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【第4話】応援フロランタンと祝福ケーキ
【4-6】
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カミュから渡された麻袋の中には、瓶が入っている。素材は硝子によく似ているけれど、ちょっと違うようだ。城の窓も同じ素材で作られているみたいだけれど、とても頑丈で、ちょっとやそっとのことではヒビが入ったり割れたりしないらしい。詳細は不明だけれど、優秀な素材だと思う。
瓶の蓋を開けて置くと、クックが近くの花をクチバシで摘み、入れてくれる。続いてポッポも、違う色の花を摘んで入れてくれた。鳥たちが入れたのは、どちらも蜜を採るための花だ。蜜用の花は瓶に入れるのだ、と理解しているみたい。本当に賢い子たちだ。
「ありがとう。このまま手伝ってもらっていい?」
「クッ!」
「ポッ!」
「いい子たちだね。採取したら、一緒におやつを食べよう」
「ククッ!」
「ポッ、ポッ!」
蜜用の花はご機嫌な鳥たちに任せて、僕は食用の花を摘むことにする。サラダや炒め物にそのまま入れたり、砂糖漬けにしたり、ディデーレの春の花々はいろんな使い道があって楽しい。勿論、普通に飾っても綺麗だ。
ただ、全部が食べられるわけじゃない。毒を持っているものは無さそうだけど、食べても美味しくない花は無理に手折らず残しておきたいよね。
ジルとカミュから教わって、食用の花の判別は出来るようになってきたけれど、曖昧なものもある。判断に迷うときは、クックとポッポに訊くのが早い。
「クック、ポッポ。この花は食べられる?」
「クッ!」
「ポッ!」
「うん、食べられるんだね。じゃあ、こっちの花は?」
「クゥ……」
「ポー……」
「ふふっ、ダメなんだね。教えてくれて、ありがとう」
肯定のときは得意気に鳴いて頷き、否定のときは神妙な顔で首を振る。表情豊かな鳥たちの反応が可愛くて、つい全種類を尋ねたくなってしまうけれど、それは自重した。
黙々と花を摘み、麻袋へ入れていく。その合間にふと思い出してしまうのは、中水上のおじさんの家へ初めて連れて行ってもらったときのことだ。
初対面のおじさんに手を引かれて、電車を乗り継ぎ、幼児にとってはかなりの長旅を経験したあの日。電車に揺られてうとうと眠っていた僕は、目的地に着いたからと優しく起こされた。そして、寝ぼけまなこでホームに降り立った僕の視界に飛び込んできたのは、遠目にも鮮やかな青の花々だったんだ。駅の程近くに花畑があって、それが見えたんだけれど、子どもだった僕は不思議な世界へ行った気分になったものだ。
『綺麗でしょう? ネモフィラっていう名前の花なんだよ。この町は海が近いから、本物の海も見られるけどね、花の海も素敵だよね』
感激して棒立ちになる僕を咎めることなく一緒に立ち止まり、低くしゃがんで視線を合わせてくれたおじさんは、柔らかく微笑んで言った。
『この町にはいろんな海があって、気持ちいい風もたくさん吹くよ。海風くんの名前にピッタリな場所だから、好きになってくれると嬉しいな』
そのときの僕は自分の名前の漢字も分からなかったからピンとこなかったけれど、大人になるにつれ、なんて慈しみに溢れた言葉だったのだろうとしみじみ感じたものだ。
ゆったりと時間が流れるような素敵な町とは、残念ながらすぐにお別れすることになってしまった。それから僕が長年過ごした施設も、就職して一人で暮らし始めたアパートも、あの町とはかなり離れた地方だったから、あの青い花畑は遠い記憶の光景となってしまっている。
おじさんの家に着いてすぐ熱を出して食べさせてもらったミルク粥の味も併せて、大切な思い出だ。
「ククッ!」
「ポッ、ポポッ!」
鳥たちの鳴き声にハッとしてそちらを見ると、クックとポッポは花で満杯になった瓶の両脇でドヤ顔をしていた。どうやら、蜜用の花を採り終えたらしい。対する僕は、かなりぼーっとしていたのか、麻袋は三分の一くらいしか埋まっていない。
「ありがとう。君たちは仕事が早いねぇ。……ごめんね、僕はもう少しかかりそう」
麻袋の中を見せると、クックとポッポは仕方がないなと言うようにクルクル鳴いて、今度は食用の花を摘み始めた。働き者の鳥たちに遅れを取らないように、今度は僕も集中して採取する。
白、黄色、水色、ピンク、オレンジ、赤、紫──と、麻袋の中が様々な彩りで埋められていき、とても綺麗だ。ちなみに、この麻袋には鮮度を保つ魔法がかけられていて、摘み取った花は花弁を散らせることも萎れることもなく、元気なまま積み重なっている。本当に、魔法って便利だ。
「……よし、こんなものかな」
クックとポッポの協力のおかげで、スムーズに花を集められた。カミュにお願いされていた目標量に十分届いたと思うし、ここでのんびりと休んだら戻ろう。
「クック、ポッポ、お疲れ様。どうもありがとう。おいで、おやつにしよう」
「クッ!」
「ポッ!」
麻袋と瓶を持って歩き出すと、愛鳥たちは僕の肩に乗ってバランスを取りながら、ご機嫌にさえずった。
瓶の蓋を開けて置くと、クックが近くの花をクチバシで摘み、入れてくれる。続いてポッポも、違う色の花を摘んで入れてくれた。鳥たちが入れたのは、どちらも蜜を採るための花だ。蜜用の花は瓶に入れるのだ、と理解しているみたい。本当に賢い子たちだ。
「ありがとう。このまま手伝ってもらっていい?」
「クッ!」
「ポッ!」
「いい子たちだね。採取したら、一緒におやつを食べよう」
「ククッ!」
「ポッ、ポッ!」
蜜用の花はご機嫌な鳥たちに任せて、僕は食用の花を摘むことにする。サラダや炒め物にそのまま入れたり、砂糖漬けにしたり、ディデーレの春の花々はいろんな使い道があって楽しい。勿論、普通に飾っても綺麗だ。
ただ、全部が食べられるわけじゃない。毒を持っているものは無さそうだけど、食べても美味しくない花は無理に手折らず残しておきたいよね。
ジルとカミュから教わって、食用の花の判別は出来るようになってきたけれど、曖昧なものもある。判断に迷うときは、クックとポッポに訊くのが早い。
「クック、ポッポ。この花は食べられる?」
「クッ!」
「ポッ!」
「うん、食べられるんだね。じゃあ、こっちの花は?」
「クゥ……」
「ポー……」
「ふふっ、ダメなんだね。教えてくれて、ありがとう」
肯定のときは得意気に鳴いて頷き、否定のときは神妙な顔で首を振る。表情豊かな鳥たちの反応が可愛くて、つい全種類を尋ねたくなってしまうけれど、それは自重した。
黙々と花を摘み、麻袋へ入れていく。その合間にふと思い出してしまうのは、中水上のおじさんの家へ初めて連れて行ってもらったときのことだ。
初対面のおじさんに手を引かれて、電車を乗り継ぎ、幼児にとってはかなりの長旅を経験したあの日。電車に揺られてうとうと眠っていた僕は、目的地に着いたからと優しく起こされた。そして、寝ぼけまなこでホームに降り立った僕の視界に飛び込んできたのは、遠目にも鮮やかな青の花々だったんだ。駅の程近くに花畑があって、それが見えたんだけれど、子どもだった僕は不思議な世界へ行った気分になったものだ。
『綺麗でしょう? ネモフィラっていう名前の花なんだよ。この町は海が近いから、本物の海も見られるけどね、花の海も素敵だよね』
感激して棒立ちになる僕を咎めることなく一緒に立ち止まり、低くしゃがんで視線を合わせてくれたおじさんは、柔らかく微笑んで言った。
『この町にはいろんな海があって、気持ちいい風もたくさん吹くよ。海風くんの名前にピッタリな場所だから、好きになってくれると嬉しいな』
そのときの僕は自分の名前の漢字も分からなかったからピンとこなかったけれど、大人になるにつれ、なんて慈しみに溢れた言葉だったのだろうとしみじみ感じたものだ。
ゆったりと時間が流れるような素敵な町とは、残念ながらすぐにお別れすることになってしまった。それから僕が長年過ごした施設も、就職して一人で暮らし始めたアパートも、あの町とはかなり離れた地方だったから、あの青い花畑は遠い記憶の光景となってしまっている。
おじさんの家に着いてすぐ熱を出して食べさせてもらったミルク粥の味も併せて、大切な思い出だ。
「ククッ!」
「ポッ、ポポッ!」
鳥たちの鳴き声にハッとしてそちらを見ると、クックとポッポは花で満杯になった瓶の両脇でドヤ顔をしていた。どうやら、蜜用の花を採り終えたらしい。対する僕は、かなりぼーっとしていたのか、麻袋は三分の一くらいしか埋まっていない。
「ありがとう。君たちは仕事が早いねぇ。……ごめんね、僕はもう少しかかりそう」
麻袋の中を見せると、クックとポッポは仕方がないなと言うようにクルクル鳴いて、今度は食用の花を摘み始めた。働き者の鳥たちに遅れを取らないように、今度は僕も集中して採取する。
白、黄色、水色、ピンク、オレンジ、赤、紫──と、麻袋の中が様々な彩りで埋められていき、とても綺麗だ。ちなみに、この麻袋には鮮度を保つ魔法がかけられていて、摘み取った花は花弁を散らせることも萎れることもなく、元気なまま積み重なっている。本当に、魔法って便利だ。
「……よし、こんなものかな」
クックとポッポの協力のおかげで、スムーズに花を集められた。カミュにお願いされていた目標量に十分届いたと思うし、ここでのんびりと休んだら戻ろう。
「クック、ポッポ、お疲れ様。どうもありがとう。おいで、おやつにしよう」
「クッ!」
「ポッ!」
麻袋と瓶を持って歩き出すと、愛鳥たちは僕の肩に乗ってバランスを取りながら、ご機嫌にさえずった。
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