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新しい俺は何者なのだろうか
話は聞くものです
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「いらっしゃい、わたしの根城へ!」
寮の扉を開けると、凛としたエプロン姿の女性に熱烈な歓迎を受けた。
「あの~……今日から寮に入る、はずのアールといいます。よろしくお願いします」
「弟のコルアです。兄共々お世話になります」
二人で並んで挨拶をすると、名簿を確認した女性が鍵を手渡してくれる。
「アールくんとコルアくんね、ようこそ! わたしはこの寮の主、マルダです。詳しいことはデータを渡すから、まずは新天地のお部屋に行きましょ!」
「ありがとうございます」
二人分の鍵を受け取り、先導してくれたマルダさんの後ろについて行った。到着した俺達の部屋は角部屋で、俺の感覚ではとてもいい部屋だと思う。
「貰った資料と部屋に置いてある説明書で大体のことは片付くけど、分からないところがあったら遠慮なく聞きに来てくださいね! では、良い寮生活を!」
踵を返して下に降りていくマルダさんに手を振り返して、俺達は部屋に入った。備え付けの二段ベッドに揃って腰掛けて、説明のあった冊子を読みこむ。俺の予想に反して、記憶にある校則より遥かに緩いことしか書かれていないことに胸を撫で下ろした。
「ひとまず、特に心配することはなさそうですね。今日のところは時間になったらご飯を食べて明日に備えれば良さそうです」
「そーだな」
コルアの提案に頷いて、部屋の片隅の箱に手を伸ばす。食事の時間がくるまで積み上げられた荷物の片付けをして過ごすことにした。
「兄さん、そろそろ……」
「あ、まじ……? ちょっと、部屋、すげー散らかしちゃったんだけど」
声をかけられて時計を確認すると確かに予定の時刻になっている。しかし、自分の周りは箱と荷物が散乱して足場が危うい。
「僕の方はある程度片付いてるので、ご飯が終わったら一緒にどうにかしましょう」
「そうだな、ありがと!」
「いえ。通るところだけ適当に退けますよ」
荷物の間を縫って、隙間をこじ開けて部屋の外に出る。食堂に向かおうとすると、同じく部屋から出てきた人物がいた。
「おっ、アールとコルアだっけ? あんたらも食事に行くのかい?」
「あぁ。えーっと、シンガイ商会の」
「ショウカでいいよ」
フレンドリーに手を挙げて挨拶をされたので、それに倣って返す。あの中で唯一名前を覚えていた相手だ。
「ショウカさん、良かったらご一緒してもいいですか?」
「もちろん! こちらこそ親交を深めときたいしね」
「ありがとうございます」
コルアとショウカのやり取りが過ぎ、三人で食堂へ向かう。俺とコルアは辺りを見渡していたが、ショウカは真っ直ぐに食堂へ通路を通って行った。
「ここに詳しいのか?」
「いや、詳しいって程ではないさ。うちと取引があるから何度か来たことがあるだけさね」
「ならここの食堂の食材はシンガイ商会が卸してるものなんですか?」
「そう、そう。だから美味しいよ!」
「はぁ~ほんとに幅広く商売してるんだな、ショウカの家は」
「まぁね、必要にかられてというか、成り行きというか。販路を拡大した結果……っていうのかね」
雑談を交わしながら配膳の列に並ぶ。メニューは何種類かの中から選べるようで三人それぞれ違うものを頼み、席に着いた。
「うわぁ……野菜が美味そう」
ナスやピーマンがツヤツヤしていて、とても色が眩しい。スパイスの香りもたってきて食欲をそそられる。
「うん、食材はもちろんだけど、作る人もいいんだね!」
「実家の方では見ない料理も沢山ありますね」
各々自分の前の膳を眺めたり、もう味わいはじめたりしている。俺もドライカレーのような皿を手に取って口に運ぶ。今までの食事ももちろん美味しかったが、前世を感じる味に出会うのは初めてだった。
じっくり味わって食事を終え、片付けをしたら部屋への帰路を辿ることした。
「あんたたちは角部屋なんだね、あたしの部屋はここ。仲良くしたいからこれから宜しく! 良かったら今度遊びに来な」
「おう、ありがとう。また明日」
「ありがとうございます。また明日会いましょう」
手を振ってショウカと別れを告げる。ドアをひとつ通り過ぎて俺達の部屋に戻ると、相変わらず大荒れだった。
「……兄さん、片付けましょうか」
「……悪い、頼むわ」
兄弟力を合わせて作業をして、床を見えるようにしてから今日は眠りについた。
「起きてください、兄さん」
「んん~……眠い」
「眠いじゃなくて。朝です、おはようございます」
「なんだよ、今日は」
「学校です」
「……そうじゃん!」
畑仕事気分で夢現の頭を即座に叩き起す。棚から服を引っ張り出し、そそくさと着替えをし始めることにした。
「まだ大丈夫だよな!? 飯食えるよな!?」
「大丈夫です。ちゃんと余裕を持って起こしてますから」
「さすがコルア」
支度を終えて悠々と座っているコルアの周りを行ったり来たりしながら、俺は朝の準備を進めた。
「よし出来た、食事だ! 行こう」
「少し早いですけど、そうですね。行きましょうか」
身なりを整えて昨晩と同じ食堂へ向かう。中に入ると数人がもう既に来ており、その中にはショウカの姿も見えた。目が合ったので手をあげると、あちらも同じように応えてくれる。
「おはよう、早いな」
「おはようさん、あんたたちもね。食事が楽しみだったくち? それとも緊張して眠れなかったくちかい?」
「いや、ぐっすり寝れたよ。むしろワクワクしてたぐらい」
「いいね、試練には燃えるタイプってわけ」
同じテーブルにつきながら、疑問に感じたことを口にする。
「試練? 寮ぐらしのこと?」
「ん? あぁ、あんた校長の話聞いてなかったんだ。今日はテストだよ」
「え、テストなんかあんの?」
「だからきちんと聞いてと言ったのに……」
コルアには呆れられたが、ショウカは丁寧にテストについて教えてくれた。
「今日のは素質テストだね。その人の向き不向きを判断するものだから、試練って言い方は合ってなかったね」
「へー……じゃあ勉強とかはしなくていいんだな」
「今日のところはね。いつまでもそうだと思ってると痛い目見るよ、アール」
「だよな~」
この辺りはどこに行っても変わらないな、と思いながら詳しくテストの話を聞いていた。時間が来たので朝食を受け取り、味わいながら話をする。食後のコーヒーもミルクたっぷりで飲み干してお腹はすっかり満足した。
「まぁ、頑張んな! そう難しいものじゃないはずだからね。じゃ、教室で」
「おーありがとう! また」
「本当にありがとうございました、兄が」
「いいって。お礼にまた一緒に食事を取ってくれれば」
「もちろんです」
そのまま先に学校に行くらしいショウカとは食堂で別れ、俺達は一旦部屋に戻り持ち物の用意をすることにした。忘れ物がないか確認し、時間になったら寮を出る。
今日が無双ルートへの分岐点になるかもしれない。
寮の扉を開けると、凛としたエプロン姿の女性に熱烈な歓迎を受けた。
「あの~……今日から寮に入る、はずのアールといいます。よろしくお願いします」
「弟のコルアです。兄共々お世話になります」
二人で並んで挨拶をすると、名簿を確認した女性が鍵を手渡してくれる。
「アールくんとコルアくんね、ようこそ! わたしはこの寮の主、マルダです。詳しいことはデータを渡すから、まずは新天地のお部屋に行きましょ!」
「ありがとうございます」
二人分の鍵を受け取り、先導してくれたマルダさんの後ろについて行った。到着した俺達の部屋は角部屋で、俺の感覚ではとてもいい部屋だと思う。
「貰った資料と部屋に置いてある説明書で大体のことは片付くけど、分からないところがあったら遠慮なく聞きに来てくださいね! では、良い寮生活を!」
踵を返して下に降りていくマルダさんに手を振り返して、俺達は部屋に入った。備え付けの二段ベッドに揃って腰掛けて、説明のあった冊子を読みこむ。俺の予想に反して、記憶にある校則より遥かに緩いことしか書かれていないことに胸を撫で下ろした。
「ひとまず、特に心配することはなさそうですね。今日のところは時間になったらご飯を食べて明日に備えれば良さそうです」
「そーだな」
コルアの提案に頷いて、部屋の片隅の箱に手を伸ばす。食事の時間がくるまで積み上げられた荷物の片付けをして過ごすことにした。
「兄さん、そろそろ……」
「あ、まじ……? ちょっと、部屋、すげー散らかしちゃったんだけど」
声をかけられて時計を確認すると確かに予定の時刻になっている。しかし、自分の周りは箱と荷物が散乱して足場が危うい。
「僕の方はある程度片付いてるので、ご飯が終わったら一緒にどうにかしましょう」
「そうだな、ありがと!」
「いえ。通るところだけ適当に退けますよ」
荷物の間を縫って、隙間をこじ開けて部屋の外に出る。食堂に向かおうとすると、同じく部屋から出てきた人物がいた。
「おっ、アールとコルアだっけ? あんたらも食事に行くのかい?」
「あぁ。えーっと、シンガイ商会の」
「ショウカでいいよ」
フレンドリーに手を挙げて挨拶をされたので、それに倣って返す。あの中で唯一名前を覚えていた相手だ。
「ショウカさん、良かったらご一緒してもいいですか?」
「もちろん! こちらこそ親交を深めときたいしね」
「ありがとうございます」
コルアとショウカのやり取りが過ぎ、三人で食堂へ向かう。俺とコルアは辺りを見渡していたが、ショウカは真っ直ぐに食堂へ通路を通って行った。
「ここに詳しいのか?」
「いや、詳しいって程ではないさ。うちと取引があるから何度か来たことがあるだけさね」
「ならここの食堂の食材はシンガイ商会が卸してるものなんですか?」
「そう、そう。だから美味しいよ!」
「はぁ~ほんとに幅広く商売してるんだな、ショウカの家は」
「まぁね、必要にかられてというか、成り行きというか。販路を拡大した結果……っていうのかね」
雑談を交わしながら配膳の列に並ぶ。メニューは何種類かの中から選べるようで三人それぞれ違うものを頼み、席に着いた。
「うわぁ……野菜が美味そう」
ナスやピーマンがツヤツヤしていて、とても色が眩しい。スパイスの香りもたってきて食欲をそそられる。
「うん、食材はもちろんだけど、作る人もいいんだね!」
「実家の方では見ない料理も沢山ありますね」
各々自分の前の膳を眺めたり、もう味わいはじめたりしている。俺もドライカレーのような皿を手に取って口に運ぶ。今までの食事ももちろん美味しかったが、前世を感じる味に出会うのは初めてだった。
じっくり味わって食事を終え、片付けをしたら部屋への帰路を辿ることした。
「あんたたちは角部屋なんだね、あたしの部屋はここ。仲良くしたいからこれから宜しく! 良かったら今度遊びに来な」
「おう、ありがとう。また明日」
「ありがとうございます。また明日会いましょう」
手を振ってショウカと別れを告げる。ドアをひとつ通り過ぎて俺達の部屋に戻ると、相変わらず大荒れだった。
「……兄さん、片付けましょうか」
「……悪い、頼むわ」
兄弟力を合わせて作業をして、床を見えるようにしてから今日は眠りについた。
「起きてください、兄さん」
「んん~……眠い」
「眠いじゃなくて。朝です、おはようございます」
「なんだよ、今日は」
「学校です」
「……そうじゃん!」
畑仕事気分で夢現の頭を即座に叩き起す。棚から服を引っ張り出し、そそくさと着替えをし始めることにした。
「まだ大丈夫だよな!? 飯食えるよな!?」
「大丈夫です。ちゃんと余裕を持って起こしてますから」
「さすがコルア」
支度を終えて悠々と座っているコルアの周りを行ったり来たりしながら、俺は朝の準備を進めた。
「よし出来た、食事だ! 行こう」
「少し早いですけど、そうですね。行きましょうか」
身なりを整えて昨晩と同じ食堂へ向かう。中に入ると数人がもう既に来ており、その中にはショウカの姿も見えた。目が合ったので手をあげると、あちらも同じように応えてくれる。
「おはよう、早いな」
「おはようさん、あんたたちもね。食事が楽しみだったくち? それとも緊張して眠れなかったくちかい?」
「いや、ぐっすり寝れたよ。むしろワクワクしてたぐらい」
「いいね、試練には燃えるタイプってわけ」
同じテーブルにつきながら、疑問に感じたことを口にする。
「試練? 寮ぐらしのこと?」
「ん? あぁ、あんた校長の話聞いてなかったんだ。今日はテストだよ」
「え、テストなんかあんの?」
「だからきちんと聞いてと言ったのに……」
コルアには呆れられたが、ショウカは丁寧にテストについて教えてくれた。
「今日のは素質テストだね。その人の向き不向きを判断するものだから、試練って言い方は合ってなかったね」
「へー……じゃあ勉強とかはしなくていいんだな」
「今日のところはね。いつまでもそうだと思ってると痛い目見るよ、アール」
「だよな~」
この辺りはどこに行っても変わらないな、と思いながら詳しくテストの話を聞いていた。時間が来たので朝食を受け取り、味わいながら話をする。食後のコーヒーもミルクたっぷりで飲み干してお腹はすっかり満足した。
「まぁ、頑張んな! そう難しいものじゃないはずだからね。じゃ、教室で」
「おーありがとう! また」
「本当にありがとうございました、兄が」
「いいって。お礼にまた一緒に食事を取ってくれれば」
「もちろんです」
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今日が無双ルートへの分岐点になるかもしれない。
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