのは君だ」と言われても、裏切ったあなたを許すことはできない。
でも、子供たちの心だけは、必ず取り戻す。
妻にも母にもなれなかった伯爵夫人イネス。
過去を悔いながらも、愛を手に入れることを決めた彼女が辿り着いた先には――
クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?
青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。
最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。
普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた?
しかも弱いからと森に捨てられた。
いやちょっとまてよ?
皆さん勘違いしてません?
これはあいの不思議な日常を書いた物語である。
本編完結しました!
相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです!
1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…
冷遇妃マリアベルの監視報告書
Mag_Mel
ファンタジー
シルフィード王国に敗戦国ソラリから献上されたのは、"太陽の姫"と讃えられた妹ではなく、悪女と噂される姉、マリアベル。
第一王子の四番目の妃として迎えられた彼女は、王宮の片隅に追いやられ、嘲笑と陰湿な仕打ちに晒され続けていた。
そんな折、「王家の影」は第三王子セドリックよりマリアベルの監視業務を命じられる。年若い影が記す報告書には、ただ静かに耐え続け、死を待つかのように振舞うひとりの女の姿があった。
王位継承争いと策謀が渦巻く王宮で、冷遇妃の運命は思わぬ方向へと狂い始める――。
(小説家になろう様にも投稿しています)
サレ妻の娘なので、母の敵にざまぁします
二階堂まりい
大衆娯楽
大衆娯楽部門最高記録1位!
※この物語はフィクションです
流行のサレ妻ものを眺めていて、私ならどうする? と思ったので、短編でしたためてみました。
当方未婚なので、妻目線ではなく娘目線で失礼します。
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
