学園では婚約者に冷遇されていますが、有能なので全く気になりません。〜学園でお山の大将されてても、王宮では私の方が有能ですから〜

織り子

文字の大きさ
3 / 4

Episode3ー元婚約者の愚行

「·······ふぅ」
アスランとの婚約は、アスランの母である亡き王妃たっての希望だった。アスランの性格により、諍いが起きぬよう、タレイアに導いてほしいと。
(お世話になった王妃陛下の遺言に沿いたかったのだけど)

「殿下、そのような証拠のない証言と憶測だけで婚約の破棄を提案されたのですか?」

アスランは顔を赤くして声を荒げた。
「提案ではない!婚約破棄は決定事項だ!ミリアが嘘をつくはずがない!お前が認めて謝れば処置を軽くしてやろうと思っていたのに」

「私をあまり馬鹿にするなよ!おい!」

アスランが合図すると、数人の生徒がタレイアを取り囲む様に前に出てきた。体格の良さを見ると、騎士科の生徒だろう。彼らの表情を見ると、ふんぞり返って出てきた者もいれば、戸惑いながら出てきた者もいる。

「ふん。自ら謝る方が良いと思うぞ。どうする?無理やり跪かせてもいい」

もはやため息も出ない。ミリア嬢を見ると、青ざめた顔でこちらを見ている。事が大きくなりすぎて萎縮しているようだ。
本当に婚約破棄をさせて婚約者の座を奪うつもりだったのか、軽い嫌がらせのつもりだったのか。表情からして後者かもしれない。

(ここまで騒ぎが大きくなっては、彼女も人生を棒に振ってしまったようなものね)

「殿下、婚約破棄は受け入れましょう。ですがこの件で私が謝罪することはありません。事実無根ですから。私が謝罪する事があるとすれば、亡き王妃様にです。貴方を導く事が出来ませんでしたから」

「なんだと?図々しい!おい!こいつを跪かせろ!」

アスランが言うと、取り囲んでいた騎士科の生徒たちがじりじりと近付いて来る。タレイアはアスランを見据えたまま、右手を上げた。

「なんだ?今さら謝ろうとでも?」
アスランはタレイアを見て顔を歪めた。

「うぅっ!」
「うわっ」

「なに?」
アスランが生徒たちの叫び声に目を向けると、タレイアを取り囲んでいた生徒たちが取り押さえられていた。

「な?なんだお前たち!?そいつらじゃなく、タレイアを押さえろ!」
生徒を取り押さえたのは、会場の警備をしていた騎士達だ。生徒ではなく、本職の。

「殿下、彼らは貴方の言うことを第一としません。ここは公の場。諸外国の方もいるのですから。騎士たちの統率は私に一任されております」

そして騎士科の生徒たちを取り押さえた中には、生徒の親もいた。親側としてはすぐにでも取り押さえたかったのだろうが、タレイアの許可なくして動く訳には行かなかったのだ。

「政務から離れている殿下は覚えていらっしゃらないのでしょうが、陛下と宰相閣下が隣国へ行かれている今は私が宰相代理を務めておりますので」

とはいえ、身分はアスランが上だ。タレイアにはアスランを拘束することは出来ない。


「――話がついたようだな?」

凛と通るその声に、アスランの表情が明るくなった。

「兄上!」
「久しいな。アスラン」

タレイアが振り向くと、弟の表情と対を成すように冷たく光る金色の瞳があった。

「兄上!タレイアを拘束してください!いくら婚約者と言えど、第二王子である私を侮辱するのです」

「もう婚約者ではないのだろう?」

グレイグの返事は冷ややかだった。同じ王族であり、兄なのだから味方だとでも思ったのだろうか。

髪と瞳の色は同じだが、グレイグとアスランは腹違いの兄弟だ。顔つきはそれぞれの母に似ており、美姫として称えられた側室を母に持つグレイグの美貌は、アスランとは比べものにならない。普段見ることのない美しい王太子に、生徒たちは魅了されている。

ミリアも例外ではなく、アスランに腕を絡めたままグレイグにうっとりと見惚れていた。
アスランの表情が曇る。


「お前たちの問答を聞いていた。私の知るオルトラン嬢が、そのような稚拙な事をするとは到底思えない。どうやら侮辱されたのはオルトラン嬢のようだな?」

グレイグの低い声に、アスランはゾクリと寒気を感じた。

「兄上とタレイアはあまり面識はないはずでしょう」

「お前などより、よほど彼女と顔を合わせている。主に仕事でだが。16にもなって国政に関わろうとしないお前に羞恥心がないのは承知しているが、これほどとは思わなかったぞ。恥ずかしくないのか?」

アスランは顔を真っ赤にして震えはじめた。
「兄上、まさか実の弟より、この女の言うことを信じるのではないですよね?」

「当たり前だろう。ろくに顔を合わせていない弟より、毎日のように会議室で国政の議論をかわし、弟に代わって参加してくれている慰労訪問や戦傷者への労いなど、世話になっている彼女の言うことを信じるが?」


にべもなく言われ、アスランは愕然とした。
「そんな···兄上は私に優しかったではありませんか」

グレイグは笑った。冷たく、突き放すような乾いた嗤いだった。

感想 3

あなたにおすすめの小説

教養が足りない、ですって

たくわん
恋愛
侯爵令嬢エリーゼは、公爵家の長男アレクシスとの婚約披露宴で突然婚約破棄される。理由は「教養が足りず、公爵夫人として恥ずかしい」。社交界の人々の嘲笑の中、エリーゼは静かに会場を去る。

婚約破棄された令嬢、気づけば王族総出で奪い合われています

ゆっこ
恋愛
 「――よって、リリアーナ・セレスト嬢との婚約は破棄する!」  王城の大広間に王太子アレクシスの声が響いた瞬間、私は静かにスカートをつまみ上げて一礼した。  「かしこまりました、殿下。どうか末永くお幸せに」  本心ではない。けれど、こう言うしかなかった。  王太子は私を見下ろし、勝ち誇ったように笑った。  「お前のような地味で役に立たない女より、フローラの方が相応しい。彼女は聖女として覚醒したのだ!」

選ばれなくてよかったと、今は思います

たくわん
恋愛
五年間の婚約を、一夜で破棄された。 理由は「家格の不一致」。 傷ついた翌朝、私は泣くのをやめて仕事着を着た。 王立文書院の渉外部職員として、今日も書類と向き合う。それだけでいいと思っていた。 出勤すると、一枚の張り紙があった。 新長官着任。エドワード・ヴァルツ・シュタイン侯爵。 昨夜の晩餐会で、遠くに座っていた「氷の侯爵」がそのまま上司になった。 彼は口数が少なく、笑わず、感情を見せない。 でも仕事の評価だけは正確だった。 「君の報告書は読みやすい」「渉外部はあの職員が要になっている」——誰かに選ばれたくて生きてきたわけではないのに、仕事を通じて初めて、自分の輪郭がはっきりしてくる気がした。

公爵令嬢ですが、実は神の加護を持つ最強チート持ちです。婚約破棄? ご勝手に

ゆっこ
恋愛
 王都アルヴェリアの中心にある王城。その豪奢な大広間で、今宵は王太子主催の舞踏会が開かれていた。貴族の子弟たちが華やかなドレスと礼装に身を包み、音楽と笑い声が響く中、私——リシェル・フォン・アーデンフェルトは、端の席で静かに紅茶を飲んでいた。  私は公爵家の長女であり、かつては王太子殿下の婚約者だった。……そう、「かつては」と言わねばならないのだろう。今、まさにこの瞬間をもって。 「リシェル・フォン・アーデンフェルト。君との婚約を、ここに正式に破棄する!」  唐突な宣言。静まり返る大広間。注がれる無数の視線。それらすべてを、私はただ一口紅茶を啜りながら見返した。  婚約破棄の相手、王太子レオンハルト・ヴァルツァーは、金髪碧眼のいかにも“主役”然とした青年である。彼の隣には、勝ち誇ったような笑みを浮かべる少女が寄り添っていた。 「そして私は、新たにこのセシリア・ルミエール嬢を伴侶に選ぶ。彼女こそが、真に民を導くにふさわしい『聖女』だ!」  ああ、なるほど。これが今日の筋書きだったのね。

「婚約破棄されたので、辺境伯と結婚しました。元婚約者が夫の騎士団に入ってきたのは、私のせいではありません」

まさき
恋愛
下級貴族の娘ルイーゼは、婚約者のヴィクターに「君では釣り合わない」と告げられ、婚約を破棄された。相手は王都でも評判の高位貴族令嬢。逆らう言葉も、泣く気力も、持てなかった。 一週間後、北の辺境を治めるダリウス・アッシュフォード伯爵から縁談が届く。辺境は寒く、戦場に近く、貴族令嬢が好んで嫁ぐ場所ではない。だからこそ断られ続けていたのだと、仲介者は言った。 ルイーゼは承諾した。実家にいても未来はない。どうせなら、役に立てる場所がいい。 辺境に着いてわかったのは、領地が荒れているということ。帳簿は三年放置され、薬草の在庫管理は存在せず、領民との信頼関係も薄かった。ルイーゼは黙って働いた。夫のダリウスは口数が少なかったが、妻の仕事を否定しなかった。 それだけで、十分だと思っていた。 半年が経った秋。王都騎士団の増員に伴い、辺境伯騎士団にも志願者が来た。その中に、見知った顔があった。 ヴィクター・レインズ。かつての婚約者。 そして今は、夫の部下になろうとしている男。 ルイーゼは特に何も感じなかった。 ただ、彼の顔が見る見る青ざめていくのを、静かに眺めた。

貧乏人とでも結婚すれば?と言われたので、隣国の英雄と結婚しました

ゆっこ
恋愛
 ――あの日、私は確かに笑われた。 「貧乏人とでも結婚すれば? 君にはそれくらいがお似合いだ」  王太子であるエドワード殿下の冷たい言葉が、まるで氷の刃のように胸に突き刺さった。  その場には取り巻きの貴族令嬢たちがいて、皆そろって私を見下ろし、くすくすと笑っていた。  ――婚約破棄。

あなたの言うことが、すべて正しかったです

Mag_Mel
恋愛
「私に愛されるなどと勘違いしないでもらいたい。なにせ君は……そうだな。在庫処分間近の見切り品、というやつなのだから」  名ばかりの政略結婚の初夜、リディアは夫ナーシェン・トラヴィスにそう言い放たれた。しかも彼が愛しているのは、まだ十一歳の少女。彼女が成人する五年後には離縁するつもりだと、当然のように言い放たれる。  絶望と屈辱の中、病に倒れたことをきっかけにリディアは目を覚ます。放漫経営で傾いたトラヴィス商会の惨状を知り、持ち前の商才で立て直しに挑んだのだ。執事長ベネディクトの力を借りた彼女はやがて商会を支える柱となる。  そして、運命の五年後。  リディアに離縁を突きつけられたナーシェンは――かつて自らが吐いた「見切り品」という言葉に相応しい、哀れな姿となっていた。 *小説家になろうでも投稿中です

王太子に「戦友としか思えない」と言われたので、婚約を解消しました

明衣令央
恋愛
婚約者である王太子ヘンリーから「君のことは戦友としか思えない」と告げられた、公爵令嬢アリスティア。 十年以上の王妃教育を積んできた彼女は、静かに婚約解消を受け入れる。 一年後、幸せな結婚を迎えた彼女にとって、ヘンリーのその後は――もうどうでもいいことだった。