レディ・クローンズ

蟹虎 夜光

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Headed for the truth

第11話 起動 センキシ

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 ――今から数時間前研究所内。
「最終問題」
 覚悟と緊張が俺に鳥肌いっぱいに襲いかかる。テストや高校受験の面接のようなレベルではない。
「……スマホをご確認ください。」
 異様な指示に恐る恐る従う。スマホを確認?もしかして変身アプリだろうか。
「スマホ内に入っている変身アプリを開いてください。」
 予想は正しかった。しかし、これが問題にどう関係するのだろうか。少し疑問である。
「このアプリを使ってセンキシに起動する際に必要な発言がありまふ。ボタンを押してお答えください。」
「……!?」
 問題はその場にいる全員の予想を軽く超えた。
「ヒント、魔法少女を制作する前に貴方の父がハマっていたものです。」
 あの人がハマっていたもの……?一体なんだと言うんだ。趣味の多い父だからこそ尚更問題の答えが何故か分からないのである。
 たしか温泉巡りは好きだったな、休みの日には一緒に温泉回ったかな……でも変身する度に『温泉!』はさっぱり……いやざっくりしすぎてさすがにない。
 あ、ゲーセンに行った時、よくパチの台を回してた。けどそれが変身の掛け声?まさか『確変!』……いや確かに脳汁ブシャーだけどそんな訳ない。
 ……他にハマっていたものなんてあったか?なんでこうなるのもあまり父と絡む時間がなかったからだ。仕事で忙しいあの人は自分のことで精一杯になって俺と遊ぶ時間なんてほんのわずかだ。
 そのため、一緒の日には温泉とかゲームセンターで遊んでくれた。でもそれも……ほんの少しだけ。
 ん……?待てよ。あの人の部屋をよく思い出せ。ヒーローやロボットのようなものが多かったではないか。
 しかもあの人が最も好きなのは一般人が何かしらの力を手に入れてヒーローになる瞬間。
『変身』……いやこれだとアプリというよりベルトじゃん。けどそうなると『何とかチェンジ』とか?クローンのみんなと戦隊なんかやって……違うな。思いっきり叫ぶか?『センキシィィィ!』って感じで。不思議と頭の中でバイクに乗ったり、巨大ロボにみんなで乗ったり、挙句の果てには自分が巨大化していた。多分疲れてる。
「ヒント 貴方の父が貴方を勇気づけるためによく使います」
 俺はそのヒントでわかった。
「……起動」
「全問正解。センキシシステム起動。」
 こうして変身アプリは本格的に動き出した。

「……一之輔、なんだその目は。」
 数年前のある日、俺は久しぶりに帰ってきた父にこっぴどく怒られた。理由は近所の子供と喧嘩したからだ。
「……」
「黙ってても、何もわからんぞ。」
 妻に頼まれて子供を叱る旦那は難易度が十人十色も存在しているのではないかと俺は思い始めてきた。簡単にそして分かりやすく叱れる人もいれば逆も当然有り得る。後者のようになりたくないなんて未来を語る事は出来るが、実際出来るのだろうか。
「……いいか一之輔、お前があの子と理由もなしに喧嘩したら一度その傷は自分達でしか治せないんだ。自然と治すのもそのままなのもお前らでしか判断できない。お前らの喧嘩は俺が前に言った親切か?」
「……ちがう。」
「だいたいどんな喧嘩でどっちが問題なんだ?」
 父は圧倒的に後者だろう。私の子供なら出来て当然って思ったりしているのだろう。
「なんにせよ喧嘩はよくない。」
「それは……わかってる。」
「なら……今お前がすべきことに向けて起動しろ。」 
 この時、俺はよくわかってなかった。決まり文句というよりかは一発芸のようなものだと思っていた。でも後からテレビゲームやパソコンに触れて時々出てくる『起動』って言葉が不覚にも父の顔を思い出させてくれた。

「おめでとうございます!全問正解!」
 司会進行をしていた二人が拍手している。これで終わりのようだ。どうやら俺は数少ない父との思い出の中で彼のことをよく理解していたのかもしれない。
「これで終わりか……?」
「えぇ、やっと解決しましたよ。」
 センキシ……。何かのロボット映画のようなデザインをした鎧はスマホから転送されるデータとして解放された。
「一応このシステムは誰でも起動できるし、複数の人があなたのおかげでセンキシという戦士として戦えます。」
「え、俺専用とかじゃないの?」
「……はいと言えば少し答えは違いますね。能力を完全に解放できるのが貴方ということです。」
 ほ、ほう。つまり……強化フォームは俺しか使えない……。そう言われたらヒーローみたいだ!次回新ヒーロー!センキシ!ご期待くださいなんて……。
「えへへ……えへへ……」
「考えている事が顔に出ていますよ。」
「……すみません。」
 鏡リマは問題回答中の笑顔を感じれないほど表情が固まっていた。クールビューティーという言葉は彼女のためにあるのかもしれない。
「せっかくなら変身しながら向かってみてはいかがですか?」
「は、はい!」
 俺はスマホを取り出し変身アプリを開き、慣れない手つきでボタンに指を近づける。
「起動。」
 その声と共にボタンを押した俺は全身を遺伝子のような何かで作られた空間に包まれ、粒子状物質を全身に身にまとって誕生した姿はプロジェクトに出てきた通りのセンキシ。
「行っています……」
「行ってらっしゃいませ……」
「グッドラック!福瀬ジュニア!」
 二人の反応に文句を言いたいがいちいち突っかかるのも面倒なのでとりあえずスルーした。

 現在。
「ヒーロー気取りか?お前。」
「さぁな、初陣だからよく分かんねぇ。」
 とりあえず蹴りを入れた。物凄い勢いで足から火が出ており、この鉄鎧の燃料が火であることを実感させられる。
「なかなかやるなぁ。」
 センキシの攻撃を食らった猫宮は鼻から血を出している。
「なら俺の出番だな……憎悪。」
「させぬ。」
 憎みなどセンキシの前では通用しない。センキシのシステムには使用者の安全を守るために『虚無』の記憶が宿っている。つまりどんな能力であろうとセンキシには通じない。それどころか対象の能力を無効化させることが出来る。
「お、おのれ……」
「どうした?降参か?」
「まだだ……まだだよ。まだ終わんねぇんだよ!俺の戦いってのはここからだ……。憎しみを見せてやるよ。」
 猫宮は全身に人が誰かを憎む時に産んだ言霊を身に纏う。
「強化人間にはノヴァってのが存在する。これはその一例だ……アイツが許せないとかどうして私だけとかそんな感じの言葉を俺は身に纏う。」
 猫宮の見た目はまるで墨汁のように真っ黒でその黒い包帯を身にまとったミイラ男のようだ。
「どうする?センキシさん?」
「人を脅すのは相手をよく見てからにしろ。」
 初陣にはピッタリだ猫宮。たくさんの魔法少女を殺したお前にはなんの可哀想って気持ちも湧かないし、気持ちよくお前という名の悪役を倒すことができるよ。
「エンジンバースト……」
 これが俺だけに許された必殺技。
「ファイナル・ギア」
 様々な技があってもこれは俺にしか使えない。最強にして最大の火力と電撃を放つ回し蹴り。
「な、なにぃ!」
「終わり。」
 俺はそれを何も考える間もなく猫宮に当てた。
「お……まえ……にくし……み…は…あ……るか…?」
「ないね、これっぽっちも。」
 何があっても別に気にしない。今目の前にいるお前にも散々放置した父親にも。
「マスター気絶。次のマスターへと転換します。」
 彼女にも何の悪意はない。立場が悪いだけ。
「だから自由に。」
「自由……プログラム完了。数万件の検索の中で可能な自由を考えてみます。」
 なんか嫌な予感がするが…そう思いながら俺は変身を解除した。

 つづく
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