魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

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【第7話】悪魔をもてなす夏野菜たっぷり辛口ピッツァ

【7-24】

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 ◆◆◆


 焼きたての大きなピザが二枚、夏の葉野菜と果実のサラダ、ふわふわオムレツ。ちなみに、オムレツはピザを焼いている間に、サラダはカミュとノヴァユエがジルを迎えに行っている間に僕が思いついて作ったものだ。料理が並んだ食卓を見て、緑の悪魔は目を輝かせた。

「うわーッ! すっげぇぇ! ボクが作ったやつも、ちゃんとある! 知らねぇ食いもんも何かあるー!」
「よかったですね、ノヴァユエ。ミカさんのオムレツもサラダもとても美味しいですから、きちんと食べるようにしましょうね」

 ピザ以外も食べるように促すカミュに対し、ノヴァユエは意外にも素直に頷く。

「うん★ なんか、不思議なんだけどさー、人間の食いもんを食ってみたいって、今はじめて思ってるんだよね☆」
「ほんと? ……わぁ、なんか、すっごく嬉しいなぁ」

 人間の食べ物なんて、と散々言っていたノヴァユエが、自分が調理に関わったことで少し見え方が変わったみたいで感慨深い。単純だなと笑い飛ばす人もいるかもしれないけれど、ちょっとしたきっかけで意識が変わることはよくあることだし、成長にも繋がっているんじゃないかと思う。そんなことをしみじみ考えていると、ジルに優しく肩を叩かれた。

「食べよう、ミカ。どれも美味しそうだ」
「うん、そうだね」
「では、魔法を解除しましょう。さぁ、ノヴァユエも座りなさい」
「はーいっ★」

 全員がそれぞれの席に座り、クックとポッポもいつもの窓際の皿の前に行く。魔鳥たちには木の実と果物を細かくしたものを用意してあって、二羽とも僕たちが食べ始めるのを待っていた。
 カミュが手を叩いて保温魔法を解除すると、ジルとカミュと僕は「いただきます」と声を合わせる。それを聞いたクックとポッポも小さく鳴いてから、彼らのごはんを啄み始めた。いただきますの概念が無いノヴァユエはきょとんとしていたものの、そこに関して触れることなく、自分が焼いたピザを指差す。

「ねー、ねー、これどうしたらいいのー?」
「切れ目を入れてあるから、それに沿ってひとつ取って、自分のお皿に置いてね。そうしたら、そこにある辛いソースを好きなだけ掛けてみるといいよ」
「掛ければ掛けるほど刺激的?」
「うん、そうだよ」

 そう言えばノヴァユエがたくさん掛けることは目に見えていたし、激辛になることも分かりきっていたけれど、好きにさせてみよう。このソースは辛味が強いけれど塩分はそんなに多くなさそうだし、しょっぱくて食べられなくなることはないだろうし。
 辛いソースがけっこう辛いことを知っているジルとカミュは少し心配そうにしているけれど、ノヴァユエは手に取ったピザへ楽しそうにたっぷりとソースを掛けている。そして緑の悪魔は、真っ赤に染まったピザへわくわくしながらかぶりつき、──白目を剥いた。

「ヒェッ……、っ、ん、あ、なんだこれぇぇぇぇッッ」
「あははっ。どう? 刺激的でしょ?」
「うん! やべぇ! あははッ! 舌がビリビリして面白ぇッ! あははッ!」
「ノヴァユエ、食べているときに大口を開けて話してはいけませんよ。ああ、ほら、もう、水を飲みなさい」
「ははっ、見ているだけで辛そうだな」
「これが辛いって感覚なの!? 苦いと甘いしか知らなかったけど、そっかぁ★ あははっ☆ たのしーねッ★」

 うっすら涙目になりながらも、ノヴァユエは楽しそうに笑っている。そんな彼を見て、ジルは興味深そうに笑っていて、カミュは柔らかい苦笑を浮かべていた。いつもの食事風景に一人加わって、賑やかさが増して、雰囲気も明るくて、楽しい。とても楽しい。

「うん、そのまま食べるとちょうどいい辛さでいいな。細かく刻まれた野菜の食感も、とても良い」
「ええ、本当に。夏の日差しによく合う味わい、という感じがします」
「へぇ~★ じゃあ今度はボクもそのまま食べてみる☆」

 みんなでひとつのピザを分かち合って、ワイワイと食べる。以前の僕には縁が無い幸せを、こうして噛みしめられるなんて。前は知らなかった喜びを新しく経験できる嬉しさを、今のノヴァユエも感じてくれているといいな。

「ねー、ミカ★ お前が作ったやつ、なんか美味しい気がする☆」
「ほんとっ?」
「うんっ★ でもー、それってさー、味がどーのとかじゃねぇんだよなー、たぶん? きっとさー、ボクも自分で作ったりさ、けっこう気に入ってるミカが作ってたからとかさ、そーゆーことな気がする☆ カマルティユ先輩が人間の食事に興味を持ったの、なんか分かる気がしてきた★」

 ピザだけではなく、オムレツやサラダも頬張ってくれたノヴァユエが、無邪気に笑った。

「ボクもさぁ、なんか情報拾ったらミカに教えてやるよ★」
「……情報?」
「うん★ そこの魔王がなんとか長生きできるようにしてーんだろ? ボクも何か分かったら教えるからさー、またミカのごはん食べさせてよ☆」
「うん、……うん、勿論だよ。ありがとう、ノヴァユエ」

 ジルもカミュもなんとも言えない顔をしているけれど、どちらもマイナスな雰囲気は感じない。それはきっと、僕も同じだ。
 ジルのことを好きだったり、気に掛けてくれる人たちとの縁が増えていって、それが解決の糸口になってくれるといいな。そして、僕も、その縁を繋ぐ役目を負っていきたい。
 そう願いながら、僕はノヴァユエが焼いたほうのピザへ手を伸ばした。


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第7話はここまでとなります。
ここまでお読みくださり、ありがとうございました。
よろしければ、ご感想などいただけると励みになります。

次の第8話は、諸事情により海風ミカの一人称視点ではなく三人称視点で進んでいきます。
ジルやカミュから見て海風ミカはどんな印象なのか等を書けたら…と思っています。
次話からも引き続きお付き合いいただけますと幸いです^^
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