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第47話 記憶の中の僕
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「あのさ~ 矢野君のあの態度一体何なの~?
可愛い女の子って何言ってんの?
元カノ……基、元カレだって男でしょ?
矢野君って、昔はそんなに女の子好きだったの~?」
僕はテーブルに頭を乗せて、
メロンソーダの入ったグラス越しに佐々木君を見た。
グラスの向こうは綺麗なグリーンで
所々に炭酸のバブルが弾けていた。
気不味そうにした佐々木君の顔が
グラスの厚みに屈折してフニャっと曲がった。
今日は仕事休みで、
佐々木君と町に繰り出していた。
僕はグラスの上から顔を出すと、
「事故に遭うまではあんなに心が通い合ってると思ったのに、
更にひどくなってるってどう言う事?
それに心なしか僕にだけ態度が大きく無い?」
僕がそう言うと、佐々木君も首を傾げていた。
「そうなんだよな。
咲耶に会うまでは……
あっ、咲耶は光のクソ元カレな。
その咲耶に会うまでは、
確かに男と付き合うって予兆は微塵も無かったけど、
お前に対する様な態度も、
光に迫ってくる男Ωに対して一切無かったんだけどな~
俺も実際、光のお前に対する態度にはビックリしてるんだよ」
と、矢野くんは女の子は好きだけど、
普段でも男性に対して毒を吐く様な事は無かったそうだ。
でも佐々木君の話によると、
基本佐々木君は去れにでも優しいらしい。
でもその反面、矢野君には確かにそう言う面もあるらしいけど、
人前でその態度を出したことは無いらしい。
だからハッキリと面と向かって
僕にポンポン言う姿はどっちかと言うと、
心知れず僕には気を許してるんじゃないかと佐々木君には言われた。
「僕、されるんだったら優しい方がいいんだけど……」
そう言うと、グイッとソーダを飲み干した。
「ねえ、話は変わるけどさ、
僕もちょっと記憶喪失について調べてみたんだけど、
実際お医者さんからは何て言われてるの?」
と尋ねてみた。
「医者~?
まあ、当たり障りの無い事だな。
きっと記憶喪失者皆に言ってる言葉だと思うぞ?」
「と……言うと?」
「まあ、医者によると、今日思い出すかも知れないし、
明日思い出すかも知れない。
もしくは全く思い出さないかもしれないし、少しずつかもしれない……
それだけは全く医者にも分からないそうだよ」
「ハ~ そうなのか」
僕がリサーチしたそのままの答えだった。
僕は深呼吸すると、椅子に背持たれた。
「それ言えばさ、矢野君、
城之内大学に行ってるって言ったけど、
一体どう言う経緯でそうなったの?」
僕がそう尋ねると、
佐々木君がチラッと僕の方を見て
ガシャガシャと頭を掻き始めた。
「光さ、半年眠ってたから一年遅れてる訳だけどさ、
学力の方は割と早くに戻ったんだよ。
まあ、それは記憶が戻ったとかじゃなく、
勉強が追いついたって感じかな?」
「へ~ 矢野君、そんなに賢かったんだ……」
「まあな、自慢じゃ無いが家の一族は凄いぞ?」
そこは佐々木君も自慢げに胸を張って僕に言った。
「そりゃそうだろうね。
あんな立派な会社引っ張って行くんだったら
切れ者じゃないと、かなりの人達を路頭に迷わせる事になるよね。
そんな矢野君が学んでいなくちゃいけないのは帝王学だよね?
それが何で城之内大学?
いや、城之内大学がダメって言ってるんじゃないけど、
普通もっと上を目指さない?」
「お前の言う上ってT大とかか?」
「まあ、そうなるかな? 佐々木君はT大だよね?
やっぱり矢野君の家を手伝うの?」
「俺か? いや、佐々木家は矢野家とは全くビジネスは違うんだよ」
「え? それじゃ佐々木家は何をしてるの?
聞いても差し支えなかったら……」
そう言うと、
「まあ、隠していても分かることだしな」
そう言って、
「佐々木家は政治家だよ」
と教えてくれた。
その答えに僕は腰を抜かすような思いだった。
「え~~~っっ!!!!! 政治家?!」
「ハハハ、そんなに驚く事か?」
「驚く事かって、そりゃあ、
政治家って僕にとっては雲の上の人だよ!」
「そうか? 現に政治家の卵である俺は、
お前の目の前で一緒にコーヒ―飲んでるんだけどな」
そう言って佐々木君が僕にストローの包紙を投げた。
「まあ、俺の事はどうでも良いけど、
光はアメリカのH大のビジネススクールに行くはずだったんだよ」
その情報にもびっくりして
僕は椅子から滑り落ちるような勢いだった。
「え?! うそ!」
「まあ、びっくりするよな、でもそれマジなんだ」
「その情報、軽くショックなんですけど?!」
佐々木君は軽くハハハと笑った後で、
「まあ、あの時はな、そう思ってH大目指してたんだけど、
あれは何時だったかな~
そうだ、珍しく東京に台風が来た時だった!」
と思い出したように言った。
「え? 台風?」
僕はドキッとした。
「そうそう、あれは台風情報を見ながらさ、
大学とは全然違う話をしてたんだよ。
台風が出た途端、光はテレビのスクリーンに釘付けになってさ、
その時は台風はまだ沖縄に居たんだよ。
それで何か独り言のようにブツブツと言い始めてさ、
変だなとは思ったんだけど、
あんなことのあった後だろ?
きっと後遺症の一つだろうと思っててさ。
急に城之内大学に行かなきゃって言い始めて……
自分でも何故か分からなかったらしいけど、
どうしても行かなきゃって……
行く理由が無いし、家族は反対したんだけど、
だんだん精神的におかしくなっていったんだよ。
だから仕方なく城之内に行くことを認めたんだけど
そうか……お前を探しに行くためだったのか……
記憶は無くても、やっぱりどこかでそれを覚えているんだな」
と佐々木君はぽつりと言った。
可愛い女の子って何言ってんの?
元カノ……基、元カレだって男でしょ?
矢野君って、昔はそんなに女の子好きだったの~?」
僕はテーブルに頭を乗せて、
メロンソーダの入ったグラス越しに佐々木君を見た。
グラスの向こうは綺麗なグリーンで
所々に炭酸のバブルが弾けていた。
気不味そうにした佐々木君の顔が
グラスの厚みに屈折してフニャっと曲がった。
今日は仕事休みで、
佐々木君と町に繰り出していた。
僕はグラスの上から顔を出すと、
「事故に遭うまではあんなに心が通い合ってると思ったのに、
更にひどくなってるってどう言う事?
それに心なしか僕にだけ態度が大きく無い?」
僕がそう言うと、佐々木君も首を傾げていた。
「そうなんだよな。
咲耶に会うまでは……
あっ、咲耶は光のクソ元カレな。
その咲耶に会うまでは、
確かに男と付き合うって予兆は微塵も無かったけど、
お前に対する様な態度も、
光に迫ってくる男Ωに対して一切無かったんだけどな~
俺も実際、光のお前に対する態度にはビックリしてるんだよ」
と、矢野くんは女の子は好きだけど、
普段でも男性に対して毒を吐く様な事は無かったそうだ。
でも佐々木君の話によると、
基本佐々木君は去れにでも優しいらしい。
でもその反面、矢野君には確かにそう言う面もあるらしいけど、
人前でその態度を出したことは無いらしい。
だからハッキリと面と向かって
僕にポンポン言う姿はどっちかと言うと、
心知れず僕には気を許してるんじゃないかと佐々木君には言われた。
「僕、されるんだったら優しい方がいいんだけど……」
そう言うと、グイッとソーダを飲み干した。
「ねえ、話は変わるけどさ、
僕もちょっと記憶喪失について調べてみたんだけど、
実際お医者さんからは何て言われてるの?」
と尋ねてみた。
「医者~?
まあ、当たり障りの無い事だな。
きっと記憶喪失者皆に言ってる言葉だと思うぞ?」
「と……言うと?」
「まあ、医者によると、今日思い出すかも知れないし、
明日思い出すかも知れない。
もしくは全く思い出さないかもしれないし、少しずつかもしれない……
それだけは全く医者にも分からないそうだよ」
「ハ~ そうなのか」
僕がリサーチしたそのままの答えだった。
僕は深呼吸すると、椅子に背持たれた。
「それ言えばさ、矢野君、
城之内大学に行ってるって言ったけど、
一体どう言う経緯でそうなったの?」
僕がそう尋ねると、
佐々木君がチラッと僕の方を見て
ガシャガシャと頭を掻き始めた。
「光さ、半年眠ってたから一年遅れてる訳だけどさ、
学力の方は割と早くに戻ったんだよ。
まあ、それは記憶が戻ったとかじゃなく、
勉強が追いついたって感じかな?」
「へ~ 矢野君、そんなに賢かったんだ……」
「まあな、自慢じゃ無いが家の一族は凄いぞ?」
そこは佐々木君も自慢げに胸を張って僕に言った。
「そりゃそうだろうね。
あんな立派な会社引っ張って行くんだったら
切れ者じゃないと、かなりの人達を路頭に迷わせる事になるよね。
そんな矢野君が学んでいなくちゃいけないのは帝王学だよね?
それが何で城之内大学?
いや、城之内大学がダメって言ってるんじゃないけど、
普通もっと上を目指さない?」
「お前の言う上ってT大とかか?」
「まあ、そうなるかな? 佐々木君はT大だよね?
やっぱり矢野君の家を手伝うの?」
「俺か? いや、佐々木家は矢野家とは全くビジネスは違うんだよ」
「え? それじゃ佐々木家は何をしてるの?
聞いても差し支えなかったら……」
そう言うと、
「まあ、隠していても分かることだしな」
そう言って、
「佐々木家は政治家だよ」
と教えてくれた。
その答えに僕は腰を抜かすような思いだった。
「え~~~っっ!!!!! 政治家?!」
「ハハハ、そんなに驚く事か?」
「驚く事かって、そりゃあ、
政治家って僕にとっては雲の上の人だよ!」
「そうか? 現に政治家の卵である俺は、
お前の目の前で一緒にコーヒ―飲んでるんだけどな」
そう言って佐々木君が僕にストローの包紙を投げた。
「まあ、俺の事はどうでも良いけど、
光はアメリカのH大のビジネススクールに行くはずだったんだよ」
その情報にもびっくりして
僕は椅子から滑り落ちるような勢いだった。
「え?! うそ!」
「まあ、びっくりするよな、でもそれマジなんだ」
「その情報、軽くショックなんですけど?!」
佐々木君は軽くハハハと笑った後で、
「まあ、あの時はな、そう思ってH大目指してたんだけど、
あれは何時だったかな~
そうだ、珍しく東京に台風が来た時だった!」
と思い出したように言った。
「え? 台風?」
僕はドキッとした。
「そうそう、あれは台風情報を見ながらさ、
大学とは全然違う話をしてたんだよ。
台風が出た途端、光はテレビのスクリーンに釘付けになってさ、
その時は台風はまだ沖縄に居たんだよ。
それで何か独り言のようにブツブツと言い始めてさ、
変だなとは思ったんだけど、
あんなことのあった後だろ?
きっと後遺症の一つだろうと思っててさ。
急に城之内大学に行かなきゃって言い始めて……
自分でも何故か分からなかったらしいけど、
どうしても行かなきゃって……
行く理由が無いし、家族は反対したんだけど、
だんだん精神的におかしくなっていったんだよ。
だから仕方なく城之内に行くことを認めたんだけど
そうか……お前を探しに行くためだったのか……
記憶は無くても、やっぱりどこかでそれを覚えているんだな」
と佐々木君はぽつりと言った。
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