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洞窟の中は想像以上に暗かった。
小さな懐中電灯を頼りに僕ら三人は水脈に沿って奥へ進んでいくことになった。
先頭を和さんが、続いて真衣、そして僕。
慎重に、ある程度進むと岩陰にくすんだ扉があった。
どうやらここから先が魔女の領域。
僕は生唾を飲み込んで、扉に手を掛けた和さんを見つめていた。
町の商店街を歩く一人の少女。椛。
「残された魔法器、レコーズ・マジカ。この島の大いなる究極の神秘。それに触れることがどれだけ危険かあなたは理解していません先輩。」
彼女は一人そうつぶやいた。
きっと今頃洞窟の中でしょうか。悲しそうな顔をして空を見る彼女。
「でもまあ。案外悪いことばかりじゃないかも知れないっすねぇ。私は。ですが」
彼女はスキップをしながら町を歩くのであったが、誰も彼女の本心を見抜けるものは
いないようだった。
其れもそのはず。椛本人が自分の本心を見失っているのだから…。
階段。
扉の向こうにあったのは階段であった。
ずっと奥深くまで伸びる石階段を僕らはただ降りていた。
「なあ蒼の兄貴。今どれぐらい時間がたった?」
「えっと…30分弱ですかね。」
「さすがにおかしくねえか?」
和さんが言うとおりだ。
まるでずっと無駄足を踏んでいるような。
暗いなか小さい光と壁に触れている手だけを頼りにここまで来たが…
ん?壁… もしかして。
「真衣。手を握っていてくれ。離すなよ。」
「ふぇっ。」
真衣の手を握り僕は手をついている、壁のある左側とは反対。
つまり足を滑らしたら奈落の底へヒモなしバンジーする羽目になる右側へ足を向けた。
「危ないよっ」という真衣の手をより強く握って踏み出す。
あぁ。いや怖。というかすごく暗いし。
そして階段の右端までいって手を伸ばした。
すかっと手は宙を切ったが、すぐに階段をひとつ下りてもう一段、もう一段と同じ行為をくりかえした。
そしてその行為を始めて13段目にしてやっとその手が冷たい何かに触れた。
「扉。」
和さんがそういったので僕はうなずいてその扉をあけてもらうように頼んだ。
「悪い。ずっと手、握っていたわ。」
そういって手を離したが、真衣はううん。大丈夫です。と答えて和さんのそばに
歩み寄っていった。
真衣は顔が赤くなっていなかったか心配で仕方なかったが、蒼介はそんなことに
気づきもしなかった。
真衣は明らかな恋心を少しずつではあるが蒼介に抱いていた。
リリアになったら記憶と思いが消えてしまうのは今でも理解している。
だが、真衣は、自分はリリアにならない気がするのだ。
この探索が終わったら蒼介とどこか島の外に行こうと思ったのだった。
扉を開けると階段はバラバラと音を立てて崩れていった。
そして広い研究室のような部屋があらわれたのだった。
そこに並ぶ書物には、多様な言語で魔道について書かれたものだった。
なんだか違和感を覚えつつも奥へと進むことにした。
「俺はここで見張をする。ここから先は二人で。」
和さんはそういって奥の部屋前で止まった。
そして僕らは一番奥の部屋へ入るのだった。
その部屋は何も置いていなくて。
ただ一番奥に大きな箱だけがポツリ。
そしてそこには巫女服の女が立っていた。
「遅かったじゃないですかぁ。わたくし。待ち飽きてしまいましたわ。」
そう。こいつ。いやこいつらが椛の言っていた・・・
「組織リベリオン。」
「あら。わたくし達のファンだったりするのですか蒼介さん。」
妖艶な笑みを彼女は見せるが狐面をしていて顔を見ることは出来ない。
「あなたは一体誰ですか。」
真衣が尋ねる。
「魔女は嫌いなの。わたくしは蒼介さんに用があるのです。」
ぴりっと危険な空気が漂う。
「俺からも聞く。あんた名前は。」
「黒亜です。どうぞ黒亜と呼び捨てにしてくださいまし。」
あっさりと答えやがった。
「何が目的だ。」
「蒼介さんを連れて行くことですわ。」
黒亜が右手を振り下ろす。
其れと同時に強風が真衣だけを襲う。
魔法で真衣は身を守る。
黒亜はその間に蒼介に近づいてぎゅっと蒼介を抱きしめた。
「な、何を…」
「いま目障りな魔女をけして差し上げます。」
そういうと彼女の背後から黒い影が伸びて。
真衣を一突きに貫いた。
赤い血が飛び散り、蒼介のほほを濡らし、黒亜の仮面を赤く染めた。
「真衣っ!!!!!」
「あらぁ。よそ見はいけませんのでしてよ?」
ぎゅっと強く、強く蒼介を抱きしめる。
「離せっ黒亜ぁあああ!!」
悲痛な叫びが響く。
にっこりとそれはもううれしそうに抱きしめる黒亜の無垢さは完全な狂気の域だった。
「蒼坊から離れろ。餓鬼。」
ぽんっと置かれた小さな手で黒亜と蒼介を引き離したのはキャミソール姿の童女
鬼にしてこの島最強の元島の主。
香であった。
「これは…厄介です。しかたないのでまたお会いしましょう蒼介さん。」
黒亜はするっと細い香の腕を抜けて消えてしまった。
残ったのはただの絶望だけだった。
「蒼坊。その娘を助けるには…」
「ああ。リリアに今すぐしろっていうんだろ。だけどそれはだめなんだ。しちゃいけないんだ。」
「もうひとつだけ。手段がある。」
「わらわの血を分け与える。そうすれば今なら生き返る。」
「なら早くそれを!」
「だが…それは________ということになる。」
「・・・分かった。それは僕がなんとかする。」
「だから真衣を助けてくれ。香さん。」
それから一月~
「ちょっとは…慣れてきたか?」
「うん。ありがとう蒼君。この体も慣れたよ。」
真衣の髪と目は薄い青になっていた。
「だいぶ髪。長くなったな。」
真衣は。人ではなくなってしまった。
続く。
小さな懐中電灯を頼りに僕ら三人は水脈に沿って奥へ進んでいくことになった。
先頭を和さんが、続いて真衣、そして僕。
慎重に、ある程度進むと岩陰にくすんだ扉があった。
どうやらここから先が魔女の領域。
僕は生唾を飲み込んで、扉に手を掛けた和さんを見つめていた。
町の商店街を歩く一人の少女。椛。
「残された魔法器、レコーズ・マジカ。この島の大いなる究極の神秘。それに触れることがどれだけ危険かあなたは理解していません先輩。」
彼女は一人そうつぶやいた。
きっと今頃洞窟の中でしょうか。悲しそうな顔をして空を見る彼女。
「でもまあ。案外悪いことばかりじゃないかも知れないっすねぇ。私は。ですが」
彼女はスキップをしながら町を歩くのであったが、誰も彼女の本心を見抜けるものは
いないようだった。
其れもそのはず。椛本人が自分の本心を見失っているのだから…。
階段。
扉の向こうにあったのは階段であった。
ずっと奥深くまで伸びる石階段を僕らはただ降りていた。
「なあ蒼の兄貴。今どれぐらい時間がたった?」
「えっと…30分弱ですかね。」
「さすがにおかしくねえか?」
和さんが言うとおりだ。
まるでずっと無駄足を踏んでいるような。
暗いなか小さい光と壁に触れている手だけを頼りにここまで来たが…
ん?壁… もしかして。
「真衣。手を握っていてくれ。離すなよ。」
「ふぇっ。」
真衣の手を握り僕は手をついている、壁のある左側とは反対。
つまり足を滑らしたら奈落の底へヒモなしバンジーする羽目になる右側へ足を向けた。
「危ないよっ」という真衣の手をより強く握って踏み出す。
あぁ。いや怖。というかすごく暗いし。
そして階段の右端までいって手を伸ばした。
すかっと手は宙を切ったが、すぐに階段をひとつ下りてもう一段、もう一段と同じ行為をくりかえした。
そしてその行為を始めて13段目にしてやっとその手が冷たい何かに触れた。
「扉。」
和さんがそういったので僕はうなずいてその扉をあけてもらうように頼んだ。
「悪い。ずっと手、握っていたわ。」
そういって手を離したが、真衣はううん。大丈夫です。と答えて和さんのそばに
歩み寄っていった。
真衣は顔が赤くなっていなかったか心配で仕方なかったが、蒼介はそんなことに
気づきもしなかった。
真衣は明らかな恋心を少しずつではあるが蒼介に抱いていた。
リリアになったら記憶と思いが消えてしまうのは今でも理解している。
だが、真衣は、自分はリリアにならない気がするのだ。
この探索が終わったら蒼介とどこか島の外に行こうと思ったのだった。
扉を開けると階段はバラバラと音を立てて崩れていった。
そして広い研究室のような部屋があらわれたのだった。
そこに並ぶ書物には、多様な言語で魔道について書かれたものだった。
なんだか違和感を覚えつつも奥へと進むことにした。
「俺はここで見張をする。ここから先は二人で。」
和さんはそういって奥の部屋前で止まった。
そして僕らは一番奥の部屋へ入るのだった。
その部屋は何も置いていなくて。
ただ一番奥に大きな箱だけがポツリ。
そしてそこには巫女服の女が立っていた。
「遅かったじゃないですかぁ。わたくし。待ち飽きてしまいましたわ。」
そう。こいつ。いやこいつらが椛の言っていた・・・
「組織リベリオン。」
「あら。わたくし達のファンだったりするのですか蒼介さん。」
妖艶な笑みを彼女は見せるが狐面をしていて顔を見ることは出来ない。
「あなたは一体誰ですか。」
真衣が尋ねる。
「魔女は嫌いなの。わたくしは蒼介さんに用があるのです。」
ぴりっと危険な空気が漂う。
「俺からも聞く。あんた名前は。」
「黒亜です。どうぞ黒亜と呼び捨てにしてくださいまし。」
あっさりと答えやがった。
「何が目的だ。」
「蒼介さんを連れて行くことですわ。」
黒亜が右手を振り下ろす。
其れと同時に強風が真衣だけを襲う。
魔法で真衣は身を守る。
黒亜はその間に蒼介に近づいてぎゅっと蒼介を抱きしめた。
「な、何を…」
「いま目障りな魔女をけして差し上げます。」
そういうと彼女の背後から黒い影が伸びて。
真衣を一突きに貫いた。
赤い血が飛び散り、蒼介のほほを濡らし、黒亜の仮面を赤く染めた。
「真衣っ!!!!!」
「あらぁ。よそ見はいけませんのでしてよ?」
ぎゅっと強く、強く蒼介を抱きしめる。
「離せっ黒亜ぁあああ!!」
悲痛な叫びが響く。
にっこりとそれはもううれしそうに抱きしめる黒亜の無垢さは完全な狂気の域だった。
「蒼坊から離れろ。餓鬼。」
ぽんっと置かれた小さな手で黒亜と蒼介を引き離したのはキャミソール姿の童女
鬼にしてこの島最強の元島の主。
香であった。
「これは…厄介です。しかたないのでまたお会いしましょう蒼介さん。」
黒亜はするっと細い香の腕を抜けて消えてしまった。
残ったのはただの絶望だけだった。
「蒼坊。その娘を助けるには…」
「ああ。リリアに今すぐしろっていうんだろ。だけどそれはだめなんだ。しちゃいけないんだ。」
「もうひとつだけ。手段がある。」
「わらわの血を分け与える。そうすれば今なら生き返る。」
「なら早くそれを!」
「だが…それは________ということになる。」
「・・・分かった。それは僕がなんとかする。」
「だから真衣を助けてくれ。香さん。」
それから一月~
「ちょっとは…慣れてきたか?」
「うん。ありがとう蒼君。この体も慣れたよ。」
真衣の髪と目は薄い青になっていた。
「だいぶ髪。長くなったな。」
真衣は。人ではなくなってしまった。
続く。
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