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第48話 愚痴
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あれから何度か矢野君と会ったけど、
会う度に彼は僕に辛らつだ。
その度に僕は佐々木君を呼び出しては
愚痴をこぼしていた。
そんな僕にブツブツ言いながらも、
佐々木君はちゃんと忍耐強く付き合ってくれていた。
「ねえ、ねえ、何で矢野君て僕にあんなにそっけないの?
ちょっと酷くない?
何だかあからまさ過ぎて涙も出てこないよね。
矢野君から僕について何か聞いてない?」
僕がそう尋ねると、
佐々木君は首を振って胸の前で腕を組んだ。
そしてしばらく考え込んだかと思うと、
「なあ、お前、光のどこ好きになったんだ?」
と急に会話を変えてきた。
そんな佐々木君の突然の質問に僕はびっくりして変な顔をした。
「何だよ? 俺、何か変な事聞いたか?」
「ううん、まさかここで
その事が話題に上がると思って無かったから……」
「まあ、これまでの会話の流れからは思わないよな。
でもフッと思っただけさ。
お前、光があんな状態なのに割と平気そうだからさ」
そう言われると何も言えない。
でも別に平気な訳ではない。
まあ、これが矢野君と会えなくなってすぐの事だったら
かなりダメージが来たと思うけど、
あれから時間が経ち過ぎた。
色々な事が有り過ぎて少しの事では怯まなくなった。
それどころか、
僕は矢野君の現在の事が分かっただけで、
満足という訳ではないけど、
満たされていた。
彼の事が分からなかった時に比べたら、
矢野君が僕の目の前にいて、
息をして、動いて、笑って、怒って、
ポンポンと僕に文句を言うことなんて
悲しいよりも嬉しいに値する。
僕はちょうどやって来たウェイトレスに
手を挙げてチーズケーキを頼むと、
「僕ね、矢野君のどこが好き?って聞かれると、
正直に言うと、よく分からないんだ。
でもある日付き物が落ちた様に矢野君と繋がったんだよ」
と答えた。
「付き物が落ちた様に繋がった?」
「うん、ストーンってね。
それは恐らく、矢野君も同じだった筈だよ。
うまく言えないけど、
見つからなかったパズルのピースが見つかって繋がったような、
探し物が同時に見つかってそれが同じ物だったっていうか……
う~ん説明するのが難しいや!」
そう言うと何となく矢野君も理解したように頷いていた。
「でもあの頃のアイツって気難しかっただろ?」
「そうだね~
初めて会った時はムッキーってなったけどね、
でも一人で壁を作っていた彼が、
僕にだけは心を開いてくれたんだよ……」
そう言うと佐々木君は僕を見て、
「まあ、お前って今までアイツの周りには居なかったタイプだからな。
そんな所に惹かれたのかな?」
と言った。
「え~ 僕ってどんなタイプ?」
と尋ねると、
「う~ん…… アホ?」
と矢野君と同じ事を言ったので、
少しデジャヴを感じた。
でも二人そろってアホは無いだろう!
そこはまあ、否定しないと男が腐るので、
「え~っ! アホ?! それって酷くない?!
矢野君も何時もの様に僕にアホッて言ってたけど
僕そんなにアホじゃないよ!
そりゃあ、時々は失敗もするけどさ、
皆とレベルは同じなはずだよ!」
とムキになってそう言うと、
「ハハ! 分かってるよ!
お前はそうやってムキになるところが可愛いんだよな」
と誉め言葉なのか、
揶揄ってけなしてるのか分からない。
「それにさ、お前ってこっちが何言っても怒らないし、
逆に自分の逆境を逆手にとって笑わせてくれるしな。
うん、うん、お前は色々と話しやすいんだよ。
それに話してみたいって雰囲気も持ってるしな。
きっと光はお前のそんな所に惚れたんだろうな。
あの時のアイツにはお前のその明るさや
逆境に負けない強さ必要だったんだよ」
と僕の頭をクシャッとした。
「でも矢野君、今はすごく楽しそうにしてるから、
僕の事はもういらないのかもしれない……
過去の事を思い出すのは辛いだろうけど、
でもやっぱり矢野君には思い出してもらって、
それでもまだ僕のことが必要だと思って欲しいよ!
は~ どうやったら記憶が戻ってくれるんだろうね~」
僕は肘をついて顎を抱えるとウィンドウから外を眺めた。
その瞬間ギョッとした。
なんと向こうからウィンドウにへばりついて
矢野君がこちらを見ていたからだ。
「げっ!」
僕はカエルの鳴き声の様な声を出すと、
外は見なかった様なフリをして
佐々木君の方を振り向いた。
すると、佐々木君もそんな矢野君をびっくりしてみていた。
「たまげたな。
アイツ、よくここが分かったな。
やっぱり番の感かな?」
そう言って僕を見てニヤッと笑った。
僕は咄嗟に何を思ったのか、
「ね、ね、僕変じゃない?」
と、ついさっき佐々木君にくしゃくしゃにされた
頭を整えていた。
そうして髪を整えているうちに、
矢野君が佐々木君の横に座り込んで来た。
そして僕達を交互に見て、
開口一番に
「お前ら付き合ってるのか?!」
と尋ねた。
まあ、そう来るだろうという雰囲気はあったけど、
僕はつかさず、
「違うよ! 僕達只の友達だよ!」
と答えた。
でも佐々木君は、
「お前には関係無いだろ」
と僕と同時に答えたので、
“ちょっと~
何でそんなはっきりしない事言うんだよ!
そこはキッパリと否定でしょ!”
そう佐々木君に囁く僕を横に、
当の矢野君は僕を睨んでブスッとしている。
“なんかややこしくなってきたな~”
そう思っていると佐々木君が、
「俺チョットトイレな」
そう言って急に席をたって、
まるで蛇に睨まれるカエルみたいになった僕と、
僕をにらみ続ける矢野君を残して、
スタスタとトイレに歩いて行ってしまった。
会う度に彼は僕に辛らつだ。
その度に僕は佐々木君を呼び出しては
愚痴をこぼしていた。
そんな僕にブツブツ言いながらも、
佐々木君はちゃんと忍耐強く付き合ってくれていた。
「ねえ、ねえ、何で矢野君て僕にあんなにそっけないの?
ちょっと酷くない?
何だかあからまさ過ぎて涙も出てこないよね。
矢野君から僕について何か聞いてない?」
僕がそう尋ねると、
佐々木君は首を振って胸の前で腕を組んだ。
そしてしばらく考え込んだかと思うと、
「なあ、お前、光のどこ好きになったんだ?」
と急に会話を変えてきた。
そんな佐々木君の突然の質問に僕はびっくりして変な顔をした。
「何だよ? 俺、何か変な事聞いたか?」
「ううん、まさかここで
その事が話題に上がると思って無かったから……」
「まあ、これまでの会話の流れからは思わないよな。
でもフッと思っただけさ。
お前、光があんな状態なのに割と平気そうだからさ」
そう言われると何も言えない。
でも別に平気な訳ではない。
まあ、これが矢野君と会えなくなってすぐの事だったら
かなりダメージが来たと思うけど、
あれから時間が経ち過ぎた。
色々な事が有り過ぎて少しの事では怯まなくなった。
それどころか、
僕は矢野君の現在の事が分かっただけで、
満足という訳ではないけど、
満たされていた。
彼の事が分からなかった時に比べたら、
矢野君が僕の目の前にいて、
息をして、動いて、笑って、怒って、
ポンポンと僕に文句を言うことなんて
悲しいよりも嬉しいに値する。
僕はちょうどやって来たウェイトレスに
手を挙げてチーズケーキを頼むと、
「僕ね、矢野君のどこが好き?って聞かれると、
正直に言うと、よく分からないんだ。
でもある日付き物が落ちた様に矢野君と繋がったんだよ」
と答えた。
「付き物が落ちた様に繋がった?」
「うん、ストーンってね。
それは恐らく、矢野君も同じだった筈だよ。
うまく言えないけど、
見つからなかったパズルのピースが見つかって繋がったような、
探し物が同時に見つかってそれが同じ物だったっていうか……
う~ん説明するのが難しいや!」
そう言うと何となく矢野君も理解したように頷いていた。
「でもあの頃のアイツって気難しかっただろ?」
「そうだね~
初めて会った時はムッキーってなったけどね、
でも一人で壁を作っていた彼が、
僕にだけは心を開いてくれたんだよ……」
そう言うと佐々木君は僕を見て、
「まあ、お前って今までアイツの周りには居なかったタイプだからな。
そんな所に惹かれたのかな?」
と言った。
「え~ 僕ってどんなタイプ?」
と尋ねると、
「う~ん…… アホ?」
と矢野君と同じ事を言ったので、
少しデジャヴを感じた。
でも二人そろってアホは無いだろう!
そこはまあ、否定しないと男が腐るので、
「え~っ! アホ?! それって酷くない?!
矢野君も何時もの様に僕にアホッて言ってたけど
僕そんなにアホじゃないよ!
そりゃあ、時々は失敗もするけどさ、
皆とレベルは同じなはずだよ!」
とムキになってそう言うと、
「ハハ! 分かってるよ!
お前はそうやってムキになるところが可愛いんだよな」
と誉め言葉なのか、
揶揄ってけなしてるのか分からない。
「それにさ、お前ってこっちが何言っても怒らないし、
逆に自分の逆境を逆手にとって笑わせてくれるしな。
うん、うん、お前は色々と話しやすいんだよ。
それに話してみたいって雰囲気も持ってるしな。
きっと光はお前のそんな所に惚れたんだろうな。
あの時のアイツにはお前のその明るさや
逆境に負けない強さ必要だったんだよ」
と僕の頭をクシャッとした。
「でも矢野君、今はすごく楽しそうにしてるから、
僕の事はもういらないのかもしれない……
過去の事を思い出すのは辛いだろうけど、
でもやっぱり矢野君には思い出してもらって、
それでもまだ僕のことが必要だと思って欲しいよ!
は~ どうやったら記憶が戻ってくれるんだろうね~」
僕は肘をついて顎を抱えるとウィンドウから外を眺めた。
その瞬間ギョッとした。
なんと向こうからウィンドウにへばりついて
矢野君がこちらを見ていたからだ。
「げっ!」
僕はカエルの鳴き声の様な声を出すと、
外は見なかった様なフリをして
佐々木君の方を振り向いた。
すると、佐々木君もそんな矢野君をびっくりしてみていた。
「たまげたな。
アイツ、よくここが分かったな。
やっぱり番の感かな?」
そう言って僕を見てニヤッと笑った。
僕は咄嗟に何を思ったのか、
「ね、ね、僕変じゃない?」
と、ついさっき佐々木君にくしゃくしゃにされた
頭を整えていた。
そうして髪を整えているうちに、
矢野君が佐々木君の横に座り込んで来た。
そして僕達を交互に見て、
開口一番に
「お前ら付き合ってるのか?!」
と尋ねた。
まあ、そう来るだろうという雰囲気はあったけど、
僕はつかさず、
「違うよ! 僕達只の友達だよ!」
と答えた。
でも佐々木君は、
「お前には関係無いだろ」
と僕と同時に答えたので、
“ちょっと~
何でそんなはっきりしない事言うんだよ!
そこはキッパリと否定でしょ!”
そう佐々木君に囁く僕を横に、
当の矢野君は僕を睨んでブスッとしている。
“なんかややこしくなってきたな~”
そう思っていると佐々木君が、
「俺チョットトイレな」
そう言って急に席をたって、
まるで蛇に睨まれるカエルみたいになった僕と、
僕をにらみ続ける矢野君を残して、
スタスタとトイレに歩いて行ってしまった。
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