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2号の対処

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「ははは、冗談がお上手ですね。私も、リセル王女殿下にちょっとした冗談を言ってもよろしいでしょうか?」
 俺は言葉だけはあまり崩さないように、丁寧語を意識して問いかける。
 腹ワタは煮えくりかえっているが、ここまできたら最後まで言いたい。
「ん? 冗談ではないけれど。許すわ」
 にこやかな第三王女に対して、俺もにこやかに、でも口を挟ませないように喋り始めた。
「ありがとうございます。
 ……少しは現状を理解していただきたいですね。シルバリウスの婚約者は私です。先程から皆さまシルバリウス本人の意思は確認しているのですか?
 それからこれは昔から言いたかったのですが、今シルバリウスがリセル王女殿下の側におらず、奴隷に落ちたのはリセル王女殿下のせいなのですよ?
 リセル王女殿下、シルバリウスと最後に会った誕生日の日、誕生日には自分の願いが全て叶うと思っていた貴方は、シルバリウスが言う事を聞かないからと散々廊下で泣き喚きましたね。
 そして貴方は近くの側使いや騎士に言われるがまま、意味も分からず肯定したり、何も答えなかったりしましたね?
 結果どうなったと思いますか? シルバリウスは王女強姦未遂罪に問われて終身奴隷となったのです。
 隷属の首輪を装着され、動けずただ生きるだけの生活をしていたのです。
 貴方がだだを捏ねたせいで、意味が分かっていない事を適当に肯定したせいで、詳しく聞きにきた人にも何も本当の事を答えなかったせいで、1人の人間の人生が冤罪という名の元弄ばれ消えてしまったのです。
 当時貴国の騎士団のエースであり”銀の閃光”と呼ばれたシルバリウスが罪に問われなければ、問われたとしてもちゃんと調査をしていれば今頃ダンジョンの利権にも絡めたでしょうね。
 権力を持つ者こそ発言には気をつけなければいけませんね」
 辺りはシンっと鎮まりかえった。
 “銀の閃光”という言葉に反応した、後半では国王や宰相に向かっても皮肉ったのである。
 そっと、シルバリウスを伺うとシルバリウス迄驚愕の表情を浮かべて固まっていた。
 やっと表情が出てきたと思ったら、驚愕の表情って……。

 と、そんな固まった空間で宰相が言葉を紡ぐ。
「な、な、なぜ、そんな事を知っている?」
 確かに気になるだろう。なんせ王城内の事であり、王女が絡んでいる手前秘密裏に処理されているのだから。

「嫌だなぁ。冗談って言ったじゃないですか。あまりにも王女殿下が真実味のある冗談を言っておりましたので、私も真実味のある冗談を言った迄です。
 さて、詳しい事は国の判断に任せましょう。私はシルバリウスを連れて帰るだけです」
 さっさと逃げるが勝ちという事でとっと退散するに限る。
「ま、待て、流石に不敬が過ぎるぞ」
 国王もさすがに怒ったようだ。それに対して平然と言い返す。
「……本当にそうお思いですか? フォゼッタ王国国王が言ったシルバリウスの引き渡し要求を再三に渡って突っぱねた事や、元々の契約の勇者パーティがダンジョンの探索に加わらなかった事などどうなんでしょうかね?」

「……辺境伯家の子息風情に言われる迄ないわ」
 ……あぁ、国王だから嫌味耐性少なかったかな。
 切れちゃったみたい。
 そして、国王の態度に、近衛騎士達もこちらへの攻撃体勢を整え始めた。

 そして、一触触発かと思った時
「な、あれは」
 客として来ていた貴族の1人が俺達の後ろを指す。
 他の人達もザワザワしだし、警戒しながら振り返ると草原の先が黒い。
 それが段々と大きくなっていくのだ。

 ……やっぱりフラグだったのか。

「スタンピートのようですねぇ」
 
 8/31今日という日、イベント目白押しでちょっと濃すぎやしないでしょうか?

「な、な、なんと。ダンジョンは停滞期になったのではないのか?」
 国王が再び焦りだす。
「私達がダンジョンに入った直後位から結局2日程、ダンジョン魔力石は赤だったようですよ。警戒するようにそちらにも情報はいっていると思いますが」
「……はい。来ておりました」
 宰相が苦い顔で答えた。
「私は聞いておらんぞ!」
「……」
 宰相は答えなかったが、まぁちょうど良い。
「では、失礼します」
「は? 待て待て待て」
「何でしょうか?」
「いや何でしょうかではないだろう? ダンジョンを停滞期に導いた立役者だろう。これも何とかせい」
 
 ……勇者が1号だとして、娘が2号、これは馬鹿3号と言っても良いのだろうか?

「私フォゼッタ王国のフォンデルク辺境伯爵家風情ですからさすがに国家間の事に口出しは出来ません。ここはローワン王国ですので貴国で対処されれば宜しいかと。もしフォゼッタ王国での探索者や魔物討伐についてご依頼でしたら、まず窓口担当がいるのでそちらにご連絡いただければと思います」
「ふ、ふざけるな! 貴様だってこのままだと巻き込まれるではないか」
「いえいえ、私達は自分の身くらい守れますからあれ位なんて事ありません。それに見たところそこまで多くなさそうですよ? そこの貴族や近衛騎士達に対処して貰えばよいじゃないですか。もしくはそこの勇者に頼んだらいかがです? まぁ、勇者の首輪を破壊しても良いですけど、そうするとローワン王国国王陛下もそのまま腕輪の効力で勇者の支配下に入ってしまう可能性はありますが」

 ……そう。俺は国王のペット用の首輪だけはまだ腕から外していなかったのだ。
 さすがにローワン王国国王を守っている騎士達も一触触発な隣国の貴族相手に近寄らせたくないんじゃないかと思って何も対処をしていなかったのが功を奏したようだ。
 この状況でリョウコを解放すればスタンピート対策にはなるかもしれないが、今度は国王の身に危険が及ぶ可能性がある。
 ……まぁ、先程から急に静かになったリョウコは別の意味で心配だが。

 取り敢えず、助ける義理もないしと今度こそ踵を返すが、今度は宰相に声をかけられた。

「こちらの不敬をお詫びします。また然るべき対処、褒賞を用意しますので、この国の民の為にお力添えいただけないでしょうか?」

 潔くガバッと頭を下げる。最初に喧嘩を仕掛けて来たのは宰相だが、状況把握が早い分宰相はまだマシなようだ。
 周りの貴族は、他国の辺境伯風情に頭を下げるなどと言っている者もいれば、そっと逃げ出している者、懇願の目で見てくる者など様々だった。

 ……まぁ、国の民の為にと言われてしまえば聞かないわけにはいかないだろう。
 シルバリウスを見ればそっと頷かれた。
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