私の不倫日記

幻田恋人

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11章「怒って泣いて… 二人は愛し合った」

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ある日の彼女との逢瀬おうせの話…

 その日… 当直明けで仕事を終えた私を、ヨーコが車で職場まで迎えに来てくれることになっていた。当然、そこから先は二人の愛の時間である。

駐車場で出会った二人は見つめ合いながら
「今日はたっぷり愛し合うで」
と、ムフフと秘密の笑いを浮かべていた。

 ホテルで食べるための飲み物や食べ物などを買いに、車を私の職場である病院の駐車場にめて二人で近くのスーパーに出かけた。
 買い物を終え、手をつないで駐車場まで帰る途中の歩道橋の上で、二人の前方から私の知っている女性が歩いてきた。
私はすぐに手を離して、相手に会釈えしゃくをした。

その女性とすれ違い遠ざかってから、ヨーコが私に聞いてきた。
「誰、あの人…?」

「ああ、うちの病院の看護師さん。」
私はヨーコにそう答えた。

「ふーん…」
と言いながら、その看護師を振り返って見ているヨーコに私は尋ねた。

「どないしたん? あの看護師はうちの病院から出てきたんやから、僕と同じで夜勤明けで帰るんとちゃうかな。」
私はヨーコにそう説明した。

「別になんにもないよ…」
彼女は私に対して、少しつれない態度で言った。

ヨーコの車に乗り、二人はホテルへと向かった。これから二人が愛を交わすための場所へと。

 私はホテルまでの途中の車内で、期待ですでに臨戦状態になっていた…息も荒かったかもしれない。

ヨーコは運転をしながら気配を感じたのだろう。

「うわっ! 何、その顔! 鏡見てみっ、鏡、自分の顔!やらしい顔して、ハァハァして!」
と言いながらも、自分もニヤけているではないか。

「エッチ!」
とお互いに相手を指さして笑った。

 やがてホテルに到着し部屋に入った二人は、先ほど買った物を軽く飲食してから一緒にシャワーをびた。
いつも私達は二人でシャワーを浴びる。
時間の短縮になるし、浴室でも軽く愛の行為をわすのだ。

 シャワーをび終え身体を拭いた二人はベッドに横たわった。
さあ、これから始めようという時に…

「さっきの看護師さんってセイジさんと一緒に働いてるん?」
いきなりヨーコが聞いてきた。

「なんで?」
私は、なんだか肩透かたすかしを食らったように感じてヨーコに聞いた。

ヨーコは私の顔を見ないで言う。
「うん、手えつないでるとこ見られたけど…大丈夫なん?」

私は、そんなヨーコの横顔を見ながら答える。
「別に問題ないよ、病棟の看護師さんで僕と別に接点はないから。」

ヨーコは少し安心したような顔になって
「そうなんや…」と、やっと私の方を向いてうなずいた。

そして、私がその看護師について思い出した事をヨーコに言った
「でも、そういえば彼女体調が悪いんか胸の写真を撮りにうち(放射線科)に来とったなあ… 僕が写真撮ってん。」

私の職業は診療放射線技師…ぞくにいうレントゲン技師である。

 ヨーコはその話を聞いて、確認する様に私の目を見つめながらたずねてきた。
「胸の写真撮るのって裸になるん?」

ヨーコの問いにわたしが答えた。
「うん、全裸とはちゃうけど上半身は裸になってもらうよ。」

 当時は今と違い、胸部撮影時はTシャツ等の着用はせずに上半身裸が当たり前の時代だったのだ。

それを聞いた彼女は、少しふるえる声で私に聞いてきた。
「セイジさん… あの人の胸見たん…?」

「ああ、それは見たと思うけど… 仕事やんか、普通のことやで?」
私は、ヨーコの態度を少し不思議に思いながら答えた。

「イヤやっ! そんなんっ!」
急にヨーコは大きな声で怒り出した…

私は訳が分からないまま、
「なんでやねんな? それが僕の仕事やで…?」
と彼女をなだめようとした…

「イヤやねん! セイジさんに他の女の人の胸、見てほしくないねんっ!」
ヨーコは逆上した様に怒鳴り始めた。

「訳分からへんな… 仕事で女性の胸を見たかて何も感じへんて。」
私はうろたえながらも彼女をなだめようとした。

実際に、そうなのだ。
 当時は男女ともに胸部レントゲン撮影時の上半身裸は当たり前だったのだ。現在では、こちらで用意した専用のTシャツを着用してもらって写真を撮っている。
 少なくとも私は、仕事で女性の裸を見ても興奮したり欲情したことなど一度も無い。撮影最中の感情は完全に業務用に切り替わっているのだ。
よく誤解されるのだが、本当にそうなのだから仕方がない。
業務中は完全に仕事モードだ。そうでないと、この仕事はやってられない。

 パン屋さんがパンを焼くたびに自分が焼いたパンを食べたいと思うだろうか? お寿司屋さんが寿司を握るたびに食べたくなるのだろうか?

 もちろん、私も男なのでプライベートでは女性の裸に反応する。今だってヨーコの裸に興奮しているし、さわってみたくて仕方が無いのだ。

それを一般の人はなかなか理解してくれないのも事実である。
ヨーコも同様の反応を示したのだろう… 理解は出来る。

だが、今のヨーコはすっかり逆上してしまっていた。何とかしなくては…

「落ち着いて、ヨーコ… 僕の仕事はわかってるやろ。他の同僚かて同じ仕事してるねんで。この仕事では、絶対にやらなあかん事やねんて。」
私は必死になだめようとした。

だが… ヨーコはまだ過呼吸気味で叫ぶように言った。
「イヤや… 絶対にイヤやっ!」

今のヨーコには、私の話が聞こえないようだった。

ヨーコは完全にパニック症状におちいっていた…

「もう、セイジさんなんか嫌いやっ!」
ヨーコは叫び出した。

「そんな…」
私は悲しくなってきた。

「嫌いにならんといてや、ヨーコ…」
私の声はふるえていた…

「ヨーコに嫌われたら… 僕は…僕はどうしたらええねん…
僕は誰からも好かれへんから… ヨーコだけが僕の味方やのに…
たった一人のいとしい人やのに…
お願いやから… 僕の事、嫌いにならんといてや…」

もう、泣いているのはヨーコだけではなかった。
私もまた泣いていた、号泣ごうきゅうしていた…

私はヨーコに嫌われるのが何より怖かったのだ。
いやだ… 彼女を失いたくない…

私は泣いた。
うつむいてこぶしにぎめて泣いていた…
ヨーコを失うのが怖くて仕方が無かった…

気が付くと、彼女が後ろから私の肩を抱いていた…
私の胸に両腕をまわして抱きしめると、自分のほほを私の顔に押し付けてきた…

「ごめんな…」
ヨーコは泣きながらほおずりをして、私にあやまった。

 そして、涙でグシャグシャになった私の顔を自分の方へ向け、私の涙を自分の舌で優しく拭ぬぐい、そっと吸い取ってくれた…
「しょっぱい…」

泣き笑いの表情でヨーコは私を見つめて言った。
「もう、私は怒ってへんで。大丈夫や。セイジさんは大丈夫…?」

「うん…」
しゃくりあげながら私はヨーコに答えた。

「もう僕のこと嫌いやないん?」
と私はおそおそるヨーコに聞く…

「うん、大好きやで! 嫌いになんかならへん!」
裸の胸を張ってヨーコが言う… 私の大好きな小ぶりの胸である。

「よかった…」
私は突き出された彼女の左の乳首にむしゃぶりついた…

「あんっ、もっと優しく吸って…」

もう二人に言葉は必要なかった…
 二人は泣いた反動からか激しくからみ合い、いつにもまして愛の行為に没頭ぼっとうした…
 ヨーコと私は、まるで頭がからっぽになったかの様に獣のように互いの身体を求め合い、激しく愛し合っていた。

満ち足りた激しい愛の行為を終えた後、二人は並んで静かに横たわっていた…

どちらからともなく
「すごかったね…」
「燃えたね…」
ささやきながら、互いの手を強く握りしめていた。

私はヨーコの手を握った自分の手に力を込めて言った
「今日のセックスの前のヨーコ、怖かった…」

ヨーコも私の手を握り返しながら私に聞いてきた。
「ごめんな、そんなに怖かった?」

私はその時の気持ちを思い返して、少し震えながらヨーコに言った。
「うん、ほんまに僕のこと嫌いになって、僕の前から消えてしまうんちゃうかと思た… 君が消えてしもたら、僕は死んでしまうかもしれへん… そう思たら悲しくなって…すごい怖かってん。」

ヨーコがしっかりと私の手を握り、私の肩に頭を載せてきた。
「絶対セイジさんを死なせへんで。私が守ったるから。」

私はまた泣きそうになって、シャンプーの香りのするヨーコの豊かな髪に顔をうずめた。
「ありがと、ヨーコは強いな…」

彼女は笑って、
「泣き虫セイジっ!」
と言って私の額に自分の額を押し付けてきた。

「そのかわり、私以外の胸で興奮したらあかんでっ! 分かったっ?」

 私は両頬をヨーコの両手に押さえられ、のぞき込んでくる彼女の目を見つめ返しながら答えた。
「誓います! このヨーコの胸だけが好きや!」
ヨーコの小ぶりの乳房を両手で愛おしく包み込みながら約束した。

私は本気で言った…
今の私は、ヨーコ以外の女性に興味は向かない

彼女しか見えなかった…

激しすぎたのか、けだるい身体を起こして二人でシャワーをびた。
またちょっと勃起ぼっきした私を見て彼女は吹き出した…

手をつないでホテルを出た二人はヨーコの車で帰途きとに着く。

 いつもの様に、運転するヨーコの横顔を助手席から見つめながら私は考えていた…

「やっぱりこのひとが好きや… 離したくない…」

横から彼女の胸をつっついた。

「あほっ! 何すんの! 危ないやんかっ!」

またヨーコに怒られた…
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