各末

蟹虎 夜光

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第21話 叔母はアイドル

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第21話 叔母はアイドル

 チケットは一分で完売、ファンクラブは百万人を軽く超える伝説のアイドルがそこにはいた。

 彼女の名を粼 未来せせらぎ みらいと言う。

「はーい!みんな!げんきぃ?みらいはげんきぃ!」

 かつて彼女を見た人達は『アイドル』という概念を彼女そのものに向けていた。



 今から数年前、ある剣士達が会場でとある話をしていた。

「なぁ……我々が推してるのは一体どの子だったんだろうか。」

 紫の剣士……黄泉嶋はふとあることを考えた。

「どうしてそんなこと聞くんだ。」

「考えてみろ、天ノ川。アイドルを応援する組織だったかつての怒琉雄堕は今となっては剣を振るって戦う戦士だ。何をどうすればペンライトを剣にするんだ。」

「……考えるのは君の方だ、あぁ、怒琉雄堕が何を推してるかなんてもう考える気もない。それどころか推してるアイドルがいたステージはもはやある意味で武道館だ。」

「……何も上手いこと言えとか言ってない。」

「でもな……俺の会員番号はまだ生きてるんだよ。」

 そこには1番と書かれた粼未来のファンクラブ会員カードが存在していた。

「……お前が1番なのか!?」

「あぁ……もう2番も3番もここの世界にはいないんだがな。生き残るのもナンバーワンってな……はは。」

「お前今日上手いからうざいな。」

「やめろ、泣く。」

 そんな会話をしながら、彼女のライブを見る日々を送って気づけば時は今から数ヶ月前へと変わる。


「え!?お前の叔母がアイドルの粼未来!?」

「……はい。」

 ある飯屋にて天ノ川は大声を出した。

「しかも未来ちゃんって俺らが結成したきっかけと言っても過言じゃないぐらい強いアイドルだぞ!マジで?」

「……はい」

 一は天ノ川の熱気を喰らい、熱すぎる威圧に今でも飛ばされそうになっていた。

「……」

「それでさ!未来ちゃんって?家だとどんな感じなの?というか未来ちゃんの幼少期の写真とかある?あ、もしくはその部屋着の未来ちゃんの写真とか、欲を言えば下……」

「……守秘義務!」

 一はそう言い、言葉で黙らせた。

「……全く、お前らはうちの店で何を騒いでいる。」

 いつもと違うバイトの服装で黄泉嶋さんは二人の間に姿を現した。

「それが聞いてくれよ!こいつ未来ちゃんが叔母だとか言い出してさ!それで」

「わかった。もういい……羨ましいな。」

 黄泉嶋さんはそう言うとそそくさと仕事に戻る。


 
 そして現在。

「――これで、メロスは激怒した。へと繋がります。こうしてメロスはパンクロッカーへとなりますが、次から重要になるのでよく覚えてくださいねー。」

「先生、なんで授業中にロックバンドの友情物語に姿を変えるのでしょうか。というかそもそも国語ですかこれ。」

「うるせぇ、だまれ、怒るぞ。」

「このご時世に!?」

 ふと授業を受けながら過去のことを思い出した一。

 クラスでは国語の授業で珍しく笑い声が響いていた。

「あ、んじゃ……粼、ここ分かるか?」

「……はい、メロスはエレキギターを破壊した。」

「……うん、まぁ正解だ。」

 適当に答えたのが正解だった一はニヤリと笑った。

「……ったく、お前ほんと運で正解するからおかしいだろ。」

「……先生、運も実力のうちっすよ。」

 先生はふふっと笑い、授業はそのまま終わった。


「……」

 一はその日の放課後、不安そうな顔をしながら帰る。

「……おいなんか言えよ。」

 増井はそんな一の暗い顔を見ながらも、声をかける。

「……あぁ、おう。」

「なんか嫌なことでも思い出したか?」

「……俺の叔母ってアイドルだったじゃん?」

「知らねえよ、読者もこの話で初耳だわ。」

「……そっか。粼未来って知ってる?」

「あぁ……え、もしかしてもしや?」

「そそ、そのもしや。」

「まじかよ!サインくれよ!」

 ため息をつきながら一は喋る。

「あのな、みんなそう言うけど普通に無理!それにそもそも父親の家系だから色々と……」

 そんな一の元に一の口を指で止める女性が現れた。

「色々と何?」

「……!?」

「せ、せ、粼未来だァァァァァ!!!!!」

「ちょっと!急に大声出さないでよ!ほらサインあげるから黙ってて!」

「はぁい」

 増井はにこにこしながら黙り始める。


 そんな三人は一の家に集まった。

「……で、急に何のようだよ。」

「一に頼みがあってきたの。」

 そう言うと未来はボイスレコーダーを出した。

 その音声の中には一の父親とその父親の弟の二人の音声が流れてきた。

「ちょっと待てよ!一の父さんってそもそも爆発して死んだんじゃ……」

「あぁ、幼い頃は俺もそう思ってたよ……けど今こうして存在している。あの廃研究所をアジトにしてな。」

「……え?」

 ふと過った記憶を言おうとするも口を抑え黙る増井。

「知ってるよ、お前らがあの研究所を徘徊して俺の過去を見ようとしてたことくらい。」

「……バレてんのかよ。」

「あんなんでバレないとでも思ってんのか?」

 そう言うと一は冷蔵庫の中にあった紅茶を飲む。

「んで粼一、この俺の父親がなぜ生きてるのか?って疑問だがアイツはあいつであってあいつじゃない。世の中に存在するエイリアン?だとかゴーストの部類だと思う。」

「ならそいつ倒せばいい話だろ?簡単じゃねえか。」

「そういう問題じゃなくて……粼家に関する問題でな。」

「なら尚更だ……俺がアイツら倒してくる。粼家?関係ねえよ。俺にとっちゃ他所だからな。」

 増井は一人で挑もうとする。

「待てよ……」

「なんだ?」

 一は増井を止めた。

「お前、音声しっかり聞いたか?子供の教育を間違えた……恐らく俺を粛清するつもりだ。」

「あぁ?それがどうしたよ。」

「ったく、他所のお前一人で突っ込んで解決する家族事情があってたまるかよ。……俺も行く。」

「そう来なくっちゃ。」

 二人は真っ直ぐ歩き出した。

「……ちょっとそこのおふたりさん。」

 そんな二人を止める声がまた一人。

「今度はなんだ。」

「いつも通り俺も入れてくれないと。」

「「当たり前だろ。」」

 猪原の声によって三人チームが結成された。

「でもアジトも何もかも分かるが……必要なものがある。」

「……なんだい?」

「修行だよ。」

 指をパチンと鳴らし、辿り着いた先はいつもの道場……という名のキュウムの家だ。

「来る日まで空き時間、俺達は強くなる必要がある。」

 そう言い、両手に剣を一本ずつ持つ一。

「……やるか?」

「やる。」

「ったり前だ。」

 などと言いながらお互いに攻撃を向ける三人。

(力の増井……頭脳派の猪原……こんな二人でも俺の運には負ける……そして、俺の父親も運が高いらしい。そんなので俺は……勝てるのか?)

 慣れない二刀流の手つきで対応はしてくも奇跡的なものばかり。体力の高い増井や知恵の働く猪原のようなそんな能力が俺にあるのだろうか……。

 日々の修行の中でその疑問は大きく縛り付けるのであった。


 一方その頃、未来。

 「……みんな、無事だといいのだけれど。」

 マネージャーの連絡を確認しながら未来はスマホとにらめっこ。

『芸能界引退の件について』

「そういえば身内には何も伝えてなかったな……」

 未来は長椅子で横になりながらふと色んなことを考える。

 そして、マネージャーに電話をすることにした。
 
 「南野……ねぇ、私の引退ライブのニュースっていつか分かる?」

「えぇ……というか本当にするんですか?」

「するからこう言ってるんじゃないか……ねえ、南野……いや、あなた。」

「知ってんの親戚だけなのに……誰かに聞かれても知らないです……ぞ?」

「うっさい!それに、お腹の子もそろそろ大きくなるし……」

 その日の夜、世間が驚いた。

 つづく
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