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第二話
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大学に飾られていたアンナの絵画がナイフで切られていた。それはアンナが制作した中では大きなキャンバスで、大学中の人間がその絵を壊した人間を探そうと、犯人捜しが巻き起こっていた。アンナは特別感情を出すような様子はなかった。
「これぐらいの傷なら、すぐ治せる」
一言そう言ってアンナは美術室へと絵画を運んでもらい、清潔で道具のそろった第二美術室でその絵画の補修を行っていた。そこには同じ美術専攻の生徒達が集まっていたのだけれども、アンナのことを手伝うのはほんの数人で会った。
美術専攻の人間のほとんどはアンナのことを嫌っている。理由はアンナが女であるということ。それから女だというのにこの大学では一番絵が上手いということだ。
女であるという理由については、画家のほとんどが男であり、女で画家をやっているのはごくわずかなためだ。ここにいるのもアンナ以外男である。
アンナは細い糸で、キャンバスの裏から切られた部分を縫っていた。
「大学の絵が傷つけられたと聞いてやってきてみたんだが、絵画修プロの画家を読んで直してもらった方が良い感じか?」
第三王子であるルークがやってきたために教室にいた生徒達全員が、目を丸くしていた。ルークが美術室へ来ることなんて今までほとんどなかった。美術専攻の人間はどちらかと言えば貴族と言うよりも、ジェントリであったりだとか、お金を持っている農家や商人の子供だったりする。
「殿下、なぜこのようなところへ」
「天才の絵が傷つけられたと聞いたから来ただけだ」
長い赤毛を後ろへなびかせてアンナはルークのことを見た。ルークは顔を突き出して、傷つけられた部分をまじまじと見た。
「そこの天才は姉上のお気に入りであるから、僕も目をかけるように言われているのだよ。傷は普通に直りそうなのか?」
針を掴んで、息をつくアンナの顔を覗いてルークは目を細めた。
「ええ、はい」
「そうか。ならばよかった。早急に補修してくれよ。姉上はその絵を気に入っていたからな。もしかしたら学校からこの絵を取り上げるかもしれない。姉上の手に渡っても傷が分からないように、補修するのだよ」
善人面を引っ付けたまま、ルークはにっこりと笑った。アンナはそれを不気味がるようにして、眉を顰めると、針を持ち直して、傷と向き合った。
「はい」
「君達もよろしく頼むよ」
その教室へいた生徒達をぐるりと見渡して、ルークははっきりと言った。
彼がいなくなると、皆積極的にアンナの絵画の補修に手を貸した。元々ここに集まったのはこの絵画の補修のためだったのだけれども、絵描きと言うのはどいつもこいつも自分本位であるために、アンナのことが気に食わないと皆思っていたため、皆補修を手伝っていなかっただけだ。
特別感謝を示す様子もなくアンナは黙々と補修を続けた。
その静かさがアンナには心地よく、ここにいる全員職人だと思わされる。
窓の外がオレンジ色に染まり、一人一人と美術室から人がいなくなっていくか、自分の作品へ取り掛かり、アンナは絵画の修復が終わった。
いつもはしない作業にアンナは疲労がたまり、修復した絵画を美術室へ置いて、旧校舎へととぼとぼと歩いて向かった。
「いつもの秘密基地へいくつもりかい?」
「ルーク」
名前を発してから、アンナはハッとして周りを見渡した。
「安心しろ。誰もいない。というか旧校舎には私たち以外ほとんど来ない」
そう言ってルークはアンナの肩をポンと軽く叩くと、前を歩いて行った。オレンジ色の夕焼けで、ルーク自身もオレンジ色に見える。
「帰らなくていいの?いつもこれぐらいの時間に帰ってる」
「どれぐらい絵が進んだのか見ないといけない」
「これぐらいの傷なら、すぐ治せる」
一言そう言ってアンナは美術室へと絵画を運んでもらい、清潔で道具のそろった第二美術室でその絵画の補修を行っていた。そこには同じ美術専攻の生徒達が集まっていたのだけれども、アンナのことを手伝うのはほんの数人で会った。
美術専攻の人間のほとんどはアンナのことを嫌っている。理由はアンナが女であるということ。それから女だというのにこの大学では一番絵が上手いということだ。
女であるという理由については、画家のほとんどが男であり、女で画家をやっているのはごくわずかなためだ。ここにいるのもアンナ以外男である。
アンナは細い糸で、キャンバスの裏から切られた部分を縫っていた。
「大学の絵が傷つけられたと聞いてやってきてみたんだが、絵画修プロの画家を読んで直してもらった方が良い感じか?」
第三王子であるルークがやってきたために教室にいた生徒達全員が、目を丸くしていた。ルークが美術室へ来ることなんて今までほとんどなかった。美術専攻の人間はどちらかと言えば貴族と言うよりも、ジェントリであったりだとか、お金を持っている農家や商人の子供だったりする。
「殿下、なぜこのようなところへ」
「天才の絵が傷つけられたと聞いたから来ただけだ」
長い赤毛を後ろへなびかせてアンナはルークのことを見た。ルークは顔を突き出して、傷つけられた部分をまじまじと見た。
「そこの天才は姉上のお気に入りであるから、僕も目をかけるように言われているのだよ。傷は普通に直りそうなのか?」
針を掴んで、息をつくアンナの顔を覗いてルークは目を細めた。
「ええ、はい」
「そうか。ならばよかった。早急に補修してくれよ。姉上はその絵を気に入っていたからな。もしかしたら学校からこの絵を取り上げるかもしれない。姉上の手に渡っても傷が分からないように、補修するのだよ」
善人面を引っ付けたまま、ルークはにっこりと笑った。アンナはそれを不気味がるようにして、眉を顰めると、針を持ち直して、傷と向き合った。
「はい」
「君達もよろしく頼むよ」
その教室へいた生徒達をぐるりと見渡して、ルークははっきりと言った。
彼がいなくなると、皆積極的にアンナの絵画の補修に手を貸した。元々ここに集まったのはこの絵画の補修のためだったのだけれども、絵描きと言うのはどいつもこいつも自分本位であるために、アンナのことが気に食わないと皆思っていたため、皆補修を手伝っていなかっただけだ。
特別感謝を示す様子もなくアンナは黙々と補修を続けた。
その静かさがアンナには心地よく、ここにいる全員職人だと思わされる。
窓の外がオレンジ色に染まり、一人一人と美術室から人がいなくなっていくか、自分の作品へ取り掛かり、アンナは絵画の修復が終わった。
いつもはしない作業にアンナは疲労がたまり、修復した絵画を美術室へ置いて、旧校舎へととぼとぼと歩いて向かった。
「いつもの秘密基地へいくつもりかい?」
「ルーク」
名前を発してから、アンナはハッとして周りを見渡した。
「安心しろ。誰もいない。というか旧校舎には私たち以外ほとんど来ない」
そう言ってルークはアンナの肩をポンと軽く叩くと、前を歩いて行った。オレンジ色の夕焼けで、ルーク自身もオレンジ色に見える。
「帰らなくていいの?いつもこれぐらいの時間に帰ってる」
「どれぐらい絵が進んだのか見ないといけない」
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