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【第2話】焼き立てパンは仲直りの味
【2-17】
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「意気込んでるわね、ミカ。でも、そんなに緊張しなくたって、パレドは簡単に作れるのよ。ちっちゃい子が初めて習う料理、って感じなんだから」
そう言って笑ったキカさんは、今日納品した箱のひとつへ近付き、中から麻袋を取り出す。A 4サイズくらいの袋へ手を突っ込んで彼女が取り出したのは、オフホワイトくらいの色味の玉みたいなものだった。
キカさんは人差し指と親指で挟むようにしてそれをつまみ、ぐにぐにと押す。大きめの白玉というか、質量と弾力を伴う柔らかいピンポン玉というか、めちゃくちゃぷにぷにしているスーパーボールというか……、とにかく、そんな感じの物体だ。
「これが、パレドード。パレド自体はこれを使って誰でも作れるけど、パレドードを作れるのは修行した職人だけなのよ」
「へぇ……、職人の技が無いと作れないんだね」
「そうね、技と感覚を研ぎ澄ませないと作れないらしいわ。生成魔法と魔力の加減が、とても繊細なんですって。職人の腕によって、パレドの食感もかなり違うのよ。熟練された職人が作るパレドードを使って焼いたパレドは、ふわふわもっちりで美味しいの!」
もちもちのパンを想像しただけで、よだれが出てきてしまいそうだ。きっと美味しいに違いない。どうしたって期待感が高まってしまう。
「焼きたてのパレドに、鳥の香草焼きと、ベラーシ、あとは……食後のお楽しみってことで、果物を冷やしておこうかな」
この世界でも鳥肉を食べる文化があって、鶏じゃないけど似たような味と食感をいただける。城の側程度ならジルから離れても大丈夫だというカミュが狩りをして捌いてくれるから、僕も料理に何度も取り入れた。
──でも、ベラーシってなんだろう?
僕の表情から疑問を読み取ったのか、カミュがにこやかに解説を挟んでくれる。
「ミルクを使った、コクのあるスープのようなものが、ベラーシです。たくさんの野菜と一緒に煮込んで、ほくほくとした食感となめらかな汁を楽しみます。今のように寒い季節には特に美味しく感じますね」
「うんうん、聞いているだけで、もう美味しそう!」
シチューみたいな感じなのかな? 焼き立てパンに、シチューと、グリルチキン。デザートには果物もあるらしい。想像しただけで、すごく楽しみになってくる。
「絶対にミカも美味しいって思うだろうし、ジル好みの献立のはずよ。順番としては、まずはパレドの生地を仕込む。焼く前に少し時間を置いて生地を寝かさなくちゃいけないから、その間にベラーシを煮込んで、最後に鳥を火に掛けてじっくり焼きつつ、パレドを焼き上げる。──うん、これで、どれもちょうどいい時間に出来上がるはずよ」
「分かった。頑張るね」
「頑張るほどのこともないって。大丈夫よ。あ、カミュ。マセメラを冷やしておいてくれる? 二個でいいわ」
「承知しました」
快く引き受けたカミュは、慣れた様子でひとつの木箱へ近付いて、中から紺色の果実を二つ取り出した。そう、このマセメラという果実は城の周りでも採れるから僕も知っていたのだけど、皮は濃紺なのに、形も香りも味も林檎そのものだ。ちょっと不思議な感じはするけれど、甘酸っぱくて美味しい。
そして、この世界に電化製品は無いから冷蔵庫ではないけれど、食材を冷やして保管するという概念はあって、保冷魔法をかけた木箱が使われている。もちろんこの調理場にもあって、カミュはその蓋を魔法で器用に開けて、マセメラを入れていた。
「じゃあ、ミカ。あたしの言う通りに材料を量ってね」
「うん、分かった」
ミカさんの指示を受けながら、木製の大きめのボウルへ材料を量り入れていく。小麦粉っぽいものと、バターみたいなものと、塩的な調味料を、カミュの魔法の力を借りつつ準備した。
「そうしたら、ここにパレドードを入れるの」
「うん。……わっ、すごくぷにぷに」
持たせてもらったパレドードは、クセになりそうな弾力がある。すごい……、永遠にぷにぷにもちもち出来そう。
「ふふっ。ミカのお気に召す感触かな? パレドの生地を捏ねるのも気持ちいいのよ。量った材料の中にパレドードを入れて、よーく捏ねてね」
「うん、やってみるね」
言われたとおりにパレドードを落とした材料を捏ねてみる。最初は粉っぽい感じが、だんだんしっとりもっちりまとまってくるのが気持ちいい。潰れて馴染んでいくパレドードの感触を楽しみながら、ひたすら捏ねる。
「うん、いい感じね。けっこう粘り気があるでしょ?」
「うんうん、伸ばそうと思えばどこまでも伸びそう」
「でしょ? これが、良い生地の証なの。生地を捏ねている段階で粘りが強いと、焼いたときにいい食感になるのよ」
「そうなんだ、楽しみだね」
「ねー、楽しみ! ……うん、そんな感じでいいわね。じゃあ、全体的に丸くまとめてひとかたまりにして」
「……こう?」
「うん、いい感じよ。で、表面にツムト粉をはたいてあげたら、布巾をかけて、寝かせてあげる。……で、その間に、他の料理も用意しましょ!」
「うん! わくわくするね」
「わくわくしますね」
三人で顔を合わせて笑って、手を洗う。そして、そこから先も、夕飯の支度を次々に進めていった。
そう言って笑ったキカさんは、今日納品した箱のひとつへ近付き、中から麻袋を取り出す。A 4サイズくらいの袋へ手を突っ込んで彼女が取り出したのは、オフホワイトくらいの色味の玉みたいなものだった。
キカさんは人差し指と親指で挟むようにしてそれをつまみ、ぐにぐにと押す。大きめの白玉というか、質量と弾力を伴う柔らかいピンポン玉というか、めちゃくちゃぷにぷにしているスーパーボールというか……、とにかく、そんな感じの物体だ。
「これが、パレドード。パレド自体はこれを使って誰でも作れるけど、パレドードを作れるのは修行した職人だけなのよ」
「へぇ……、職人の技が無いと作れないんだね」
「そうね、技と感覚を研ぎ澄ませないと作れないらしいわ。生成魔法と魔力の加減が、とても繊細なんですって。職人の腕によって、パレドの食感もかなり違うのよ。熟練された職人が作るパレドードを使って焼いたパレドは、ふわふわもっちりで美味しいの!」
もちもちのパンを想像しただけで、よだれが出てきてしまいそうだ。きっと美味しいに違いない。どうしたって期待感が高まってしまう。
「焼きたてのパレドに、鳥の香草焼きと、ベラーシ、あとは……食後のお楽しみってことで、果物を冷やしておこうかな」
この世界でも鳥肉を食べる文化があって、鶏じゃないけど似たような味と食感をいただける。城の側程度ならジルから離れても大丈夫だというカミュが狩りをして捌いてくれるから、僕も料理に何度も取り入れた。
──でも、ベラーシってなんだろう?
僕の表情から疑問を読み取ったのか、カミュがにこやかに解説を挟んでくれる。
「ミルクを使った、コクのあるスープのようなものが、ベラーシです。たくさんの野菜と一緒に煮込んで、ほくほくとした食感となめらかな汁を楽しみます。今のように寒い季節には特に美味しく感じますね」
「うんうん、聞いているだけで、もう美味しそう!」
シチューみたいな感じなのかな? 焼き立てパンに、シチューと、グリルチキン。デザートには果物もあるらしい。想像しただけで、すごく楽しみになってくる。
「絶対にミカも美味しいって思うだろうし、ジル好みの献立のはずよ。順番としては、まずはパレドの生地を仕込む。焼く前に少し時間を置いて生地を寝かさなくちゃいけないから、その間にベラーシを煮込んで、最後に鳥を火に掛けてじっくり焼きつつ、パレドを焼き上げる。──うん、これで、どれもちょうどいい時間に出来上がるはずよ」
「分かった。頑張るね」
「頑張るほどのこともないって。大丈夫よ。あ、カミュ。マセメラを冷やしておいてくれる? 二個でいいわ」
「承知しました」
快く引き受けたカミュは、慣れた様子でひとつの木箱へ近付いて、中から紺色の果実を二つ取り出した。そう、このマセメラという果実は城の周りでも採れるから僕も知っていたのだけど、皮は濃紺なのに、形も香りも味も林檎そのものだ。ちょっと不思議な感じはするけれど、甘酸っぱくて美味しい。
そして、この世界に電化製品は無いから冷蔵庫ではないけれど、食材を冷やして保管するという概念はあって、保冷魔法をかけた木箱が使われている。もちろんこの調理場にもあって、カミュはその蓋を魔法で器用に開けて、マセメラを入れていた。
「じゃあ、ミカ。あたしの言う通りに材料を量ってね」
「うん、分かった」
ミカさんの指示を受けながら、木製の大きめのボウルへ材料を量り入れていく。小麦粉っぽいものと、バターみたいなものと、塩的な調味料を、カミュの魔法の力を借りつつ準備した。
「そうしたら、ここにパレドードを入れるの」
「うん。……わっ、すごくぷにぷに」
持たせてもらったパレドードは、クセになりそうな弾力がある。すごい……、永遠にぷにぷにもちもち出来そう。
「ふふっ。ミカのお気に召す感触かな? パレドの生地を捏ねるのも気持ちいいのよ。量った材料の中にパレドードを入れて、よーく捏ねてね」
「うん、やってみるね」
言われたとおりにパレドードを落とした材料を捏ねてみる。最初は粉っぽい感じが、だんだんしっとりもっちりまとまってくるのが気持ちいい。潰れて馴染んでいくパレドードの感触を楽しみながら、ひたすら捏ねる。
「うん、いい感じね。けっこう粘り気があるでしょ?」
「うんうん、伸ばそうと思えばどこまでも伸びそう」
「でしょ? これが、良い生地の証なの。生地を捏ねている段階で粘りが強いと、焼いたときにいい食感になるのよ」
「そうなんだ、楽しみだね」
「ねー、楽しみ! ……うん、そんな感じでいいわね。じゃあ、全体的に丸くまとめてひとかたまりにして」
「……こう?」
「うん、いい感じよ。で、表面にツムト粉をはたいてあげたら、布巾をかけて、寝かせてあげる。……で、その間に、他の料理も用意しましょ!」
「うん! わくわくするね」
「わくわくしますね」
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