二度目の生き方を探してく

嬉野 巧

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運とはズルく見えること

人には人の

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 夕食を終えた寮の部屋。コルアは机で二人分の連絡資料を一つのバインダーに収まるよう選別中だ。そこから離れたドアの近くに座って俺は茶碗の中でサイコロを転がした。


「やっと百。特に効果なし」


 一から六までの目を描いた表に最後のカウントを追加する。出目に多少の偏りは見られたが有意な差は無かった。目が大きい方が良い、と思いながら振ってみたが結果には出ずじまいだ。


「コルアー、俺これからサイコロ振って出た目の数だけバーピーするから」


「筋トレですか。僕もします」


 次は行動を伴わせてみる。さすがに百回はやりきれなさそうなので「とりあえず十回振るわ」と伝えた。

 六、六、四、一、二、五、六、四、五、五の合計四十四回バーピーをやりきって俺とコルアは床に座り込んだ。肩で息をしていると扉をノックされたので「はぁーい」と座ったまま手を伸ばしてドアノブを引く。


「ン? くたびれてるね二人とも」


 ショウカが顔をのぞかせて首をかしげた。


「茶碗、返すの明日で構わないって。マルダさんからの伝言」


「あぁそっか……食堂閉まるんだ忘れてた」


「で、鍛錬中?」


「というよりスキルの分析中」


 俺が答えると「何となく当てはつくね。詳しくは聞かないけど」とショウカは笑った。


「今日は悪かったね、誘いに乗れなくて」


「全然! けど、楽しかったし今度は一緒にやろ」


「もちろん。魔法なしの練習もしたいしね。大会出るからには勝ちたいよ、アタシは」


「俺も勝った方が楽しいと思う。ただ」


 頭の中に二つ引っかかりが浮かんだ。一つ目はエイテムのこと、乗り気じゃ無さそうだった彼女の居心地が悪くならないか。二つ目はスキルのこと、勝ちたい気持ちだけで効果が出るのか。


「なんかこう……勝つ! って以外にモチベーションというか。勝てなくても苦手でも、ちょっとは楽しみになるような物も考えたいかな」


「そうだねぇ。打ち上げとか?」


「楽しそうです」


 ショウカの提案にコルアが食いついた。


「はは、思いつきだけだったけど、良いかもね。もちろん他にも考えるよ、せっかくクラスでやるんだ。それぞれ良い思い出になって欲しい」


 ショウカは笑って言うと「明日にでも案を持ち寄ろうか。おやすみ」と部屋を出て行った。コルアは「庭でバーベキューしたことあるそうですよ」と声を弾ませている。俺も二つの引っかかりをクリアするための方法を考え始めた。

 簡単な検証だったが、スキルの効果はご褒美か罰があると出やすそうだった。さっき罰のつもりだった筋トレで大きい目が多く出たのは、気持ちはどうあれやった方が良いことだったからだろうか。

 エイテムの方は本人に聞かないとなんとも言えないが、スポーツも苦手だと言っていた。選手以外の形で参加する方法を考えてみても良いかもしれない。

 二つを同時には無理そうだ。エイテムとは話し合ってみることにして、どうせならご褒美を設定したいなと思っているとコルアが窓を開けた。


「中庭……あんな綺麗に整えられているのに、バーベキューして大丈夫なんでしょうか」


「やったってのは誰から聞いた?」


「マルダさんから。夏休みに残った寮生でしたことがあるそうです」


「季節の問題かもな」


 夏には伸びた草を刈っているのかもしれない。詳しくはマルダさんに尋ねなければ分からないが、確かに花が咲き誇る中で煙を充満させるのは気が引けた。


「バーベキューやりたい?」


「バーベキューじゃなくても良いんです。マルダさんから聞いた話が楽しそうだったから」


 打ち上げはやろう。ただ、開催に勝ち負けは関係しないから別で条件をつけたい。自分一人で完結できてやる気がわくもの、と考えを巡らせてみた。


「みなさん何が好きなんでしょうね……まだ全然知らないなあ」


「大丈夫、聞けば良いんだ」


「そうですね。ショウカさんにも頼んで、みなさんが参加したくなる打ち上げを目指します! 兄さんも楽しみにしててくださいね」


「うん。もちろん」


 コルアがメニューだ形式だと思いついたことを「どうですか?」と次々尋ねはじめてきた。俺も応えているうちにだんだんと思考が「打ち上げをどうするか」に飲み込まれ、アイディアだけノートに書き散らかして眠ってしまった。
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