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第17話 大切なものは失ってから気づく
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第17話 大切なものは失ってから気づく
一は目の前の男を止めるしかないと判断することにした。
「……」
目の前の男は目が赤く光り無言で剣を構える。
「待て!私も加勢する!」
「やめろ!」
黄泉嶋を止める天ノ川。
「あいつらにはあいつらなりに何か決着をつける必要がある。もしくは一なりの説教ってもんだろ。」
「くっ……」
「まぁボロボロの立場で正直、自分が情けねえ。俺もお前に助けてやってくれとは言いたいが……そんな事したら野暮ってもんさ。」
「……そうだな。」
黄泉嶋はそう言うと天ノ川は正面を見つめた。
刀は対立しあっていた。
「なんで力を欲した!お前の刀はそんなにも情けなくてそんなにも脆かったかよ!」
「……」
「それがお前の戦士として生きていた意味かよ!そんなお前が連れてきた怒琉雄堕の仲間はそんな意味持ってねえぞ。……おい、何とか言えよっ!」
「……」
一に何も返さず、ただただ攻撃を繰り返す。
躊躇というものをこの男の刃から一切感じられない。それはただ目の前の獲物を狩る獣のソレだ。
「……」
「……」
喋っていた一も黙り、二人は無言で見つめ合い、お互いに向き合っていた。
「……はぁ。」
一はため息をつきながら、相手が瞬きしたのを確認して斬った。
「……これで良かったんだよな、祐四。」
「……あぁ。」
一はAに連絡を入れる。
「なに。」
「Aさん!頼む!あんた、治療法知ってたよな!」
「わかった……どういう状況か教えて。」
Aはそう言うと一から聞いた情報を自分なりに考えて治療法を教えた。
(頼む!これで生きてくれるはずだ……!)
治療するうち、段々と傷は治りつつあるがやはり体力は消耗したのだろうか。魂の色は黒くなり始める。
「……一ちゃん、多分その人の治療は限りなく出来ないわ。」
「そんな、まだ体が元気になれるなら…せ、生命力だって!」
そんな一の手を止める黄泉嶋。
「やめておけ。」
そんな二人に視線を向ける祐四。
「……う、うん?」
「……大丈夫か?」
「やっぱり君は……凄いや。」
その目は優しさに包まれた。
「凄い……?」
「うん……。」
一の視線をただただ見つめ、続ける祐四。
「僕はもう……ダメみたいだ。何も出来なくて……風の剣士になっちゃって……愚かだとか思いながらこんな日々送って……僕は剣士になる素質がなかったんだよ……」
「……祐四、お前は充分凄いさ。」
「ありがとう……でも。」
一の顔を見つめ、ニッコリと笑う祐四。
「こんな戦いやルールに縛られない一みたいな学校生活を送りたかったな……僕も君みたいに制服着て過ごしてみたかった……。」
一は涙を一滴も流さず、ただただ彼の言葉を聞いた。
「どうだろうな……案外俺の生活は苦労するぞ?」
「……はは、最後まで君は面白いやつだな。」
ゆっくりと目を閉じ始める祐四。
「僕は……頑張れたかな……。」
祐四の魂が消えた。
一以外の怒琉雄堕はみんな涙を流した。
「今までありがとう……お前は最高の風の剣士だ。」
天ノ川はそう言うと涙を拭ってその場を去った。
「……」
一は目の前の光景に涙どころか声も出なかった。
それから今。
「そういうわけだ……。」
「……」
沈黙が続く。
「猪原はこの話知ってんのか?」
増井は沈黙に耐えられず問う。
「……前に猪原なら彼と遊んだこともある。」
「……そうか。」
一が視線を天ノ川に向ける。
「あの時、あの瞬間、あの空間で俺が何を考えて何のためにその時までを過ごしていたか分かるか?」
「……」
真っ直ぐとした視線が来るも、天ノ川は少し逸らす。
「あんたがあの時忘れ物をしなきゃあんたがあの時止める方法を知っていたら……未来は変わっていたかもしれない。」
「……そうだな。」
「あの後、どうなったか分かるか?」
「……あの後?」
「あぁ……、俺はアンタのせいでとか言ってあんたの胸ぐら掴んだけど……すぎたことを責めても意味はないなって悟っただから今でもあんたの事は悪いと思ってない。」
「……ありがとう。」
「別にお礼をいわれるつもりは無い。……だが、家に帰ってくるや彼女達が俺を気にかけるように優しくなった。俺はありがたいと思った反面、彼女達には敵わないなって思ったよ。そもそも女に喧嘩しようなんざ思わんが。」
「……」
「でもあの時の彼女達の言葉が俺に鎖のように毎日縛ってくるんだ……『私達はずっと一緒ですよ』って言葉が。」
「……」
「今も悩まされてる……アンタのせいだ!って言えば少しはスッキリするかなって思ったけど……ダメみたいだ。」
一は少し張っていた肩を下ろした。それどころか疲れたと言わんばかりに体が膝から崩れ落ちた。
「何のためにこの期間……生きてたんだろうな。」
そんな一の問いに墓においてあった風の剣が光り出して一の手に近づき、手を出した一の手元に降りた。
「……え?」
そして剣はかつての姿へと変わる。
「おい、天ノ川さん……どういう状況だ?」
「あぁ、増井。……これは、剣が後継者として正式に持ち主を決めた瞬間だ。……久しぶりに見た。」
「……ほう。」
「こんな形で決まったのは俺らの最初のご先祖さま以降……何度目だったかな。けど一桁さ。」
「……へぇ。」
「……これで、風の剣士は粼一となった。」
一は試しに剣を振る。天ノ川曰く威力はかつての風の剣士を軽く上回る勢いらしい。
「……なんか吹っ切れたかも。」
「……そうか。そういえば元々の雷刃?あれはどうするんだ?」
「……俺は二刀流で行かせてもらうよ。」
「そうか……お前にぴったりな称号をつけてやる。」
「変なのだったら怒るよ。」
「まさか……。」
そう言うと天ノ川はニコッと笑う。
「風雷の剣士……。」
「悪くない。」
そう言うと一はその場を去った。それに続いて増井もとりあえずと去る。
「……お前、こっそり見に来てたろ、黄泉嶋。」
「……そんな姿になったお前でも分かるのか。実力は健在だな……と言っておくか。」
「あんたからは強者のオーラがダダ漏れだからな。」
「……それで、これからどうするんだ?」
「バイトを転々としてる日々だよ。行動の目的だとかそういうのを決めるのは……無理だ。」
「そうか……私は少しお前の姿を見て複雑になった。」
「生きてりゃええんだ。……生きてりゃな。」
「……ふっ。」
「俺らのこの剣は各末なんてものとは違う。こっそりと剣士だけで集まってこっそりと引き継がれた一族が残したある種の『命』みてぇなもんだ。」
「……」
「それを満場一致で友達に渡すなんてな。ったく、どういう風の吹き回しだよって。」
「……アイツらしく言うとすれば風向きが変わった。」
「それだ!」
天ノ川はそう言うとげらげらと笑い、じゃあなと言ってその場を去った。
「……全く恥ずかしさもない愚かな生き物だ。」
呆れた黄泉嶋はそう言った。
「さていくか……ヤミー、ピカリン。」
剣二つに独特な名前を付け、彼女はふふっと笑って闇の中へと消えていった。
一方、その頃。
とある研究室にてある男が牢獄から開放された。
「解放だ、No.001……」
「数字で呼ぶなよ、俺しかいねえだろ?」
顔面を掴み、男は相手が意識を失ったのを確認するとニヤリと笑う。
「さぁて……釈放演出としては完璧だよ。」
扉を開けた先には執事のような振る舞いの男達がいた。
「ご苦労さまです……アサナシア様。」
「あぁ?……そちらこそご苦労。だが……。」
アサナシアは地面を揺らす。
「俺はそういう派手な歓迎は今はされたくねぇんだよ。」
そう言うとアサナシアは男達の乗っていた車を盗み、運転しはじめた。
「さぁて……どうするか。」
つづく
一は目の前の男を止めるしかないと判断することにした。
「……」
目の前の男は目が赤く光り無言で剣を構える。
「待て!私も加勢する!」
「やめろ!」
黄泉嶋を止める天ノ川。
「あいつらにはあいつらなりに何か決着をつける必要がある。もしくは一なりの説教ってもんだろ。」
「くっ……」
「まぁボロボロの立場で正直、自分が情けねえ。俺もお前に助けてやってくれとは言いたいが……そんな事したら野暮ってもんさ。」
「……そうだな。」
黄泉嶋はそう言うと天ノ川は正面を見つめた。
刀は対立しあっていた。
「なんで力を欲した!お前の刀はそんなにも情けなくてそんなにも脆かったかよ!」
「……」
「それがお前の戦士として生きていた意味かよ!そんなお前が連れてきた怒琉雄堕の仲間はそんな意味持ってねえぞ。……おい、何とか言えよっ!」
「……」
一に何も返さず、ただただ攻撃を繰り返す。
躊躇というものをこの男の刃から一切感じられない。それはただ目の前の獲物を狩る獣のソレだ。
「……」
「……」
喋っていた一も黙り、二人は無言で見つめ合い、お互いに向き合っていた。
「……はぁ。」
一はため息をつきながら、相手が瞬きしたのを確認して斬った。
「……これで良かったんだよな、祐四。」
「……あぁ。」
一はAに連絡を入れる。
「なに。」
「Aさん!頼む!あんた、治療法知ってたよな!」
「わかった……どういう状況か教えて。」
Aはそう言うと一から聞いた情報を自分なりに考えて治療法を教えた。
(頼む!これで生きてくれるはずだ……!)
治療するうち、段々と傷は治りつつあるがやはり体力は消耗したのだろうか。魂の色は黒くなり始める。
「……一ちゃん、多分その人の治療は限りなく出来ないわ。」
「そんな、まだ体が元気になれるなら…せ、生命力だって!」
そんな一の手を止める黄泉嶋。
「やめておけ。」
そんな二人に視線を向ける祐四。
「……う、うん?」
「……大丈夫か?」
「やっぱり君は……凄いや。」
その目は優しさに包まれた。
「凄い……?」
「うん……。」
一の視線をただただ見つめ、続ける祐四。
「僕はもう……ダメみたいだ。何も出来なくて……風の剣士になっちゃって……愚かだとか思いながらこんな日々送って……僕は剣士になる素質がなかったんだよ……」
「……祐四、お前は充分凄いさ。」
「ありがとう……でも。」
一の顔を見つめ、ニッコリと笑う祐四。
「こんな戦いやルールに縛られない一みたいな学校生活を送りたかったな……僕も君みたいに制服着て過ごしてみたかった……。」
一は涙を一滴も流さず、ただただ彼の言葉を聞いた。
「どうだろうな……案外俺の生活は苦労するぞ?」
「……はは、最後まで君は面白いやつだな。」
ゆっくりと目を閉じ始める祐四。
「僕は……頑張れたかな……。」
祐四の魂が消えた。
一以外の怒琉雄堕はみんな涙を流した。
「今までありがとう……お前は最高の風の剣士だ。」
天ノ川はそう言うと涙を拭ってその場を去った。
「……」
一は目の前の光景に涙どころか声も出なかった。
それから今。
「そういうわけだ……。」
「……」
沈黙が続く。
「猪原はこの話知ってんのか?」
増井は沈黙に耐えられず問う。
「……前に猪原なら彼と遊んだこともある。」
「……そうか。」
一が視線を天ノ川に向ける。
「あの時、あの瞬間、あの空間で俺が何を考えて何のためにその時までを過ごしていたか分かるか?」
「……」
真っ直ぐとした視線が来るも、天ノ川は少し逸らす。
「あんたがあの時忘れ物をしなきゃあんたがあの時止める方法を知っていたら……未来は変わっていたかもしれない。」
「……そうだな。」
「あの後、どうなったか分かるか?」
「……あの後?」
「あぁ……、俺はアンタのせいでとか言ってあんたの胸ぐら掴んだけど……すぎたことを責めても意味はないなって悟っただから今でもあんたの事は悪いと思ってない。」
「……ありがとう。」
「別にお礼をいわれるつもりは無い。……だが、家に帰ってくるや彼女達が俺を気にかけるように優しくなった。俺はありがたいと思った反面、彼女達には敵わないなって思ったよ。そもそも女に喧嘩しようなんざ思わんが。」
「……」
「でもあの時の彼女達の言葉が俺に鎖のように毎日縛ってくるんだ……『私達はずっと一緒ですよ』って言葉が。」
「……」
「今も悩まされてる……アンタのせいだ!って言えば少しはスッキリするかなって思ったけど……ダメみたいだ。」
一は少し張っていた肩を下ろした。それどころか疲れたと言わんばかりに体が膝から崩れ落ちた。
「何のためにこの期間……生きてたんだろうな。」
そんな一の問いに墓においてあった風の剣が光り出して一の手に近づき、手を出した一の手元に降りた。
「……え?」
そして剣はかつての姿へと変わる。
「おい、天ノ川さん……どういう状況だ?」
「あぁ、増井。……これは、剣が後継者として正式に持ち主を決めた瞬間だ。……久しぶりに見た。」
「……ほう。」
「こんな形で決まったのは俺らの最初のご先祖さま以降……何度目だったかな。けど一桁さ。」
「……へぇ。」
「……これで、風の剣士は粼一となった。」
一は試しに剣を振る。天ノ川曰く威力はかつての風の剣士を軽く上回る勢いらしい。
「……なんか吹っ切れたかも。」
「……そうか。そういえば元々の雷刃?あれはどうするんだ?」
「……俺は二刀流で行かせてもらうよ。」
「そうか……お前にぴったりな称号をつけてやる。」
「変なのだったら怒るよ。」
「まさか……。」
そう言うと天ノ川はニコッと笑う。
「風雷の剣士……。」
「悪くない。」
そう言うと一はその場を去った。それに続いて増井もとりあえずと去る。
「……お前、こっそり見に来てたろ、黄泉嶋。」
「……そんな姿になったお前でも分かるのか。実力は健在だな……と言っておくか。」
「あんたからは強者のオーラがダダ漏れだからな。」
「……それで、これからどうするんだ?」
「バイトを転々としてる日々だよ。行動の目的だとかそういうのを決めるのは……無理だ。」
「そうか……私は少しお前の姿を見て複雑になった。」
「生きてりゃええんだ。……生きてりゃな。」
「……ふっ。」
「俺らのこの剣は各末なんてものとは違う。こっそりと剣士だけで集まってこっそりと引き継がれた一族が残したある種の『命』みてぇなもんだ。」
「……」
「それを満場一致で友達に渡すなんてな。ったく、どういう風の吹き回しだよって。」
「……アイツらしく言うとすれば風向きが変わった。」
「それだ!」
天ノ川はそう言うとげらげらと笑い、じゃあなと言ってその場を去った。
「……全く恥ずかしさもない愚かな生き物だ。」
呆れた黄泉嶋はそう言った。
「さていくか……ヤミー、ピカリン。」
剣二つに独特な名前を付け、彼女はふふっと笑って闇の中へと消えていった。
一方、その頃。
とある研究室にてある男が牢獄から開放された。
「解放だ、No.001……」
「数字で呼ぶなよ、俺しかいねえだろ?」
顔面を掴み、男は相手が意識を失ったのを確認するとニヤリと笑う。
「さぁて……釈放演出としては完璧だよ。」
扉を開けた先には執事のような振る舞いの男達がいた。
「ご苦労さまです……アサナシア様。」
「あぁ?……そちらこそご苦労。だが……。」
アサナシアは地面を揺らす。
「俺はそういう派手な歓迎は今はされたくねぇんだよ。」
そう言うとアサナシアは男達の乗っていた車を盗み、運転しはじめた。
「さぁて……どうするか。」
つづく
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