魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

文字の大きさ
72 / 246
【第4話】応援フロランタンと祝福ケーキ

【4-9】

しおりを挟む
 魔法少女と聞いた僕は、休日の朝に放映されているような、女の子たちがキラキラ変身して悪者をやっつけているアニメを想像してしまう。でも、きっとそうじゃないんだろうなという予想もしている。
 この世界の人は、魔法を使えるのが当たり前という感覚のようだし、実際、生活を便利にするための要素として当然のように駆使されている。だから、魔法を使える女の子なら誰でも魔法少女ってことになるのでは……?

「……アリスちゃんも、魔法を使えるんだよね?」
「えっ!? え、ええ、でも、アデルと比べたら何も出来ないも同然ですわ」
「でも、魔法を使えるんだよね? 少なくとも、魔王と戦ってみようと考える程度には」
「えっ、ええ……、だって、その、わたくし、剣術などは習っておりませんので」
「ということは、アリスちゃんも魔法少女なんだよね?」
「は……っ、はぁぁぁぁ!? あなた、何をワケの分からないことを言ってますの!?」

 瞬時に顔を真っ赤にして頬を膨らませたアリスちゃんは、レディらしくない勢いで地団駄を踏む。どうやら僕は、彼女の中の怒りスイッチを押下してしまったらしい。
 驚いたクックとポッポは、キュルキュル鳴きながら僕の前に進み出たものの、少女を威嚇していいものか悩んでいるようだ。僕は愛鳥たちを宥めるように両手でそれぞれをもふもふしながら、アリスちゃんに謝った。

「ご、ごめんね。僕、自分が魔法を使えないこともあって、その辺の事情は殆ど分からないんだ」
「……魔法が使えない、ですって?」
「そう。僕には魔力も無いし、魔法を使う能力も全く無いんだよ」
「う、嘘おっしゃい! 魔鳥を手なずけているじゃありませんの! それも、二羽! そんな高等な使役魔法を使っておいて、魔法が使えないなんて嘘がまかり通るはずないですわよ!」

 ビシッと人差し指を突きつけられて、推理ドラマで探偵から犯人だと言われたみたいな気分になる。無意識に呼吸を詰まらせてしまった。勿論、後ろめたいことなんか何も無いのだけれど。

「えーっと……、この子たちは僕が従えているわけではないというか……、僕が魔法を掛けているわけじゃないんだ」

 しゃがむ体勢がちょっと疲れてきた僕は、そのままお尻を落とし、少し脚を開いた形でゆるく体育座りする。すると、クックとポッポが両膝それぞれに乗ってきて、アリスちゃんに向かってドヤ顔を披露した。お嬢様は、鳥たちを疑惑の目で見下ろしている。

「こんなに懐いているのに……? 明らかに、ミカさんを主人だと思っているじゃありませんの」
「主人というか……、この子たちは、僕を護るように言われているから、面倒をみてくれているだけだよ。あと、名前をつけたのが僕だから、それで仲良くしてくれているのもあるかな」
「名付け親なのに、主ではないと……?」
「うーん……、この鳥たちに魔法を掛けているのは魔王なんだ」

 魔王。その名を聞いた途端、アリスちゃんの小さな肩がピクリと震えた。そして、恐る恐る、僕に問い掛けてくる。

「ミカさん。……そういえば、あなたは、どうしてここにいるのかしら?」
「えっ? クックとポッポ……、ああ、この子たちの名前なんだけどね、この鳥たちがアリスちゃんのことを知らせてくれたというか、連れて来てくれたんだ」
「そっ……、そうではなくて、この城にいるのはどうして? 魔王の城に、住んでいらっしゃるの?」

 ああ、そうか。僕は名前は教えたけれど、それ以外は何も身を明かしていないんだ。そう気付いて、遅ればせながら何者なのかを説明した。

「僕は、魔王の食事係なんだ。ディデーレの人間ではなくて、他の世界から召喚されてきたんだよ。僕が元々生きていた世界では、人間はみんな魔力を持っていなかったし、魔法も存在していなかったんだ」
「……魔王のしもべですの?」
「うん、そうだね」

 怖がらせてしまうかもしれないと心配になったけれど、つぶらな紫の瞳を大きく見開いている彼女は、もっと違うことを気にしているようだ。

しもべに魔鳥を二羽も与えているというんですの……? 魔法も使えない、ただの食事係に……、そこまでするくらい、魔王はあなたを大切にしているの……?」

 おそらく、魔鳥はとても貴重な存在なんだろう。それを二羽も譲ってくれたのはマティ様なんだけど、お忍びで訪れている第三王子の存在を明かすわけにはいかない。誤魔化す言葉も思い浮かばず、かといって頷くのも躊躇われる。
 不自然に黙り込む僕の不審さも気にならないのか、アリスちゃんはとてもショックを受けた様子で、両手で自分の頬を包み込んでいた。

「魔王だって、自分のしもべをこんなにも大切にしているというのに……っ、わ、わたくしは、自分の誕生日を家族にお祝いしてもらうことも出来ないなんて……!」
「──!」

 誕生日。──幼い唇からポロリと飛び出たその単語が、僕の胸にずっしりと沈み込み、暗く重たい澱となって心の底にこびりついた気がした。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

【㊗️受賞!】神のミスで転生したけど、幼児化しちゃった!〜もふもふと一緒に、異世界ライフを楽しもう!〜

一ノ蔵(いちのくら)
ファンタジー
※第18回ファンタジー小説大賞にて、奨励賞を受賞しました!投票して頂いた皆様には、感謝申し上げますm(_ _)m ✩物語は、ゆっくり進みます。冒険より、日常に重きありの異世界ライフです。 【あらすじ】 神のミスにより、異世界転生が決まったミオ。調子に乗って、スキルを欲張り過ぎた結果、幼児化してしまった!   そんなハプニングがありつつも、ミオは、大好きな異世界で送る第二の人生に、希望いっぱい!  事故のお詫びに遣わされた、守護獣神のジョウとともに、ミオは異世界ライフを楽しみます! カクヨム(吉野 ひな)にて、先行投稿しています。

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

断罪後のモブ令息、誰にも気づかれずに出奔する

まる
ファンタジー
断罪後のモブ令息が誰にも気づかれないよう出奔して幸せを探す話

五十一歳、森の中で家族を作る ~異世界で始める職人ライフ~

よっしぃ
ファンタジー
【ホットランキング1位達成!皆さまのおかげです】 多くの応援、本当にありがとうございます! 職人一筋、五十一歳――現場に出て働き続けた工務店の親方・昭雄(アキオ)は、作業中の地震に巻き込まれ、目覚めたらそこは見知らぬ森の中だった。 持ち物は、現場仕事で鍛えた知恵と経験、そして人や自然を不思議と「調和」させる力だけ。 偶然助けたのは、戦火に追われた五人の子供たち。 「この子たちを見捨てられるか」――そうして始まった、ゼロからの異世界スローライフ。 草木で屋根を組み、石でかまどを作り、土器を焼く。やがて薬師のエルフや、獣人の少女、訳ありの元王女たちも仲間に加わり、アキオの暮らしは「町」と呼べるほどに広がっていく。 頼れる父であり、愛される夫であり、誰かのために動ける男―― 年齢なんて関係ない。 五十路の職人が“家族”と共に未来を切り拓く、愛と癒しの異世界共同体ファンタジー!

異世界転生~チート魔法でスローライフ

玲央
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

処理中です...