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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー
【10-4】
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「カミュ、大丈夫……?」
「ああ、すみません。取り乱してしまいました」
様子がおかしいカミュを気遣うも、彼はすぐにキリッとした表情に戻り、姿勢を正す。そして、美しい悪魔はウサギ天使を冷静に見下ろした。
「あの──、ご存知かもしれませんが、我々魔の者には、家族という概念がありません。知識としては理解していますし、貴方がたや人間たち、その他の動物や魔物なども『家族』という集団を形成するものだと認識しておりますが、私たちにはその習性がありません」
「そうなのですかぁ? でも、あなたと、こちらの可愛らしい人間さんは、家族ではないのですかぁ?」
そこでカミュは言葉に詰まった。そして、チラリと僕を見る。紅い眼差しに見え隠れしているのは、僕への遠慮ではなく、彼自身の中での葛藤だ。
「……私自身が、そう認めるわけにはまいりません。この城にいらっしゃる魔王様とこちらの方は、確かに家族のように過ごしておられますが、……私は、そこにひっそりと添えられているだけの存在です」
少し悲しげな声で語られた言葉が、切ない。僕は思わず、カミュの手首を握ってしまった。
「僕は、ジルもカミュも同じように家族だと思ってるよ。勿論、クックとポッポもだけど。……君がどう考えていたとしても、僕はそう思ってる」
「ミカさん……」
カミュは困ったように微笑み、僕の髪をそっと撫でてくる。
「そのお気持ちは本当に嬉しいです。ありがとうございます。──それに、私だって、叶うならば、同じ気持ちですと声高に申し上げたいのですよ。……でも、それはおそらく、『父』が望まないことですから。今は、『父』を敵に回したくありません。ただでさえ、今の私たちは諸々が不安定な状況ですので」
「魔の者の方々にとっての『お父様』とは、つまり、創造主様のことですねぇ」
カミュの言葉を受けて、ウサギ天使がほんわりとした口調で言って頷いた。……とても可愛いけれど、あまりにも和む姿だから、一気にシリアス感が薄れた気がする。いや、深刻な空気が続くよりはいいかもしれないけど。
「なるほど、なるほどぉ。魔の者の方々はお父上の手で創り出される存在でいらっしゃるから、創造主様と魔の者の方々という父子関係以外の家族は無いのですねぇ。おそらくは創造主様も、それを望んでいらっしゃる。魔の者の方々はお父上の言いつけを遵守されていますから、創造主様のご意思に背くようなことは避けられたいわけですねぇ」
「ええ、その通りです。ご理解が早くて助かります」
ウサギ天使の言葉に、カミュはしみじみと頷く。お世辞や嫌味ではなく、説明の手間が短縮されたことを純粋に有難く思っているようだ。
相変わらずほわほわした雰囲気のウサギ天使は、にこにこ顔のまま何度も頷いた。
「あぁ、だからきっと、セレーナさんも怖くなって投げてしまったのかもしれませんねぇ。ぼくと家族になるなんてお父上に知れたら、叱られてしまうかもしれないからぁ」
「ええ、きっと、──って、ちょっと待ってください。今、誰だと言いました?」
「えっ? セレーナさんのことですかぁ?」
「……。はぁ……、よりによって相手はあの子ですか」
カミュは片手を額に宛がって、深々と溜息をつく。本気で頭が痛そうなので、姿勢の良い背中をそっと撫でてみる。本当は頭を撫でたかったんだけど、僕では彼の頭まで手が届かないから仕方ない。カミュはこちらを振り向いて、優しく目を細めて柔らかく微笑んでくれた。
「ありがとうございます、ミカさん。ご心配をお掛けして、すみません。私は大丈夫ですよ」
「ほんと? 無理してない?」
「ええ、大丈夫です。……少々、面倒くさそうな展開が見えたので、嫌気が差してしまっただけです」
そして再び長い溜息をついたカミュは、のんびりとおとなしく待っていたウサギ天使へ静かに語り掛ける。
「セレーナが誰かは、私も知っています。直接話したことは、一度か二度程度しかありませんが。彼女は、魔の者たちが回収した魂を、貴方がた聖なる者の本拠地──聖地へお届けする役目を担っているのですよね」
「はいぃ、そのとおりですぅ。……あっ、ぼくは、オピテルといいますぅ。聖地で回収した魂をキレイキレイしておりましてぇ、そこでセレーナさんと出逢ったのですぅ」
「そうでしたか……、あ、私はカマルティユと申します。どうぞ、カミュとお呼びください」
「僕は海風です。……あ、あっちの鳥は、白いほうがクック、黒いほうがポッポです」
ほわほわとさりげなく自己紹介をしてくれたオピテルさんにつられて、カミュと僕も名乗った。クックとポッポもキュルッと鳴きながら、軽く頭を下げる。オピテルさんはふんわり笑って、「よろしくお願いしますねぇ」と言ってくれて、それとほぼ同時に扉がノックされる音が響いた。
「ああ、すみません。取り乱してしまいました」
様子がおかしいカミュを気遣うも、彼はすぐにキリッとした表情に戻り、姿勢を正す。そして、美しい悪魔はウサギ天使を冷静に見下ろした。
「あの──、ご存知かもしれませんが、我々魔の者には、家族という概念がありません。知識としては理解していますし、貴方がたや人間たち、その他の動物や魔物なども『家族』という集団を形成するものだと認識しておりますが、私たちにはその習性がありません」
「そうなのですかぁ? でも、あなたと、こちらの可愛らしい人間さんは、家族ではないのですかぁ?」
そこでカミュは言葉に詰まった。そして、チラリと僕を見る。紅い眼差しに見え隠れしているのは、僕への遠慮ではなく、彼自身の中での葛藤だ。
「……私自身が、そう認めるわけにはまいりません。この城にいらっしゃる魔王様とこちらの方は、確かに家族のように過ごしておられますが、……私は、そこにひっそりと添えられているだけの存在です」
少し悲しげな声で語られた言葉が、切ない。僕は思わず、カミュの手首を握ってしまった。
「僕は、ジルもカミュも同じように家族だと思ってるよ。勿論、クックとポッポもだけど。……君がどう考えていたとしても、僕はそう思ってる」
「ミカさん……」
カミュは困ったように微笑み、僕の髪をそっと撫でてくる。
「そのお気持ちは本当に嬉しいです。ありがとうございます。──それに、私だって、叶うならば、同じ気持ちですと声高に申し上げたいのですよ。……でも、それはおそらく、『父』が望まないことですから。今は、『父』を敵に回したくありません。ただでさえ、今の私たちは諸々が不安定な状況ですので」
「魔の者の方々にとっての『お父様』とは、つまり、創造主様のことですねぇ」
カミュの言葉を受けて、ウサギ天使がほんわりとした口調で言って頷いた。……とても可愛いけれど、あまりにも和む姿だから、一気にシリアス感が薄れた気がする。いや、深刻な空気が続くよりはいいかもしれないけど。
「なるほど、なるほどぉ。魔の者の方々はお父上の手で創り出される存在でいらっしゃるから、創造主様と魔の者の方々という父子関係以外の家族は無いのですねぇ。おそらくは創造主様も、それを望んでいらっしゃる。魔の者の方々はお父上の言いつけを遵守されていますから、創造主様のご意思に背くようなことは避けられたいわけですねぇ」
「ええ、その通りです。ご理解が早くて助かります」
ウサギ天使の言葉に、カミュはしみじみと頷く。お世辞や嫌味ではなく、説明の手間が短縮されたことを純粋に有難く思っているようだ。
相変わらずほわほわした雰囲気のウサギ天使は、にこにこ顔のまま何度も頷いた。
「あぁ、だからきっと、セレーナさんも怖くなって投げてしまったのかもしれませんねぇ。ぼくと家族になるなんてお父上に知れたら、叱られてしまうかもしれないからぁ」
「ええ、きっと、──って、ちょっと待ってください。今、誰だと言いました?」
「えっ? セレーナさんのことですかぁ?」
「……。はぁ……、よりによって相手はあの子ですか」
カミュは片手を額に宛がって、深々と溜息をつく。本気で頭が痛そうなので、姿勢の良い背中をそっと撫でてみる。本当は頭を撫でたかったんだけど、僕では彼の頭まで手が届かないから仕方ない。カミュはこちらを振り向いて、優しく目を細めて柔らかく微笑んでくれた。
「ありがとうございます、ミカさん。ご心配をお掛けして、すみません。私は大丈夫ですよ」
「ほんと? 無理してない?」
「ええ、大丈夫です。……少々、面倒くさそうな展開が見えたので、嫌気が差してしまっただけです」
そして再び長い溜息をついたカミュは、のんびりとおとなしく待っていたウサギ天使へ静かに語り掛ける。
「セレーナが誰かは、私も知っています。直接話したことは、一度か二度程度しかありませんが。彼女は、魔の者たちが回収した魂を、貴方がた聖なる者の本拠地──聖地へお届けする役目を担っているのですよね」
「はいぃ、そのとおりですぅ。……あっ、ぼくは、オピテルといいますぅ。聖地で回収した魂をキレイキレイしておりましてぇ、そこでセレーナさんと出逢ったのですぅ」
「そうでしたか……、あ、私はカマルティユと申します。どうぞ、カミュとお呼びください」
「僕は海風です。……あ、あっちの鳥は、白いほうがクック、黒いほうがポッポです」
ほわほわとさりげなく自己紹介をしてくれたオピテルさんにつられて、カミュと僕も名乗った。クックとポッポもキュルッと鳴きながら、軽く頭を下げる。オピテルさんはふんわり笑って、「よろしくお願いしますねぇ」と言ってくれて、それとほぼ同時に扉がノックされる音が響いた。
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