各末

蟹虎 夜光

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第25話 帝王はただ一人

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第25話 帝王はただ一人

 某国にて。

「オルァ!!!」

 スタジアムにて無数の死体と共に男が血を浴びながら拳を掲げ始めた。

「各末使いは俺だけで充分だ……」

 男はそう言い放つと周りは歓喜の声をあげる。

 そんな男の前に一人現れる。

「おめでとうキング……これで」

「1999回だろ?」

「そうだとも。」

「いつもありがとよ……やはり各末狩りは面白い。最高のエンターテインメントってのはこういうのだろうな。」

 彼の拳の中に見える各末の元となる本には『無敗神話』とだけ描かれていた。

「帝王はただ一人……やはりこの男、キングのみ!またしても今大会の優勝者は彼に決まりました!皆様!大きな拍手をお願いします!」

 司会者の指示通りに鳴り止まない拍手。

 そう、この場はこれで収まるのであった。

「……一つ言おう。」

 キングがマイクを持ち始める。

「チャンピオンの特徴……教えてやろうか?」

 周りはざわつきはじめる。

「……闘志だよ。諦めない闘志だとかそんな少年漫画じみたセリフが……一番勝つものにピッタリなんだよ!」

 そしてマイクを掲げ、彼はこういった。

「お前らよ!闘志を抱け!各末を!最後の一人になるまで滅しろ!」

 周りは声を高らかに出し、興奮した。


 一方、いつもの彼らは。

(こんにちは、猪原です。今日から我々の学校はどこも夏休みを迎えることになりました。)

 猪原は拳と剣を交えて、修行する二人を見ながら解説をしようとする。

(あの戦いからしばらく経ったとはいえ、まだあの戦いの余韻は残りつつあります。それに不思議と二人は前よりも仲良しに見えます。)

 そんな猪原の目の先。

「いいね!ならこれはどうかな?」

 一の剣技に、増井は苦戦するも余裕そうな顔をする。

「やっぱ二刀流って凄いな……だが。」

 笑みを浮かべ、増井は鉄を身にまとったロボットのような戦士に姿を変える。

「……装着完了。」

「うっひょー!カッケー!」

「私も修行をそれなりにしました。猪原くんとメイさんのようにこれが私の変化した姿……鉄装甲戦士スチームアームズソルジャー……名をテッドとします。」

「なんで敬語!?」

「……では流派モードを切り替えましょうか。敬語じゃなくてよぉ……こういう喋り方つーのかな?」

「もうめんどくさいよ!」

 そんな会話をしていると後ろからグラスの中のお茶を揺らしながら現れた男が一人。

「ねぇ……なんでおれここに呼ばれたんだよ……」

「そ、そりゃ……お前……なぁ」

 猪原は思わず同情してしまう。岩田はそんな猪原の気持ちを察した。

「各末に関するもん分かるか?……ほら、昔書いてた妄想とかそういうの。」

「……ないなぁ。サッカーやってゲームして妄想どころか将来の夢とかなんか……」

「何も……?」

「ないなぁ。」

 増井と一を見ながら岩田は語り出した。

「夢ってもんじゃないけどさ……こういう友達は大切にしたいよな。」

「……そうだな。」

 猪原は岩田と同じ視線に立って笑顔でそう返した。

「だからお前も大切にしろよ……俺とか。」

「なんで本人がそれ言うの!?」

 岩田は笑いながら自分なりの修行を始めた。


 翌日、昼。

「あ、いや……実はなんだけど……こんなの当たりまして。」

 一は困惑しながらあるチケットを見せる。

「どれどれ……特賞……あなたは抽選の結果……アライブグランプリに当選しました……。」

 家のポストに入ってたと一はそう言った。

「なんだそれ……」

 そう言いながら猪原はスマホに触れるも当選したとスマホからメッセージを受ける。

「はぁ!?俺も……つーかこの通知の仕方は下手したらチェーンメールだろ……あっぶな。」

「あぁ、お前らにも来てたのか?」

 増井がそう言いながら、近づいてきた。

「おぉ……お前もか?」

「あぁ……鳩が運んできた。」

「伝書鳩!?」

 そんな三人を遠くから見つめ、ゆっくりと現れる男がもう一人。

「……お前らもか。」

「お前はどんな感じに来た?」

「どんな感じってそりゃ……枕元に手紙が。」

「サンタしかそんなのやらねえぞ!?」

 なんてツッコミを入れながらも一は話をまとめようとなんとかする。

「まぁでもどんなものか興味が湧いたなせっかくの夏休み楽しもうぜ。」

「おぉ!」

「そうだね……」

「あの……?そもそも各末って?てか俺能力ないよ?」

 増井と猪原は苦笑いしながら岩田を気の毒そうな顔で見ることにした。

 そんな視線を向けていると4人の手紙から同一人物の男の顔が現れる。

「どうもどうも各末使いの皆様!今回はオファーを受けていただきありがとう!」

「「「「いえ、言ってないです」」」」

 四人は真面目な顔でそう答えるとその男は困惑する。

「え?まじ?」

「まじに決まってんだろ。」

 増井はツッコミを入れる。

「えー……うん、と、とりあえず自己紹介を。私の名はグウェン。この大会の主催者でマッキーノ財閥の末裔ってわけさ。そして私が企画している『アライブグランプリ』……それぞれが己の願いを叶えるために百人の中から一人になるまで勝ち残る……まさにバトルロワイヤル。」

「つまり……我々に仲間割れをしろと?」

「おっと君、頭が冴えてるつもりだろうが……ただそれじゃ揉めるだけだろう?だから大会では一時期はチーム戦であいろいろな方法が存在しており、戦い方も自由。チームで優勝ってのもあるよ!まぁ?勝てたらって話なんだけどね!」

 猪原の質問に煽りながら答えるグウェン。

「そして戦いの勝ち負けは得点やキル数によるカウントでランキングを判断!途中退場や相談はオーケー!でも?これはデスゲーム!なのでもしこのゲームでライフがゼロになったら……おしまいDEATH!」

 白鳥をイメージしたかのようなポーズでさらに煽るグウェンを見て少しずつ怒りがふつふつと湧き上がる一同。

「開始は一週間後!それまでにこちらのカードに願い事を書かなければ退場となりみなさ」

「……」

 一がグウェンの顔面をモニター越しに破壊したことにより説明はここで止まった。

「まぁ、要するにこれからバトロワするから一週間以内に願い事書けってことだろ?」

「それを確認したくても貴方が頭破壊した時点で相手の回線も台無しだよ。」

「すんません……猪原の兄貴。」

「誰が兄貴だよ。」

 なんて会話をしながらそれぞれは己の願い事を書こうとしている。

「……」

 増井は困惑しながらそのプレートを見つめる。

 しかし何故だろうか。自分の周りにいる彼らは不思議と願いをかけている。

「お、お前ら……意外とすぐかけるんだな。」

 増井は周りに聞く。

「い、猪原……何書いたんだ?」

「メイちゃんの体が誕生しますように的な?」

「……そっか。頑張れよ。岩田は?」

「巻き込まれませんように。」

「切実だな……んで、一は?」

「おねショタのお姉さんが実在しますように……」

「……そうか。」

 増井は自分のリーダーに少しどころかかなり呆れた。


 同刻、ギリシャにて。

「キングくん……君はいよいよ2000回目の決戦だが、何を望むかね?」

「……解放しろ。」

「解放しろって何をだよ、キングくん。」

「とぼけんじゃねえぞグウェン……いや、骨野郎。」

 グウェンの痩せ細った身体を小馬鹿にしながらもそれを見つめる目は本気で怒っている。

「だから次のバトルで解放するってずっと言ってるだろ。くだらない戦いから次で優勝しておさらば……君の求めてる理想を叶えるさ。」

「……嘘つきが。」

「おぉ……こわいこわい。さて次の試合会場は日本だ。せいぜい頑張ってくれよ。キングくん……いや、あの国では王と呼ぶべきかな。」

「どうでもいい……俺はただ誰にでも勝つだけだ。」

 つづく
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