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第二章 西端半島戦役
第十九話 対空戦闘
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「リース方面より、接近する未確認飛行物体多数有り!」
『いずも』のCICにそんな報告が響く。
『敵』でも『アンノウン』でもなく、『未確認飛行物体』という言い回しなのは、冷静さの証拠であろう。
実際問題、自然現象の可能性もあるのだ。
それでも、場の空気は緊張に包まれる。
「落ち着きたまえよ。
敵に夜間戦闘を行う為の装備は無い筈だ。
確認を優先する様に」
大谷は、ズズッと音をたててコーヒーを啜り、そう言った。
落ち着いた様子を、わざと見せ付けているのであろう。
その声色は、普段と何ら変わらないものだ。
「数は二十、進路は救出部隊へ向かっています」
大谷の言葉に落ち着きを取り戻したのか、詳しい報告が挙げられる。
「厄介だな。
見付かったのかも分からん。
自然現象の可能性もある………………。
速度は?」
「凡そ六十ノットです。
全ての個体が、一定の速度を保っています」
大谷は、返事を聞くと数秒程考え込んだ。
「………………、編隊飛行をしていると見て、間違いは無さそうだな。
情報通りならば、この辺りは敵の勢力圏内だ。
未確認飛行物体は敵と判断する。
ここ暫く、法律的にギリギリの綱渡りばかりだが、救出部隊を見捨てる事も出来ん………………」
大谷は溜め息を吐いた。
「救出部隊には、進路を変更させる。
迂回させて、可能な限り接触は回避だ。
まだ、遣り過ごせる可能性も残っている」
敵と判断した以上、迎撃をしなければならない。
それでも、現状はそれを回避したいというのが大谷の本音だ。
何故なら、敵味方の識別が間違っていた場合が悲だから悲惨である。
マスコミや市民団体から、激しいバッシングを受ける事は、想像に難くない。
大谷としても、彼等が権力側の間違いを批判する立場である事は分かっている。
だが、批判や非難という手段を、目的と履き違えているのではという疑念が、どうにも拭い切れないのだ。
それは、国民全体が近年共有しつつある感覚であった。
「対空戦闘用意を発令されますか?」
幕僚の一人が上擦った声でそう訊ねる。
(無理もないか………………)
大谷はその様子に呆れつつも、原因を理解していたので何かを言う事は無い。
ここで大規模に戦闘を行うという事は、硫黄島沖や小笠原諸島で戦闘を行うという事と比べて違い過ぎるのだ。
領土や領海、領空内であれば単純な話である。
分かり易く明確な、防衛出動と言い切れる戦闘なのだ。
しかし、今回の場合は戦場となる場所が明らかな国外である。
少数精鋭を送り込んで、拉致被害者を救出しようというところまではともかく、ミサイルが飛び交う様な大規模な戦闘ともなると、バッシングは免れない。
幕僚達は、国民の救出という一大作戦に浮かれつつあったところに、敵襲という冷や水を浴びせられ冷静になったのであろう。
訊ねた幕僚だけでなく、ほとんどが暗い顔をしている。
「おいおい、先程までのやる気はどうしたんだい?
浮わついているよりは良いが、暗い顔は止めたまえよ。
幕僚がそんなんじゃあ、士気に関わる」
大谷は冗談交じりに注意した。
冗談を交ぜた理由は、大谷まで深刻な事を言うとそれこそ士気に関わるからだ。
こういった組織であるからこそ、部下の視線を気にしなければならない。
大谷は、それを実践して見せたのである。
「…………、失礼しました」
訊ねた幕僚は、一瞬ハッとした顔をしたものの、直ぐに普段通りの表情を取り戻した。
それを見た大谷は、満足そうに頷く。
「まあ、責任は私が背負う。
批判や非難はされるだろうが、それでも違法ではない。
諸君等は気にせず命令に従いたまえよ。
責任者は私なのだ。
心配せずとも、諸君等が非難される可能性は低いよ」
大谷はそう言うと、一度だけ深呼吸をして息を整える。
流石にそれなりの覚悟が必要だったのであろう。
それでも、自身に決断する義務がある事を理解しているのだ。
「対空戦闘用意」
それ故か、ハッキリと聞き取れる様に良く通る声で命令を下した。
「対ぃ??空ぅ??戦闘用??意!」
大谷の命令は直ちに復唱され、艦内が慌ただしくなる。
「司令、敵は低速です。
使用する武装は、制限なさってもよろしいかと思われます」
我に帰った幕僚が、まともな意見を具申した。
「………………」
大谷は即答せずに考え込む。
幕僚の意見は、妥当性のあるものだ。
大谷もそれは理解している。
普通に考えれば、高々六十ノットの敵など脅威ではない。
たとえ、此方にとって未知の攻撃を目論んでいようと、その前に撃墜してしまえば問題は無いだろう。
そして、近付いて来る以上は未知の攻撃があったとしても、その射程距離はそれなりに短い筈なのだ。
大谷が悩んでいる点は、その射程距離についてである。
それが予想以上に長ければ、思わぬ損害を被る事となるだろう。
(大した距離ではないと思うのだが………………)
理屈の上では予測していても、それだけで安心出来ないのが人情というもの。
大谷は何でもない顔を保ちつつも、内心で不安に思った。
それでも過剰な迎撃は下策である。
マスコミという後ろ弾の事ばかりでは無い。
使用する武装によって、資材や単価が大きく異なるという問題もある。
例えば、シースパローの様な対空ミサイルの射程距離は長い。
しかし、同時に単価が億単位という高級な兵器でもあるのだ。
当然、資材もばかにならない。
国外からの輸入が止まってしまった状況で、深刻な資材不足が懸念される中、簡単に使用可能な武器ではなかった。
これをバカスカ撃とうものなら、それこそバッシングのネタを増やす事になりかねない。
「司令、妙ではありませんか?」
大谷が悩んでいると、別の幕僚が疑問を口にする。
「妙な事なら、もう散々だがね。
この世界では我々にとって奇妙に感じる点が多過ぎるんだ。
で、何に気付いたのかね?」
大谷は思考を中断して応じた。
この様に何も分からない状況では、疑問であってもそれなりに情報や判断材料となり得るからだ。
「敵はどうやって我々を捕捉したのでしょう?」
幕僚の質問に、CIC内の空気が一気に凍りつく。
敵が、未知の観測手段を持っている可能性が大きくなった為だ。
その場にいる全員の視線が大谷に集中する。
大谷の意見に期待しているのであろう。
「ふむふむ………………、うん………………。
諸君等の懸念通りの可能性もあるな。
だが、我々の早とちりの可能性も否定は出来んよ。
こうなるとやはり情報不足が痛いな」
当然ながら大谷としても結論が出せない為、当たり障りの無い意見を言わざるを得ない。
だが、空気は良い方向に流れた。
「早とちりですか?」
「そう、早とちり。
接近している敵は、哨戒部隊である可能性もある」
大谷がそう言うと、幕僚達は納得した様な顔をする。
「司令、むしろその可能性の方が大きいのではありませんか?」
「それはそうかもしれんね。
だが、仮にそうだとしても、我々は最悪の事態に備える立場だ。
油断なんて、贅沢は許されんよ」
大谷はそう言って、幕僚達だけでなくその場にいる油断しそうな部下達全員に向けて、注意を促した。
「古来より大軍が油断によって壊走する例は、幾らでもある。
それでも余程の大人数が油断しない限りは、そうそう負けるものではない。
しかし、現代は違う。
現代では、電子化や自動化によって必要人数が減っている分、一人が油断するだけで負ける確率は近代以前と較べて、桁違いに高い。
少なくとも、給料分は油断しないように」
「「「ハッ!」」」
大谷の言葉に感心したのであろうか。
やけに良い反応である。
「司令、救出部隊の進路変更と合わせる様に、敵も進路を変更しています」
嫌な知らせとは空気を読まない。
CICの中に緊張が戻る。
(我々の存在が発見されているのか?
あるいはエンジン音に気付いての調査なのか?
どちらにせよ、現状で遣り過ごす事は難しいか………………)
腹は括ったのであろうが、それでも避ける事が困難であると分かれば、気も沈むものだ。
大谷は周囲にバレない様、小さく溜め息を吐いた。
「予測される接触時間までは?」
「このまま進路変更を指示しない場合、十分以内でしょう」
残念ながら大谷に猶予は無いらしい。
早急に決断しなければならなかった。
「救出部隊へは、再度の進路変更を指示しろ。
艦隊の射線上に居られては困る。
細かな管制は任せるので、とにかく射線上から退避させるんだ」
大谷はとにかく、迎撃前に必要な命令を下す。
ミサイルならばともかく、砲弾は曲がれないのだ。
それでも、現代では味方の機体をすり抜ける様にして発砲する事も、理論上は可能であろう。
しかし、それはGPSが使用出来る場合の話。
アマテラスシステムでもやはり理論上は可能であるが、実験も無しにいきなり実戦で行うのは無謀に過ぎよう。
大谷は堅実な男であった。
「司令は、安上がりに済ませるおつもりですか?」
幕僚の一人が質問をする。
大谷の堅実さを知っているのであろうか。
意外そうな顔をしている。
「安上がりに済めば、それに越した事はない。
もちろん、駄目だった場合に備えて対空ミサイルの用意もさせるつもりだよ。
ここは二段備えでいく」
大谷は苦笑しつつ説明した。
戦闘環境が整っていれば。
あるいは政治的な問題さえ無ければ。
もう少し楽に戦える筈である。
その事に気付いての苦笑だ。
あまりの条件の悪さに、笑うしかなかった。
(敵が弱いという推測が当たっていれば………………)
思わず、軍人らしからぬ楽観的観測にすがりそうになるものの、慌ててそれを打ち消す。
それを信じる事は、自身の精神的負担を軽減する代わりに、取り返しのつかない事態を招きかねない。
やってはいけない行為だ。
「主砲、発射準備完了しました。
何時でも撃てます。
各種対空ミサイルも、ご命令次第で発射可能です」
「救出部隊が射線上から退避するまでの時間は?」
「敵の機動性能にもよりますが、約二十秒後と推測されます」
大谷はチラリと腕時計を覗く。
「では、二十五秒後に射撃を開始せよ」
退避から射撃開始までの間が短いのは、敵の進路変更前に攻撃する為だ。
ただでさえ、発射から命中までにはタイムラグがある。
敵は救出部隊へ向かっているので、照準そのものは追い付けるだろう。
だが、敵が救出部隊の進路変更に気付くタイミング。
そしてそれに反応するタイミングは、レーダーがあろうとコンピューターがあろうと、判断が難しい。
可能な限り、進路変更直後の発砲が好ましかった。
そう考えると、むしろこれでも長い程だろう。
そうして、発砲までのカウントダウンが始まった。
『いずも』のCICにそんな報告が響く。
『敵』でも『アンノウン』でもなく、『未確認飛行物体』という言い回しなのは、冷静さの証拠であろう。
実際問題、自然現象の可能性もあるのだ。
それでも、場の空気は緊張に包まれる。
「落ち着きたまえよ。
敵に夜間戦闘を行う為の装備は無い筈だ。
確認を優先する様に」
大谷は、ズズッと音をたててコーヒーを啜り、そう言った。
落ち着いた様子を、わざと見せ付けているのであろう。
その声色は、普段と何ら変わらないものだ。
「数は二十、進路は救出部隊へ向かっています」
大谷の言葉に落ち着きを取り戻したのか、詳しい報告が挙げられる。
「厄介だな。
見付かったのかも分からん。
自然現象の可能性もある………………。
速度は?」
「凡そ六十ノットです。
全ての個体が、一定の速度を保っています」
大谷は、返事を聞くと数秒程考え込んだ。
「………………、編隊飛行をしていると見て、間違いは無さそうだな。
情報通りならば、この辺りは敵の勢力圏内だ。
未確認飛行物体は敵と判断する。
ここ暫く、法律的にギリギリの綱渡りばかりだが、救出部隊を見捨てる事も出来ん………………」
大谷は溜め息を吐いた。
「救出部隊には、進路を変更させる。
迂回させて、可能な限り接触は回避だ。
まだ、遣り過ごせる可能性も残っている」
敵と判断した以上、迎撃をしなければならない。
それでも、現状はそれを回避したいというのが大谷の本音だ。
何故なら、敵味方の識別が間違っていた場合が悲だから悲惨である。
マスコミや市民団体から、激しいバッシングを受ける事は、想像に難くない。
大谷としても、彼等が権力側の間違いを批判する立場である事は分かっている。
だが、批判や非難という手段を、目的と履き違えているのではという疑念が、どうにも拭い切れないのだ。
それは、国民全体が近年共有しつつある感覚であった。
「対空戦闘用意を発令されますか?」
幕僚の一人が上擦った声でそう訊ねる。
(無理もないか………………)
大谷はその様子に呆れつつも、原因を理解していたので何かを言う事は無い。
ここで大規模に戦闘を行うという事は、硫黄島沖や小笠原諸島で戦闘を行うという事と比べて違い過ぎるのだ。
領土や領海、領空内であれば単純な話である。
分かり易く明確な、防衛出動と言い切れる戦闘なのだ。
しかし、今回の場合は戦場となる場所が明らかな国外である。
少数精鋭を送り込んで、拉致被害者を救出しようというところまではともかく、ミサイルが飛び交う様な大規模な戦闘ともなると、バッシングは免れない。
幕僚達は、国民の救出という一大作戦に浮かれつつあったところに、敵襲という冷や水を浴びせられ冷静になったのであろう。
訊ねた幕僚だけでなく、ほとんどが暗い顔をしている。
「おいおい、先程までのやる気はどうしたんだい?
浮わついているよりは良いが、暗い顔は止めたまえよ。
幕僚がそんなんじゃあ、士気に関わる」
大谷は冗談交じりに注意した。
冗談を交ぜた理由は、大谷まで深刻な事を言うとそれこそ士気に関わるからだ。
こういった組織であるからこそ、部下の視線を気にしなければならない。
大谷は、それを実践して見せたのである。
「…………、失礼しました」
訊ねた幕僚は、一瞬ハッとした顔をしたものの、直ぐに普段通りの表情を取り戻した。
それを見た大谷は、満足そうに頷く。
「まあ、責任は私が背負う。
批判や非難はされるだろうが、それでも違法ではない。
諸君等は気にせず命令に従いたまえよ。
責任者は私なのだ。
心配せずとも、諸君等が非難される可能性は低いよ」
大谷はそう言うと、一度だけ深呼吸をして息を整える。
流石にそれなりの覚悟が必要だったのであろう。
それでも、自身に決断する義務がある事を理解しているのだ。
「対空戦闘用意」
それ故か、ハッキリと聞き取れる様に良く通る声で命令を下した。
「対ぃ??空ぅ??戦闘用??意!」
大谷の命令は直ちに復唱され、艦内が慌ただしくなる。
「司令、敵は低速です。
使用する武装は、制限なさってもよろしいかと思われます」
我に帰った幕僚が、まともな意見を具申した。
「………………」
大谷は即答せずに考え込む。
幕僚の意見は、妥当性のあるものだ。
大谷もそれは理解している。
普通に考えれば、高々六十ノットの敵など脅威ではない。
たとえ、此方にとって未知の攻撃を目論んでいようと、その前に撃墜してしまえば問題は無いだろう。
そして、近付いて来る以上は未知の攻撃があったとしても、その射程距離はそれなりに短い筈なのだ。
大谷が悩んでいる点は、その射程距離についてである。
それが予想以上に長ければ、思わぬ損害を被る事となるだろう。
(大した距離ではないと思うのだが………………)
理屈の上では予測していても、それだけで安心出来ないのが人情というもの。
大谷は何でもない顔を保ちつつも、内心で不安に思った。
それでも過剰な迎撃は下策である。
マスコミという後ろ弾の事ばかりでは無い。
使用する武装によって、資材や単価が大きく異なるという問題もある。
例えば、シースパローの様な対空ミサイルの射程距離は長い。
しかし、同時に単価が億単位という高級な兵器でもあるのだ。
当然、資材もばかにならない。
国外からの輸入が止まってしまった状況で、深刻な資材不足が懸念される中、簡単に使用可能な武器ではなかった。
これをバカスカ撃とうものなら、それこそバッシングのネタを増やす事になりかねない。
「司令、妙ではありませんか?」
大谷が悩んでいると、別の幕僚が疑問を口にする。
「妙な事なら、もう散々だがね。
この世界では我々にとって奇妙に感じる点が多過ぎるんだ。
で、何に気付いたのかね?」
大谷は思考を中断して応じた。
この様に何も分からない状況では、疑問であってもそれなりに情報や判断材料となり得るからだ。
「敵はどうやって我々を捕捉したのでしょう?」
幕僚の質問に、CIC内の空気が一気に凍りつく。
敵が、未知の観測手段を持っている可能性が大きくなった為だ。
その場にいる全員の視線が大谷に集中する。
大谷の意見に期待しているのであろう。
「ふむふむ………………、うん………………。
諸君等の懸念通りの可能性もあるな。
だが、我々の早とちりの可能性も否定は出来んよ。
こうなるとやはり情報不足が痛いな」
当然ながら大谷としても結論が出せない為、当たり障りの無い意見を言わざるを得ない。
だが、空気は良い方向に流れた。
「早とちりですか?」
「そう、早とちり。
接近している敵は、哨戒部隊である可能性もある」
大谷がそう言うと、幕僚達は納得した様な顔をする。
「司令、むしろその可能性の方が大きいのではありませんか?」
「それはそうかもしれんね。
だが、仮にそうだとしても、我々は最悪の事態に備える立場だ。
油断なんて、贅沢は許されんよ」
大谷はそう言って、幕僚達だけでなくその場にいる油断しそうな部下達全員に向けて、注意を促した。
「古来より大軍が油断によって壊走する例は、幾らでもある。
それでも余程の大人数が油断しない限りは、そうそう負けるものではない。
しかし、現代は違う。
現代では、電子化や自動化によって必要人数が減っている分、一人が油断するだけで負ける確率は近代以前と較べて、桁違いに高い。
少なくとも、給料分は油断しないように」
「「「ハッ!」」」
大谷の言葉に感心したのであろうか。
やけに良い反応である。
「司令、救出部隊の進路変更と合わせる様に、敵も進路を変更しています」
嫌な知らせとは空気を読まない。
CICの中に緊張が戻る。
(我々の存在が発見されているのか?
あるいはエンジン音に気付いての調査なのか?
どちらにせよ、現状で遣り過ごす事は難しいか………………)
腹は括ったのであろうが、それでも避ける事が困難であると分かれば、気も沈むものだ。
大谷は周囲にバレない様、小さく溜め息を吐いた。
「予測される接触時間までは?」
「このまま進路変更を指示しない場合、十分以内でしょう」
残念ながら大谷に猶予は無いらしい。
早急に決断しなければならなかった。
「救出部隊へは、再度の進路変更を指示しろ。
艦隊の射線上に居られては困る。
細かな管制は任せるので、とにかく射線上から退避させるんだ」
大谷はとにかく、迎撃前に必要な命令を下す。
ミサイルならばともかく、砲弾は曲がれないのだ。
それでも、現代では味方の機体をすり抜ける様にして発砲する事も、理論上は可能であろう。
しかし、それはGPSが使用出来る場合の話。
アマテラスシステムでもやはり理論上は可能であるが、実験も無しにいきなり実戦で行うのは無謀に過ぎよう。
大谷は堅実な男であった。
「司令は、安上がりに済ませるおつもりですか?」
幕僚の一人が質問をする。
大谷の堅実さを知っているのであろうか。
意外そうな顔をしている。
「安上がりに済めば、それに越した事はない。
もちろん、駄目だった場合に備えて対空ミサイルの用意もさせるつもりだよ。
ここは二段備えでいく」
大谷は苦笑しつつ説明した。
戦闘環境が整っていれば。
あるいは政治的な問題さえ無ければ。
もう少し楽に戦える筈である。
その事に気付いての苦笑だ。
あまりの条件の悪さに、笑うしかなかった。
(敵が弱いという推測が当たっていれば………………)
思わず、軍人らしからぬ楽観的観測にすがりそうになるものの、慌ててそれを打ち消す。
それを信じる事は、自身の精神的負担を軽減する代わりに、取り返しのつかない事態を招きかねない。
やってはいけない行為だ。
「主砲、発射準備完了しました。
何時でも撃てます。
各種対空ミサイルも、ご命令次第で発射可能です」
「救出部隊が射線上から退避するまでの時間は?」
「敵の機動性能にもよりますが、約二十秒後と推測されます」
大谷はチラリと腕時計を覗く。
「では、二十五秒後に射撃を開始せよ」
退避から射撃開始までの間が短いのは、敵の進路変更前に攻撃する為だ。
ただでさえ、発射から命中までにはタイムラグがある。
敵は救出部隊へ向かっているので、照準そのものは追い付けるだろう。
だが、敵が救出部隊の進路変更に気付くタイミング。
そしてそれに反応するタイミングは、レーダーがあろうとコンピューターがあろうと、判断が難しい。
可能な限り、進路変更直後の発砲が好ましかった。
そう考えると、むしろこれでも長い程だろう。
そうして、発砲までのカウントダウンが始まった。
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