新日本書紀《異世界転移後の日本と、通訳担当自衛官が往く》

橘末

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序章

第二話 ガザ港奇襲上陸作戦についての提言書

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『余、皇弟レオポルド・フォン・オーベルシュタイン大公爵が帝国総本営に、提言す。

    諸卿等が周知の通り、西端半島に対する国土回復戦争は、現在停滞しつつある。
    原因は西端半島地峡地域と、島地域の間に位置する二つの城塞都市と、西端半島の地形にあると言えよう。
    西端半島中部には東西へ西端山脈が伸びており、大軍の通行はおろか交通そのものすら、南岸と北岸の沿岸部に限られている。
    南岸のシドン及び北岸のティルスは、それぞれの沿岸部を封鎖する形で存在しており、さらには山中に抜け穴を掘って、連繋しているのだ。
    他にも原因が存在しないでもないが、基本的にこれ等が戦線停滞の要因だと言えよう。

    嘗ては、西端半島の陸地が見える範囲を航行して、後方に回り込むという作戦案も存在した。
    しかし、西端半島の陸地が見える位置を航行すれば、こちらも敵に発見される事は必然である。
    かといって沿岸部から離れれば、タルターニャ領海である。
    強大なタルターニャ海軍との戦闘が自殺行為である事は、諸卿等も承知していよう。
    よって、この作戦案は不可能とされたのだ。
    しかし、余はこの作戦案に、成功の可能性を見出だしたのである。

    諸卿等も周知であろうが、タルターニャ植民都市連合王国に於ける、建国記念観艦式の日程は、毎年六月十日である。
    近年まではその当日であっても、タルターニャ海軍警備艦隊は通常通りに、領海外周部を警戒するものと思われていた。
    しかし、余はこれに疑問を持ち、三年前からタルターニャ警備艦隊を密かに監視させていたのである。
    その結果、六月九日から十一日までの三日間は、警備艦隊が観測地点周辺を通過する頻度が、平時と比較して一割程度となっている事を、発見したのだ。

    余はこれこそが、西端半島戦線の停滞を打破する為の、唯一無二の好機であると判断し、この情報に基づく構想を皇帝陛下に奏上した。
    その結果、去る二月三日に余は宮中への参内を命ぜられ、作戦承認の御内意を受けたのである。

    本作戦名は暁の嵐作戦と呼称し、作戦開始日を六月四日とする。
    作戦内容は以下の通りである。

    一、作戦開始日には、南部の従属国兵を中心とした陽動部隊十万を、南岸のシドンに向け進発させる。

    二、六月七日までに余を総大将とし、従属国の兵を含めた本隊二十万を、マルセイユ伯爵領の南部トゥーロン港に集結させる。
    尚、トゥーロンからの出撃は翌八日とする。
    九日まではタルターニャ領海へ侵入せず、西端半島北岸沿いに航海を続けるものとする。

    三、九日より一気にタルターニャ領海へと侵入し、陸上から見つからない様に航海を続け、十一日までにはタルターニャ領海を突破、敵領海まで到達する。

    四、陽動部隊が、敵主力をシドンへ誘引しているうちに、本隊がガザ港へ上陸して、敵の補給線を遮断する。

    五、本隊は陸路ティルスへ進撃、陽動部隊を以てシドンを抑えつつ、一気にティルスを攻略する。

    六、ガザ、ティルスが陥落した後、シドンを死守する事は無意味であり、敵はシドンを放棄するであろう。

    西端半島には、これ等三都市以外に大規模な都市や城塞が存在せず、この作戦の成功は、西端半島の完全奪回と同意義であると言えよう。

    そう、我々は西端半島の解放という、リヒト大帝以来の偉業を、成し遂げるのである。
    そして再び西方大陸へ、神の威光を広めるのだ。
    これによって、愚かなる異教徒や劣等種族たる亜人共も、神の威光の前に平伏すであろう。

    諸卿等奮起せよ。
    総本営幕僚たる諸卿等は、新たな歴史を創るのだ。
    大いに奮闘せよ。
    帝国の栄光を創るのは、諸卿等である。
    諸卿等に神の御加護があらんことを切に願う。

    神聖歴千七百十二年十一月十日、皇弟レオポルド・フォン・オーベルシュタイン大公爵』
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