魔王と僕≪しもべ≫のしあわせごはん

羽鳥くらら

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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー

【10-3】

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 聖なる者って、確か──人間を創り出した存在、だったよね。魂の管理とかリサイクルとかをしている、みたいな役割を持っていたはず。魂の受け渡しで、ごく一部の魔の者は聖なる者と交流があるらしいけど、それは本当に限られた人だけで、カミュでさえ実際に会話をしたことは無いと前に言っていた。
 そんな存在が、なぜ魔王の城に──?

 僕も知らず知らず緊張して、思わず生唾を嚥下したとき、なんとも平和な声が聞こえてきた。

「あのぉ……、もしもしぃ? こちらから、魔の者の方の気配がするのですが、いらっしゃいますかぁ?」

 少し語尾が間延びした感じの独特な語り口の男性の声は、とても穏やかで、童話を読み聞かせされたらスヤスヤと安眠できそうな気がする。……これが、聖なる者の声?
 声が聞こえた方向にある窓を注視していると、なんとも可愛らしい顔がひょっこりと覗き込んできた。垂れ耳のウサギのような頭部で、目がクリクリっとしていて、でも意外と大きな人型で、背中からは天使の羽のようなものが生えている。あれだ、遊園地とかにいるマスコットみたいな、そういう感じのアレだ! いや、僕は遊園地に行ったことがないから、単なる想像でしかないけど。とにかく可愛い!

「可愛い……!」

 思わず声を上げると、もふもふしたウサギ天使がこちらを見て、にっこりと笑った。めちゃくちゃ可愛い!

「おやおやぁ、違う世界から来た人間さんですねぇ。おやおやぁ、魔の者さんもいらっしゃる。これまた、特別な美人さんですねぇ。あのぉ、ここ、開けてもらえませんかぁ?」

 コンコン、とウサギ天使が窓を優しくノックする。どこまでも平和で、可愛らしさが突き抜けている姿だ。
 カミュはまだ少し警戒しているようだけれど、魔法で鍵を外して窓を開ける。すると、ウサギ天使がふわりと入り込んできた。
 淡いエメラルドグリーンの色味のふわふわした身体は、まるでぬいぐるみのようだ。間近で見ると僕よりも大きいけれど、やっぱりテーマパークの着ぐるみ感があるからか、怖くはない。長い垂れ耳はよく見ると左右合わせて四本あるけれど、それでもやっぱり恐ろしくはなかった。

「どうも、おはようございますぅ。開けていただいて、ありがとうございましたぁ。……くんくん。この魂の匂いはぁ、あなたは元々は地球の人間さんなんですねぇ。ぼくから見たら赤ちゃんみたいで可愛いですが、人間さんの基準だとそこそこお兄さんなんでしょうねぇ。はぁぁ、でも、可愛いですねぇ」
「──あの、どういったご用件でしょう?」

 僕を眺めて嬉しそうにしているウサギ天使を牽制するように、カミュが一歩前に進み出る。ウサギ天使がそこそこ大きいとはいえ、身長はカミュのほうがずっと高い。それでも、ウサギ天使は一切萎縮することなく、マイペースに微笑んだ。

「ああ、そうでしたねぇ。えーっとですねぇ、ぼく、とある魔の者の方を探しておりましてぇ、何か情報をいただけないかと、この星にいらっしゃる魔の者の方を順番に訪ねていたのですぅ」
「魔の者を? ……仕事関係でしょうか?」
「いいえぇ。ぼくの愛しいひとを探していますぅ」
「……、……は?」

 いつも大抵のことには動じないカミュが、珍しく動揺している。それほど衝撃的なことを言われたってことだよね。──まぁ、そっか。このウサギ天使は「愛しいひと」を探していて、それが「魔の者」だっていうのはなかなか驚きだよね。
 愛しい、ってことは、その……、お付き合いしていたりする……のかな? カミュも同じことが気になったのか、咳払いをしてから、静かに問い掛けた。

「その……、貴方と魔の者の誰かとが、恋仲である、と……、貴方はそう仰っているのですか……?」
「はい、そうですねぇ」
「正気ですか……?」

 カミュは心なしか青ざめているものの、警戒心はすっかり溶けてしまったようだ。マイペースなウサギ天使に毒気を抜かれてしまったのだろうか。クックとポッポも少し離れた場所へ飛び移り、遠目から僕たちを観察し始めた。

「ぼくの勘違いではないと思うんですよぉ。ぼくはあの子を愛していますし、あの子もぼくにドキドキしてくれていましたからぁ。だから、きちんと想いを通じ合わせて、家族になりたいと思ったんですよねぇ」
「はぁ……、貴方、聖なる者ですよね? 我々のような魔の者と家族になりたいなどと、冗談にしか聞こえませんが……」
「冗談ではありませんよぉ。あなた方、魔の者は子孫を残せない身体だそうですが、ぼくたち聖なる者は身体ではなく魂を繋げることで赤ちゃんを授かることができますからぁ、家族になって、家族を作りたいですねぇって言ったら、あの子、逃げちゃったんですよねぇ」
「はぁ……、は、はぁぁぁぁぁ!?」

 カミュは、僕が聞いたことのない素っ頓狂な声を発して、とうとう頭を抱えてしまった。
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