Sky World Migratory(スカイワールドミグラトリー)

モッチン@パラディワークス

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22.仲間の条件

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「いや~、面目ない。助けられちまったな」

 倒れているシャムを見つけた晩、ルナがシャムに治癒の魔法をかけ、二人は自分たちが泊まる宿にシャムを連れて行った。次の朝、目覚めたシャムに事情を説明するとシャムはおどけた様子で二人に感謝の言葉を告げた。

「……それじゃ、あたしゃ行くよ。本当にありがとうな」

 それだけ言って出て行こうとするシャムにグレイは後ろから声をかけた。

「待てよ」

「? どうしたんだい?」

 シャムは振り返ってグレイを見る。

「あんた、村に帰るんだったよな? 金は残ってんのか?」

 シャムが押し黙る。

「やっぱり盗られたのか」

 グレイが舌打ちをする。

「そんな……! お金は貴方が闘技場で戦って貯めたお金では……‼」

 ルナが悲痛な面持ちで思わず言葉にした。

「そうさ、アタシが闘技場で稼いだ金。……でも大丈夫さ。金ならまた稼げばいい」

「その金を貯めるのにどれだけかかったんだ?」

 グレイの言葉にシャムがわずかに震える。

「……3カ月だよ」

「アンタの帰りをあと3カ月待てるのか? アンタの家族は」

 グレイの言葉にシャムが苦虫を嚙み潰したような表情でグレイの目を見る。

「しょうがないじゃないか、金は無いんだ。待って貰うしかない」

「私が出します。その代わり……」

「アンタ達の仲間になれってか?」

「いえ、一回だけ依頼を一緒に受けてください」

 ……

「なんであんな条件を出したんだ?」

 一回は断ったシャムだったが、家族の命には代えられず金を受け取り部屋を出て行った。その後、グレイの顔を見たルナはグレイが聞きたがっているだろうことを質問した。

「仲間になれって言えばよかったですか?」

 そりゃそうだ、その方が手っ取り早い。グレイはそう思う言葉をぐっと飲みこみ、ルナの言葉を待った。なんのなく彼女が考え無しに言うとは思えなかった。……うや、勧誘の時は全く考え無しだったが、その時とは何となく空気が違った……様に感じたのだ。

「貴方は彼女が良いと思ったんですよね」

 思わぬ答えが来た。

「まあな、あの膂力は使えるし、一緒に旅もしやすそうなヤツだった。何となく信用できそうな、な」

「私もそう思いました。ですが、仲間にするためには『何となく』信用できる人でよろしいのでしょうか?」

(む……)

 グレイは今の問いに思考をめぐらせた。確かに仲間として共にするには信頼が必要だ。ルナとの間には、クラーケンやオーガとの闘いで命を預けあった信頼感が何となくはある。だが、新しく仲間になるメンバーにそれを求められるのか。

「この度で私達を繋ぐのは目的です。私と貴方は最終目標こそ違えど、利害が一致しています。ただし、シャムさんにはそれがありません」

「確かにそうだな。俺達はアイツにしてやれることも金を貸してやれるくらいだ」

「はい、だからせめて彼女が義に厚く、約束を違えないこと、これを確認する必要があります」

(なるほど、アイツを試したってことか)

 背中を預けられる人間か、それを金を使って謀ったということになる。

(言いたいことはわかる。わかるが……)

 グレイは大分しぼんでしまった財布袋の感触を確認しながらため息をついた。

(やることが大雑把すぎるんだよなあ)

 ルナのお金に対する価値感は人とはだいぶ違うらしい。

 ……
 
 シャムとの待ち合わせ当日、グレイはシャムと別れた夜のことを思い浮かべながら、改めて軽くなった財布袋の重さを確認していた。そしてグレイはある重大なことに気が付いた。

(そういや、俺の依頼料結局貰ってねえ!)

 それに気づき、ルナを睨みつける。

「どうしました、グレイ?」

 意に介していない様でルナはグレイに質問を投げかけた。その笑顔にグレイは毒気を抜かれる。

「はあ……アイツが来なかったらお前、今日は飯抜きな」

「そんな! 絶対に来ますよ‼」

 そんなやり取りをしていると、遠くからシャムが走ってくる。

「おーい! 待たせたな‼」

 その姿と声を聴いたルナがフフンと鼻を鳴らしながらグレイを肘で小突いた。

(コイツは本当に……)

 正直言って、今、この二人はピンチだ。生活費も残り少ないし、海賊が跋扈する雲海を渡る力も無い。だが、グレイはルナといると、いろんなことが何とでもなるような気分になっていた。何故だかわからないが心に力が湧いてくる。

(どうせ、一度は死を覚悟した身だ。やれるところまでやってやる)

 これから『ある』依頼を達成するまで、シャムと行動することになる。ここでシャムを口説けなければ、二人は振り出しに……いや、金が無いのでそれ以上に悪い状況に置かれる。だが、心に力が湧いたグレイには不安が無かった。隣で笑うルナの顔を見ながら、グレイはそんな自分に少し戸惑っていた。
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