各末

蟹虎 夜光

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第18話 アイ・アム・ヒール

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第18話 アイ・アム・ヒール
 らしくねえタイトルと共にアサナシアは自分の家へと向かった。

「チッ……開始早々これかよ。」

 部屋は散らかっているものの、様子がおかしい。

 その空間に少しばかりアサナシアは怒りを覚えた。

「……痕跡で分かんだよ、おっさん。」

 近くにいた空き巣の男の胸ぐらを掴み、殴りかかる。

「待て!私は……」

「黙れよ」

 首をへし折り、アサナシアは空き巣を殺害した。

「チッ……窓を開けっ放しにしたのは認めるがこんなのがいるなんてな。」

 アサナシアはそう言うと空き巣を鍋に入れて冷蔵庫の具材とともに調理した。

「空き巣鍋……ちと、あれだがな。」

 なんて言いながらアサナシアは一杯飲んで満足した。


 翌日。

「お兄ちゃーん!」

 アサナシアのベッドに飛びかかる小さい子供。

「……誰がお兄ちゃんだ。家間違えてんのか?」

「違うよ!今日からこの家に住むことになったの!」

「……は?」

 夢でも見ているのだろうか。アサナシアは何度も何度も瞬きをする。

「……は?」

 再びそう言うとアサナシアは察した。

「お前の送り主は?」

「送り主?」

「わかった……おまわりさんのとこに行くか。」

 アサナシアは小さい彼女と手を繋いで外へ向かった。


 外に出ると視線はアサナシアへと向く。ザワザワとした声が彼の耳によく入る。

 アサナシアは気にせず、とりあえずと歩く。

「はぁ……そういやお前名前は?」

「ランフー!」

「へぇ……そう。中国人みてーだな。」

「ちゅーごく?」

「……悪ぃ、なんでもねえ。」

 アサナシアはため息をつきながらランフーと会話を何とかして情報を出そうとした。

(いつも以上に気になる周りの視線……妙だな。)

 アサナシアは耳を傾けることにした。

「みて……あの人誰かと会話してる。」

「シーっ!見ては行けません!」

 指をさして疑問に思う子供とそれを指摘する母親。

「見てあの人、壁と会話してるのかしら?」

「怖いわねぇ……目つきも悪い。」

(目つきは関係ねえだろ。)

 アサナシアはそうツッコミながら、歩く。

 だがなぜだろうか。アサナシアは見えてもまるでいないものかのように周りはランフーが見えない。

(もしやコイツは各末……?いや、幽霊だとかそういうのの可能性も無くはなさそう。)

 思わず能力を使ってみることにしたが、もしそれで消えたらと考えると何故か心の中で罪悪感が生まれた。

「なぁ……お前って各末か?」

「かくまつ?……うーん、わかんない!」

「そっか。」

 アサナシアは少ない情報から探ってみることにした。

「……」

 しかし分かることは見た目は小学校低学年くらいの女の子で名前はランフーである。ということくらい。

 アサナシアはため息をつく。

「クソが。」

「……ん?」

「あ、いや……お前、親の名前とかは?」

「えーっと……お母さんは顔が思い出せない!もういないから……んでお父さんはチョモランマ!」

「……適当すぎるだろ。」

「……えへへ、でもほんとだよ。」

「……へぇ。」

 可能性が確信になった。コイツは各末だ。アサナシアは心の中でそう思うと向かう方向を変える。

「よし、おまわりさんはなしだ……。」

「え?どういうこと?」

「……おら、あっちだよ。」

「あっち?あそこって……なに?」

 そこには一人の科学者がいた。

「えぇ?どこぉ?」

 ランフーは首を傾げる。


 アサナシアが科学者を見るや目線をランフーに向けるよう指示をする。

「なんだい?アサナシアくん……昨日の釈放で私の部下を始末したばっかだというのに。」

「事情が事情でな……このガキ見えるか?」

「あぁ……ガキ?うん、見えるね。」

「良かった……」

 ふとアサナシアは自分が疲れているのかと思っていたために安心した。

「でもこの子……各末の中でも稀だね。」

 そう言うとアサナシアから離れ、ランフーに近づく。

「お嬢ちゃん……これ、俺のバイトでさ。」

 白衣の中の赤い甚平から見える胸毛を見ながらランフーは話を聞くことにした。

「俺、天ノ川って言うんだけどさ。お嬢ちゃんちょいと失礼するよ。」

 天ノ川はそう言うと真っ黒な機械をランフーに向ける。

 赤い光と共にランフーの体内を確認する。

「アサナシア…コイツは各末だ。だが、それだけじゃねえ。」

「ん?どういうことだ?」

「……お前、幽霊娘ランフーって作品知ってるか?」

「知らねえな。」

「その反応からしてだろーなって思ったよ。」

 幽霊娘ランフー。家族を探すために墓地からでてきた小さい女の子がかつての家に住んでいる青年と共に日常を送るほのぼの漫画……の予定だった作品だ。

「だが……作者は昨日急に亡くなった。その結果作られる予定だった作品はボツになった。」

「……それでこの状況か。」

「幽霊娘が本当に幽霊になるなんてな。」

「……ちっ。」

 アサナシアはそう言うと舌打ちをした。

「各末反応あり。」

 そこに現れたのはスーツを着用した団体だ。

「……」

無言の兵士と共に現れる一人の金髪の外国人女性。

「各自、銃を持て。」

 アサナシアは胸元にある紋章を見て確信した。

「海外組織で見たことがある。お前ら、知ってるぞ。」

「あら……有名なのね。」

「うわ!金髪美女だ!はは……バイトしてるといい事あるもんだな!」

 天ノ川は心の中に隠してた全てを解放して近づこうとするも周りの兵に銃を乱射され、必死に逃げた。

「……アイツはクビにしてもらおう。」

「それで……その子、どうするつもりかしら?」

「さあね。」

 彼女の名はローズ。組織『フラワー』の第二位として名が知れ渡ったクールビューティーな女性である。

「強いて言うなら……あんたらに渡すつもりはねえよ。」

「あら……抵抗するつもり?」

「あぁ……なぁ、ランフー、お前に一つ言っておく。」

「なに?」

「お前のお兄ちゃんは今日から俺だ。」

 その発言と共に吹っ飛ばされる周りの兵。

「なに!?……」

「萌え萌えきゅん……ってな。」

 兵士の首を折るとローズに近づいた。

「……待て、何をする。」

 ローズは鞭を構える。

「その鞭で俺とさっきのアホを叩いてほしいが……ひとつお前にも言っとく。」

「……何かしら。」

「事が済んだら俺があのガキを消す。」

 ローズにそう言うとアサナシアはローズの頭を撫でてランフーと共に家へと帰った。


 それからスーパーにて。

「ねぇ、お菓子買わないの!?」

「……ったく、ガキ一人養うだけでこれかよ。」

 ランフーに思いっきり嫌そうな顔をするも心の中でこれもこれでいっかと思えてきたアサナシア。

 勝手にしろとハンドサインを送るとランフーは笑顔でチョコ系等のお菓子を入れた。

(コイツが厄介なのは各末ってだけじゃなくて能力者の中でも霊能力を持ったやつだけってのが……だるい。)

 各末はこの星に多く存在することは今となっては誰もが当たり前だと思っている。だが彼女が幽霊であるということがアサナシアは厄介だと思っている。

 その答えは視野を広げることでわかる。周りの視線だ。

(この状態を過ごすことは悪くねえが……周りの皆さんの視線を喰らうのははっきり言って気に食わねえ。)

 そんなことを思ってしまう自分は愚かだ。アサナシアは自分にそう言い聞かせながら会計を終えた。


 一方その頃、とある研究所にて。

 猪原は増井を呼び出してこっそりと話を進める。

「なんだよ、こんな時間に」

「君に見てもらいたいんだ。彼は……教えないだろうから。」

 そう言うと歩き出した猪原についていく増井。

「猪原……お前、随分と狂ってるな。」

「……そう?」

「こんな研究所呼び出して……なんのつもりだ。」

「今から君に見てもらうのは……一の父の資料だ。」

 つづく
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