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【第7話】悪魔をもてなす夏野菜たっぷり辛口ピッツァ
【7-10】
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「あ、ありがとう……」
「ね、ね、お前は何が聞きたい? ボク、なんでも話しちゃうよ★」
段々と地の性格の明るい部分と押しの強さが戻って来ているノヴァユエが、握手したままの手をブンブンと振ってきた。敵意をもたれるのも厄介だけれど、急に一転して懐かれるのも戸惑いが大きい。
「聞かせてもらいたいことは色々とあるんだけど……、とりあえずみんなで食堂に移動して座らない? お茶とお菓子も出すから」
「えー……、まぁ、それでもいいけどさ。ボク、人間の食べ物とか飲み物ってあんまり好きじゃないんだよねー。人間の血と脳みそは割と好きだけど★」
「……た、食べないでね?」
「お前のことは食べないよ★ これ以上カマルティユ先輩に怒られたくないもん☆ だから、しょうがないから茶も飲んでやるし、菓子も食べてやるよっ★」
いちいち上から目線な言い方だけれども、そんなに不快感が無いのは、緑の悪魔に威圧感が無いからだろうか。親しい間柄での軽口程度のテンションだから、苦笑は浮かべたくなるものの、そんなに嫌ではない。──もっとも、横にいる赤い悪魔は結構イライラしていそうだけど。
とにかく、いつまでも調理場でああだこうだと言い合うのも落ち着かないし、みんなで食堂に移動することをひとまず納得してもらった。
◇
マティ様が持って来てくれたマッ茶を使ってフルーツティーを淹れて、作り置きしてあった花蜜クッキーを添えて食堂で振る舞う。
ノヴァユエは美味しいとは言わないものの文句も言わず、出されたものに素直に口を付けていた。ジルも茶菓子を楽しみつつ静観し、クックとポッポも近くでおやつを食べ、カミュも一応は同席してくれている。
「えぇと……、まず確認しておきたいんだけど、君の名前はノヴァユエで合ってる?」
「合ってるよ★ お前は?」
「僕は、海風。よろしくね、ノヴァユエ」
「うんうん、よろしくしてあげる☆」
今更ながらも自己紹介と軽い挨拶を交わすと、それを横目で眺めているカミュは憂い気な溜息をこぼした。そういえば、今の彼はノヴァユエの姿も声も認識できない設定なんだっけ。ということは、カミュから見た僕は、誰もいない席にお茶とお菓子を並べて、そこに語り掛けている相当にヤバイ奴なのかな。──まぁ、勿論、そんなはずもなく。あくまでも「設定」だからこそ、この美しい悪魔は眉間に皺を刻みながらもこの場にいてくれているわけだけど。
「それで、……ノヴァユエはどうして此処に来たの? 僕は詳しくないんだけど、魔の者が住んでる国とか星とかあって、普段はそこにいるんだよね?」
「ううん、違うよ★ ボクは、ワンダネロンド王国で魔王の監視をしてる特級悪魔だからね☆」
「ワンダネロンド王国……って、常春の国、っていう?」
この星の国のことを少しずつ教わっている最中の僕でも、その王国の名前は知っていた。四季が無い国で、常にあったかくて花が咲き乱れる美しい王国だったはずだ。
「そー、そー、いっつも同じだからつまんねーの。でも、今のプレカシオンみたいに暑苦しいのもダルくて嫌だけどさ★」
「そ、そうなんだ……、ノヴァユエもカミュと同じような仕事をしているんだね」
「まぁね★」
僕がカミュをカミュと呼んでも、ノヴァユエはもう何も反応しない。たぶん、カミュ自らがそう望んで呼ばせていると知って、納得したからなんだろう。
「ねー、ミカってさー、もしかして、特級悪魔の凄さを分かってなかったりするー? カマルティユ先輩は中でも別格だけどさー、そもそも特級に入れるだけで凄いんだよっ★」
「そうなの? 特級って、上級の上……?」
「んー、上っていうか、上級の中の特別な一部って感じかな★」
ノヴァユエ曰く、魔の者は全部で三百名ほどいて、上級・中級・下級にランク分けされているらしく、上級の中でも特に優れている者は特級、下級の中でも特に劣っている者は低級と称されているようだ。特級悪魔は重要な任務を与えられ、この世界での魔王の補佐役もそのひとつらしい。
「カマルティユ先輩に憧れて、なんとか出世してさー、やっと百年前にワンダネロンド王国の魔王のお目付け役になれて、やっと先輩の近くに来られたと思ったのにさぁ……、そしたら、肝心のカマルティユ先輩の様子がおかしくなっちゃってるんだもん。ずーっと様子見してたけど、先輩はずっとおかしいままだし、このままじゃ第二の大魔王になっちゃうんじゃないかって心配になって、やって来たってわけ」
「……大魔王?」
話の中で気になった単語を復唱すると、カミュが気まずそうに身じろぎした。彼としては触れてほしくない話題なのかもしれないけれど、今の「設定」的に言葉を挟むわけにもいかないのだろう。
とはいえ、本当に僕に聞かせたくない言葉であれば、どんな手段を使ってもそうするはずだ。ということは、今訊かせるつもりは無かったけれど、いつかは話そうと思っていた内容なのかもしれない。
次の言葉を待っている僕へ、ノヴァユエは無邪気に笑いかけてきた。
「あれっ? 知らない? ここで大魔王って呼ばれているのって、元々は魔の者なんだよ★」
「ね、ね、お前は何が聞きたい? ボク、なんでも話しちゃうよ★」
段々と地の性格の明るい部分と押しの強さが戻って来ているノヴァユエが、握手したままの手をブンブンと振ってきた。敵意をもたれるのも厄介だけれど、急に一転して懐かれるのも戸惑いが大きい。
「聞かせてもらいたいことは色々とあるんだけど……、とりあえずみんなで食堂に移動して座らない? お茶とお菓子も出すから」
「えー……、まぁ、それでもいいけどさ。ボク、人間の食べ物とか飲み物ってあんまり好きじゃないんだよねー。人間の血と脳みそは割と好きだけど★」
「……た、食べないでね?」
「お前のことは食べないよ★ これ以上カマルティユ先輩に怒られたくないもん☆ だから、しょうがないから茶も飲んでやるし、菓子も食べてやるよっ★」
いちいち上から目線な言い方だけれども、そんなに不快感が無いのは、緑の悪魔に威圧感が無いからだろうか。親しい間柄での軽口程度のテンションだから、苦笑は浮かべたくなるものの、そんなに嫌ではない。──もっとも、横にいる赤い悪魔は結構イライラしていそうだけど。
とにかく、いつまでも調理場でああだこうだと言い合うのも落ち着かないし、みんなで食堂に移動することをひとまず納得してもらった。
◇
マティ様が持って来てくれたマッ茶を使ってフルーツティーを淹れて、作り置きしてあった花蜜クッキーを添えて食堂で振る舞う。
ノヴァユエは美味しいとは言わないものの文句も言わず、出されたものに素直に口を付けていた。ジルも茶菓子を楽しみつつ静観し、クックとポッポも近くでおやつを食べ、カミュも一応は同席してくれている。
「えぇと……、まず確認しておきたいんだけど、君の名前はノヴァユエで合ってる?」
「合ってるよ★ お前は?」
「僕は、海風。よろしくね、ノヴァユエ」
「うんうん、よろしくしてあげる☆」
今更ながらも自己紹介と軽い挨拶を交わすと、それを横目で眺めているカミュは憂い気な溜息をこぼした。そういえば、今の彼はノヴァユエの姿も声も認識できない設定なんだっけ。ということは、カミュから見た僕は、誰もいない席にお茶とお菓子を並べて、そこに語り掛けている相当にヤバイ奴なのかな。──まぁ、勿論、そんなはずもなく。あくまでも「設定」だからこそ、この美しい悪魔は眉間に皺を刻みながらもこの場にいてくれているわけだけど。
「それで、……ノヴァユエはどうして此処に来たの? 僕は詳しくないんだけど、魔の者が住んでる国とか星とかあって、普段はそこにいるんだよね?」
「ううん、違うよ★ ボクは、ワンダネロンド王国で魔王の監視をしてる特級悪魔だからね☆」
「ワンダネロンド王国……って、常春の国、っていう?」
この星の国のことを少しずつ教わっている最中の僕でも、その王国の名前は知っていた。四季が無い国で、常にあったかくて花が咲き乱れる美しい王国だったはずだ。
「そー、そー、いっつも同じだからつまんねーの。でも、今のプレカシオンみたいに暑苦しいのもダルくて嫌だけどさ★」
「そ、そうなんだ……、ノヴァユエもカミュと同じような仕事をしているんだね」
「まぁね★」
僕がカミュをカミュと呼んでも、ノヴァユエはもう何も反応しない。たぶん、カミュ自らがそう望んで呼ばせていると知って、納得したからなんだろう。
「ねー、ミカってさー、もしかして、特級悪魔の凄さを分かってなかったりするー? カマルティユ先輩は中でも別格だけどさー、そもそも特級に入れるだけで凄いんだよっ★」
「そうなの? 特級って、上級の上……?」
「んー、上っていうか、上級の中の特別な一部って感じかな★」
ノヴァユエ曰く、魔の者は全部で三百名ほどいて、上級・中級・下級にランク分けされているらしく、上級の中でも特に優れている者は特級、下級の中でも特に劣っている者は低級と称されているようだ。特級悪魔は重要な任務を与えられ、この世界での魔王の補佐役もそのひとつらしい。
「カマルティユ先輩に憧れて、なんとか出世してさー、やっと百年前にワンダネロンド王国の魔王のお目付け役になれて、やっと先輩の近くに来られたと思ったのにさぁ……、そしたら、肝心のカマルティユ先輩の様子がおかしくなっちゃってるんだもん。ずーっと様子見してたけど、先輩はずっとおかしいままだし、このままじゃ第二の大魔王になっちゃうんじゃないかって心配になって、やって来たってわけ」
「……大魔王?」
話の中で気になった単語を復唱すると、カミュが気まずそうに身じろぎした。彼としては触れてほしくない話題なのかもしれないけれど、今の「設定」的に言葉を挟むわけにもいかないのだろう。
とはいえ、本当に僕に聞かせたくない言葉であれば、どんな手段を使ってもそうするはずだ。ということは、今訊かせるつもりは無かったけれど、いつかは話そうと思っていた内容なのかもしれない。
次の言葉を待っている僕へ、ノヴァユエは無邪気に笑いかけてきた。
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