レディ・クローンズ

蟹虎 夜光

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Headed for the truth

第12話 改装 魔法少女特命係

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 あれから数日。俺達は今もゆっくりとこのくだらない日々を過ごしている。センキシとして変身するのはロマンがあるがそれが楽しいと言われたら毎日変身すると飽きる。人は一人だけのヒーローになるよりかは複数のヒーローがいるからこそ違うヒーローに変身してみたいって考える人が多数ではないだろうか。
「平和だ……。」
 今日はオリジンが初めて店にやってくる日だ。彼女は二井原さんが戦いの後に悪いプログラムや問題点がないかを確かめるために本部へ持っていった。そのメンテナンスの終了日が今日なのである。
 店に入ると彼女達四人はのんびりとしていた。カヌーレさんは呆れた顔をしながら彼女達を見ている。あれから店は物凄い早い勢いで修復されていた。サーディの治す魔法は意外と建物にも効くらしく元通りになっていたのを確認して便利だなと感じた。
「いっちゃん。今日も依頼が来ないんだけどー。」
「すぐには来ないでしょ。初めて間もないし。」
 あれから俺達は魔法少女運営側に特命係と呼ばれ、無理難題や秘密裏に行動する際に彼女たちを利用するようにとこの喫茶店の隅で依頼を受けることにした。
「特命係なんてもんだから……依頼もなぁ。」
 俺達は魔法少女なんて言葉が一文字も存在しないのではないかと思えてしまうほどこの世界での生活に不思議と明け暮れていた。
「サーディちゃんこれ、お願いね。」
「はい、分かりました。」
 こんな世界でも嫌とは言わずにカヌーレさんの手伝いをするために皿洗いの姿ができるサーディくらいだろう、生き残れるのは。
「今日と明日は少なからず仕事は無いと思え」
「そんなぁ。」
 現代では珍しい仕事を欲するタイプの人だ。
「皆さんお集まりのようで……。」
 そんな事を話しているとオリジンがリマさんとホプスと共にやってきた。怪我もしてなければ彼女らのクローンと違ってより機械らしい構造をしているとよく分かる。最近導入した感情に関するデータも彼女には微塵もない。
「本当に機械だ……」
 俺は思わず感心した。
「彼女が強化人間やシカミカクの指示通りに動く可能性はプログラムを確認し削除してゼロになりました。そして次のマスターは……」
 そう言うと彼女はカヌーレさんを指さす。
「え……え?あ、あたし!?」
「クローンにマスター証人を可能とする認識が存在しないので不可能である点とセンキシである彼は全ての魔法少女を支配する能力を持つ、その時点で不要。そうなると貴方が適役かと……。」
「なるほどね……。よろしく、オリちゃん。」
「はい、マスター。」
 こうしてカヌーレさんの相棒としてオリジンは貴重な仲間になった。前回の建物が壊れるほど強靭な力を持った敵が現れたパターンがもう一度起きても大丈夫なほど頼もしさすら感じる。でもこれで良かったのか?いや、良かったんだ。これからも強化人間が増える可能性だってあるのではないか?少なからず三人いるけど……こんな自問自答繰り返しても意味は無いな。

「クッソ……あの鎧野郎。」
 一方路地裏にて。猫宮は長い長い道を徘徊していた。センキシとの戦いは過酷そのものである彼はトラウマを植え付けられたかのようにそう実感した。
「憎悪の少年みーつけた。」
「あ?なんだお前。」
 一人の幼女が近づく。その姿を見た猫宮は驚く。
「強化人間第二号……!?」
「はぁーい、元気してた?憎悪ちゃん?」
 恐る恐る下唇を噛んだ猫宮。
「私だよ、私!明神コハナ!元気なさそうだけど……あ、そっか!センキシなんてのにやられたもんね!キャハハ!」
「て、てめぇ……」
「人間が結局持つのって憎しみより怖いって感情だよ!恐怖だよ……恐怖。いくら憎くても恐れ多くて言えない。いくら憎くてもこれからの空気が怖くて言えない。恐怖しか勝たん!が答えだね!」
「俺を殺す気か?」
「いいねぇその怯え方!恐怖心を感じる!でも殺すのはダメなんだよねー。でも強化人間って言われた貴方があそこまで負けるなんてね……そうだ!情報共有してよ!」
「……覚えてねえよ。」
「ふーん、そう。」
 猫宮の場合、正確には教えたくないというのが正解である。自分がやられた存在は自分で倒したい。彼はそう考える性格のため近いようで遠い彼女とは馬が合わない。
「つまんないプライド背負っちゃって。」
 しかし明神には丸見えらしい。はっきりとバレていた。
「そんな君には……一週間恐怖生活を与えるよ!」
 そう言うと明神は忍び足でいなくなる。彼女の能力は対象のトラウマや恐怖心を把握し幻覚を見せる能力である。
「克服してみてね!」
 そう言うと彼女は姿を消した。
「待て!やめろ!てめぇ……!」
 汗だくの中で猫宮は路地裏の一坪、そこで恐怖に襲われる。時に鎧野郎、時に大切な女を失った恐怖、時に自分の過去に植え付けられたもの……。それは何者でも相手耐えるのは困難である。

 一方二井原。
「さてこれからどうするべきか……」
 彼女は苦労していた。二番隊の隊長として隊を上手く扱えなかった挙句、所詮二番だなと敵に罵られてしまった彼女は魔法少女の恥である。
「くっ……誰か私を打首にしてくれ!」
 彼女はただただ自分にそう呟いた。
「何言ってんのよ、二井原ちゃん。」
「い、一ノ瀬先輩……」
 一ノ瀬伊音。一番隊隊長にして魔法少女の中でも攻撃力が異様に高い人物である。アラタカはエースとして彼女を信頼している。
「人間はミスするのが当たり前なんだから……大丈夫さ。」
「せ、先輩……!」
「私はどこかで憎まれようがどうなろうが構わない。己の敵は己のみ。悔しいと思える明日までやり抜く。」
 彼女は魔法少女であると共に一人の人間である。それを自覚しているからこそ、魔法少女としてではなく、一人の人間としてどうするべきかを考えているのだ。
「あの時は猫宮に気を取られてあんな事に……本当に申し訳ございませんでした!」
「……良いんだよ、気にすんな。」
 伊音はその場を去る。そしてふと新しく入った情報を思い出す。
「……センキシか。」
 彼女は上を向いて想像をする。システムの構築を見る限りだと魔法少女の変身アプリをハッキングして指示を出す仕組みらしいが、それは同じ人間として良いのだろうか。
「操られてやんよ、私を操られたらだけどな!」
 彼女は牛のような鳴き声で唸り、そのまま笑う。
 このようにしてセンキシが現れたことによって己の部隊を持つ全ての魔法少女は自分たちの立場が分からなくなっていったのだ。操る側か若しくは操られる側か……。ある日突然に上司と部下が入れ替わるようにそれはとてつもなく恐ろしい話である。今、自分たちのいるその社会で貴方を操るどこから来たかも分からないダークホースが現れた時、貴方はどうなってしまうのだろうか……。ある者のように強気に出るかもしくはある者のように自分の無力さを自覚するか……。
 
 またセンキシも同じく、魔法少女に指示を出すシステムがあるこのヒーローのシステムはリーダーシップとともに悪用することも出来る。人間は魔が差してから前者が後者に変化していく生命体である。
「センキシシステムで良からぬ事は考えないよね?一之輔」
「……考えるわけないだろ。てかなんだよ良からぬ事って。」
 彼は悪用する事も分からないほどの無知だった。周りの上に立つセンキシのような存在というのは、そういう悪意のない人間こそが本当にふさわしいのかもしれない……。

 これは一人の少年が持つ力と大量の魔法少女達による物語の序章の終わりである。

 つづく
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