二度目の生き方を探してく

嬉野 巧

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新しい俺は何者なのだろうか

継続は力になると信じたい

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 後日、場所は収穫を終えた畑のど真ん中。今の俺は、全力で農家の子に生まれたことに感謝していた。

(土が使い放題!)

 しばらくすると次に作物に向けての土づくりが始まるのだが、それまでの間は広い畑の土を自由にさせてもらえる。広いところで練習出来るうちに取っ掛かりだけでも掴んでおきたい。

(まずは……団子づくりかな)

 魔術上達のためには、土を浮かす以外の作業が必要だ。そこで今の俺に最も必要な、土団子の技術を中心に磨いてみようと思う。
 使う分の土をまとめて浮かし、材料を確保する。次は表面を磨きあげる必要があるが、土で土を磨くのは無謀だというのはさすがに分かっている。代わりに、アルミ玉の要領でやってみることにした。
 アルミ玉は丸めたアルミホイルをひたすらぶっ叩き続けて、表面をテラテラにした代物のことを言う。
 なので土に圧力を加えれば、似たような状態になるのではないかと考えたわけである。

(いざ実践!)

 手元の塊がどんどん圧縮されていく様をイメージし、それが土に伝わるよう意識する。すると、土玉は徐々に寄り集まって固く小さくなっていった。      ……頭の中だけで。

(まとまれええええ!)

 どれだけ強く念じてみても現実は一切変わらない。土にアルミ玉の法則は通じないということだろうか。諦めて団子はこれからも手作りするしかないようだ。

(んー……量産できるようになるかと思ったんだけどな)

 これで弟に土団子ピラミッドをプレゼントする望みは潰えた。
 だが、めげてはいられない。訓練は始まったばかり、まだまだ方法は残っている。次は、土壁を試すことにした。

「いでよ! グランドウォール!」

 静かなものである。誰もいなかったのでそれっぽいセリフとともに土がせり上がるイメージを送ったのだが、何も出でることは無かった。
 物凄くいたたまれない。よく創作物だと名前を言うとイメージしやすい、発動しやすいと評判の魔術だが、この世界には通用しないようだ。

(……もう、叫ぶのはやめよう)

 試しに畳返し式の土壁も試してみたが、こちらも何も起きなかった。
 最後は憂さ晴らしにピッタリな、土投げにチャレンジだ。手頃な量の土を浮き上がらせ、少し離れた木の幹を見据える。周囲に人の気配がないことを確認して、送ったイメージはクリーンヒット。

(…………)

「うおりゃあああああ!」

 放たれた玉は無事に、人力でクリーンヒットを果たした。少年野球経験者のスローイングに、土玉は粉々に散ったのだった。

 全力の投球を終えた俺は、座り込んで土いじりを始める。正直、何も出来なくていじけている。

「はぁ……城でも作るか」

 土で作るものが団子か城しか思い浮かばない貧困な発想力を恨みたい。しかし、作るのであれば立派な城を築き上げてやろうではないか。

(まずは、土台だな。大きすぎても困るし、こんなもんか)

 地面に一辺が三十センチ程の正方形を描く。すると、何故か囲った範囲の土がきれいに四角く盛り上がった。

「うおっ!?」

 意図しないことが起きたので、つい肩を上げて驚いてしまう。だが、これは嬉しい誤算と言うやつだ。きちんと形どっている時点で、土を浮かすのとは別の現象が起きているということになる。

「おぉ~……すげー真四角」

 まじまじと見つめていると、ひとつの疑問が湧いてきた。

「なんで土壁はダメだったんだろうな?」

 形状はほぼ同じ、土を盛り上がらせるといった点も一致する。では何が違ったのか。

(囲わなきゃいけなかった、とか?)

 思いついた案を早速試してみる。土壁を作りたいところに細長い長方形を描く。次にそこから壁がせり上がるイメージを送る。

(こい!)

 だが、結果は惨敗だった。やはり何も起こらなかったのだ。

(ほかには何が……あ、大きさ!)

 二つ目の案はサイズを変えること。壁は防御に使うことを想定したサイズなので、俺の身長をも上回る。対して城の土台は、立てても膝ぐらいの高さしかない。
 物は試し、実用性はともかく腰にかかる程度の大きさをイメージして伝えてみる。

「で、出来た……」

 足元にはイメージ通りの壁が出来ていた。しかし、この成功例からまた新たな疑問が生まれてしまった。

(壁は大きさの問題として、土玉はそれより小さいのに圧縮したり投げたり出来ないのは別の原因があるってことか)

 そうなると、サイズ以外の違いを見つけないといけない。

(なんか、実験みたいでワクワクする)

 転生五年目、俺は久しぶりに学問の楽しさをかみ締めた。学校の勉強は好きではなかったが、理科の実験や部活で戦術論の検証をするのは好きだったのだ。やはり頭は使うためにある。

(壁と土玉……)

 条件を整理するため、それぞれを試した時のことを思い起こす。

(壁は、単純だな。そこにある土を思った形に引き出すだけ。土玉を作った時は土を取って、圧をかけてってやろうとした。投げた時も土を取って、木に当てようとした)

 落ち着いてまとめていくと、失敗例に共通点が見られた。

(はじめに土を取って、ってのがいけないのか? 魔術で土を浮かした上に何かしようとしたのがまずかったのかも。元々そこにあるものにしか干渉出来ないとか)

 仮説がでたところで、今度は自力で土を集める。それを適度に手のひらにもり、丸く圧縮するイメージを伝える。

(お、おぉ……)

すると、今回は上手く丸まった。さすがに人力ほど輝いてはいないが、変化があっただけでも大きな一歩である。

(でも、コルアに渡せるレベルではない)

 しかし、それは上達すればどうにかなるだろうと今は思考を切り替え、次の実験に移る。手のひらに乗った土玉を木を真っ直ぐ狙える位置にセットして、勢いよく飛んでいくイメージを送る。
 だが、これも飛ぶことは無かった。

(となると、丸めるまで自分でやれってことか)

 一度土玉を地面に置き、完全自作の新たな土玉を作成する。それを先ほどと同じように狙いを定めて、イメージを送った。

「おっ! ……おぉ?」

 三度目の正直、飛びはした。しかし、玉はふらふらと木に到達する前に落ちてしまったのだ。

(なんか、びみょーだなー)

 土玉作りといい、今のといい、中途半端な結果に少しは落ち込む。言い換えれば伸びしろではあるのだが。

(ま、はじめはこんなもんだと思うしかないな。続けていれば、何かしら変わるだろうし)

 こうして俺の魔術訓練の日々は幕を開けた。
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