白姫さまの征服譚。

潤ナナ

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第二章 二節。

第61話 竜帝聖女白姫と南方の王女。

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◇◇◇

「スッゴーイ!これ動いてる!お部屋が動いてるぅぅぅ!」
「昇降機と言います。これも姫様の発明品の一つです。」
「ミセリコルディア陛下ってスッゴイわよねー。路面汽車?の仕組みシステムだって、ミセリコルディア陛下でしょう?」

「はい。ですが、この昇降機の応用だそうです。」
「ええ?そうなの?でもでも、蒸気機関車だって、蒸気船だって。ぜーっんぶミセリコルディア陛下なのだわあああーー!」
「そうですね。もう8つの砌から発明品を売っておりましたそうで、私も初めてお会いした時からの信奉者なのです。」
「グレース…様でしたっけ?」
「只、グレースと呼称して下さい。―――――こちらです。こちらのお部屋を自由にお使い下さい。で、ご用向きの際は、この伝声管の蓋を開けて、お伝え下さいませ。では……失礼致します。」

「伝声管?って何かしら。」
「イレーヌ解る?」
「さあ、さっぱり?」
 伝声管とはなんぞ?っと思うも、マリエルの興味は外へと向かう。
「うっわー凄く良い眺めねぇー。でも、もっと上のお部屋なら、もっともっと眺めが良かったのではなくて?」
「そうですね。ですが、きっとご事情があるのでは?」
 などと寛いで居ると、くぐもった声が聴こえる。
 伝声管からだ。

((蓋をお開け下さいませ!))
 と言っている。

((ありがとうございます。))
「どおいたしまして!」
((我が姫様………。陛下が、朝食をご一緒に如何かと、申されております。よろしければ、ですが。。。))
「ご一緒したいです!」

((では、昇降機で、17階にお越し下さい。お待ちしております。))
「スッゴイわあーお話し出来るなんてーキャアアアアーーー!!」
((あのう誠にすいませんが、伝声管の蓋をおしめ下さい。会話が駄々漏れです。))

 昇降機で17階へ。昇降機に乗って他に人が乗っていた。だが、見るからに農夫だ。そしてその農夫は屋上へと乗って行くのであった。

 何故農夫?
「お招きに預かり恐悦至極に存じます陛下。」
「硬っ苦しいのは無しで………さあ、頂きましょう。
 天にまします我らが神よ今日の糧をお与え下さり………」

「気にしないでいいッス。陛下ってば、聖女もやってっからお祈りせずに居られないッス。頂きまーすぅ。」

「………頂きます。」
「……それ、イレーヌさんの分ですよ?冷めないウチに……」
「……ですが、使用人が、主人と、などと………」
「硬いの無し、ですよ。わたしのお城はわたしのルールです。一緒のが美味しいのですわ。」

「そうね。そうなのよイレーヌ。ご一緒しましょ?」
 何と言う試練か!イレーヌにはそう感じた。だが、姫様が楽しいのであれば…………。
 食事は滞りなく進み、会話は、マリエルの興味を引く昇降機の構造から、汽車の移動原理に移る。

「では、地面の下にある紐に掴まって動くのですか?」
「はい。ですから、故障も良くします。ロープが切れたり、絡まったり、と。ロープですから直ぐ治せるのですが、そうすると時刻表に影響が出て、具体的に言いますと、衝突事故に繋がるのです。ですから、運行が全面停止になるのです。」
「へぇー万全では無いのですね。」
「機械ですので……。」
「ああーお腹がいっぱいです。あのうテラスに出ますねー!」

「ああーお止め下さいまーせぇーーーーっ!!!」

 くっさーーーーーーいぃぃぃぃ!


◇◇◇

「知らないとは言え、大変な失礼を……。」
「上が、牧場なんです。ですから客間を上層に置けなくって、朝とか特に酷い時は、まあ何とか、ですの。」

「行って見ます?」
「是非是非!」

 昇降機で屋上テラスへ…………。
 テラスへ出ると、牧場の香り。
 そこに古竜エンシェントなドラゴンのペーターと子灰竜のプチ。
『おお、我主殿、今日はのんびりでは無いのか。』
「ええ、ペーター。貴方はお変わり無く?」

『そうそのお代わりでここに来た。』
「え?意味が。。。」
『プチの坊がもっと食べたいと言うで、困っておる。食肉も計画生産なのだ。と教えるのだが、子竜には難しいらしく理解を得られぬ。』

「なら、プチの食べた分はクロエのお給金から天引きします。」
「キャウー!」
『はっはっ。困るそうだ。』
「ペーター達って島にいた時は、お魚だったのではなくって?」
『おお、流石我主殿!早速、漁に出る。その前に、其方よ。』
「わ。私?」
『そうだ。南方の王女よ。其方の兄の所在は?―――――――ふむ、知らぬようだ。』
「あ、あの、何故兄を……。」

『王女よ。我主殿の友。我同胞の主人。その大切な者を強制的に交尾しようとした、其奴に怒りを覚えるであろう。では、な。』
 ああ、現実を忘れていた。そうなのだ。自分が今ここに居るのは兄の身代わりだったのだ。
 償いの為の人身御供だった。
(そう、私は人質だった。こんな明るく振る舞ってみても現実は変わらないのだわ。。。)

「そうでした。私はどのように償うべきなのでしょうか?陛下。」

「償う?貴女に出来るのは過去の精算では無い。未来への投資よ。」
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