魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

文字の大きさ
57 / 246
【第3話】親交を深める鍋パーティー

【3-21】

しおりを挟む
  ◇


「う、うわぁぁ……っ、す、っごい……!」

 調理場に積まれていた木箱の中を順番に眺めて、僕は今まで出したことのないような喜びの声を上げてしまった。いや、もう、奇声の域に達している。
 でも、そんなことを気にしている余裕もないくらい、僕の目はその品々に釘付けになってしまった。

「……ミカが、今までに見たことが無いくらい目を輝かせている」
「ふふっ、ちっちゃい子みたいで微笑ましいですね」
「なんだ、やはりジルとカミュの予想が当たったのか。それならば運んだ甲斐があるな」

 外野三人の声も気にならないくらい、僕は搬入物に夢中になってしまう。
 だって! この、どう見ても西洋ファンタジーみたいな世界で! まさか、かつおぶしに出会えるとは思わないじゃないか!
 いや、まだ味見していないから見た目がかつおぶしなだけの別物かもしれないけど、たぶんかつおぶしにちかいものだと思う! それに、出汁をとる昆布のようなものと思われる、海草を乾燥させたものもあるし! 醤油かポン酢みたいな色味の調味液っぽいものもあるし! かなり黒に近い色味だけど味噌っぽい感じのものもある!

「……どうだ、ミカ。嬉しいか?」

 密かに興奮している僕の頭に手を置きながら、ジルが背後から首を伸ばすようにして顔を覗き込んでくる。その近距離すら気にならないくらいテンションが上がっている僕は、何度も頷いた。

「うん、嬉しい! ありがとう、ジル、カミュ! マティ様も、本当にありがとうございます!」
「よかったな」
「よかったですね」

 大喜びしている僕と、それを微笑ましげに見守るジルとカミュ。その光景を眺めながら、マティ様は溜息をついた。

「……まったく、そんなに情を移して。私は知らんぞ」

 呆れたような忠告の声を受け止めたジルは、僕の頭を撫でながら、穏やかにマティ様を振り返る。

「何の考えもなく可愛がっているようにでも見えるか、マティアス? ……俺だって、きちんと考えている。ミカには長生きしてほしいからな」

 ──えっ?
 沸いていた脳内が、一気に冷えていく。なんだろう……、今のジルの一言は、決して聞き逃してはいけないものだった気がする。
 僕が長生きするには、暴走したジルに殺されることを回避するのが最低条件になると思うのだけれど、それはつまり下手したら間近に迫っていると思われる暴走化を止めるか先送りにするような方法が見つかったということ……?
 いや、それならマティ様も知っているはずだ。現に、目の前の王子様は、ほぼ無表情ながらも腑に落ちないといった面持ちになっている。

 僕が心の中で不安を渦巻かせ始めたのを察したのか否か、ジルは素知らぬ顔でのんびりと質問を投げかけてきた。

「これらの食材をどう使うのか、俺にはまったく検討もつかないが、ミカならば分かるんだろう? 何を作ってくれるんだ?」
「え、えぇと……」
「ミカの手料理はどれも美味いからな。未知のものでも安心して食べられる。楽しみだ」

 静かな口調ながらも、ワクワクしてくるのが伝わってくる、そんなジルの呟きへ一番最初に反応したのは、意外にもマティ様だった。

「ミカの……手料理……」

 なんとなく……、本当になんとなくだけど、マティ様の無表情もだいぶ見分けられるようになってきたかもしれない。たぶん、今、彼は僕の作るごはんに興味を持っている。それも、物凄く。アイスブルーの瞳がめちゃくちゃキラキラしているから、きっと間違いない。
 ──そっか、そうだよね。ここにあるホラマロバ王国の食材は、マティ様が仕入れて運んでくれたもの。ここはプレカシオン王国なのだし、他国の食材を用意してくれたってことだ。王子様の権限を使ったとしても、きっと大変だったと思う。

 苦労をして仕入れて、届けて、喜ばれている、自分には馴染みのない食材。興味もあるだろうし、食べてみたいと心惹かれる感覚もあるんじゃないかな。
 そう考えた僕は、思いきって、ひとつの提案をしてみる。

「あの、マティ様。よろしければ、一緒にごはんを召し上がりませんか? お持ちいただいたホラマロバ王国の食材を使って、頑張って作りますので!」
「……、……は?」

 マティ様は見たことがないほど目をまんまるくして、ぽかんと口を開いた。ジルとカミュも呆気にとられたように、僕を凝視してくる。三人から突き刺さる視線を受け止めながら、僕はもう一度、めげずにお誘いした。

「お持ちいただいた食材を、もう少しきちんと確認してみないと確実なことは言えないですけど、でも、たぶん、この材料でしゃぶしゃぶが出来ると思うんです。えっと、僕は一人鍋しかしたことないんですけど、鍋はみんなで一緒に食べたほうがきっとずっと美味しいはずで……、つまり、その、僕はマティ様と一緒に鍋パーティーがしたいです!」
「……何がしたいって?」

 マティ様は混乱した様子を見せつつも、そう訊き返してくれた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

処理中です...