白姫さまの征服譚。

潤ナナ

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第二章 三節。

第74話 謁見!竜帝聖女白姫。

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◇◇◇

 昨日の安息日、一日クロエが癒しを頑張った。ようだ。

 本日は朝から、と言っても午前9時。この時間、シルヴァニア王国外交使節との謁見である。
 使節団は、と言うとリラックス。尻の毛も何も無い状態であったから別名、開き直りと言う物である。

 毟られる毛は無いが、国は残したいと考えていることは皆一致していなくもなくない。
 ん?あやふやだ。
 実は、『亡命願望』すら生やしている使節の人もいらっしゃる。

「皇帝ミセリコルディア一世陛下、ご来入。」

 何時ものように、壇上の下に宰相ソレイユ公カロリーナ、下がって補佐官アリエルが立つ。ミセリコルディアは玉座に座ると、顔を上げるよう、使節達に言うと、

「安心せい。仔猫は教会で飼うこととなった。」
 と言った。

「陛下、それはまことで………」
「まだ、発言を許してはおらぬ、が良い。して其方ら、街はどうであった。どう感じた?」

「畏れながら、市井の民は活気に満ち、街も清潔が保たれておりました。交通網の発展により、混雑する程では無く、…………ぶっちゃけ、明るい顔の方々が多いと感じました。これ、陛下の治世と!」
「わたくしからも、わたくしはフロコン伯であります。軍務の観点から申しますに、練度は高く、勿論士気も大変高いと感じられ、仮に、仮に同じ戦力であっても敵いますまい。それと、竜でございます。陛下との歓談の中、 犇々と感じた陛下のみ心に『抑止力たれ』と言うのを感じ、感服しております。出来るのなら臣下に………」

「は、伯、卑怯である!わ、私だって、私だって帝国臣民にぃ………」
「併吞すれば、同じ国ぞ。但し、自治体自治政府により出入国に関し各々の法を持つ物だ。因みに、我が、………と言ってもわたしが治めるのはこのブランシュ大公領と点在する大小の直轄地のみ、だがな。謀反人共の空き地だ。
 ならば、王国の意向として併吞を望むと理解しても。。。では、無いな?使節として私的に望んでいるのであろう?」

「はい、恥ずかしながら………」
「もう良い。この謁見で意味があるとすれば、其方らの気持ちが分かった。と言うこと。国元は分からん。以上。で良いか?」

「お、お待ち下さい。今、王国、シルヴァニア本国へ併合と条約について認めた意見書を送り、返事を待っているところです。い、意見書が通りさえすれば………」
「無駄であろうよ。信じたい物を信じる。それが人である。ここで見て訊いたから其方らは、思えたのであろう。そう言うことだ。」
 謁見は終わり、使節団の面々はやるせなさでいっぱいであった。フロコン伯などは、苦渋を噛みしめざる負えぬと言った表情であった。
 信じたいことだけ、………その通りだと思った。


◇◇◇

 冬至当日。
 朝から煩い、エレオノールが猫を見に行こうと言う。


 学食で朝食を取っていたシルヴァニア王国第二王子ゴーティエは、揺れていた。目の前でたわわに実ったそれでは無い。
 揺れているのは、心。ゴーティエの心なのだ。王者なミセリコルディア。か若しくは、たわわが揺れる。

(ああー、なんと言う誘惑、なんと言う魅惑、なんと言うなんと言う愛の神話か!猫?見たい。)

「………で、明日、じゃ無い。もう今日から冬期休暇よ?」
「冬期、休暇、だと!」
(殆ど、授業らしい授業受けた描写が無い。と思ってはいたが、まさか速攻冬期休暇だった、とは…………。)

「あれ?本国に戻るべきであろうか?」
「え?帰る。」
「ああ、所謂帰省と言うやつだ。時に陛下の帰省先は、エレオノール嬢のご実家になるのであろうか?」

「んんー。どぉだろう。訊きに行こうかな!仔猫のついでに。」
「ん?猫は城、なのか?」

「うんん、神殿。シスター達がお世話してるの。」
「では、夕刻で良いか?」
「今から行こう!」
「早過ぎやしないか?」
「今日、お祭りなのだわ。今から行かなきゃ勿体無い!」
 押しきられる形で、祭り見物となったゴーティエ。取り敢えず、
 その旨ルカに伝え、…………伝えると、

「こ、今回も僕、留守番?」
 仔犬のような潤んだ瞳で、ゴーティエを責める。否、攻めている。
 が、無視。

「ルカよ。これはある意味デェトである。よって、二人っきりにさせろぅ!」
 男の迸るリビドーが、ある意味そうせざる負えない。と叫ぶのである。
 待ち合わせは、神殿前駅のホーム。先にゴーティエが着いていた。

「すいません。お待たせしました。」
と言いながら、小走りに―――――――――そう小走りだからこそだっ!!!――――ブィィィンぼぉぉぉぉんふるるぃぃぃんん。。。右に左に上に下に、ゆ_れ_う_ご_き_ま_く_る_だ_い_そ_う_き_ゅ_う。。。

「上下左右に揺れ動き捲る大双丘!イヤッホーィ!!!」
 思わず大発声する王子ゴーティエ。

「大丈夫ですか殿下、大声出して。」
「あ、ああ、取り乱した。」
「折角のお祭りですから、南門のところから見て周りませんか?殿下。」

「あのう、殿下呼びは、不都合が多いので、………名前でお願いしたい。」
「ああ!大変失礼を、そうですね、ですよね。不味いのですわ。では、ゴーティエ。」
(え?ああ!?呼び捨て!)
 丁度汽車の発車時間。車掌に回数券を渡す二人。向かい合って立つ。乗客はドンドン入って来て、既にすし詰め状態。。。てか、状況発生の危機である王子!
 いきなり緊急事態。状況の発生は予期していなかった王子。
 あの、あの双丘が変形を始めた。向かい合わせの王子とエリィ。混んだ車両と刻む揺れで、
(きっと混んで無ければ、「ふるふるふる」だった筈。今、「むにゅむにむにゅむにみゅむに」って双丘が、私の腹部で、むにゅむにむにゅむにみゅむにって言ってます私に押し潰されながら。。。あああああーーーエマージェンシーです。反応炉が、反応炉が、臨界をぉぉぉ迎えまぁぁぁーーーー~~~~…………「……)エレオノール嬢、逝ったん……一旦降りましょぉおふぅ。」

「そうですね。」
 二人は、市場前駅で降り、歩き始めた。

(全くやられたぜ。弾切れんばかりだった、私のズボンが…………)


◇◇◇

 シルヴァニア王国、国王の執務室で、バスチアンは、密偵からの報告を読んだ。
『艦船17隻。武装大砲有り、数不明。魔導砲台と火薬砲台の混合。速力不明。但し帝都~ベルーシュ迄、二週間。』

「一度の燃料積載で、往復出来る。と言う意味は、攻め込んで、勝敗に拘わらす、本国へ帰還可能。と言うことか?」
「しかも、船速がありますから、攻撃即、撤退を繰り返し行う。または例えば、三組に艦隊を別けて一撃離脱を繰り返す。我が王都は、港町です。敵にこれ程有利な戦場はありません。」

「一応訊くが、陸から攻めて来る。と言うことは?」
「ほぼ、ありません。砂漠であること。補給線が長くなること。何より兵站が凄い量になります。海上からの攻撃で相手は無傷、こちらは焦土。と言っていい位です。」

「結論を言え。」
「帝国に勝つのに『暗殺』意外ありません。ですが、」
「何だ?」
「我々の用意した実働隊、事実上壊滅しました。ですが、隠し玉があります。」

「いや、殺すな。殺さず連れて来い。あれは、『女神』だ。」
「はあ?」

「分からぬか。あれには、神の御業がある。」
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