各末

蟹虎 夜光

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第4話 覚醒と闇堕ちって厨二心をくすぐる

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第4話 覚醒と闇堕ちって厨二心をくすぐる

 多くの自分を縛ってきたものの先にいるのは女の子の姿をしたぬいぐるみ。

「わたしのこと……覚えてる?」

 女の子の姿をしたぬいぐるみは問いかける。

「……まぁ。」

「なんで間を開けたの?……嘘ついてる?」

 片手に包丁を持ち、女の子のぬいぐるみは猪原目掛けて飛びかかる。

「わぁっ!」

「私、メイちゃん!貴方がお母さんと喧嘩した時に燃やしたぬいぐるみ!」

 それを言われた瞬間、猪原はハッとした。

「気づいた?今気づいたよね?自分がやった過ち、自分が今までやってきた懺悔すべき出来事……でもね、メイちゃん、それで怒ってないの。」

 おもちゃの包丁で刺すのをやめて、急に冷静になるぬいぐるみのメイちゃん。

「貴方のお母さんがオリキャラとして生み出した私……そしてその私をたった一度の喧嘩で燃やした貴方……恨みから産まれたから呪いだって当然生まれる……」

「……」

「だからね、私……一つ提案があるの。」

「なんですか?」

「私を燃やした罪として私に身体を貸しなさい……貴方にも貴方の時間があるからそこは妥協する。私はそれが出来るからかわいいの。」

「……」

「簡単よ。貴方……憧れてたわよね、一ちゃんや増井のように各末を使って各末退治をしてみたいって。」

「そりゃまぁ……」

「私はそのチャンスを与えてるの。でも対価は払ってもらう。」

「その対価って……命とか?。」

「まぁ、それもいいのだけれど……命を直ぐにパーンなんてもったいないしつまらない。だからね……寿命なんてどうかしら。」

「……のった、やるよメイちゃん。」

「あの子の子供は優秀ね……ちょっといじるわよ」

 その時、猪原はメイちゃんの魂そのものが乗り移った。


「……さて、今日も私は可愛い。みんなが憧れるメイちゃんだもの。」

 メイちゃんはそう言いながら大きな斧を持ち、巨大な各末を横から割り始める。

「終わらせてあげる。」

「……」

「オラ!叫べよ!おい!ごらあ!」

 メイちゃんはニコニコ笑顔で各末の身体から血が溢れるところをみて快楽を得る。

「ギャハハハハ!楽しい……楽しいわ……」

 各末の消滅する姿を見てゲラゲラと笑い続けるメイちゃんは……溜息をつきながら椅子に戻る。

「あー楽しい……いっぱいいっぱいこれで同族を……あはは……あはははは!」

 (一応俺の身体なんだけど……)

 (わかってるわよ……)

 一瞬でメイちゃんから猪原に戻る肉体。

 そんな現場を知らず、一と増井は猪原の元についた。

「無事か?猪原!」

「あぁ……ちょっと助けが来てね……それでこれさ。」

 猪原が退治するにしても悲惨な死体を彼が作れるとは思わない。まるで誰かがやってきて突然各末を殺したのではないかと思えるような空間だった。


 猪原の心の中。

「ね?いいものでしょ……」

 メイちゃんは良いでしょ?とアピールする。

「満足した?」

「それはもうたのしかった……でも、寿命でいいの?」

「どうせ縛られる人生だ……そんなの早く終わっても良いじゃないか……」

「そんな悲しい事言っちゃって……自分を大切にしな?」

 クスクスと笑いながらもそれは不敵な笑みであると誰もが分かる。

「でも実際にやってみて心が変わった……私を燃やしてくれてありがとう……おかげで呪いとして貴方の前に現れた……」

「随分と怖い台詞だな……」

「取引もしない……だから……変わりたいって思った時に自由に呼んでくれないかしら……最悪私から提案する事もあるし……寿命は今回だけで……」

 なんでこいつちょっと楽しそうなんだろうと思いながら猪原は少し頷き、メイちゃんは大喜びした。

「ありがとう陸遜……殺して欲しい子がいたら教えてね。」

「頼むかぁ!!!」


 大声で叫び、ツッコミを入れる陸遜。

「どうしたお前。」

「あ、いや……なんでもない。」

 気づけば電車から自分達の家に向かっている。

「なんかお前……操り人形マリオネットみてえだな。」

「は?……増井、何言ってんだ?」

 思わず困惑する猪原。

 (はぁ?上手いこと言ってるつもり?)

 思わず心の中のメイちゃんもこの反応である。

「……能力手に入れちゃったか。」

「あはは……まぁね。」
 
「楽しいか?」

「内心……ちょっとだけね。」

 一は何かを見抜いたかのように猪原にそう言った。

「おい!何そこ二人で理解してんだよ!」

「うるせー脳筋には理解出来ねーぞー」

「んじゃこの女ったらし!」

 一を捕まえてポコスカと優しく殴りながらもお互いに笑い、それを見てる猪原も思わず笑った。


 翌日、土曜日。

 一の家にピンポンと鳴り響くインターホン。

 ガラガラと扉を開けた目の前には一人の女がいた。

「私が誰だかわかる?」

「メイちゃん。」

「なんでわかったの!?」

 ヤバいやつはもっと上のヤバいやつの思考回路なんて分からない。


 お茶を入れて二人は会話をする。少し頬を赤らめているメイちゃんに対して冷静な一。

「性器ごと入れ替わるんだねぇ。どっかでそういうの見た事あるようなないような……。」

「口に出さないで……恥ずかしいから。」

一の冷静さには誰もが驚く。事件や仕事、研究となると自我を失ってこんなにも自分は恐ろしいのだと下の階のオバチャンこと大家さんに言われ自分で驚くレベルだ。

「各末って面白いね。そこらの社会問題ですら意外と解決出来そうだし。」

 一の発言を聞いてメイちゃんは一理あると思った。

「けれど……それが出来ないんでしょ。一ちゃんや増井、陸遜ちゃんのように各末と関わろうとする人間なんてごく稀よ?普通に考えて……ねぇ。」

「確かにそれもそう……毛嫌いからそういうのを使いたくないって人もいる。君みたいに良い各末もいるってのに。」

「……」

 メイちゃんは顔ごと赤くなった。

「そ、そんな……私、ほら……いつか陸遜ごと消しちゃ」

「それでもいい……だって出来ないでしょ。君は燃やされた恨みがあるかもしれないけど……根っこの性格が良すぎる。それが実現するのは不可能ってやつだ。」

「一ちゃん……」

「性格は良い……まぁ、僕は各末だろうが普通の人間だろうが……」

「……?」

「はっきり言ってまな板に興味はな」

「「だまれ!」」

 一はストレートに言った瞬間、大家さんとメイちゃんのダブルドロップキックを喰らった。

「まったくいい男にみせて結局これかい……あのぺぇ星人やろうめ。」

「まったく……コイツのどこがいいんだか。」

「ただのクソガキだよ……」

 大家さんはそう言いながら下の階でタバコを吸い始める。


 次に一が目を開けると猪原と増井がいた。

「増井、一が起きた。」

「いい蹴りだったぜ……ふっ」

「カッコつけてんじゃねえよ、ぺぇ星人。」

「今は心の中にいるけどメイちゃんすげぇ暴れてるぞ。」

「はは……おかげで睡眠取れたから仕事に移ります。」

 と言いながらパソコンを開く一。

「おいおい仕事って……アイツら倒すだけじゃねえのかよ。」

「アイツら倒したら国から金は入るけど……それだけじゃなくて。」

 と聞きながら心の中のメイちゃんに攻撃しようとする猪原とそれを止めようとする増井。

「おいおい自分達の各末倒して儲けようたってそりゃダメだぜ……。」

 一はそう言いながら次の話へと進む。

「俺達が儲かる場所は作家だ。」

「「え?」」

 困惑する二人と一緒に一は歩き出す。

「作家?まさか自分の扱いが酷いとか言って裁判でも起こすつもりじゃ……」

「そうじゃない!」

「あれか?ギャグ回とか青春ラブストーリーでも描けって言いに……」

「だからそうじゃねえよ!なんで物語と現実の垣根をそんなに超えたがる!今までの各末の火種!」

 つづく
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