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第23話 星が消える時
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第23話 星が消える時
当日。会場には多くの人が集まり、一人の一輪の花が登場するのを待っていた。
そんな多くの人がいる中で、1番分かりやすそうな位置に座った天ノ川は遺影を持ってきて参戦していた。
「なぁ……俺達が応援していたお嬢が引退するらしい。」
光の剣士と先代の風の剣士の遺影を片方ずつ手に持ち、天ノ川はそう呟いた。
「お前たちを失った時とは違う別の喪失感だよ……短いようで長い推し活よな……」
天ノ川は剣を地に刺し、姫を待つステージをまっすぐ見つめた。
「五剣士の末裔が全員オタクだったなんて……俺らの先祖は半分笑ってそうだな……」
そんなことを呟いていると黄泉嶋が近づいた。
「やはりここにいたか……」
「お前か……」
「五剣士の血筋も我々で最後になるだろう……」
「認めたくないが、風の剣士も光の剣士も存在はおろか、末裔の存在はいないに等しいからな……」
「水の剣士はあれから姿すら分からない。なぁ……私達って、一体なんだったんだろうな。なんのために推し活してなんのために剣を振るってきたんだろうな……。」
「そんなの俺にも分からない。」
そう言うと黄泉嶋の方を向き、真っ直ぐとした視線で見つめる天ノ川。
「……でも俺達が出来るのは彼女の引退を見届けることだけだ。アイドルってのは俺らに勇気や希望、癒しを与えてくれる素晴らしい存在だ。」
「あぁ……何度も私達はお世話になった。」
「なら俺達が出来るのは、その授かった恩を後世に託していくことだろ……。」
「……フン、珍しく名言を残したな。」
「はは……チケットならここにある、最後かもしれない姫を一緒に見届けようぜ?」
「お前の誘いはいつも断るようにしてるが……いいだろう。」
「その言葉の前置きやめない!?」
気にせず堂々と席に座る黄泉嶋。
「あぁ、だが……その前に一つ聞きたい。」
「え、なに?」
「五剣士の話なんだが……実は六剣士かもしれないって話は聞いたことがあるか?」
「……え?」
「その反応は知らなそうだな……まぁ知らないのも当然だ。あくまで都市伝説や噂話の取り柄にすぎないからな。」
黄泉嶋はそう言うと自らの剣を触りながら、闇の力をこれでもかと出し始める。
「闇の剣は力を入れると紫色に姿を変える……お前の剣は赤く光るものだろう?」
「……そうだな。」
「その剣は水色にも見えれば緑色にも見え、白や黄色……はたまた赤に光るのだとか……」
「なぁ……その剣、もう出会ってるかもしれないよな。」
ふと二人はある男を思い出した。
一方、その頃。会場の駐車場にて。
「……やはり来たか。」
父親の姿をこうして見るのは初めてである……一は心の中でそう思いながら顔を見る。
しかしその見た目は顔はまともであるものの、後ろ姿は緑色の皮膚で変色しており、後頭部も突き出ている。
「……へぇ、もう親父とは呼べそうにないな。つーか、元々か。そんな見た目してたら人ですらねえもんな。」
「地球人の変装もなかなかに面白いが……形成をそのままにするのは難しくてな。」
フッと笑いながら刀を抜刀する一。
「前置きはこれくらいにして始めようか……」
「……この体はやはり時間切れのようだ。」
「身体……?」
ゲームでプレイヤーがアイテムを出すようにその動きはとても簡単にいとも容易くあるものを出した。
「君の……友達……だったっけ?」
祐四の遺体を身にまとう姿は本人そのものだ。
「腐った遺体は不要だ……我が星ではこのように本来の姿を隠して歩くこの星でいう法律があってね……」
説明をしながらも遺体の皮を被る。
「目や皮膚、パーツがある程度揃ってるなら地球人の遺体は我が星、メサイアのシルクウェポンに適切な素材でね……こうして僕達は地球人に姿を溶け込ませることが出来る。」
「……」
もう一つの剣を取り出し、一は思いっきり腹部に傷を入れる。
「……お前のその化けの皮の仕組みがよくわかっただけでも今日に意味がある。」
「フン……ついに見れたか、我が息子の二刀流とやらを。」
「何度も言わせんじゃねえよ皮被り地球人ごっこが。俺は粼一そのもの、お前はただの宇宙人だ!」
「……面白い!」
名も無き者が同じ二刀流の剣を構えた時、戦いの火蓋は切って落とされた。
一方、会場の裏では。
「……」
一人、ドームの前で緊張しているアイドルがいた。
「……卒業ライブしちゃうか。」
一人緊張していた未来はゆっくりと着実に上がる台に乗って待っている会場のファンのために、上がり向かっていく。
「……」
ピアノのイントロと共に彼女の声が会場に響き出す。
会場は沈黙し、中には涙を流す者がいた。
これが伝説のアイドル故に起こせる『感動』である。
「やはり粼の叔母は伝説なんだな……」
「なんかこう生で見るとくるもんがあるねぇ……」
警備として任されていた増井と猪原は思わず心の中にある何かが刺さったようだ。
「そうだねぇ……生で見ると来るもんがあるよね。」
そんな二人のところに現れた零次。
「は?あんたもしかして……」
増井は慌てたながらも敵が来たかのようにファイティングポーズを構える。
「粼零次……あのアイドルの兄であの父親の弟。だが……粼家は僕や一で終わらせるべきだな。」
「「……」」
「あぁ、いや別に未来の子供はそれはそれで嫁いだからこそよその子のように私は扱うさ……」
零次はそう言うと上を見た。
「本当の兄さんもそれを望んでいるだろうさ。」
「零次さん……」
「私はこの家の血筋でいることを誇らしく思っている。だからこそ……すべきことはわかってるつもりだ。」
増井はそんな彼を見つめ、気の毒そうな顔をした。
「あんた……俺と同じだな。」
「うん?」
「なんやかんやで孤独な気がする。俺もアイツに会うまで孤独のガキだったからな。なんやかんやで高校生活は結構楽しめそうだ。」
「……そう言う私からしたら君は私の兄のようだ。」
「そうかい……」
増井の反応を見て鼻で笑った零次はライブに集中する。
「なんだこいつ……」
「まぁまぁ気にしないでライブを楽しもうぜ。」
猪原は増井の機嫌取りになった。
その近く、剣士の二人は推し活していた。
「うぉおおお!やはり我が姫は偉大だ!」
「この儚くも力強い歌声……そして何よりかっこかわいい容姿!素晴らしい……ぐはっ」
黄泉嶋は血反吐を吐いた。
「黄泉嶋……?、よ、黄泉嶋ァ……!!!」
「気にするな。素晴らしい彼女を見てつい血を吐いただけさ。そういうお前は……」
「ん?」
天ノ川は鼻から大量の血を出していた。
「あ……アイドルのさ、ミニスカって素晴らしいよな。特にダンスが激しい曲だとさ……位置次第によってさ……その下品なのですが……その……パン」
言おうとした瞬間、パンっと!殴られた。
「痛いな!言ってないだろ!ツかもしれなければティーかもしれない!」
「どちらにしても同じだろ愚か者が。」
「ならあれだよ!粉だよ!パン粉だよ!降り注いでるのが素晴らしいよな!」
「そんな姫がおるか!」
天ノ川はたんこぶがふたつできた。
「いってぇ……ナイスアタック。」
「フン……相変わらずお前というのは馬鹿だな。」
そんな二人の会話とともにライブもまもなく……終わりを迎える。
「ありがとうございました!……それではこれで最後の曲にしたいと……思い……ま……す……」
泣きそうな未来をみんなが見ていた。
「それでは聞いてください……私のデビュー曲となります……『Contrast』」
会場は一気にしんみりとした空気へと変わり、世界は彼女一人にゆっくりと視線が動き出した。
つづく
当日。会場には多くの人が集まり、一人の一輪の花が登場するのを待っていた。
そんな多くの人がいる中で、1番分かりやすそうな位置に座った天ノ川は遺影を持ってきて参戦していた。
「なぁ……俺達が応援していたお嬢が引退するらしい。」
光の剣士と先代の風の剣士の遺影を片方ずつ手に持ち、天ノ川はそう呟いた。
「お前たちを失った時とは違う別の喪失感だよ……短いようで長い推し活よな……」
天ノ川は剣を地に刺し、姫を待つステージをまっすぐ見つめた。
「五剣士の末裔が全員オタクだったなんて……俺らの先祖は半分笑ってそうだな……」
そんなことを呟いていると黄泉嶋が近づいた。
「やはりここにいたか……」
「お前か……」
「五剣士の血筋も我々で最後になるだろう……」
「認めたくないが、風の剣士も光の剣士も存在はおろか、末裔の存在はいないに等しいからな……」
「水の剣士はあれから姿すら分からない。なぁ……私達って、一体なんだったんだろうな。なんのために推し活してなんのために剣を振るってきたんだろうな……。」
「そんなの俺にも分からない。」
そう言うと黄泉嶋の方を向き、真っ直ぐとした視線で見つめる天ノ川。
「……でも俺達が出来るのは彼女の引退を見届けることだけだ。アイドルってのは俺らに勇気や希望、癒しを与えてくれる素晴らしい存在だ。」
「あぁ……何度も私達はお世話になった。」
「なら俺達が出来るのは、その授かった恩を後世に託していくことだろ……。」
「……フン、珍しく名言を残したな。」
「はは……チケットならここにある、最後かもしれない姫を一緒に見届けようぜ?」
「お前の誘いはいつも断るようにしてるが……いいだろう。」
「その言葉の前置きやめない!?」
気にせず堂々と席に座る黄泉嶋。
「あぁ、だが……その前に一つ聞きたい。」
「え、なに?」
「五剣士の話なんだが……実は六剣士かもしれないって話は聞いたことがあるか?」
「……え?」
「その反応は知らなそうだな……まぁ知らないのも当然だ。あくまで都市伝説や噂話の取り柄にすぎないからな。」
黄泉嶋はそう言うと自らの剣を触りながら、闇の力をこれでもかと出し始める。
「闇の剣は力を入れると紫色に姿を変える……お前の剣は赤く光るものだろう?」
「……そうだな。」
「その剣は水色にも見えれば緑色にも見え、白や黄色……はたまた赤に光るのだとか……」
「なぁ……その剣、もう出会ってるかもしれないよな。」
ふと二人はある男を思い出した。
一方、その頃。会場の駐車場にて。
「……やはり来たか。」
父親の姿をこうして見るのは初めてである……一は心の中でそう思いながら顔を見る。
しかしその見た目は顔はまともであるものの、後ろ姿は緑色の皮膚で変色しており、後頭部も突き出ている。
「……へぇ、もう親父とは呼べそうにないな。つーか、元々か。そんな見た目してたら人ですらねえもんな。」
「地球人の変装もなかなかに面白いが……形成をそのままにするのは難しくてな。」
フッと笑いながら刀を抜刀する一。
「前置きはこれくらいにして始めようか……」
「……この体はやはり時間切れのようだ。」
「身体……?」
ゲームでプレイヤーがアイテムを出すようにその動きはとても簡単にいとも容易くあるものを出した。
「君の……友達……だったっけ?」
祐四の遺体を身にまとう姿は本人そのものだ。
「腐った遺体は不要だ……我が星ではこのように本来の姿を隠して歩くこの星でいう法律があってね……」
説明をしながらも遺体の皮を被る。
「目や皮膚、パーツがある程度揃ってるなら地球人の遺体は我が星、メサイアのシルクウェポンに適切な素材でね……こうして僕達は地球人に姿を溶け込ませることが出来る。」
「……」
もう一つの剣を取り出し、一は思いっきり腹部に傷を入れる。
「……お前のその化けの皮の仕組みがよくわかっただけでも今日に意味がある。」
「フン……ついに見れたか、我が息子の二刀流とやらを。」
「何度も言わせんじゃねえよ皮被り地球人ごっこが。俺は粼一そのもの、お前はただの宇宙人だ!」
「……面白い!」
名も無き者が同じ二刀流の剣を構えた時、戦いの火蓋は切って落とされた。
一方、会場の裏では。
「……」
一人、ドームの前で緊張しているアイドルがいた。
「……卒業ライブしちゃうか。」
一人緊張していた未来はゆっくりと着実に上がる台に乗って待っている会場のファンのために、上がり向かっていく。
「……」
ピアノのイントロと共に彼女の声が会場に響き出す。
会場は沈黙し、中には涙を流す者がいた。
これが伝説のアイドル故に起こせる『感動』である。
「やはり粼の叔母は伝説なんだな……」
「なんかこう生で見るとくるもんがあるねぇ……」
警備として任されていた増井と猪原は思わず心の中にある何かが刺さったようだ。
「そうだねぇ……生で見ると来るもんがあるよね。」
そんな二人のところに現れた零次。
「は?あんたもしかして……」
増井は慌てたながらも敵が来たかのようにファイティングポーズを構える。
「粼零次……あのアイドルの兄であの父親の弟。だが……粼家は僕や一で終わらせるべきだな。」
「「……」」
「あぁ、いや別に未来の子供はそれはそれで嫁いだからこそよその子のように私は扱うさ……」
零次はそう言うと上を見た。
「本当の兄さんもそれを望んでいるだろうさ。」
「零次さん……」
「私はこの家の血筋でいることを誇らしく思っている。だからこそ……すべきことはわかってるつもりだ。」
増井はそんな彼を見つめ、気の毒そうな顔をした。
「あんた……俺と同じだな。」
「うん?」
「なんやかんやで孤独な気がする。俺もアイツに会うまで孤独のガキだったからな。なんやかんやで高校生活は結構楽しめそうだ。」
「……そう言う私からしたら君は私の兄のようだ。」
「そうかい……」
増井の反応を見て鼻で笑った零次はライブに集中する。
「なんだこいつ……」
「まぁまぁ気にしないでライブを楽しもうぜ。」
猪原は増井の機嫌取りになった。
その近く、剣士の二人は推し活していた。
「うぉおおお!やはり我が姫は偉大だ!」
「この儚くも力強い歌声……そして何よりかっこかわいい容姿!素晴らしい……ぐはっ」
黄泉嶋は血反吐を吐いた。
「黄泉嶋……?、よ、黄泉嶋ァ……!!!」
「気にするな。素晴らしい彼女を見てつい血を吐いただけさ。そういうお前は……」
「ん?」
天ノ川は鼻から大量の血を出していた。
「あ……アイドルのさ、ミニスカって素晴らしいよな。特にダンスが激しい曲だとさ……位置次第によってさ……その下品なのですが……その……パン」
言おうとした瞬間、パンっと!殴られた。
「痛いな!言ってないだろ!ツかもしれなければティーかもしれない!」
「どちらにしても同じだろ愚か者が。」
「ならあれだよ!粉だよ!パン粉だよ!降り注いでるのが素晴らしいよな!」
「そんな姫がおるか!」
天ノ川はたんこぶがふたつできた。
「いってぇ……ナイスアタック。」
「フン……相変わらずお前というのは馬鹿だな。」
そんな二人の会話とともにライブもまもなく……終わりを迎える。
「ありがとうございました!……それではこれで最後の曲にしたいと……思い……ま……す……」
泣きそうな未来をみんなが見ていた。
「それでは聞いてください……私のデビュー曲となります……『Contrast』」
会場は一気にしんみりとした空気へと変わり、世界は彼女一人にゆっくりと視線が動き出した。
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