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【第3話】親交を深める鍋パーティー
【3-22】
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「パチィ……、マリオさんやアビーさんも仰ってましたね。祝宴のようなものなのでしょう?」
「ああ……、あいつら、自分の誕生日が来る度にパチーだパチーだと騒いでいたな」
パーティーが上手く覚えられていなかったらしいカミュとジルが、可愛らしい発音で言い合いながら、顔を見合わせる。懐かしそうでありながらも、ちょっとうんざりした表情なのはどういうことだろう。
僕が首を傾げる一方、マティ様は一気に表情を引き締めた。
「何? 誕生日の祝宴だと? なぜ事前に言わないのだ、ミカ!」
「……えっ?」
何か誤解しているらしいマティ様は、つかつかと歩み寄って来て、僕の両肩をがっしりと掴む。
「生誕日だと知っていたら、相応の贈り物を用意してきたというのに! まさか、このマティアスが用意できる物など食材程度だ、とでも思っているのではあるまいな!?」
「いえいえ、そんな、まさか……!」
「ならば、なぜ言わぬ! ジルの手紙にもそんな情報は一言たりとも書かれていなかった!」
「あ、あの、僕の誕生日ではありません! それに、パーティーは誕生日だけに行うものではありません! その……、宴といえば宴なんですけど、でも、鍋パーティーはそんな大げさなものではなくて、親しい人たちと気楽にわいわい楽しめるものというか……」
僕の言葉を聞いた三人は、それぞれ「何を言っているんだ?」という顔で見つめてきた。うんうん、こんな雑な説明で分かってもらえるとは思っていないよ。
僕は気合を入れて、鍋料理とはどういうものか、鍋パーティーはどういう集まりなのか、を可能な限り分かりやすく噛み砕きながら説明した。ぼんやりとだろうけれど理解してきたのか、三人はそれなりに納得した顔で頷く。
「つまり、大鍋で作った汁気の多い煮物を皆で分かち合いながら食べたいということか? 私も、遠征中に野営地で似たような物を食べたことは何度もある。確かに、あれは話も弾むし、楽しいものだな」
「普段の食事と違うのは、目の前に鍋があるか無いかの違いか? あらかじめよそっておくか、各自の皿が空いたら都度足していくか、というのも違いか」
「よく分かりませんが、楽しそうですね。それに、なんだか美味しそうです」
それぞれの感想やら推察やらを言葉にした彼らの反応は、おおむね良さそうと見ていいだろうか。嫌悪感をもたれなかったのは、とても嬉しい。
場の空気の勢いを借りて、改めて王子様にお伺いを立ててみる。
「マティ様は早めにお帰りになる予定だと、事前に聞いています。でも、もしも可能であればでいいんですけど……、夜ごはんをご一緒にどうかな、と」
「分かった、そうしよう。今夜は此処に泊まる」
「そうですよね、……って、えぇっ!?」
てっきり、すぐに断られるかと思っていたのに、まさかの即答了承。ビックリして硬直している僕を見下ろして、マティ様がほんのりと不敵に笑う。
「近くの町に待機させている側近には、手紙を持たせた鳥を飛ばして報せればよい。たまには、よかろう。というか、私としては別に、毎度泊まっていっても構わぬくらいなのだ」
「えっ……、大丈夫なんですか? 側近の人たちが心配したり……」
「平気だ。連れてきているのは、本当に信頼している者だけで、あやつらは私の性格も、没頭している研究のことも分かっている。魔王の城に宿泊したところで、不信感も違和感も無いだろうな。──私の宿泊を阻み拒んでいたのは、ジルだけだ」
「えっ……!?」
思わずジルを振り仰ぐと、彼は気まずそうに黒目を逸らした。
「……プレカシオン王家の者が魔王の城で寝泊まりするのは、なんというか、よくないだろう」
「供をぞろぞろ連れているならまだしも、私が単身で宿泊したところで、どこの誰が見咎めると言うのだ。まったく、ジルは変なところで頭が固いというか、そういう部分が年寄りくさい」
「な、なんだと……!?」
「だが、そんな老人でも、ミカから願われれば断れぬだろうな」
年寄り扱いされて文句を言いたげだったジルだけど、すぐに言葉に詰まる。それをにこにこと見守っていたカミュは、小さく吹き出してクスクスと笑ってから、柔らかく言った。
「お泊まりいただけるお部屋もありますし、片付けや寝台の準備もすぐに整いますので、王城ほどではないかもしれませんが、マティアス様にもそれなりに快適にお過ごしいただけると思いますよ。それに、ミカさんの美味しいごはんを召し上がっていただけます」
「うむ、とても魅力的だな。彼が作った焼菓子も、とても美味しかった。城で出てくる食事よりも、野営地で自炊するほうが好きな私としては、彼が生み出す素朴な味わいに幸福を感じた。菓子以外もそうなのだろうし、是非とも食べたいものだ」
カミュもマティ様も前向きに望んでくれているし、あとはジルが賛成してくれたらいいのにな……。漆黒の瞳をじっと見上げると、優しい魔王は狼狽える。
「ジル……、駄目かな? 勿論、ここはジルのお城なんだし、立場もあるんだろうし、無理にとは言わないんだけど……」
「……、はぁ……、分かった。ミカがマティアスと打ち解けるのは、俺としても歓迎だ。構わない。ミカのやりたいようにやってみるといい」
長々と深い溜息を零しながらも了承してくれたジルに、僕は心から「ありがとう!」と伝えた。
「ああ……、あいつら、自分の誕生日が来る度にパチーだパチーだと騒いでいたな」
パーティーが上手く覚えられていなかったらしいカミュとジルが、可愛らしい発音で言い合いながら、顔を見合わせる。懐かしそうでありながらも、ちょっとうんざりした表情なのはどういうことだろう。
僕が首を傾げる一方、マティ様は一気に表情を引き締めた。
「何? 誕生日の祝宴だと? なぜ事前に言わないのだ、ミカ!」
「……えっ?」
何か誤解しているらしいマティ様は、つかつかと歩み寄って来て、僕の両肩をがっしりと掴む。
「生誕日だと知っていたら、相応の贈り物を用意してきたというのに! まさか、このマティアスが用意できる物など食材程度だ、とでも思っているのではあるまいな!?」
「いえいえ、そんな、まさか……!」
「ならば、なぜ言わぬ! ジルの手紙にもそんな情報は一言たりとも書かれていなかった!」
「あ、あの、僕の誕生日ではありません! それに、パーティーは誕生日だけに行うものではありません! その……、宴といえば宴なんですけど、でも、鍋パーティーはそんな大げさなものではなくて、親しい人たちと気楽にわいわい楽しめるものというか……」
僕の言葉を聞いた三人は、それぞれ「何を言っているんだ?」という顔で見つめてきた。うんうん、こんな雑な説明で分かってもらえるとは思っていないよ。
僕は気合を入れて、鍋料理とはどういうものか、鍋パーティーはどういう集まりなのか、を可能な限り分かりやすく噛み砕きながら説明した。ぼんやりとだろうけれど理解してきたのか、三人はそれなりに納得した顔で頷く。
「つまり、大鍋で作った汁気の多い煮物を皆で分かち合いながら食べたいということか? 私も、遠征中に野営地で似たような物を食べたことは何度もある。確かに、あれは話も弾むし、楽しいものだな」
「普段の食事と違うのは、目の前に鍋があるか無いかの違いか? あらかじめよそっておくか、各自の皿が空いたら都度足していくか、というのも違いか」
「よく分かりませんが、楽しそうですね。それに、なんだか美味しそうです」
それぞれの感想やら推察やらを言葉にした彼らの反応は、おおむね良さそうと見ていいだろうか。嫌悪感をもたれなかったのは、とても嬉しい。
場の空気の勢いを借りて、改めて王子様にお伺いを立ててみる。
「マティ様は早めにお帰りになる予定だと、事前に聞いています。でも、もしも可能であればでいいんですけど……、夜ごはんをご一緒にどうかな、と」
「分かった、そうしよう。今夜は此処に泊まる」
「そうですよね、……って、えぇっ!?」
てっきり、すぐに断られるかと思っていたのに、まさかの即答了承。ビックリして硬直している僕を見下ろして、マティ様がほんのりと不敵に笑う。
「近くの町に待機させている側近には、手紙を持たせた鳥を飛ばして報せればよい。たまには、よかろう。というか、私としては別に、毎度泊まっていっても構わぬくらいなのだ」
「えっ……、大丈夫なんですか? 側近の人たちが心配したり……」
「平気だ。連れてきているのは、本当に信頼している者だけで、あやつらは私の性格も、没頭している研究のことも分かっている。魔王の城に宿泊したところで、不信感も違和感も無いだろうな。──私の宿泊を阻み拒んでいたのは、ジルだけだ」
「えっ……!?」
思わずジルを振り仰ぐと、彼は気まずそうに黒目を逸らした。
「……プレカシオン王家の者が魔王の城で寝泊まりするのは、なんというか、よくないだろう」
「供をぞろぞろ連れているならまだしも、私が単身で宿泊したところで、どこの誰が見咎めると言うのだ。まったく、ジルは変なところで頭が固いというか、そういう部分が年寄りくさい」
「な、なんだと……!?」
「だが、そんな老人でも、ミカから願われれば断れぬだろうな」
年寄り扱いされて文句を言いたげだったジルだけど、すぐに言葉に詰まる。それをにこにこと見守っていたカミュは、小さく吹き出してクスクスと笑ってから、柔らかく言った。
「お泊まりいただけるお部屋もありますし、片付けや寝台の準備もすぐに整いますので、王城ほどではないかもしれませんが、マティアス様にもそれなりに快適にお過ごしいただけると思いますよ。それに、ミカさんの美味しいごはんを召し上がっていただけます」
「うむ、とても魅力的だな。彼が作った焼菓子も、とても美味しかった。城で出てくる食事よりも、野営地で自炊するほうが好きな私としては、彼が生み出す素朴な味わいに幸福を感じた。菓子以外もそうなのだろうし、是非とも食べたいものだ」
カミュもマティ様も前向きに望んでくれているし、あとはジルが賛成してくれたらいいのにな……。漆黒の瞳をじっと見上げると、優しい魔王は狼狽える。
「ジル……、駄目かな? 勿論、ここはジルのお城なんだし、立場もあるんだろうし、無理にとは言わないんだけど……」
「……、はぁ……、分かった。ミカがマティアスと打ち解けるのは、俺としても歓迎だ。構わない。ミカのやりたいようにやってみるといい」
長々と深い溜息を零しながらも了承してくれたジルに、僕は心から「ありがとう!」と伝えた。
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