各末

蟹虎 夜光

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第30話 未来は見てみたいけど怖い

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第30話 未来は見てみたいけど怖い

 そう遠くない未来。彼らは突然、一人ずつ飛ばされた。

「……ここは。」

 飛ばされた一は周りを確認し、仲間に連絡を取ろうとする。

「それはできましぇーん!」

 そこに現れたグウェン。

「あ?」

「この世界は未来であって未来ではない。」

「つまり……未来をイメージした空間ってことだな。」

「いや、未来をイメージしたく」

「……はいはい。」

 呆れた顔で一はグウェンを見る。

「ったく……なんでお前は言葉の最初に『いや』をつけて否定から入ろうとするんだ。」

「い……あ、今言おうとしたわ。」

「……」

 一はとりあえずの感覚で未来の世界へと首を突っ込む。

「思ったより荒廃してるな……」

 グウェンは……置いてった。

「こ……この悪人が!!!」

 一人の男が斧を持って一に襲いかかる。

「……ッ!!!」

 一は刀で身を守り、男の顔を見る。

「……ほう。」

 一は男の顔を見て心の中で驚く。

「増井……か。」

「……フッ、あの話は本当だったのか。」

 未来人のような老けた増井は斧をしまう。

「久しぶりだな……一……いや粼。」

「……なんか気持ち悪い。」

 未来の増井は一に苦笑いしながらも、自分のアジトに彼を案内した。


「ここだ。」

「……ッ!」

 そこは見覚えのある場所、『はっぴー』だった。

「そりゃそうだよな……驚くよな。」

「……さすがに。」

「あと……麗奈は未来のお前に殺されたようなもんだ。」

「……は?」

「それどころか……猪原や岩田はシンプルに死んだ。あぁ、三網さんは麗奈と同じような有様だ。」

「え……?」

「それどころかお前の取り巻きの女はみんなあのザマ。」

「どういうことだよ……」

「……見に行ったらわかる。お前の住んでた時代の町に比べて砂漠の無法地帯になってるがひとつだけ見覚えのないオレンジと紫の建物があるだろ?」

「……はい?」

「いいから……」

(なんだろう……)

 見つけた瞬間ふと近づいて見に行く一。

「何あれ……ラ〇ホ?」

「なわけねえだろ思春期クソガキ。」

 そんなツッコミも気にせず一は確認するや歩き出す。

「……どこに行く?この時代の事なんか分からないだろ。」

「分からないが……止めなきゃいけないのは確かだろ?」

「あぁ……頼む。」

 未来の増井はなにか決意をした一の目を見て確信した。

「俺は三十年……三十年待った……少しでも世界を救える可能性を。」

 亡くなった二人の墓に手を添える未来の増井。

「……約束通りあいつは来た。けど……少し不安でな。可能性がある今だからこそ……ちょっとでいいから見届けてやってくれねえかな。俺は高校からだけどよぉ……お前ら同中だろ?」

 増井はそう言うと一服する。

「良い事もあれば悪い事もある……当たり前だが、その仕組みがあるから人間として生きるのは面白いよな。」

 増井はニッコリ笑う。

「人間として生きる人生は……神様のイタズラで出来てるんじゃねえかな。」


 一方その頃、一は物凄い速さで建物へと近づいた。

「……ここは。」

 周りの人が1本の道を開け、大きな拍手で一を歓迎する。

 そこにいた人物はかつて学び舎を共に過した彼女たちだ。

「……は?」

 一はその道を通ろうとするも何か違和感を感じる。

「……くっ!」

「……震えが止まらないのだろう?」

 目の前に現れたのは……一を少し大人びかせたような外見の男だ。

「粼一……若き私よ、ついに今ここで会えたか。」

「なぁ……この時代の増井が言ってたよ、俺はこの時代だと何をしてどうして……」

「お前はある日、全国民の命を懸けた闘いで……敗れる。」

「……は?」

「そして……あの後、生き延びれたものの手に入れたのは周りからの冷たい視線だ。」

「……待て、言葉が足りない。何があってどうして……」

「……教えたらこの物語のネタバレになるだろう。」

「メタいこと言うな急に」

 そのツッコミに思わず笑うお互い。

「……だから今のうちに言っておく。『選択』を間違えるなよ。」

 そう言い、未来の一らしき男は一に大きな風を送る。

「……今の私より強くなれ、若き私よ。」

 拍手は更に鳴り響く。一は飛ばされながらこの空間に違和感を感じた。

「……私の運を、信じてみようか。」


 ……次に目が覚めたのは海だった。

「ここ……は?」

 広がる景色の奥に見えるさっきまでいた建物。

「……行かなきゃ。」

「……ダメ。」

「……え?」

 一は謎の子供に止められた。

「……君は誰?」

「メイ……猪原。」

「猪原メイ?……もしかしてお父さんの名前って」

「猪原陸遜だよ……」

「なるほどな。」

 自分の子供に自分の各末の名前を名付ける。……アイツなら確かにやるだろうと思った。

「……君のお父さんなら確かに名付けそうだな。」

「え?……お父さんのこと分かるの?でもお父さんみたいにシワとかない……。」

「ははっ君のお父さんとはそう遠くない友達って言い方がいいのかな。……あとお父さんが仮に生きててもそれは言っちゃいけないぞ、アイツは繊細だからな。」

(……そう遠くないってのは時の話だけであって、……そこを除けばここは問題ないはずだろう。)

「……ふぅん、よくわかんないや。」

「……」

(よし!なんとかこれで誤魔化せた!)

「……メイちゃんはお父さんのことどう思ってるの?」

「生きてた頃はずっとゲームの課金してガチャはすり抜けたり爆死したりして発狂してる印象だよ。」

「……そうか、君の父さんにドンマイ。」

(猪原には金銭の勉強をしてもらいたい。)

「それでね……お母さんはいつもお父さんになんで貴方は運がないのなんて怒るの。」

「まず課金の制限をしろよ。」

「……それお父さんの違う友達も言ってた。」

(彼女の名前がメイだとすれば……普通に考えて母と同じ名前をつけることはおかしいし、そもそもあのヒャッハーメイちゃんは……?存在があそこの建物にもいない……つまりここで言えるのは猪原は願いを叶えることができなかったということだろう。それどころか岩田も願いは叶えれなかったし……俺の予想が当たっていたら増井の夢もか。)

 一は心の中で彼らのことを考える。

 そして未来の一も……というか内心ここまで来たらしょうもなすぎてどうでもいいとまで一は自分の夢を諦めた。

(子供だな……俺は。アイツらよりも何倍も。)

「……決めた。」

「どうしたの?急に覚悟決めたような顔して。」

 一は拳をにぎりしめる。

『全くお前は。』

 力強い仲間の声。

『全く君ってやつは。』

 知性のある仲間の声。

『全くおめぇってやつはよ。』

 今にも走りそうな仲間の声。

『全く君って子は。』

 守りたいと思ったあの人の声。

『全く……君には適わないなぁ。』

 守れなかったかつての仲間の声。

「俺、ケジメつけるわ。」

 一の闘志は燃えた。


「グウェン!グウェン!」

 無線越しに聞こえる男の声。

「なんですか!こっちはねぇ!プレイヤーに置いてかれたんですよ!全く!なんなんだ日本の学生というのは!常識を母親の腹ん中に置いてきたのか!私はあーいう人達が嫌いだね!まったくもう!」

「んな事言ってる場合じゃねえんですわ!」

「……はい?」

 グウェンは部下の慌てっぷりを確認するや冷静になる。

「いいですか……落ち着いて聞いてください……」

「もう落ち着いてますけど?」

「キングが……キングが……」

「はぁ……あの人かどうしたって言うんですか。もう今大会は無かったことにしたいくらいだってのに!」

「……辞退しました。」

「……はい?」

 それはグウェンも予想外の出来事だったらしく、運営はみな騒然としていた。

「それどころか……会場が……」

「何があったんですか!」

 つづく
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