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いざ宝探しへ。
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時計を見ると、おおよそ1日が終わる時間であったが
僕は構わず、椛に電話をかけた。
「あれ?先輩じゃないですか。珍しいですねぇ。」
すぐに出た椛だが、にやにやしてるのが電話越しでも分かる。
多分僕が電話をかけて来ると読んでいたのだろう。
まあ、既に寝ていなかったことだけは幸いだった。
それともそれも計算の内なのかも。
「可愛い後輩の声が聞きたくなったんですかぁ?」
断じてそんなことは無い。
メールで魔女の遺産について知っている事を教えてくれると言っていた彼女から一向にメールが来ないので、
電話をかけた次第であった。
「んで。お前は何を知ってるんだ?」
椛のくだらない戯れ言はスルーして話を続ける。
そう急かさないでくださいよ。と少しばかり真面目なトーンで言うものだからこちらの調子が狂ってしまう。
「聞く前にひとつ僕様ちゃんと約束、と言うかお願いが。」
なんだ。パフェでも奢らせられるのだろうか?
「じゃあお願いです。復唱して下さい。椛、大好きだ。愛してる、結婚し...」
「断る。」
まだ最後まで言ってませんけどぉおおお!?
スピーカーの奥から抗議が聞こえる。
「いいじゃないですか!減るもんでも無いんですし!」
減るわ。主に僕のメンタルとプライドが。
いいから言って下さいよ!言わないと教えませんよ?
言うだけでいいんですよ!?
はぁ...全くこいつは。
「えー。あー。椛大好きだ愛してる結婚してくれ。」
これでいいか?できる限り棒読みにしてやったぜ。へへ。
「ありがといございます!言質頂きましたぁ後で悪用しますね。」
是非やめて頂きたい次第である。
「んで本題に入ってくれないか?」
「はいはい。おーけーですよ先輩。お話しましょう。」
そして彼女は話始める。この島の裏側の話を。
「こっからはながぁーいながぁーい解説パートなんで...」
電話を耳に挟み、愛しき人と話す彼女の口角が少し上がった。
「香...。元気にしてる?」
暗い洞窟の中。
響いた声と人影をみて、
目を見開いた鬼は驚きとほんのちょっとの幸福感を含めて言い返す。
「お前さんみたいにくたばってられないからのぉ。くっくっ」
レザージャケットにジーンズ姿の人影はそっとタバコに火を付けた。
「お前さん蒼坊には会いに行ったのかや?」
「はっ。少年には会えないよ。怒鳴られちまうからな。」
くっくっくと童姿の鬼の甲高い笑いは止むことは無い。
パチンっと指を鳴らす人影。
その瞬間に、香を縛っていた見えない鎖と檻の障壁がパラパラっと音を立てて崩れた。
「...何のつもりじゃ?」
鬼は眉を寄せる。
「香。あいつらを助けてやってくれ。」
優しい声でそう言うとその人影は静かに消えた。
『島の北方。天見川の上流。そこにある洞窟に入って、右手に扉。そこを潜るとある魔女の隠れ家に着く。あくまで噂ですけどね。今まで帰ってきた人は居ないって言われてます。』
天見川の下流。数日前に椛への例の電話で聞いた情報を頭の中で整理する。
今日はこれから、調査に向かうのだ。
「なんか...ちょっとワクワクします。あっ...ふざけてませんよ?」
真衣はそんなふうに言って上流にゆっくりと向かい歩き始めた。
「妹、私なんかより凄腕の魔女だったんです。」
歩き始めてから数時間。真衣が唐突に話を始めた。
「修復魔法や高速移動。浮遊。絵本に出てくるような高度な魔法がとっても上手で...」
なにかあいずちを入れるか迷ったのだったが、
ここは黙って,黙って聞いてやることにしよう。
止まらずに、歩きながらも真衣はちょっとずつ話を続ける。
「魔法を使うには外気にある魔素を体内に取り入れて、変換する機能があり、魔素の通り道である魔懐路が無くてはいけません。私達魔女は生まれつきこれを持っています。」
知っている。これが無いから一般人は魔法が使えない。
「...妹はこの器官に障害を持ったんです。突然。」
なるほどな。そりゃぁ普通の病院じゃ治せないわけだ。
お金がかかるって言うのも、魔女専門の医者でなくてはならない。
「命に別状はそれほどないんですけど...」
僕は真衣の手を握った。
それに驚いた表情が少し赤くなっていた。
「ま、なにか見つかるといいな。」
真衣はにっこり笑って、ですね。と返した。
上流に近づくほど、水の音が大きくなっていく。
洞窟が...見えた。
「蒼の兄貴、俺が今回の護衛だ。んまあよろしくな。」
洞窟の前に、居たのは金髪で目つきが悪い男だった。
シルバーのネックレスとピアスをつけた彼は、
僕に、僕らにとって、心強い味方である。
「和さんか。ていうかいちいち護衛とかほんと要らないんで。」
それを聞いて、
ちっと舌打ちをして、あのなぁとつぶやき寄ってくる彼。
「俺ら【夕闇の魔女教】は、蒼の兄貴とリリアとその候補の魔女を守るのが指名だってんだろ。」
真衣はきょとんとしている。
それもそうか。
まあ、端的に言うとこの島の魔女信者の一員なのだ彼は。
ヤンキーっぽいのにね。ヤンキーっぽいのに。
しかも幹部クラス。はぁ...まあ頼りには凄いなるんだけど。
「洞窟は軽く成海の姉御が調査済みだとよ。」
ある幹部の女性の名前を彼はあげた。
彼女も来ているのか...。
和さんと話をしていると
「と...とりあえず行きませんか?」
と真衣が提案、そーっすな、魔女様。と和さんが答えていた。
確かに入口でぐずぐずする必要も無い。
ブラックボックスである洞窟は怖いが、虎穴に入らずんば虎子を得ず。だ。
つまりまあ、何はともあれ。
「攻略開始ってことだな...」
気を引き締めていこう。
僕らは暗い闇の穴に吸い込まれていった。
この後に
何が起こるのかも、何が変わるのかも。
何も感じることもなく。なんの理解も無く。
この時の僕らは足を踏み入れた。
続く。
僕は構わず、椛に電話をかけた。
「あれ?先輩じゃないですか。珍しいですねぇ。」
すぐに出た椛だが、にやにやしてるのが電話越しでも分かる。
多分僕が電話をかけて来ると読んでいたのだろう。
まあ、既に寝ていなかったことだけは幸いだった。
それともそれも計算の内なのかも。
「可愛い後輩の声が聞きたくなったんですかぁ?」
断じてそんなことは無い。
メールで魔女の遺産について知っている事を教えてくれると言っていた彼女から一向にメールが来ないので、
電話をかけた次第であった。
「んで。お前は何を知ってるんだ?」
椛のくだらない戯れ言はスルーして話を続ける。
そう急かさないでくださいよ。と少しばかり真面目なトーンで言うものだからこちらの調子が狂ってしまう。
「聞く前にひとつ僕様ちゃんと約束、と言うかお願いが。」
なんだ。パフェでも奢らせられるのだろうか?
「じゃあお願いです。復唱して下さい。椛、大好きだ。愛してる、結婚し...」
「断る。」
まだ最後まで言ってませんけどぉおおお!?
スピーカーの奥から抗議が聞こえる。
「いいじゃないですか!減るもんでも無いんですし!」
減るわ。主に僕のメンタルとプライドが。
いいから言って下さいよ!言わないと教えませんよ?
言うだけでいいんですよ!?
はぁ...全くこいつは。
「えー。あー。椛大好きだ愛してる結婚してくれ。」
これでいいか?できる限り棒読みにしてやったぜ。へへ。
「ありがといございます!言質頂きましたぁ後で悪用しますね。」
是非やめて頂きたい次第である。
「んで本題に入ってくれないか?」
「はいはい。おーけーですよ先輩。お話しましょう。」
そして彼女は話始める。この島の裏側の話を。
「こっからはながぁーいながぁーい解説パートなんで...」
電話を耳に挟み、愛しき人と話す彼女の口角が少し上がった。
「香...。元気にしてる?」
暗い洞窟の中。
響いた声と人影をみて、
目を見開いた鬼は驚きとほんのちょっとの幸福感を含めて言い返す。
「お前さんみたいにくたばってられないからのぉ。くっくっ」
レザージャケットにジーンズ姿の人影はそっとタバコに火を付けた。
「お前さん蒼坊には会いに行ったのかや?」
「はっ。少年には会えないよ。怒鳴られちまうからな。」
くっくっくと童姿の鬼の甲高い笑いは止むことは無い。
パチンっと指を鳴らす人影。
その瞬間に、香を縛っていた見えない鎖と檻の障壁がパラパラっと音を立てて崩れた。
「...何のつもりじゃ?」
鬼は眉を寄せる。
「香。あいつらを助けてやってくれ。」
優しい声でそう言うとその人影は静かに消えた。
『島の北方。天見川の上流。そこにある洞窟に入って、右手に扉。そこを潜るとある魔女の隠れ家に着く。あくまで噂ですけどね。今まで帰ってきた人は居ないって言われてます。』
天見川の下流。数日前に椛への例の電話で聞いた情報を頭の中で整理する。
今日はこれから、調査に向かうのだ。
「なんか...ちょっとワクワクします。あっ...ふざけてませんよ?」
真衣はそんなふうに言って上流にゆっくりと向かい歩き始めた。
「妹、私なんかより凄腕の魔女だったんです。」
歩き始めてから数時間。真衣が唐突に話を始めた。
「修復魔法や高速移動。浮遊。絵本に出てくるような高度な魔法がとっても上手で...」
なにかあいずちを入れるか迷ったのだったが、
ここは黙って,黙って聞いてやることにしよう。
止まらずに、歩きながらも真衣はちょっとずつ話を続ける。
「魔法を使うには外気にある魔素を体内に取り入れて、変換する機能があり、魔素の通り道である魔懐路が無くてはいけません。私達魔女は生まれつきこれを持っています。」
知っている。これが無いから一般人は魔法が使えない。
「...妹はこの器官に障害を持ったんです。突然。」
なるほどな。そりゃぁ普通の病院じゃ治せないわけだ。
お金がかかるって言うのも、魔女専門の医者でなくてはならない。
「命に別状はそれほどないんですけど...」
僕は真衣の手を握った。
それに驚いた表情が少し赤くなっていた。
「ま、なにか見つかるといいな。」
真衣はにっこり笑って、ですね。と返した。
上流に近づくほど、水の音が大きくなっていく。
洞窟が...見えた。
「蒼の兄貴、俺が今回の護衛だ。んまあよろしくな。」
洞窟の前に、居たのは金髪で目つきが悪い男だった。
シルバーのネックレスとピアスをつけた彼は、
僕に、僕らにとって、心強い味方である。
「和さんか。ていうかいちいち護衛とかほんと要らないんで。」
それを聞いて、
ちっと舌打ちをして、あのなぁとつぶやき寄ってくる彼。
「俺ら【夕闇の魔女教】は、蒼の兄貴とリリアとその候補の魔女を守るのが指名だってんだろ。」
真衣はきょとんとしている。
それもそうか。
まあ、端的に言うとこの島の魔女信者の一員なのだ彼は。
ヤンキーっぽいのにね。ヤンキーっぽいのに。
しかも幹部クラス。はぁ...まあ頼りには凄いなるんだけど。
「洞窟は軽く成海の姉御が調査済みだとよ。」
ある幹部の女性の名前を彼はあげた。
彼女も来ているのか...。
和さんと話をしていると
「と...とりあえず行きませんか?」
と真衣が提案、そーっすな、魔女様。と和さんが答えていた。
確かに入口でぐずぐずする必要も無い。
ブラックボックスである洞窟は怖いが、虎穴に入らずんば虎子を得ず。だ。
つまりまあ、何はともあれ。
「攻略開始ってことだな...」
気を引き締めていこう。
僕らは暗い闇の穴に吸い込まれていった。
この後に
何が起こるのかも、何が変わるのかも。
何も感じることもなく。なんの理解も無く。
この時の僕らは足を踏み入れた。
続く。
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