魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

文字の大きさ
145 / 246
【第7話】悪魔をもてなす夏野菜たっぷり辛口ピッツァ

【7-11】

しおりを挟む
 大魔王は、魔の者。
 ──サラリと明かされた事実に、心がザワザワする。
 確かに、不思議には思っていた。大魔王なんていう存在が、何故ぬるっと現れたのか。そして、なぜ、大魔王と人間の王たちの間で交わされた契約に、魔の者が関わっているのか。

「ミーカ、だいじょぶ? 顔が真っ青だけどー?」
「うん……、大丈夫」
「ミカ、無理はしなくていい」

 ずっと黙って聞いていたジルが、心配そうに口を挟んできた。カミュも何も言わないまでも、気遣わしげな視線を向けてきている。
 けれど、二人ともノヴァユエの話を止めたいというわけではなく、単に僕の精神状態を懸念してくれているんだろうと思う。──それならば、僕は知りたい。この世界の真実を。

「大丈夫、ありがとう。……ノヴァユエ、教えてくれる? 僕は、魔の者について殆ど何も知らないんだ。どうして、魔の者が大魔王になったの?」
「うん、いいよ★ 教えてあげる☆」

 にへらっと笑ったノヴァユエは、ひしゃげた眼鏡を指でクイッと押し上げてから得意気に語り始めた。

「ミカがボクたち悪魔についてよく知らないっていうなら、まずはそこから説明してあげよっかな★ そもそも人間って魔の者を真似して聖なる者が作ったって知ってる?」
「えっ? ううん、知らない。……聖なる者って?」
「そっかそっか★ いいよいいよ、最初から教えてあげるね☆」

 そして、ノヴァユエは口調は相変わらず軽いものの、案外わかりやすく噛み砕いて説明をしてくれた。

 ──僕たちがよく知る人間や動物のような生命体を生み出し、魂の管理をしている存在として「聖なる者」と呼ばれる存在があるそうだ。生命体が住まう星々の管理と、死んだ者の魂の回収が魔の者の役割。聖なる者は、回収された魂を綺麗に初期化して新たな生命体を創りだすのが役割。長い永い時が過ぎる中、争うこともあったようだけれど、基本的にはお互いにつかず離れずの関係らしい。

 そんな中、あるとき聖なる者は、魔の者に似せた生命体である「人間」を創った。本来、魔の者がもたない生殖機能を与えて、自己繁殖できるようにした「人間」の存在を魔の者も面白がっていたらしい。魔の者が戯れに人間を殺したり食べたりすることも、あまり度を過ぎた数でなければ、聖なる者から抗議が来ることもないようだ。
 ちなみに、自己繁殖の機能をもたない魔の者を統べている頭領は「父」と呼ばれているそうで、魔の者に欠員が出た場合にはその人が生み出しているらしい。その頭領が定めている様々な掟の中で、最も重要視されているのは「同族を殺してはならない」というものだった。
 魔の者は基本的に不老不死で、滅多なことで殺されたりはしないけれど、同族同士であれば殺害が可能な場合は多い。──そして、この掟を破ったことがきっかけで「大魔王」は誕生した。

 とある特級悪魔が、この星の人間に執着していたという。それは恋のようでもあり、子を見守る保護者のようでもあり、とにかく魔の者には珍しい慈愛に満ちた性格で、対象の人物以外の人間に対しても友好的だったそうだ。
 そんな彼が可愛がっていた人間に、他の悪魔が手を出して弄んだ。激怒した特級悪魔はその悪魔を殺してしまい、「父」の逆鱗に触れてしまった。

「お父様の掟に逆らった奴には、重たい罰を与えられたうえで廃棄っていう末路しかないわけ★ そいつに与えられた罰は、理性を剥奪したうえで大魔王としてこの星に君臨させて、愛でてた人間たちを殺させたんだよ☆ さすがボクたちのお父様ってば良い趣味してるな~って思っちゃうよね★」
「うん……、悪趣味だね」
「あははっ★ まぁ、ミカは人間っぽい感覚で見ちゃうよね☆」
「うん……、でも、そっか。だから、大魔王の魂の欠片の行く末を、魔の者が側で見守っているんだね」
「まぁね★ 勇者とか呼ばれてる、人間のくせに魔の者を殺すだけの力を持っている存在って興味深いし☆ 研究するためにも、監視しておきたいってわけ★ 潰そうと思えば潰せた大魔王の魂をわざわざ生かしておくっていう決断を下した人間の強欲王たちも面白いしなーって☆」

 大魔王がどうしていたのか、魔の者がどうして介入しているのか、気になっていたことは割と理解できたと思う。ただ、それとノヴァユエの懸念は、どう繋がってくるんだろう。
 僕のそんな疑問を読み取ったのか、ノヴァユエは軽い笑い声を上げた。

「大魔王のことは分かったけど、それがどうしてカマルティユ先輩が第二の大魔王になるかもーって思考になるのかわかんねー……って顔してるね?」
「え、っと……」
「だからさぁ、同じだよ★ 大魔王が大魔王になったのは、同胞を殺したからでしょ? 大魔王の魂の欠片とはいえ、元は魔の者なんだから、それを宿した魔王を殺しちゃ同胞殺しになっちゃうわけ☆ ……つまり、カマルティユ先輩がそこの魔王を殺しちゃったりしたら、罰として第二の大魔王にされちゃう可能性があるってことだよ」

 言葉の最後が少し真面目なトーンになったノヴァユエに反応するように、テーブルに置かれているカミュの指先がピクリと震えた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました

雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。 気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。 剣も魔法も使えないユウにできるのは、 子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。 ……のはずが、なぜか料理や家事といった 日常のことだけが、やたらとうまくいく。 無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。 個性豊かな子供たちに囲まれて、 ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。 やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、 孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。 戦わない、争わない。 ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。 ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、 やさしい異世界孤児院ファンタジー。

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

御家騒動なんて真っ平ごめんです〜捨てられた双子の片割れは平凡な人生を歩みたい〜

伽羅
ファンタジー
【幼少期】 双子の弟に殺された…と思ったら、何故か赤ん坊に生まれ変わっていた。 ここはもしかして異世界か?  だが、そこでも双子だったため、後継者争いを懸念する親に孤児院の前に捨てられてしまう。 ようやく里親が見つかり、平和に暮らせると思っていたが…。 【学院期】 学院に通い出すとそこには双子の片割れのエドワード王子も通っていた。 周りに双子だとバレないように学院生活を送っていたが、何故かエドワード王子の影武者をする事になり…。  

『異世界ごはん、はじめました!』 ~料理研究家は転生先でも胃袋から世界を救う~

チャチャ
ファンタジー
味のない異世界に転生したのは、料理研究家の 私!? 魔法効果つきの“ごはん”で人を癒やし、王子を 虜に、ついには王宮キッチンまで! 心と身体を温める“スキル付き料理が、世界を 変えていく-- 美味しい笑顔があふれる、異世界グルメファン タジー!

【運命鑑定】で拾った訳あり美少女たち、SSS級に覚醒させたら俺への好感度がカンスト!? ~追放軍師、最強パーティ(全員嫁候補)と甘々ライフ~

月城 友麻
ファンタジー
『お前みたいな無能、最初から要らなかった』 恋人に裏切られ、仲間に陥れられ、家族に見捨てられた。 戦闘力ゼロの鑑定士レオンは、ある日全てを失った――――。 だが、絶望の底で覚醒したのは――未来が視える神スキル【運命鑑定】 導かれるまま向かった路地裏で出会ったのは、世界に見捨てられた四人の少女たち。 「……あんたも、どうせ私を利用するんでしょ」 「誰も本当の私なんて見てくれない」 「私の力は……人を傷つけるだけ」 「ボクは、誰かの『商品』なんかじゃない」 傷だらけで、誰にも才能を認められず、絶望していた彼女たち。 しかしレオンの【運命鑑定】は見抜いていた。 ――彼女たちの潜在能力は、全員SSS級。 「君たちを、大陸最強にプロデュースする」 「「「「……はぁ!?」」」」 落ちこぼれ軍師と、訳あり美少女たちの逆転劇が始まる。 俺を捨てた奴らが土下座してきても――もう遅い。 ◆爽快ざまぁ×美少女育成×成り上がりファンタジー、ここに開幕!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...