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第22話 あの頃育てた花は忘れ去られて散る
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第22話 あの頃育てた花は忘れ去られて散る
大雨の夜の街で人々は驚きを隠せないまま、街をさまよっていた。
「嘘だろ……未来ちゃん。」
「おい!どうしてだよ!これが運命かよ!」
かつて愛していたものが姿を消す、失うということは人々に絶望を与えていく。
それはもちろん家族にも伝わっていく……。
「おい!一!」
慌てて走る猪原の持っているスマホを見て一は今起きている話題を知った。
「……フッ。」
「フッ……じゃねえよ!何この時も冷静でいられるんだよ!バカか!?」
「……叔母らしいなって思ってな。こんな家族が揉めている時だからこそ違う大きなニュースを生み出す……なかなかに面白いじゃんかよ。」
一はそう言うといつものように剣を振った。
「ったく……君というやつは……」
だがこのニュースのお知らせが届いたのはもちろん一だけではない。
それは一の父である彼にも届いている。
「……そうか。未来のやつ、暴挙に出たか。」
「なんだ、零次。何のニュースを読んでいる。」
「珍しいな零士兄さん……僕の事を名前で呼ぶなんて。まさか妹が言ってた宇宙人説が有力だったりして……。」
そんなジョークを言いつつも顔色を伺う零次。
「そんな訳ないよな……。」
「あぁ……俺が兄じゃない日があったか?ん?」
「兄さんは兄さんだ……うん」
あまりの威圧に思わず誤魔化すしか選択肢は見当たらなかった。
「それにこの家の秘宝である雷の剣ってのはこの俺が所有している……あいつが偽物を作るとこは想像してなかったがな……。」
「へぇ……我が家の秘宝ねぇ。んで一のやつはそれをどうしたんだい?」
「各末狩りに使ってる各末らしいからきっと狩りでも知ってるって意味じゃねえの?」
「直訳しすぎでしょ。」
「……フン、そうだな。だが、結局我が家の宝刀がモデルなんだ……所詮やつの剣は偽物、本物には叶うわけがない。」
宝刀を確認するや、誇らしげにそう言うと安心したかのような表情で刀を元の位置に置いた。
一方その頃、アサナシア。
「ねぇねぇ!どうしてこんなところにいるの!」
「……ちっ、喋るな気付かれる。」
アサナシアは研究所へと侵入していた。
(ったく……どうしてこんなことになったんだか……)
アサナシアは経緯を思い出そうとしていた。
「はぁ……」
「もう!なんでため息なんかついてるの?」
「なんでこんなとこに来ちまったんだろうな……って呆れてきたんだよ。っくそが。」
「……天ノ川さんに頼まれたからでしょ。」
「……あー、そうだった。アイツが頼んできやがったんだ。」
数分前、アサナシアと天ノ川。
「なぁお前にひとつ頼んでいいか……?」
「俺をここに呼ぶってことはだいたいそんなもんだろうとは思っているが……用件は?」
「……ったく、お前のせいであそこの研究所もクビになったんだからよぉもうちょっと俺を敬ったりとかそういうの」
「……お、おう。……いや元はと言えばほとんどお前に問題がある気がするのだが。」
なんて話をしながらアサナシアは周りの視線を気にしながら天ノ川から貰った資料を拝見する。
「……へぇ、あんたもなかなかの悪だよな。雷の刀盗めってよォ……」
「……俺が出来るのはこれくらいだからな。報酬は出す。」
「……その報酬期待しますわ。」
そして今。
「あー思い出したわ。そうだそうだ雷の刀を盗めって話だったな。」
「そうでしょ!盗むんでしょ!」
なんて話しながら侵入する二人に謎の男が声をかける。
「……そこで何をしてるんだ。」
「……あ?」
「私は粼零次……この研究所をもつ兄のもとで薬品を使用した研究を主に行っている。」
「……粼ねぇ、俺が今一番嫌いな苗字だ!」
殴り掛かるアサナシアをゆっくりと背負い、投げる零次。
「なに!?」
「お前、各末使ったら誰でも倒せるとか思ってるだろうが……無理だからな。」
「何言ってんだ?俺は各末を消す能力者だ。」
「なに!?」
そう言うと零次の体を掴む。
「お前は俺に勝てねえ」
「それはどうかな?」
零次はそう言うと、余裕そうな顔でアサナシアをぶん投げた。
「……なんだとてめぇ!?」
「侵入者には……死を……」
「ダメ!」
そんな二人の間に入るランフー。しかし相手が悪かったのだろう、粼家の中で唯一見えない彼には意味などない。
ランフーをすり抜けてアサナシアに攻撃する零次。
「がはっ!!」
「侵入者には死を……なんて言うが、やっぱこれほどの力を持って殺すのはもったいない放り投げよう。」
力を思いっきり強化してぶん投げられたアサナシア。
「アサナァァァ!!!」
ランフーは思いっきり走った。
その声が目の前の男に届かないことも知らずに、その涙が目の前の男に見えないことも知らずに。
「もうやめてよ!……やめて……ください……」
その悲鳴が男の耳にも聞こえないことも知らずに。
同刻、一達は自分の能力を活性化させていた。
「よし、これでみんな前より良くなったっしょ。」
「あぁ、新技だってできたしな……」
一は自信満々な増井に頷いた。
「私も動けたし今日はもういいわ……」
「メイちゃん疲れたからここ揉んでよぉ」
「はぁ?なんで私が……つーかどこのこと言ってんのよ。」
「股。」
「ぶっ飛ばすわよ。」
メイちゃんはいつも通りの言い方で周りに言い放った。
そしてそこに忍び寄る影。
「……誰かいるな?」
一はその気配に気づいて、近くにあった泥水を気配の元である男の股目掛けて思いっきり投げた。
「おい!何するんだよ……」
そこに現れたのは見覚えのある父親の顔だった。
「酷いことするなぁやめろよォ……パパ、おもらししたみたいになったじゃないか。」
「……は?何がパパだよ。気持ち悪。」
一はそう言うと刀を抜こうとする。
「やめとけ!あいつとの対決は今じゃねえ!」
「そうだぞ、我が変態息子。……それに、そこの友達の言う通りだ。戦うのは今じゃない……。」
余裕そうな表情で一を見つめる零士。そんな見つめられた一の怒りを抑えようとする猪原。
「どけ!コイツは絶対に俺が……今すぐに!」
「だから今じゃないんだ!目を覚ませ!」
猪原は思いっきり一を殴り黙らせる。
「……」
「……」
突然降った霧雨がその場にいるものたちの肩を濡らす。
「取り込み中になっちまったか……俺は去るよ。じゃあな、変態紳士の息子。」
一は殺意の眼差しを父親に向け、滞った空間をその身に感じた。
父親はその視線を浴びながらびしょ濡れの股間を恥ずかしそうに隠してその場を去った。
「ねぇ、あの人股間抑えてたよね……おねしょかしら?」
「まさか……どう考えてもお子さんなんて言える年齢じゃなかったわよ……どう見てもおっさんだったわよ。」
周りのお姉さま方の声が不覚にも刺さった。
「……なんか、ふふっ、可哀想……だな。」
増井は思わず笑った。
その日の夜、とある動画配信サービスにて。
「みなさん、私……粼未来は引退します!」
大都会の街にある大きなモニターでも映された配信は全国で話題を呼び起こした。
「そして……応援してくださった皆様のために……引退ライブを開催します!」
鳴り止まない歓声。
「来る六月一日…この日を境に私はアイドルとしての幕を閉じます。」
そのニュースが話題になり、世間はまたしても注目する。
零次は同刻、一に街の海岸で会う。
「……伝言だ。」
「叔父さんも大変だね。」
「あぁ……お前のお父さんにはいつも困ってる。」
苦笑いしながら、受け取った伝言を確認した。
丸まって輪ゴムでまとめられた資料にはこう書いてた。
『六月一日、私は我が息子に決闘を申し込む。』
一は目の底を輝かせた。
つづく
大雨の夜の街で人々は驚きを隠せないまま、街をさまよっていた。
「嘘だろ……未来ちゃん。」
「おい!どうしてだよ!これが運命かよ!」
かつて愛していたものが姿を消す、失うということは人々に絶望を与えていく。
それはもちろん家族にも伝わっていく……。
「おい!一!」
慌てて走る猪原の持っているスマホを見て一は今起きている話題を知った。
「……フッ。」
「フッ……じゃねえよ!何この時も冷静でいられるんだよ!バカか!?」
「……叔母らしいなって思ってな。こんな家族が揉めている時だからこそ違う大きなニュースを生み出す……なかなかに面白いじゃんかよ。」
一はそう言うといつものように剣を振った。
「ったく……君というやつは……」
だがこのニュースのお知らせが届いたのはもちろん一だけではない。
それは一の父である彼にも届いている。
「……そうか。未来のやつ、暴挙に出たか。」
「なんだ、零次。何のニュースを読んでいる。」
「珍しいな零士兄さん……僕の事を名前で呼ぶなんて。まさか妹が言ってた宇宙人説が有力だったりして……。」
そんなジョークを言いつつも顔色を伺う零次。
「そんな訳ないよな……。」
「あぁ……俺が兄じゃない日があったか?ん?」
「兄さんは兄さんだ……うん」
あまりの威圧に思わず誤魔化すしか選択肢は見当たらなかった。
「それにこの家の秘宝である雷の剣ってのはこの俺が所有している……あいつが偽物を作るとこは想像してなかったがな……。」
「へぇ……我が家の秘宝ねぇ。んで一のやつはそれをどうしたんだい?」
「各末狩りに使ってる各末らしいからきっと狩りでも知ってるって意味じゃねえの?」
「直訳しすぎでしょ。」
「……フン、そうだな。だが、結局我が家の宝刀がモデルなんだ……所詮やつの剣は偽物、本物には叶うわけがない。」
宝刀を確認するや、誇らしげにそう言うと安心したかのような表情で刀を元の位置に置いた。
一方その頃、アサナシア。
「ねぇねぇ!どうしてこんなところにいるの!」
「……ちっ、喋るな気付かれる。」
アサナシアは研究所へと侵入していた。
(ったく……どうしてこんなことになったんだか……)
アサナシアは経緯を思い出そうとしていた。
「はぁ……」
「もう!なんでため息なんかついてるの?」
「なんでこんなとこに来ちまったんだろうな……って呆れてきたんだよ。っくそが。」
「……天ノ川さんに頼まれたからでしょ。」
「……あー、そうだった。アイツが頼んできやがったんだ。」
数分前、アサナシアと天ノ川。
「なぁお前にひとつ頼んでいいか……?」
「俺をここに呼ぶってことはだいたいそんなもんだろうとは思っているが……用件は?」
「……ったく、お前のせいであそこの研究所もクビになったんだからよぉもうちょっと俺を敬ったりとかそういうの」
「……お、おう。……いや元はと言えばほとんどお前に問題がある気がするのだが。」
なんて話をしながらアサナシアは周りの視線を気にしながら天ノ川から貰った資料を拝見する。
「……へぇ、あんたもなかなかの悪だよな。雷の刀盗めってよォ……」
「……俺が出来るのはこれくらいだからな。報酬は出す。」
「……その報酬期待しますわ。」
そして今。
「あー思い出したわ。そうだそうだ雷の刀を盗めって話だったな。」
「そうでしょ!盗むんでしょ!」
なんて話しながら侵入する二人に謎の男が声をかける。
「……そこで何をしてるんだ。」
「……あ?」
「私は粼零次……この研究所をもつ兄のもとで薬品を使用した研究を主に行っている。」
「……粼ねぇ、俺が今一番嫌いな苗字だ!」
殴り掛かるアサナシアをゆっくりと背負い、投げる零次。
「なに!?」
「お前、各末使ったら誰でも倒せるとか思ってるだろうが……無理だからな。」
「何言ってんだ?俺は各末を消す能力者だ。」
「なに!?」
そう言うと零次の体を掴む。
「お前は俺に勝てねえ」
「それはどうかな?」
零次はそう言うと、余裕そうな顔でアサナシアをぶん投げた。
「……なんだとてめぇ!?」
「侵入者には……死を……」
「ダメ!」
そんな二人の間に入るランフー。しかし相手が悪かったのだろう、粼家の中で唯一見えない彼には意味などない。
ランフーをすり抜けてアサナシアに攻撃する零次。
「がはっ!!」
「侵入者には死を……なんて言うが、やっぱこれほどの力を持って殺すのはもったいない放り投げよう。」
力を思いっきり強化してぶん投げられたアサナシア。
「アサナァァァ!!!」
ランフーは思いっきり走った。
その声が目の前の男に届かないことも知らずに、その涙が目の前の男に見えないことも知らずに。
「もうやめてよ!……やめて……ください……」
その悲鳴が男の耳にも聞こえないことも知らずに。
同刻、一達は自分の能力を活性化させていた。
「よし、これでみんな前より良くなったっしょ。」
「あぁ、新技だってできたしな……」
一は自信満々な増井に頷いた。
「私も動けたし今日はもういいわ……」
「メイちゃん疲れたからここ揉んでよぉ」
「はぁ?なんで私が……つーかどこのこと言ってんのよ。」
「股。」
「ぶっ飛ばすわよ。」
メイちゃんはいつも通りの言い方で周りに言い放った。
そしてそこに忍び寄る影。
「……誰かいるな?」
一はその気配に気づいて、近くにあった泥水を気配の元である男の股目掛けて思いっきり投げた。
「おい!何するんだよ……」
そこに現れたのは見覚えのある父親の顔だった。
「酷いことするなぁやめろよォ……パパ、おもらししたみたいになったじゃないか。」
「……は?何がパパだよ。気持ち悪。」
一はそう言うと刀を抜こうとする。
「やめとけ!あいつとの対決は今じゃねえ!」
「そうだぞ、我が変態息子。……それに、そこの友達の言う通りだ。戦うのは今じゃない……。」
余裕そうな表情で一を見つめる零士。そんな見つめられた一の怒りを抑えようとする猪原。
「どけ!コイツは絶対に俺が……今すぐに!」
「だから今じゃないんだ!目を覚ませ!」
猪原は思いっきり一を殴り黙らせる。
「……」
「……」
突然降った霧雨がその場にいるものたちの肩を濡らす。
「取り込み中になっちまったか……俺は去るよ。じゃあな、変態紳士の息子。」
一は殺意の眼差しを父親に向け、滞った空間をその身に感じた。
父親はその視線を浴びながらびしょ濡れの股間を恥ずかしそうに隠してその場を去った。
「ねぇ、あの人股間抑えてたよね……おねしょかしら?」
「まさか……どう考えてもお子さんなんて言える年齢じゃなかったわよ……どう見てもおっさんだったわよ。」
周りのお姉さま方の声が不覚にも刺さった。
「……なんか、ふふっ、可哀想……だな。」
増井は思わず笑った。
その日の夜、とある動画配信サービスにて。
「みなさん、私……粼未来は引退します!」
大都会の街にある大きなモニターでも映された配信は全国で話題を呼び起こした。
「そして……応援してくださった皆様のために……引退ライブを開催します!」
鳴り止まない歓声。
「来る六月一日…この日を境に私はアイドルとしての幕を閉じます。」
そのニュースが話題になり、世間はまたしても注目する。
零次は同刻、一に街の海岸で会う。
「……伝言だ。」
「叔父さんも大変だね。」
「あぁ……お前のお父さんにはいつも困ってる。」
苦笑いしながら、受け取った伝言を確認した。
丸まって輪ゴムでまとめられた資料にはこう書いてた。
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一は目の底を輝かせた。
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