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【第4話】応援フロランタンと祝福ケーキ
【4-7】
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近くに生えている大きめの木の根元に腰を下ろし、足を伸ばす。すると、膝のあたりにクックとポッポが乗ってきた。ご褒美のおやつを期待してキュルキュルと甘えた声を出しながら、こちらをじっと見上げてくるのが可愛い。
それぞれを撫でてから、麻袋の他に持っていた小さめの布バッグの口を開く。フロランタンが入っている包みのひとつを取り出し、紙を開くと、鳥たちはテンションが上がったのか鳴き声が激しくなった。
「大丈夫、たくさんあるからね。君たちが食べやすいように砕くから、ちょっと待ってて」
「クークッ!」
「ポッ! ポッ!」
「はいはい。……よし。どうぞ、召し上がれ」
砕いたフロランタンを載せた手のひらを差し出すと、クックとポッポは夢中になって食べ始める。僕の手をつつかないように気をつけながら食べているみたいだから全然痛くないけど、小さな頬やクチバシの一部が時々擦れてくすぐったい。
小さな生き物との触れ合いは、とても癒される。この魔王の城は魔物は勿論、動物もあまり寄り付かないから、余計にそう感じた。
「クッ、クッ!」
「ポポッ!」
「もう、ごちそうさまかな?」
手のひらの中のフロランタンが空になったところで、クックとポッポは満足したのか、僕の脚から下りて地面に座る。どうやら、おかわりはいらないらしい。お腹いっぱいの愛鳥たちがウトウトし始める可愛らしい姿を眺めつつ、僕もおやつタイムにすることにした。
美しい花畑を眺めながら、自作のおやつをのんびりと食べる。傍らには愛鳥たちがいて、側の城の中にはこんな僕を慈しんでくれる優しい人たちがいる。とても穏やかで、幸せな時間。──でも、この幸福な日々はどうやら長続きしないらしいことは、マティ様から聞かされているし、分かっている。
魔王らしくない優しいジルの中には、確かに魔王の魂の欠片が宿っていて、それが暴走してしまえば、自我を喪ったジルは真っ先に僕を殺すのだろう。彼自身は何か策を講じているようだけれど言葉を濁していたし、カミュも浮かない顔をしていたから、確実な手段ではないのだと思う。
だから、きっと、僕はそう遠くない未来にもう一度死ぬことになるはずだ。でも、だからといってあまり焦燥感は無い。
死にたいわけじゃない。でも、だからといって、死にたくないと強く願うわけでもない。それは、地球で生きていたときと同じ、ずっと変わらない感覚だった。ディデーレでの日々はとても楽しくて幸せなものだし、少しでも長く続けばいいと願いもするけれど、自分の命が長らえてほしいとは露ほども思わない。僕は、己の生命への執着が乏しいんだろう。
「クゥ……?」
「ポー……?」
不意に、微睡んでいた鳥たちが目を開き、立ち上がる。不思議そうに顔を見合わせた彼らは、次に揃って僕を見上げてきた。何かを訴えかけるような視線だ。
「クック、ポッポ、どうしたの?」
欝々とした思考を追い出して問い掛けると、クックとポッポはついてこいと言わんばかりに、ゆっくりと飛び始める。少し飛んでは、地面に降りて僕を振り向き、また飛んで……という風に。
「ま、待って……!」
咄嗟に荷物をまとめて持って、慌てて鳥たちを追いかける。取られる心配も無いし、仮に誰かしらの侵入者に盗まれたところで大して害も無いのだけれど、長年の習性か、手荷物を放置してその場を離れるのにはなんだか抵抗があった。
クックとポッポは、森へ向かって飛んでいく。僕が立ち入りを禁じられている深い森とは別方向の森だけれど、基本的には森へ足を踏み入れること自体を推奨されていない。いくらクックとポッポがついていてくれるとはいえ、このまま進んでしまっていいものだろうか。
「あれ……?」
悩みながらも鳥たちの後を追っていると、視界の先に人影が見えた。それも、小さめの。……子ども? ──うん、子どもだ。十歳前後だろうか。女の子が一人、森の入口付近で棒立ちになっている。
どことなく仏頂面の彼女の周りに、他の人影は無さそうだ。女の子が一人で、こんなところ──魔王の城まで来るだなんて、何事だろう。心配になった僕は、森の近くということを意識から飛ばして、女の子へ駆け寄った。
「おーい! 君、どうしたの! 迷子かな!?」
ドタバタと走る僕の真上を、クックとポッポも追従して飛んで来る。魔鳥たちが危険を察知していないのだから、この女の子は普通の子どもなんだと思う。
ロリータっぽい系統のふわふわしたワンピースに身を包んだ栗毛の少女は、勝気な紫色の瞳で僕を見上げて、ツンと唇を尖らせた。
「わたくし、『君』じゃありませんわ。アリスという名前がありますの」
本や映画でしかお目に掛かったことがないような典型的なお嬢様口調の小さなレディは、スカートの裾をつまんで優雅に一礼してから、再び強気な眼差しで見上げてくる。
「それに、迷子じゃなくってよ。こちらは、魔王の城で合っているかしら? わたくし、魔王に勝負を挑みに来ましたの」
それぞれを撫でてから、麻袋の他に持っていた小さめの布バッグの口を開く。フロランタンが入っている包みのひとつを取り出し、紙を開くと、鳥たちはテンションが上がったのか鳴き声が激しくなった。
「大丈夫、たくさんあるからね。君たちが食べやすいように砕くから、ちょっと待ってて」
「クークッ!」
「ポッ! ポッ!」
「はいはい。……よし。どうぞ、召し上がれ」
砕いたフロランタンを載せた手のひらを差し出すと、クックとポッポは夢中になって食べ始める。僕の手をつつかないように気をつけながら食べているみたいだから全然痛くないけど、小さな頬やクチバシの一部が時々擦れてくすぐったい。
小さな生き物との触れ合いは、とても癒される。この魔王の城は魔物は勿論、動物もあまり寄り付かないから、余計にそう感じた。
「クッ、クッ!」
「ポポッ!」
「もう、ごちそうさまかな?」
手のひらの中のフロランタンが空になったところで、クックとポッポは満足したのか、僕の脚から下りて地面に座る。どうやら、おかわりはいらないらしい。お腹いっぱいの愛鳥たちがウトウトし始める可愛らしい姿を眺めつつ、僕もおやつタイムにすることにした。
美しい花畑を眺めながら、自作のおやつをのんびりと食べる。傍らには愛鳥たちがいて、側の城の中にはこんな僕を慈しんでくれる優しい人たちがいる。とても穏やかで、幸せな時間。──でも、この幸福な日々はどうやら長続きしないらしいことは、マティ様から聞かされているし、分かっている。
魔王らしくない優しいジルの中には、確かに魔王の魂の欠片が宿っていて、それが暴走してしまえば、自我を喪ったジルは真っ先に僕を殺すのだろう。彼自身は何か策を講じているようだけれど言葉を濁していたし、カミュも浮かない顔をしていたから、確実な手段ではないのだと思う。
だから、きっと、僕はそう遠くない未来にもう一度死ぬことになるはずだ。でも、だからといってあまり焦燥感は無い。
死にたいわけじゃない。でも、だからといって、死にたくないと強く願うわけでもない。それは、地球で生きていたときと同じ、ずっと変わらない感覚だった。ディデーレでの日々はとても楽しくて幸せなものだし、少しでも長く続けばいいと願いもするけれど、自分の命が長らえてほしいとは露ほども思わない。僕は、己の生命への執着が乏しいんだろう。
「クゥ……?」
「ポー……?」
不意に、微睡んでいた鳥たちが目を開き、立ち上がる。不思議そうに顔を見合わせた彼らは、次に揃って僕を見上げてきた。何かを訴えかけるような視線だ。
「クック、ポッポ、どうしたの?」
欝々とした思考を追い出して問い掛けると、クックとポッポはついてこいと言わんばかりに、ゆっくりと飛び始める。少し飛んでは、地面に降りて僕を振り向き、また飛んで……という風に。
「ま、待って……!」
咄嗟に荷物をまとめて持って、慌てて鳥たちを追いかける。取られる心配も無いし、仮に誰かしらの侵入者に盗まれたところで大して害も無いのだけれど、長年の習性か、手荷物を放置してその場を離れるのにはなんだか抵抗があった。
クックとポッポは、森へ向かって飛んでいく。僕が立ち入りを禁じられている深い森とは別方向の森だけれど、基本的には森へ足を踏み入れること自体を推奨されていない。いくらクックとポッポがついていてくれるとはいえ、このまま進んでしまっていいものだろうか。
「あれ……?」
悩みながらも鳥たちの後を追っていると、視界の先に人影が見えた。それも、小さめの。……子ども? ──うん、子どもだ。十歳前後だろうか。女の子が一人、森の入口付近で棒立ちになっている。
どことなく仏頂面の彼女の周りに、他の人影は無さそうだ。女の子が一人で、こんなところ──魔王の城まで来るだなんて、何事だろう。心配になった僕は、森の近くということを意識から飛ばして、女の子へ駆け寄った。
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ロリータっぽい系統のふわふわしたワンピースに身を包んだ栗毛の少女は、勝気な紫色の瞳で僕を見上げて、ツンと唇を尖らせた。
「わたくし、『君』じゃありませんわ。アリスという名前がありますの」
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