ツンデレ王子と悪役聖女

和奈小夜

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ツンデレ王子と悪役聖女

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ツンデレ王子と悪役聖女

「君を好きになることなんて絶対にないね」

 必死のアピールをしていたとき、好きな人から言われたのがこれだ。
 私、リディア・スリュー十六歳。恋に勉強に浮かれていたのがいけなかったのかもしれない。
 完全に油断していた。

 私を冷ややかな目で見るのは銀髪翠眼を持つフリードリヒ・カルム。
 鋭い目、刺々しい雰囲気。近寄りがたいイケメンを具現化したような存在だ。
 そのことから、学園内のプリンスと呼ばれている。
 一目惚れしてしまった。

「フリードリヒ様、サンドイッチを作りましたの。一緒に食べましょう」
 にこやかに言うのは、私と同じ光魔法を扱うリリナ。
 黒髪赤目の私とは正反対の、白髪青目でふわりとしている。

 そんな彼女に当てられて、フリードリヒも珍しい微笑みを浮かべていた。
 そんななかで、私が持った手作りの昼食は夏の太陽に温められる。
 私は意地でそれを頬張った。
 美味しくなりますようにと祈ったのに、通じていない様子だ。味なんて全然しなかった。

「フリードリヒ様、少々お時間よろしいでしょうか」
「断る。お前の話は面白くない」
「あのぉ、わたしもお話したいのですが……」
「リリナ、待っていたよ」

 今日も今日とて全力アピール。
 それでもフリードリヒは振り向いてくれない。リリナと楽しく雑談している。

 近ごろ、私がグイグイとフリードリヒにアピールするせいで、悪役扱いされるようになってしまった。
 それでリリナは楽しくなるもんだから、光魔法という共通点から『聖女』『悪役聖女』なんて言われている。

 今も『あの悪役聖女がまた……』という声が聞こえた。
 私はいたたまれなくなって、その場から立ち去る。

「フリードリヒ様、よければその荷物お持ちいたしますわ」
 翌日、荷物を持たされていたフリードリヒを発見すると即座に駆けつける。
 フリードリヒは冷たい目でそんな私を一蹴した。

「女性に荷物を持たせるほど落ちぶれてはいない」
「それって、私を女性扱いしてくださるということですか?」
「ち、ちがう」
 カァァと頬を赤らめるフリードリヒ。
 冗談で言っただけなのに、思ったよりウブらしい。楽しくなってさらにニヤける。

「なら、お持ちいたしますわね」
「い、いや、いい」
 ならばと荷物を持とうとした私だったが、フリードリヒはそそくさと去ってしまった。
 やっぱり、女性扱いしてくれるじゃん。
 私の心の声は、私以外の誰にも聞こえなかった。

 そこから、私とフリードリヒは徐々に変わっていった。
 まず、私を邪険にしない。

「ああ、刺繍の時間にそんなことがあったのか」
「ええ。ということで、この刺繍はプレゼントいたしますわ」
「む……。ならありがたく、もらっておこう」
 前なら嫌がる話もプレゼントも、受け取ってもらえるようになった。

 次に、温かい言葉が散見されるように。
「今日は一日お疲れ様。舞踊のテストだったんだってな」
「ええ。ですがそのお言葉をいただけて疲労など飛びましたわ」
 前までは私を労ってくれることなんてなかった。
 これだけでもアタックした甲斐があったのに。

「今日も綺麗だな」
「へ? え、綺麗? 私がですか?」
「お前以外に誰が――。いや、すまん、忘れろ。つい言ってしまっただけで、本当は言うつもりなど」

 途切れ途切れの弁明をし、あたふたとするフリードリヒ。
 私は抱きつきたくなる衝動を抑え、フリードリヒ様も佇まいが素敵ですわ、と言う。
 ぷしゅぅ、とオーバーヒートするフリードリヒに、私は満面の笑みを浮かべた。
 そう、フリードリヒが私にデレてくれるようになったのだ。

 いつの日か、リリナより私と言葉を交わすことが多くなった。
 リリナは別の人に夢中なよう。
 だけど、私の心は変わらない。

「フリードリヒ様、愛していますわ」

 その言葉を証明せんと、私は愛を告げる。
 フリードリヒは、微笑んだ。

「ああ、俺もだ」
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