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第一章 小笠原事変
第三話 都知事秘書 藤岡愛実
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あのセクハラ親父、真っ青になってたわね。
良い気味だわ。
私、藤岡愛実は、東京都知事の秘書を務めている、二十九歳。
残念ながら独身だ。
婚約者はいたけど、どういう訳か政治家の秘書=愛人だと思い込んだらしい。
まったく、誰に吹き込まれたんだろう?
散々揉めた末に、婚約は破棄された。
私の方も、都庁の受付で暴れたりされてすっかり冷めたから、悲しくはない。
むしろ、アホと結婚しないで済んだのは結構幸運だったと、今になって思う。
でも、男ってバカだ。
どうも彼等には私が、『婚約者に捨てられた寂しそうな女』に見えるらしい。
都知事という職場のトップからして、そう思い込んでいる。
自分ではスッキリした気分なのに、職場の男達が寄って集って水を差す。
鬱陶しい事、この上無い。
特に知事は酷い。
女性票を集めて当選した、紳士として有名な政治家なのにこれは無いと思う。
つい昨日も、夕食に誘われた程だ。
あのヅラ頭、紳士を履き違えてるんじゃないの。
もちろん、「それはセクハラです」の一言で追い払ったけど、もしこれが続く様ならいろいろ考えなくちゃならない。
職務上、週刊誌の記者が名刺を置いて行く事は、多いのです。
評判の良い知事ですらこれなのだから、他の男連中はもっと酷かった。
ワースト一位。
大の大人が、仕事中に大声で告白なんて、普通はしない。
明らかな、地雷だ。
ワースト二位。
家まで付いてくるのは、ストーカーとしか言い様が無いのに、その自覚が無いとか怖過ぎる。
酷い奴はその二人ぐらいだったけど、食事の誘いは常にあった。
正直、私は限界だったと思う。
でも、神様はちゃんと視ていてくれたのね。
本気で週刊誌記者と会うべきか迷っていたところに、あの地震が起こった。
たしかに、都庁全体が混乱したし、昼食が食べれないぐらい忙しくはあったけど、煩わしさから救われたのも確かだと思う。
これ程清々しい気分なのは、いつ以来かな。
そこに、海賊騒動が起こった。
情報が錯綜しているが、既に警察官がどうこう出来る状況では無いらしい。
不幸にも海上保安庁の巡視船は、尖閣諸島沖へ出払っているとの事だった。
どうやら、海保では老朽化の進む巡視船を新型船へ更新しているらしく、たまたまそのラッシュが重なったらしい。
そして、その穴埋めとして小笠原近海担当の巡視船を、一時的に派遣したとの事。
間が悪く、事件はその矢先に起こった。
父島や母島に上陸した通称『海賊』は、強圧放水ポンプらしき武器や火炎放射器の様な装備、閃光弾等(氷が飛んでくるとか、鎌鼬云々という、よく解らない情報もあったが)田舎の警察官では、太刀打ち出来ない様な装備を持っているらしい。
ヅラ頭が慌てているのは小気味良いけど、小笠原の都民の為にもそろそろ決断して欲しいものなのだけどね。
状況を打破する方法なんて、一つしかない。
そんな事は私でも分かる。
もう、こうなった以上は、治安出動を要請するしかない。
それが最善策。
でも知事としては、嫌らしい。
多分、戦後初の治安出動要請となるのが、汚点だと思っているのでしょう。
決断しなければ死傷者が増えて、結局非難されると思うのだけど、それには気付かないみたい。
ひょっとしたら、気付かない振りなのかもね。
まだ、挽回するチャンスはあるのに、自分の政治家生命を諦めているのかもしれない。
そうこうしているうちに、知事の政治家生命が終わったという情報が入って来た。
そう、このままではどうにもならないと判断した内閣が、防衛出動を決定したのだ。
極めて微妙なラインだけど、相手の正体が不明なのだからギリギリセーフといったところね。
これで、ヅラ頭はワタワタしているだけで何も出来ずに、都民を見殺しにした事になる。
本人にそのつもりが無くとも、そういう事として捉えられるでしょう。
ヅラ頭の政治家生命は、完全に終わったのだ。
事態がある程度終息したら、辞任するでしょう。
流石に今すぐ脱け出す勇気は無いけど、ヅラ頭の傍に居ては沈む船から逃げないのと同じ事ね。
切りのいいところで、逃げ出そう。
どうせなら、次の選挙直前に野党の候補からの紹介で、雑誌記者と会えば良い。
相手に分かる様に恩を売るのは、重要な事でしょう。
恩も、売り方が命なのだから。
さて、次の選挙に勝てそうな候補は、誰かしらね。
楽しみだわ。
良い気味だわ。
私、藤岡愛実は、東京都知事の秘書を務めている、二十九歳。
残念ながら独身だ。
婚約者はいたけど、どういう訳か政治家の秘書=愛人だと思い込んだらしい。
まったく、誰に吹き込まれたんだろう?
散々揉めた末に、婚約は破棄された。
私の方も、都庁の受付で暴れたりされてすっかり冷めたから、悲しくはない。
むしろ、アホと結婚しないで済んだのは結構幸運だったと、今になって思う。
でも、男ってバカだ。
どうも彼等には私が、『婚約者に捨てられた寂しそうな女』に見えるらしい。
都知事という職場のトップからして、そう思い込んでいる。
自分ではスッキリした気分なのに、職場の男達が寄って集って水を差す。
鬱陶しい事、この上無い。
特に知事は酷い。
女性票を集めて当選した、紳士として有名な政治家なのにこれは無いと思う。
つい昨日も、夕食に誘われた程だ。
あのヅラ頭、紳士を履き違えてるんじゃないの。
もちろん、「それはセクハラです」の一言で追い払ったけど、もしこれが続く様ならいろいろ考えなくちゃならない。
職務上、週刊誌の記者が名刺を置いて行く事は、多いのです。
評判の良い知事ですらこれなのだから、他の男連中はもっと酷かった。
ワースト一位。
大の大人が、仕事中に大声で告白なんて、普通はしない。
明らかな、地雷だ。
ワースト二位。
家まで付いてくるのは、ストーカーとしか言い様が無いのに、その自覚が無いとか怖過ぎる。
酷い奴はその二人ぐらいだったけど、食事の誘いは常にあった。
正直、私は限界だったと思う。
でも、神様はちゃんと視ていてくれたのね。
本気で週刊誌記者と会うべきか迷っていたところに、あの地震が起こった。
たしかに、都庁全体が混乱したし、昼食が食べれないぐらい忙しくはあったけど、煩わしさから救われたのも確かだと思う。
これ程清々しい気分なのは、いつ以来かな。
そこに、海賊騒動が起こった。
情報が錯綜しているが、既に警察官がどうこう出来る状況では無いらしい。
不幸にも海上保安庁の巡視船は、尖閣諸島沖へ出払っているとの事だった。
どうやら、海保では老朽化の進む巡視船を新型船へ更新しているらしく、たまたまそのラッシュが重なったらしい。
そして、その穴埋めとして小笠原近海担当の巡視船を、一時的に派遣したとの事。
間が悪く、事件はその矢先に起こった。
父島や母島に上陸した通称『海賊』は、強圧放水ポンプらしき武器や火炎放射器の様な装備、閃光弾等(氷が飛んでくるとか、鎌鼬云々という、よく解らない情報もあったが)田舎の警察官では、太刀打ち出来ない様な装備を持っているらしい。
ヅラ頭が慌てているのは小気味良いけど、小笠原の都民の為にもそろそろ決断して欲しいものなのだけどね。
状況を打破する方法なんて、一つしかない。
そんな事は私でも分かる。
もう、こうなった以上は、治安出動を要請するしかない。
それが最善策。
でも知事としては、嫌らしい。
多分、戦後初の治安出動要請となるのが、汚点だと思っているのでしょう。
決断しなければ死傷者が増えて、結局非難されると思うのだけど、それには気付かないみたい。
ひょっとしたら、気付かない振りなのかもね。
まだ、挽回するチャンスはあるのに、自分の政治家生命を諦めているのかもしれない。
そうこうしているうちに、知事の政治家生命が終わったという情報が入って来た。
そう、このままではどうにもならないと判断した内閣が、防衛出動を決定したのだ。
極めて微妙なラインだけど、相手の正体が不明なのだからギリギリセーフといったところね。
これで、ヅラ頭はワタワタしているだけで何も出来ずに、都民を見殺しにした事になる。
本人にそのつもりが無くとも、そういう事として捉えられるでしょう。
ヅラ頭の政治家生命は、完全に終わったのだ。
事態がある程度終息したら、辞任するでしょう。
流石に今すぐ脱け出す勇気は無いけど、ヅラ頭の傍に居ては沈む船から逃げないのと同じ事ね。
切りのいいところで、逃げ出そう。
どうせなら、次の選挙直前に野党の候補からの紹介で、雑誌記者と会えば良い。
相手に分かる様に恩を売るのは、重要な事でしょう。
恩も、売り方が命なのだから。
さて、次の選挙に勝てそうな候補は、誰かしらね。
楽しみだわ。
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