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東の大陸
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8歳と言う幼心にも
僕は初恋という物を経験した。
幼ければ幼い程
その恋は真剣だというけれど、
僕はそに名の通りその恋に命を燃やした。
ダリルに初めて会った時に感じた恐ろしさは、
この後に起こることを予感していたのだろうか?
僕がダリルに初めて恋心を意識してから、
既に4年の月日が流れていた。
その間に大きな事は起こらなかったけど、
マグノリアとの婚姻を一年に残した頃から、
僕の周りの情勢は大きく変わりつつあった。
その時で僕は12歳。
アーウィンとの交友関係も益々深まり、
ダリルとの主従関係も固まり、
何を覆しても僕達の関係は壊れないもとなっていた。
ただ、ダリルは僕の気持ちを未だ知らない。
彼に自分の気持ちを伝える意思もなかった。
以前ダリルが言った様に、
男性に恋をする男性は世の中にいなかった。
僕は世の理を身を持って知ってしまった。
僕は何て幼かったのだろう。
本当に何も分かって無い子供だった。
今ではあらゆる事に精通し、
一応の認識と常識は有るつもりだ。
きっとダリルに僕の気持ちを伝えても、
頭の硬い彼の事だ……
彼はきっと僕の気持ちに戸惑うばかりだろう。
それよりも、主である僕に
合わせようとしてくるかもしれない。
それだけは避けなければならなかった。
でも行き場のなくなった僕の気持ちはどうすればいい?
この秘密は僕一人で抱えるには
荷が重すぎた。
アーウィンには悪かったけど、
此処でも僕はこの秘密を
アーウィンと共有した。
御法度とは分かっていても、
自分がダリルを愛した事を
誰かに知っておいて貰いたかった。
アーウィンは僕の気持ちを否定する事なく、
恋に目覚めた僕を心から喜んでくれた。
そして僕はアーウィンの秘密を知った。
彼はマグノリアに密かな恋心を抱いていた。
マグノリアの気持ちはわからないけど、
きっと彼女もアーウィンの事を愛していた。
でも僕達は唯の子供で、
王室や国の決まり事を覆すような
そんな特別な力を持っていた訳ではなかった。
この時は、この3人の子供達が
それぞれの想いに苦しみながら
毎日を一生懸命生きていたとは
周りの大人達は誰一人気付きもしなかった。
聖龍の加護に目覚めて以来、
僕の身体強化は上がったけど、
剣の技術は相変わらず変わる事はなかった。
その為、僕は禁断の書を通して、
魔法を極める事に決めた。
僕は朝早くから夜遅くまで時間がある限り
禁断の書に読み耽った。
最初の頃は父が言っていた様に、
何が書いてあるのか理解をするのが難しかった。
でも森へダリルと討伐に行き、
魔法のレベルが上がる度に、
僕の禁断の書へ対する理解力が増していった。
禁断の書には魔法の事ばかりか、
創世、歴史、戦争、魔物や魔獣についてなど、
色々な事が記されていた。
その中に、遠い昔に滅んだ東の国の事が書かれていた。
今ではこの世界の東側は海に覆われているけど、
昔はそこに大きな大陸があった様だ。
その大陸には、
違う言葉を話す人達が存在し、文明が栄え、
そこに住む人々は
皆見事な黒髪に黒い目をしていた事が記されていた。
そして、そんな人々が信仰していたのが黒龍。
黒龍はその大陸の守り神だった。
東の大陸の人々と共に住み、
その魔力の偉大なる力で大陸を守っていた。
でも大陸が海の底に沈んだのと同時にその姿も
糸を切った様に見られなくなってしまった。
でも予言があったらしい。
この世が混乱に陥る時に
黒龍は蘇るだろうと。
その鍵を握る者が現れるともあった。
それを見た時、
“もしかしてダリルが?”
という思いが脳裏を過ったのも過言では無い。
何しろ彼は黒龍の聖剣に認められた騎士だ。
でもその鍵を握る者の特徴も、
どうやってその人を見分けるのかも
何の記録も残っていない。
だからそれがダリルだからと言って、
何をどうすれば良いのか分からない。
無責任な事は言えない。
でも僕はこの東の大陸に関して
大きな関心を持った。
もう無いはずの大陸に心を巡らせ、
僕は良くこの大陸にいた人々や、
この大陸で起きた事などを瞑想していた。
そしてその大陸で使われていたであろう文字を見た時は
とても不思議な気持ちがした。
誰が訳したのか分からないけれど、
そこに一つの特別な言葉を見つけた。
「アーウィン、アーウィン!」
僕はいつもの様に、
アーウィンの部屋へ続くドアを勢いよく開けた。
ドアの向こうではアーウィンが
マグノリアにお茶を勧めている所だった。
「ジェイド、ドアを開ける前は
ちゃんとノックしてっていつも言ってるでしょ!」
そう言ってイキリ立ってるのが17歳になったアーウィン。
そしてそこですまし顔でお茶を啜っているのが
16歳になったマグノリア。
「あ、マグノリア来てたんだ……
それよりもアーウィンこれ見てよ!」
そう言って僕は新しく見つけたばかりの
情報をアーウィンの前に差し出した。
「ちょっとジェイド、
婚約者に向かって
“来てたの?”
ってだけは無いんじゃ無い?!」
そう言うマグノリアに、
「よお!」
と手を挙げると、
マグノリアはため息をついて
すまし顔で又お茶を啜り始めた。
「あのさ、ちょっと聞いてもいい?」
僕がマグノリアに指を刺して物申すと、
「せっかくの熱いお茶が冷めるから早めにね。
この茶葉、わざわざ国から取り寄せた最高級の物なの。
この時期はお茶葉の収穫が減るから
と~っても貴重なのよ」
そう言って足をクロスし、
腕を胸の前で組んだ。
マグノリアは髪を無造作に一つに纏めて、
お姫様らしからぬラフな格好をしている。
僕達が最初彼女を
“御付き”
と間違えたのも無理はない。
どこからどう見ても、
制服を着ていないメイドだ。
最初会った時も、
彼女はそう言う格好だった。
「あのさ、君、一応は僕の婚約者でしょ?
もし誰かにアーウィンと二人だけで
お茶飲んでる所見られたら、
どんな言い訳するの?!」
そう尋ねると、
「そうねえ~
まず、私を一目見て
ジェイドの婚約者だと思う人はいないと思うけど…
実際に此処にくる途中でも、
何人かの城の女中に捕まって
お手伝いを頼まれたくらいだし~」
そう言って笑っている。
確かに彼女は公の場になると化ける。
お淑やかさからガラリと変わってくる。
僕も最初この違いを見た時は
開いた口が塞がらなかった。
「でも~ もし誰かに気づかれたら……
その時は貴方は厠に行って席を外してるって言うわ!
そしてその隙にアーウィンに探しに行ってもらう!」
そう言って又笑った。
「キー!!! 全く、
婚約者だからと黙って言わせておけばー!!!」
段々暑くなった僕にアーウィンが助け舟を出して、
「あ、ジェイド、それで僕のところへ来た理由は?!」
と僕達の間に割って入った。
実を言うと、僕とマグノリアは秘密協定にあり、
キリの良いところで婚約破棄の
申し入れをしようと話し合っている。
勿論それはアーウィンも知っている。
言わば僕達は三位一体の共同体だ。
マグノリアにダリルの事は言ってはいないけど、
彼女は薄々気付いていると思う。
そして彼女も、彼女が誰を見ているのか
僕が気付いている事に気付いていると思う。
それを敢えて言わないところが僕達の仲を
グンと近くさせて強固な物としていた。
「そうそう、これ見て!」
僕は傍に抱えていた禁断の書を
二人の前に広げた。
「ちょ、それ、僕達が見ても良い物なの?!」
アーウィンが慌てて閉じようとしたけど、
「現持ち主のジェイドが良いって言ってるから
良いんじゃないの?」
とマグノリアは引もしない。
さすがと言うか…
でも僕もマグノリアと同じ意見だ。
「僕が大丈夫と言ったら、大丈夫!
それよりも此処を見て!」
そう言って東の大陸に関して記してあるページを開いた。
「これは……?」
アーウィンとマグノリアが覗き込んだ。
「ちょっとマグノリア、
お菓子食べた手で触らないでよね!
それに食べながら覗いたら
食べかすが本の間に挟まるじゃない!
本が変色するからやめてよね!」
そう言うと、彼女は
「へいへい~」
と言って自分のシャツで手を拭いていた。
「君、本当にプリンセス?
どっかの下町で生まれたりしてないよね?」
疑惑の目で彼女を見ると、
「ふふーん、正真正銘の現王が嫡子、
第一王女で~す。
嘘だと思うなら血の検査をしても良いよーん」
と自信満々に彼女は答えた。
最近巷では、
変わり者の錬金術師が生み出したと言われる
血縁関係を調べる検査薬が市場に出回り始めた。
量産出来ないその検査薬は、
未だ未だ値段が高くて
愛妾の多い貴族や王族の間でのみ実用性があるけど、
なんでも、血縁が全く無いものは親子の血を混ぜた時に
反応液が分離するらしい。
彼女も王族、
恐らくそれで調べられたのだろう。
僕の場合は王族にのみ現れる銀髪と緑の瞳で
検査など必要なかった。
“全く、王室で育っておいて、
何故こんなになる?!”
そればかりが僕の疑問だった。
僕はマグノリアに
「破らないでよね、
気を付けて扱ってよね」
そう念を押し、見せたかった箇所を指で指した。
「へ~ これって昔東の方にあった大陸の事だよね」
なんとアーウィンは東の大陸の事に付いて知っていた。
いや、別に知っていたわけではなく、
そう言う大陸があったと言うことだけを知っていた。
「ねえ、これ見てよ、昔、この大陸で使われていた文字なんだけど…」
「どれ、どれ、」
そう言ってアーウィンが覗き込んだ。
「ほら、ここのとこなんだけど……
これ、漢字って言うんだって!
見て、僕の名前!
東の大陸では僕の名前はこう言うんだって!」
それを見たアーウィンが、
「へ~ ジェイドって色の名前だったんだ~
東の国の言葉で……すい……
へ~ 翠って書くんだね」
「でしょ? でしょ?
すっごく綺麗な響き!
同じ名前なのに、何だか凄く懐かしい様な
愛おしいような……
僕、ジェイドって名前も好きだけど、
この翠って言葉もすごく好き!」
「へ~ 翠か~
ジェイドとは違って名前にしたら
爽やかな名前になるよね!」
そう言ってマグノリアは揶揄っていたけど、
僕はこの翠と言う僕の名前と同じ意味を持つ
この言葉がとても好きになった。
僕は初恋という物を経験した。
幼ければ幼い程
その恋は真剣だというけれど、
僕はそに名の通りその恋に命を燃やした。
ダリルに初めて会った時に感じた恐ろしさは、
この後に起こることを予感していたのだろうか?
僕がダリルに初めて恋心を意識してから、
既に4年の月日が流れていた。
その間に大きな事は起こらなかったけど、
マグノリアとの婚姻を一年に残した頃から、
僕の周りの情勢は大きく変わりつつあった。
その時で僕は12歳。
アーウィンとの交友関係も益々深まり、
ダリルとの主従関係も固まり、
何を覆しても僕達の関係は壊れないもとなっていた。
ただ、ダリルは僕の気持ちを未だ知らない。
彼に自分の気持ちを伝える意思もなかった。
以前ダリルが言った様に、
男性に恋をする男性は世の中にいなかった。
僕は世の理を身を持って知ってしまった。
僕は何て幼かったのだろう。
本当に何も分かって無い子供だった。
今ではあらゆる事に精通し、
一応の認識と常識は有るつもりだ。
きっとダリルに僕の気持ちを伝えても、
頭の硬い彼の事だ……
彼はきっと僕の気持ちに戸惑うばかりだろう。
それよりも、主である僕に
合わせようとしてくるかもしれない。
それだけは避けなければならなかった。
でも行き場のなくなった僕の気持ちはどうすればいい?
この秘密は僕一人で抱えるには
荷が重すぎた。
アーウィンには悪かったけど、
此処でも僕はこの秘密を
アーウィンと共有した。
御法度とは分かっていても、
自分がダリルを愛した事を
誰かに知っておいて貰いたかった。
アーウィンは僕の気持ちを否定する事なく、
恋に目覚めた僕を心から喜んでくれた。
そして僕はアーウィンの秘密を知った。
彼はマグノリアに密かな恋心を抱いていた。
マグノリアの気持ちはわからないけど、
きっと彼女もアーウィンの事を愛していた。
でも僕達は唯の子供で、
王室や国の決まり事を覆すような
そんな特別な力を持っていた訳ではなかった。
この時は、この3人の子供達が
それぞれの想いに苦しみながら
毎日を一生懸命生きていたとは
周りの大人達は誰一人気付きもしなかった。
聖龍の加護に目覚めて以来、
僕の身体強化は上がったけど、
剣の技術は相変わらず変わる事はなかった。
その為、僕は禁断の書を通して、
魔法を極める事に決めた。
僕は朝早くから夜遅くまで時間がある限り
禁断の書に読み耽った。
最初の頃は父が言っていた様に、
何が書いてあるのか理解をするのが難しかった。
でも森へダリルと討伐に行き、
魔法のレベルが上がる度に、
僕の禁断の書へ対する理解力が増していった。
禁断の書には魔法の事ばかりか、
創世、歴史、戦争、魔物や魔獣についてなど、
色々な事が記されていた。
その中に、遠い昔に滅んだ東の国の事が書かれていた。
今ではこの世界の東側は海に覆われているけど、
昔はそこに大きな大陸があった様だ。
その大陸には、
違う言葉を話す人達が存在し、文明が栄え、
そこに住む人々は
皆見事な黒髪に黒い目をしていた事が記されていた。
そして、そんな人々が信仰していたのが黒龍。
黒龍はその大陸の守り神だった。
東の大陸の人々と共に住み、
その魔力の偉大なる力で大陸を守っていた。
でも大陸が海の底に沈んだのと同時にその姿も
糸を切った様に見られなくなってしまった。
でも予言があったらしい。
この世が混乱に陥る時に
黒龍は蘇るだろうと。
その鍵を握る者が現れるともあった。
それを見た時、
“もしかしてダリルが?”
という思いが脳裏を過ったのも過言では無い。
何しろ彼は黒龍の聖剣に認められた騎士だ。
でもその鍵を握る者の特徴も、
どうやってその人を見分けるのかも
何の記録も残っていない。
だからそれがダリルだからと言って、
何をどうすれば良いのか分からない。
無責任な事は言えない。
でも僕はこの東の大陸に関して
大きな関心を持った。
もう無いはずの大陸に心を巡らせ、
僕は良くこの大陸にいた人々や、
この大陸で起きた事などを瞑想していた。
そしてその大陸で使われていたであろう文字を見た時は
とても不思議な気持ちがした。
誰が訳したのか分からないけれど、
そこに一つの特別な言葉を見つけた。
「アーウィン、アーウィン!」
僕はいつもの様に、
アーウィンの部屋へ続くドアを勢いよく開けた。
ドアの向こうではアーウィンが
マグノリアにお茶を勧めている所だった。
「ジェイド、ドアを開ける前は
ちゃんとノックしてっていつも言ってるでしょ!」
そう言ってイキリ立ってるのが17歳になったアーウィン。
そしてそこですまし顔でお茶を啜っているのが
16歳になったマグノリア。
「あ、マグノリア来てたんだ……
それよりもアーウィンこれ見てよ!」
そう言って僕は新しく見つけたばかりの
情報をアーウィンの前に差し出した。
「ちょっとジェイド、
婚約者に向かって
“来てたの?”
ってだけは無いんじゃ無い?!」
そう言うマグノリアに、
「よお!」
と手を挙げると、
マグノリアはため息をついて
すまし顔で又お茶を啜り始めた。
「あのさ、ちょっと聞いてもいい?」
僕がマグノリアに指を刺して物申すと、
「せっかくの熱いお茶が冷めるから早めにね。
この茶葉、わざわざ国から取り寄せた最高級の物なの。
この時期はお茶葉の収穫が減るから
と~っても貴重なのよ」
そう言って足をクロスし、
腕を胸の前で組んだ。
マグノリアは髪を無造作に一つに纏めて、
お姫様らしからぬラフな格好をしている。
僕達が最初彼女を
“御付き”
と間違えたのも無理はない。
どこからどう見ても、
制服を着ていないメイドだ。
最初会った時も、
彼女はそう言う格好だった。
「あのさ、君、一応は僕の婚約者でしょ?
もし誰かにアーウィンと二人だけで
お茶飲んでる所見られたら、
どんな言い訳するの?!」
そう尋ねると、
「そうねえ~
まず、私を一目見て
ジェイドの婚約者だと思う人はいないと思うけど…
実際に此処にくる途中でも、
何人かの城の女中に捕まって
お手伝いを頼まれたくらいだし~」
そう言って笑っている。
確かに彼女は公の場になると化ける。
お淑やかさからガラリと変わってくる。
僕も最初この違いを見た時は
開いた口が塞がらなかった。
「でも~ もし誰かに気づかれたら……
その時は貴方は厠に行って席を外してるって言うわ!
そしてその隙にアーウィンに探しに行ってもらう!」
そう言って又笑った。
「キー!!! 全く、
婚約者だからと黙って言わせておけばー!!!」
段々暑くなった僕にアーウィンが助け舟を出して、
「あ、ジェイド、それで僕のところへ来た理由は?!」
と僕達の間に割って入った。
実を言うと、僕とマグノリアは秘密協定にあり、
キリの良いところで婚約破棄の
申し入れをしようと話し合っている。
勿論それはアーウィンも知っている。
言わば僕達は三位一体の共同体だ。
マグノリアにダリルの事は言ってはいないけど、
彼女は薄々気付いていると思う。
そして彼女も、彼女が誰を見ているのか
僕が気付いている事に気付いていると思う。
それを敢えて言わないところが僕達の仲を
グンと近くさせて強固な物としていた。
「そうそう、これ見て!」
僕は傍に抱えていた禁断の書を
二人の前に広げた。
「ちょ、それ、僕達が見ても良い物なの?!」
アーウィンが慌てて閉じようとしたけど、
「現持ち主のジェイドが良いって言ってるから
良いんじゃないの?」
とマグノリアは引もしない。
さすがと言うか…
でも僕もマグノリアと同じ意見だ。
「僕が大丈夫と言ったら、大丈夫!
それよりも此処を見て!」
そう言って東の大陸に関して記してあるページを開いた。
「これは……?」
アーウィンとマグノリアが覗き込んだ。
「ちょっとマグノリア、
お菓子食べた手で触らないでよね!
それに食べながら覗いたら
食べかすが本の間に挟まるじゃない!
本が変色するからやめてよね!」
そう言うと、彼女は
「へいへい~」
と言って自分のシャツで手を拭いていた。
「君、本当にプリンセス?
どっかの下町で生まれたりしてないよね?」
疑惑の目で彼女を見ると、
「ふふーん、正真正銘の現王が嫡子、
第一王女で~す。
嘘だと思うなら血の検査をしても良いよーん」
と自信満々に彼女は答えた。
最近巷では、
変わり者の錬金術師が生み出したと言われる
血縁関係を調べる検査薬が市場に出回り始めた。
量産出来ないその検査薬は、
未だ未だ値段が高くて
愛妾の多い貴族や王族の間でのみ実用性があるけど、
なんでも、血縁が全く無いものは親子の血を混ぜた時に
反応液が分離するらしい。
彼女も王族、
恐らくそれで調べられたのだろう。
僕の場合は王族にのみ現れる銀髪と緑の瞳で
検査など必要なかった。
“全く、王室で育っておいて、
何故こんなになる?!”
そればかりが僕の疑問だった。
僕はマグノリアに
「破らないでよね、
気を付けて扱ってよね」
そう念を押し、見せたかった箇所を指で指した。
「へ~ これって昔東の方にあった大陸の事だよね」
なんとアーウィンは東の大陸の事に付いて知っていた。
いや、別に知っていたわけではなく、
そう言う大陸があったと言うことだけを知っていた。
「ねえ、これ見てよ、昔、この大陸で使われていた文字なんだけど…」
「どれ、どれ、」
そう言ってアーウィンが覗き込んだ。
「ほら、ここのとこなんだけど……
これ、漢字って言うんだって!
見て、僕の名前!
東の大陸では僕の名前はこう言うんだって!」
それを見たアーウィンが、
「へ~ ジェイドって色の名前だったんだ~
東の国の言葉で……すい……
へ~ 翠って書くんだね」
「でしょ? でしょ?
すっごく綺麗な響き!
同じ名前なのに、何だか凄く懐かしい様な
愛おしいような……
僕、ジェイドって名前も好きだけど、
この翠って言葉もすごく好き!」
「へ~ 翠か~
ジェイドとは違って名前にしたら
爽やかな名前になるよね!」
そう言ってマグノリアは揶揄っていたけど、
僕はこの翠と言う僕の名前と同じ意味を持つ
この言葉がとても好きになった。
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