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23.シャム=グレイシャル(2)
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シャム=グレイシャルは見た目は普通の女性と変わらない筋力量であったが、成人男性3人分の荷物を一人で運ぶほど力が強く、そして、収穫した作物のほとんどを握りつぶすほど不器用だった。そんな彼女は常に畏怖の目にさらされており、彼女が何かするたびに人々は怯えた。そしてそれはシャムの家族も一緒だった。
シャムは誰よりも愛に飢えていた。家族に愛して欲しかった。そんな彼女は『渡り鳥』の様に依頼を受け、魔物を討伐すれば莫大な収入を得て、家族の愛が得られると考えた。……しかし、結果は惨敗だった。彼女は人並外れた膂力を持っていたが、彼女の攻撃は敵には一切当たらなかった。闘い方を教えてくれる人はいなかったので、ひたすら自己流で斧を振った。しかし、結果は変わらなかった。
途方に暮れた彼女が見たのは闘技場のチラシだった。闘技場ではファイトマネーが支払われる。つまり負けても生きていればお金は貰うことが出来るのだ。魔物に負け続けた彼女だったが、生き残り続けたのはその並外れた強靭な肉体があったからである。それに気が付いた彼女は闘技場で戦い続けた。『大旋風』などと揶揄されながらも彼女は必死にお金を稼ぎ、家族の元に物資を運び続けた。
これには家族も喜んでくれた。家に帰る度に、父親も母親も兄弟も今まで見せてくれなかったような笑顔を見せてくれた。シャムはそれだけで幸せだった。3カ月間闘技場で戦い1週間だけ家で過ごした後、また闘技場で戦い続ける。そんな日々が続いたある日、母親が不自然な笑顔でシャムに行った。
「家にいても暇だろう? そろそろ闘技場に行ったらどうだい?」
まだ家に帰って来て3日目だった。彼女は気づいてしまった。
(必要なのは私じゃない。私が持ってくる物なんだ)
シャムは家族に愛されたくてがむしゃらに戦っていた。観衆になんと揶揄されようとかまわなかった。戦った相手に唾を吹きかけられようとも彼女は耐えた。だが、この事実を知った瞬間、彼女の心は瓦解していた。心が瓦解した後に彼女がとった行動……それは、闘技場で戦い、家族に物資を運び続けることだった。人はいつもの生活から自ら環境を変えるためには莫大な心の力が必要となる。彼女にその心の力は残されていなかった。
(もうこれで……終わりにするはずだったんだけどねえ)
シャムが3カ月かけて稼いだ金を会ったばかりの2人組の『渡り鳥』が貸してくれた。それもシャムの気を引くために。そんな経験はシャムにとって初めてだった。一番身近にいた家族も、思春期に恋した青年も、村の娘達も、周囲の全ての者たちが彼女の力に畏怖し、その不器用さを軽蔑した。人と違う彼女を腫れもの扱いだったのだ。
そんなシャムに対して、仲間になって欲しいと言い、怪我したところを無償で治し、宿で介抱してくれ、無くなったお金を差し出しながら控えめなお願いをする変わり者の『渡り鳥』二人組に、シャムが興味を持つことは至極当然のことだった。
(だが、私が役に立つとは思えないけど……)
不安に駆られながらも歩き続けるシャムはやがて『渡り鳥』達が待つ集合場所までたどり着いた。彼らは背中を向けて立っている。彼女はこの時『いつもと違う行動』をする自分に気が付いた。自分に諦めきれなかった自分がここに足を向かわせたのだ。
(もう一回だけ頑張ってみようかね)
奮い立たせるため、駆け寄りながら大きな声で二人に声をかけた。
「おーい! 待たせたな‼」
振り返った二人の『渡り鳥』は何の計算も感じられない笑顔をシャムに向けていた。
シャムは誰よりも愛に飢えていた。家族に愛して欲しかった。そんな彼女は『渡り鳥』の様に依頼を受け、魔物を討伐すれば莫大な収入を得て、家族の愛が得られると考えた。……しかし、結果は惨敗だった。彼女は人並外れた膂力を持っていたが、彼女の攻撃は敵には一切当たらなかった。闘い方を教えてくれる人はいなかったので、ひたすら自己流で斧を振った。しかし、結果は変わらなかった。
途方に暮れた彼女が見たのは闘技場のチラシだった。闘技場ではファイトマネーが支払われる。つまり負けても生きていればお金は貰うことが出来るのだ。魔物に負け続けた彼女だったが、生き残り続けたのはその並外れた強靭な肉体があったからである。それに気が付いた彼女は闘技場で戦い続けた。『大旋風』などと揶揄されながらも彼女は必死にお金を稼ぎ、家族の元に物資を運び続けた。
これには家族も喜んでくれた。家に帰る度に、父親も母親も兄弟も今まで見せてくれなかったような笑顔を見せてくれた。シャムはそれだけで幸せだった。3カ月間闘技場で戦い1週間だけ家で過ごした後、また闘技場で戦い続ける。そんな日々が続いたある日、母親が不自然な笑顔でシャムに行った。
「家にいても暇だろう? そろそろ闘技場に行ったらどうだい?」
まだ家に帰って来て3日目だった。彼女は気づいてしまった。
(必要なのは私じゃない。私が持ってくる物なんだ)
シャムは家族に愛されたくてがむしゃらに戦っていた。観衆になんと揶揄されようとかまわなかった。戦った相手に唾を吹きかけられようとも彼女は耐えた。だが、この事実を知った瞬間、彼女の心は瓦解していた。心が瓦解した後に彼女がとった行動……それは、闘技場で戦い、家族に物資を運び続けることだった。人はいつもの生活から自ら環境を変えるためには莫大な心の力が必要となる。彼女にその心の力は残されていなかった。
(もうこれで……終わりにするはずだったんだけどねえ)
シャムが3カ月かけて稼いだ金を会ったばかりの2人組の『渡り鳥』が貸してくれた。それもシャムの気を引くために。そんな経験はシャムにとって初めてだった。一番身近にいた家族も、思春期に恋した青年も、村の娘達も、周囲の全ての者たちが彼女の力に畏怖し、その不器用さを軽蔑した。人と違う彼女を腫れもの扱いだったのだ。
そんなシャムに対して、仲間になって欲しいと言い、怪我したところを無償で治し、宿で介抱してくれ、無くなったお金を差し出しながら控えめなお願いをする変わり者の『渡り鳥』二人組に、シャムが興味を持つことは至極当然のことだった。
(だが、私が役に立つとは思えないけど……)
不安に駆られながらも歩き続けるシャムはやがて『渡り鳥』達が待つ集合場所までたどり着いた。彼らは背中を向けて立っている。彼女はこの時『いつもと違う行動』をする自分に気が付いた。自分に諦めきれなかった自分がここに足を向かわせたのだ。
(もう一回だけ頑張ってみようかね)
奮い立たせるため、駆け寄りながら大きな声で二人に声をかけた。
「おーい! 待たせたな‼」
振り返った二人の『渡り鳥』は何の計算も感じられない笑顔をシャムに向けていた。
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