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【第10話】聖者も交わるカボチャパーティー
【10-23】
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「何やら賑やかにしていたが、客人が来たから連れてきたぞ」
マイペースにそう言うジルは、確かにいつも通りの顔色だし、目も真っ黒だし、体調が悪いようには見えない。とはいえ、彼は不調を隠して無理をするのが上手そうだから、やっぱり心配してしまう。……それに、どう声を掛けたらいいだろう。
──などと僕が思い悩むのは無意味とばかりに、調理場にいた面々の中で真っ先に反応を示したのはセレーナさんだった。
「ぴぇぇぇ……、オ、オピテル様ぁぁぁ……!」
嬉し恥ずかしといった声音で相手の名を口にした割に、セレーナさんはノヴァユエの背後に隠れてしまう。オピテルさんは、そんなセレーナさんの姿を目の当たりにしても、のんびりとニコニコしている。
「急に来てしまって、驚かせてしまいましたかねぇ? 皆さん、こんにちはぁ」
実に平和的な挨拶をしたオピテルさんは、皆を見渡した後、ノヴァユエに向かって歩み寄って行った。
「あなたが、セレーナさんのお兄様ですねぇ? 初めまして、こんにちは。ぼくはオピテルですぅ。出来れば仲良くさせていただきたいのでぇ、殴ったり蹴ったりしないでいただけると助かりますぅ」
「……カマルティユ先輩、ボクのことなんて説明したのー?」
ノヴァユエはオピテルさんの言葉へ返事する前に、ジト目でカミュを見つめる。カミュはしれっとした顔で素直に答えた。
「セレーナにとって兄のような存在で、セレーナのことをとても可愛がっているので、セレーナに手を出されたと知ったら怒り狂って襲いかかってくる可能性もあるのでお気をつけて、──というようなことを言いましたね」
「うわー、もー、やめてよー。いや、普段のボクの言動を考えれば否定は出来ないけどさーぁ。セレーナに恥ずかしい思いをさせないように気をつけたいなーって意識くらいは、ちょっとくらいはあるんだよッ★ これでも誇り高い特級悪魔だからねッ☆」
そう言って笑ったノヴァユエは、自分の背後で縮こまっていたセレーナさんの腕を引き、ずいっと前へ押し出す。背面にノヴァユエ、正面にオピテルさんという形で挟まれてしまった彼女は、はわわわわと震えているけれど、緑の悪魔は容赦なく妹分を叱咤した。
「こら、セレーナ! 今日の主役はオマエなんだから、しっかりしなきゃダメっしょー? この緑っぽいモフモフが何者なのか、ちゃんと紹介してみー?」
「ひぇっ……、そ、そそそ、そんなぁぁぁ、ノヴァユエ兄様ぁぁぁ」
「ボクがそいつを蹴り飛ばすかどーかは、セレーナの紹介の仕方に掛かってるかなー★」
その一言を受けて、セレーナさんは半泣きの表情をグッと改め、真剣な面持ちでオピテルさんの隣に立つ。オピテルさんはほわっとした笑顔のまま、黙って彼女を見守っていた。
「ノヴァユエ兄様、カマルティユ兄様、魔王様、ミカ様、改めてご紹介いたしますぅぅぅ。こ、こちらの御方が、アタクシが畏れ多くも懇意にしていただいている聖なる者のオピテル様ですぅぅぅ。……ア、アタクシと家族になりたいと言ってくださってぇぇぇ、そ、その、……アタクシも、で、でで、出来ることならぁぁぁ、オピテル様とずっと一緒に連れ添い合って生きていきたいのですぅぅぅ。そ、そういう御方でしてぇぇぇ、そ、その……、アタクシは、お父様も、兄様たちも大事で大好きなのですがぁぁぁ、オピテル様のことは、そのぅぅぅ、ちょっと違った形でお慕いしておりましてぇぇぇ、ふわふわであったかい気持ちをアタクシにたくさん教えてくださった御方なのですぅぅぅ。で、ですからぁぁぁ、大切な皆様が仲良くしてくださると、アタクシはとっても嬉しいですぅぅぅ」
所々つっかえながらも、セレーナさんは素直な気持ちを丁寧に添えて、オピテルさんを紹介してくれた。異種族であってもオピテルさんのことが本当に大切で、でも、同様に魔の者の同胞も大事で、どちらも尊重したいし互いに歩み寄れたらいいと思っているという彼女の気持ちが、ひしひしと伝わってきた。
穏やかな表情でうんうんと頷いたオピテルさんは、ノヴァユエへ向かって頭を下げる。
「ご紹介いただきましたように、ぼくはセレーナさんと家族になりたい、……いえ、一緒に寄り添い合って生きていきたいなぁと思っていますぅ。彼女のことをとても大切に思っていますし、これからも大事にしていきますので、どうぞよろしくお願いしますぅ」
丁寧な挨拶を受けた緑の悪魔は、口を真一文字に引き結んだままフンと鼻を鳴らし、むすっとした声で言った。
「ボクたち、家族がどーとか、愛がどーとか、そーゆー感覚がない生き物なんだよねー。セレーナだって魔の者だし、ボクと似たよーな部分も多いと思うけどさぁ、それでもオマエは大事に出来んの?」
「うーん……、感覚が無いわけではないと思いますよぉ。ノヴァユエさんは、セレーナさんが大事でしょう? セレーナさんも、皆さんが大事です。それもまた、ぼくたちにとっては『愛』ですからねぇ。同じ言葉で括ろうとするからややこしくなるんですよぉ。根っこにある気持ちは、けっこう似ているんじゃないかと思いますけどねぇ」
そう語ったオピテルさんは、おおらかにニコニコとしている。それをじっと見たノヴァユエは、諦めたように溜息をついた。
「あーもー……、今のボクはさぁ、何言ってんのオマエ~とか言えなくなっちゃったんだよねー。……はいはい、ボクの負けでいーよ、もー。よろしくしてやってもいいよー」
マイペースにそう言うジルは、確かにいつも通りの顔色だし、目も真っ黒だし、体調が悪いようには見えない。とはいえ、彼は不調を隠して無理をするのが上手そうだから、やっぱり心配してしまう。……それに、どう声を掛けたらいいだろう。
──などと僕が思い悩むのは無意味とばかりに、調理場にいた面々の中で真っ先に反応を示したのはセレーナさんだった。
「ぴぇぇぇ……、オ、オピテル様ぁぁぁ……!」
嬉し恥ずかしといった声音で相手の名を口にした割に、セレーナさんはノヴァユエの背後に隠れてしまう。オピテルさんは、そんなセレーナさんの姿を目の当たりにしても、のんびりとニコニコしている。
「急に来てしまって、驚かせてしまいましたかねぇ? 皆さん、こんにちはぁ」
実に平和的な挨拶をしたオピテルさんは、皆を見渡した後、ノヴァユエに向かって歩み寄って行った。
「あなたが、セレーナさんのお兄様ですねぇ? 初めまして、こんにちは。ぼくはオピテルですぅ。出来れば仲良くさせていただきたいのでぇ、殴ったり蹴ったりしないでいただけると助かりますぅ」
「……カマルティユ先輩、ボクのことなんて説明したのー?」
ノヴァユエはオピテルさんの言葉へ返事する前に、ジト目でカミュを見つめる。カミュはしれっとした顔で素直に答えた。
「セレーナにとって兄のような存在で、セレーナのことをとても可愛がっているので、セレーナに手を出されたと知ったら怒り狂って襲いかかってくる可能性もあるのでお気をつけて、──というようなことを言いましたね」
「うわー、もー、やめてよー。いや、普段のボクの言動を考えれば否定は出来ないけどさーぁ。セレーナに恥ずかしい思いをさせないように気をつけたいなーって意識くらいは、ちょっとくらいはあるんだよッ★ これでも誇り高い特級悪魔だからねッ☆」
そう言って笑ったノヴァユエは、自分の背後で縮こまっていたセレーナさんの腕を引き、ずいっと前へ押し出す。背面にノヴァユエ、正面にオピテルさんという形で挟まれてしまった彼女は、はわわわわと震えているけれど、緑の悪魔は容赦なく妹分を叱咤した。
「こら、セレーナ! 今日の主役はオマエなんだから、しっかりしなきゃダメっしょー? この緑っぽいモフモフが何者なのか、ちゃんと紹介してみー?」
「ひぇっ……、そ、そそそ、そんなぁぁぁ、ノヴァユエ兄様ぁぁぁ」
「ボクがそいつを蹴り飛ばすかどーかは、セレーナの紹介の仕方に掛かってるかなー★」
その一言を受けて、セレーナさんは半泣きの表情をグッと改め、真剣な面持ちでオピテルさんの隣に立つ。オピテルさんはほわっとした笑顔のまま、黙って彼女を見守っていた。
「ノヴァユエ兄様、カマルティユ兄様、魔王様、ミカ様、改めてご紹介いたしますぅぅぅ。こ、こちらの御方が、アタクシが畏れ多くも懇意にしていただいている聖なる者のオピテル様ですぅぅぅ。……ア、アタクシと家族になりたいと言ってくださってぇぇぇ、そ、その、……アタクシも、で、でで、出来ることならぁぁぁ、オピテル様とずっと一緒に連れ添い合って生きていきたいのですぅぅぅ。そ、そういう御方でしてぇぇぇ、そ、その……、アタクシは、お父様も、兄様たちも大事で大好きなのですがぁぁぁ、オピテル様のことは、そのぅぅぅ、ちょっと違った形でお慕いしておりましてぇぇぇ、ふわふわであったかい気持ちをアタクシにたくさん教えてくださった御方なのですぅぅぅ。で、ですからぁぁぁ、大切な皆様が仲良くしてくださると、アタクシはとっても嬉しいですぅぅぅ」
所々つっかえながらも、セレーナさんは素直な気持ちを丁寧に添えて、オピテルさんを紹介してくれた。異種族であってもオピテルさんのことが本当に大切で、でも、同様に魔の者の同胞も大事で、どちらも尊重したいし互いに歩み寄れたらいいと思っているという彼女の気持ちが、ひしひしと伝わってきた。
穏やかな表情でうんうんと頷いたオピテルさんは、ノヴァユエへ向かって頭を下げる。
「ご紹介いただきましたように、ぼくはセレーナさんと家族になりたい、……いえ、一緒に寄り添い合って生きていきたいなぁと思っていますぅ。彼女のことをとても大切に思っていますし、これからも大事にしていきますので、どうぞよろしくお願いしますぅ」
丁寧な挨拶を受けた緑の悪魔は、口を真一文字に引き結んだままフンと鼻を鳴らし、むすっとした声で言った。
「ボクたち、家族がどーとか、愛がどーとか、そーゆー感覚がない生き物なんだよねー。セレーナだって魔の者だし、ボクと似たよーな部分も多いと思うけどさぁ、それでもオマエは大事に出来んの?」
「うーん……、感覚が無いわけではないと思いますよぉ。ノヴァユエさんは、セレーナさんが大事でしょう? セレーナさんも、皆さんが大事です。それもまた、ぼくたちにとっては『愛』ですからねぇ。同じ言葉で括ろうとするからややこしくなるんですよぉ。根っこにある気持ちは、けっこう似ているんじゃないかと思いますけどねぇ」
そう語ったオピテルさんは、おおらかにニコニコとしている。それをじっと見たノヴァユエは、諦めたように溜息をついた。
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