各末

蟹虎 夜光

文字の大きさ
24 / 31

第24話 もう戻れない家族

しおりを挟む
第24話 もう戻れない家族

 お互いの刃が当たり続ける。

「やるな……」

「……」

 二人の剣士はかつての記憶とは違うなんて思いながらも過去を思い出して笑う同級生との再会かのような空気感を生み出した。

「なぁ、お前もしかして……」

「なんのことかなぁ。僕は宇宙人だよ。」

「変装の割にはうますぎるくらいだなぁ……俺の勘が合っていたらきっとお前は……祐四本人だろ?」

 そう言われると、祐四は鼻で笑った。

「……やっぱり君は凄いや。」

「……んなもん誰でもわかるわ。」

 戦いの最中、二人は笑顔になっていった。

「実は!ある一言が!言えてなくてね!」

「へぇ!……それで成仏出来なかった!ってか!?」

「……はは、それに僕が死んだ時に少しくらい涙を流したって!良かったじゃないか!バ、バチは当たらないんじゃないのかい!?」

「はは……申し訳ないけど感情が死んでてね……」

「まったく!酷いなぁって思ったよ!」

 剣に魂を込めて放つ姿は拳の殴り合いに近い。

「それに!君は……もう少し人に対して考え方を考えるべきだ!」

「……なんでお前にそれを言われなきゃいけねえんだよ!」

「周りの女の子だっていつか離れるかもしれないよ!」

「そ、それは……い、いやそんなんじゃねえし!」

「それに!君の友達……いい腕してるけどちゃんと扱えてるの?リーダーさん?」

「さっきからなんだお前!一人暮らしの息子に対するオカンかよ!」

「……はは、やっぱこうして話すのが一番楽しいや!」

「……ったく、好きにしろ。」

 二人は笑いながらもお互いの風の剣をトドメの一撃として当てようとする。

「君にその剣が使いこなせるかな?」

「使いこなすんだよ……」

 一は雷刀を投げて風の剣だけに力を注ぎ、相手目掛けて同時攻撃で技を放つ。

「「はァァァァァ!!!!」」

 お互いの剣が当たると一瞬だけ虚無が生まれた。

「……やっぱり君は凄いや。」

 砂のように消えてく身体を確認し、一は剣をしまう。

「……お前もな。」

 一は無表情のまま、雷刀もしまい何事も無かったかのように祐四の皮が消えた宇宙人の顔面を殴り続ける。

 アホそうな面を見るや一は心の奥底から溢れてきた怒りを露わにする。

「お前が!……俺の人生を!めちゃくちゃにして!」

 脳裏に浮かんだ友の最期の瞬間。

「俺の友達を!」

 脳裏に浮かんだまだ父親として見れた男の顔。

「俺の家族を!」

 脳裏に浮かんだ彼女達の優しい声のかけ方。

「俺の仲間を!」

 彼は殺意に満ち溢れるほど、目の前の男を憎む。

「そうか……全部俺のせいだもんな……」

「巻き込みやがって!!!」

 憑依宇宙人と描かれた本を見つけるや、あっさりと燃やそうとする一。

「これさえなければ……俺は……」

「待て!それだけは!私を!お前は!」

「うるせぇ……都合の良い時だけ父親ヅラしやがって……お前なんか……」

 そう言い放ち、燃やそうとした瞬間、走ってとめた。

「それでこいつがやった事は報われるのかよ!」

「何止めてやがる……増井。」

 止めたのはライブから出た増井だった。

「俺さぁ思うんだけどさ……己の罪を死んだだけで許されるなら……誰だって簡単に死んで終わる。命なんて重いのに軽いように見えてるだろ?」

「……お前らしくない事を言うなぁ。」

「だから……こいつへの判決は……殺しよりも過酷なもんにするべきだと思う。」

 そう言うと宇宙人の顔を一発殴り、増井は微笑む。

「お前の友達だけじゃねえ、俺の友達もこいつに巻き込まれたんだよ。」

「……お前も?」

「ったくカンが鈍いな……まぁいい、だからコイツを別の扱い方でとっちめてやろうぜ!ってな」

 そう言うと増井の手により宇宙人は目隠しをされ、後ろからの当て身で気絶した。


「……!」

 次に彼が目を開けた先は研究所内だった。目の前は緑色の液体で見えない、それどころか身動きが出来ない。

「へぇ……これが宇宙人?タコとかそういう感じの可愛らしいものを想像してたけど……案外つまんない。」

「まぁそう言うなよ……マッシュ研究長のおもちゃになるんだ、むしろ気の毒な扱いをしなくてはな……。」

「こいつ元は研究者なんだっけ?……研究者が研究の材料になるなんてな……これほどの皮肉はないだろ。」

 そんな二人の会話を遮るように現れた男がいた。

「お疲れ様です!マッシュ会長!」

「……お、お疲れ様です!」

 二人の顔を見るやニヤリと笑うマッシュ。
 
「下がれ。」

「「はっ!」」

 二人はそそくさといなくなり、マッシュは実験の道具である彼の方をじっくりと見た。

「……実験対処931、粼零士や他多くの人間に化けていたとんでもない生命体ときた。」

「おい!お前!この俺に何をするつもりだ!」

「……」

 マッシュはつまんなそうな顔をすると電力を上げ、彼を気絶させる。

「暗黒物質そのものにしてやってもいいが……それでは私の計画の価値にすらならん。気の毒だとも思わないが……オモチャとして最高に良いものにしてやろう。」

 そう言うとマッシュは彼にガラス越しではあるが触れた。

「やってやりますねぇ!」

 高音で高らかに笑い、マッシュは研究を開始する。


 一方、その頃。大家さんのスナックにて。

「……ウチは本来、ガキのたまり場じゃないんだがね。」

「まぁいいじゃないか、ほら一……おつかれ。」

 増井は何故か思いっきり自分の飲み物をゴクリと一気に飲み込んだ。

「あんたそれただのコーラだろ?」

「うるせぇそういう気分なんだよ!」

「ガキのくせに雰囲気で酔ってんじゃねえぞコルァ!」

 大家さんと増井の会話はうるさいとしか思えなかった。

 反対側の隣には猪原がお茶を飲んでいた。

「そういやお前が考えて呼んだんだっけ?その……マッシュとか言うやつ?」

「……まぁ、研究者なら宇宙人の材料ってだけで釣れるかなぁ思ってね。天ノ川さんの友達にいたから聞いてみた。」

「研究者じゃなくても大体のオカルト好きはそういうの興味持ってると思うぞ……」

「まぁ……そんなわけなので、奇跡的にあんなコネ持ってた天ノ川さんに感謝だな。」

「……あの人のコネか。ある意味、あの人なりのケジメが着いたってことでいいのかな。」

「……さあな。ほら、早く食べないと冷めちまうぜ。」

 みんなはこの日の事を喜びながら飯に集中した。


 後日、粼家にて。

「なんだよ、休日に呼び出して。」

「いいからいいから。」

「うちの学校は明日からテストなんだけど。」

「いいからいいから。」

 二人を連れてやってきた先はどこにでもある家。

 表札には『岩田』と書かれている。

「いやここ岩田の家じゃねえか。」

「なぁうちのメンバーってさ、力の増井に知恵の猪原……でできてるだろ?」

「まぁ……そうだな。」

 増井は不思議と納得した。

「んじゃ足りないのは?」

「……え?そりゃ……兵とか?」

「確かに群れも大事だが……今までの戦いに合戦もなかっただろう。」

 増井は再び考え始める。

「……岩田が意味を持つとすれば優しさとか」

「おいおい、優しさがないってなら俺らってなんなんだよ。」

「「え」」

 二人は首を傾げる。

「え……?」

 思わず一も首を傾げた。

「……アイツの本来の武器、忘れたとは言わせねえぞ。」

「……なるほどね。」

 インターホンを鳴らし、出てきた岩田を確認するや一同は小中からの付き合いの二人は頷く。

「「こいつの武器は足だ」」

 岩田は思いっきり首を傾げる。

 そう……ここから、粼一、増井昌二、猪原陸遜……そして岩田虎太郎彼らの物語は本格的に始まる。そしてそれは多くの喜びと悲しみ、成長を得る少し変わった人生の中にある旅である。

 つづく
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

性別交換ノート

廣瀬純七
ファンタジー
性別を交換できるノートを手に入れた高校生の山本渚の物語

屈辱と愛情

守 秀斗
恋愛
最近、夫の態度がおかしいと思っている妻の名和志穂。25才。仕事で疲れているのかとそっとしておいたのだが、一か月もベッドで抱いてくれない。思い切って、夫に聞いてみると意外な事を言われてしまうのだが……。

与兵衛長屋つれあい帖 お江戸ふたり暮らし

かずえ
歴史・時代
旧題:ふたり暮らし 長屋シリーズ一作目。 第八回歴史・時代小説大賞で優秀短編賞を頂きました。応援してくださった皆様、ありがとうございます。 十歳のみつは、十日前に一人親の母を亡くしたばかり。幸い、母の蓄えがあり、自分の裁縫の腕の良さもあって、何とか今まで通り長屋で暮らしていけそうだ。 頼まれた繕い物を届けた帰り、くすんだ着物で座り込んでいる男の子を拾う。 一人で寂しかったみつは、拾った男の子と二人で暮らし始めた。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

処理中です...