孤島のリリア

無垢 れあ

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すなわちそれが傲慢

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僕が柊燈火に渡されたのは魔女リリアの継承権と力、魔法についての知識の他にもう一つある人物の管理だった。

『かっかっか。よーきたのぅ蒼坊。んで今回の童女わらわへの貢ぎ物はなんじゃっ?』
『七都屋の羊羹と麦酒です。』
島の洞窟の奥深くに頑丈に作られた鉄柵越しに僕が会話するのは、赤いキャミソール姿の童女である。
彼女の足にはいかにもな拘束が施されており六、七歳の無垢な見た目と相極まって
なんだかとても危ない絵面になっていた。
彼女はこう
このままだと僕がアブノーマルなロリコンに思われそうなので言っておくと、彼女は人間ではない。
鬼...らしい。
実年齢も話を聞いただけじゃ30..いや40倍といった所か。
昔、この島の魔女リリアに退治されそれ以来監視対象となったらしい。
週に一回リリア本人、もしくは橋渡し役の管理者が様子を見に来なくてはならない。
『蒼坊。なぜあの女子おなごをリリアにしなかったのじゃ?』
はぁ...
香には鬼眼という力があるらしくこの暗く深い洞窟から島全てが見えているらしい。
つまり...僕が真衣の要望に応えること無く、学校生活を半ば強制的にさせている事もお見通しってわけだ。
『そんな事をした所で...その女子を苦しめるだけなのではないのかや?』
それでも。
『それでも何も知らないで、人形の様に生きてリリアになられたくは無い。』
にぃっと香は左の口角を釣り上げて、まるで僕を試すかのように言った。
『それが傲慢じゃ。蒼坊の傲慢であの女子の妹は助からぬのじゃぞ。』
っ...
『何か...何か方法がある筈です。真衣に自分が不幸せだなんて思って欲しくない。ましてや人形だなんて。』
かっかっかと高笑いをした後に香は
『また一週間後に色々考えて来るがいい』
と一言残すのだった。

『あ、そうじゃ。蒼坊。ロリい年寄りの老婆心から一個教えてやろう。』
色々矛盾が凄いのだが。

『自分の身には気をつけろい。主に巫女にはのう。』




ある昼下がり。

『真衣。』
名前を呼んだ彼女は泣いていた。


自然と脈が早くなる。
泣き顔を見てしまったという罪悪感と、その美しさに。
『どうした。』
彼女が学校生活をし始めてからはや数週間。
最近はよく笑っていたのだが。
『やっぱりこのままじゃダメですよね。楽しいですこの生活。...でも私はリリアにならなきゃいけない。』
『...』
こいつには金がいる。
妹の為とか言っていたっけか...。
『今のままでいいじゃねーかよ。意地悪だったかもしれねえが、僕は真衣にだって楽しんでいてほしいんだ。』
別の方法を模索すれば...
『...気持ちはありがたい...です。でもそんな簡単な額じゃないんです。やっぱり私をリリアにして下さい。』
そんなの...あまりにも酷い。
スナック菓子や誰でも知っているような娯楽をこいつは知らない。
きっとリリアになれたとしても、妹の為にこいつの親はお金を使ってくれるのだろうか?
そんな気はしないんだよな。
『いくら必要なんだよ。』
『...国家予算ぐらいです。』
まじかよ。いや笑えねえって...
目が本気だし。信じたくねぇなぁ。

でもまあリリアになれば簡単に集まるっていうのもそうか。
真衣が俯いてしまう。
んん...なんでたかが高校生がこんな重荷背負ってるんだか。
そういえば燈火さんもそんな感じだったかな。
魔女に生まれてこなきゃよかったって缶ビール片手にしょっちゅう言ってたなぁ
『少年。もし魔女の運命に振り回されている奴がいたら、助けてやって欲しい。』
置き手紙にそんなふうにあった。
あの人は今頃、いったいどこで何をやってるんだか。
『真衣。』
もう1度名前を呼ぶ。
今度は俯く彼女をのぞき込むようにして声をかけた。
『この島には魔女伝説の他に、もう一つある伝説がある。』
彼女の妹について詳しくは聞くまい。そのうちに語ってくれるだろう。
『魔女の隠し遺産。通称残された魔法器レコードズ・マジカ
これを、一緒に探して集めよう。
お金にするもよし。その中に妹さんを助けられるもの記憶保持の力があればそのまま使うもよし。
『信じるか信じないかは君次第だけど。』
彼女はゆっくりと顔をあげて、
『12月。12月末までに目標額、目標の物が見つからなかったら。きちんとリリアにすると約束して下さい。』
『きちんと学校生活を続けるっていう条件で約束する。』
ん。はい。わかりました。
という小さな返事には気持ちを整理したのだろう。小さながら覚悟が伺えた。

『へぇ。蒼介さん。残された魔法器レコードズ・マジカを探すんですのね?』
大体の予想通りですわ。
そう呟いた人影は宙に浮いて僕らの背後であるそこに居た。
『魔法...ではない?なんでしょうこの感じ。蒼介君の知り合いですか?』
冷静に対応する真衣。
僕の知り合いで、一般常識を超えているのはあの人燈火さんだけだ。
『君誰?』
申し遅れましたわ。そう言って来ていたローブを脱いだその者の姿にヒヤリとする。



『巫女...服。』
«神風よ魔女に天罰を。»
名乗ると思っていた僕らをあざ笑うかのように何かの呪文らしきものを呟いた。
『危ないっ!!!』
神社でお祓いをする時に振る白い紙のついた棒をその少女が振るった。
バチィンと甲高いなにか硬い物同士をぶつけたかのような嫌な音が響く。
『蒼介君!!!大丈夫ですかっ!?』
僕を心配する真衣の右手にはいくつか切り傷が出来ていて鈍く血が滲んでいた。
『魔法を使ったのか。』
一瞬だったけど真衣の右手周囲から透明な幾何学模様の薄い壁のような物が見えた 。
『魔法を使った戦闘なんて初めてでしたけど練習通りに出来ました。』
巫女姿の少女はいなくなっていた。

僕らの方針は決まった。
けれど代わりにとんでもない厄介事を抱えるハメになりそうだった。


~続く~
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